あ、そうだ(唐突)日間で74位になってました。
何をやらせても中途半端な自分が初めてランキングに乗り、恐悦至極です。これからも頑張るつもりですのでどうぞ感想と言う燃料をば、私にはこっちの方が嬉しいです。
小鬼退治は残酷である。
それはこの世界のありふれたことにして、ある程度の冒険者間では常識のことだ。初めての冒険を楽勝でこなす者、痛い目を見ながら達成する者、そして甘く見て全滅する者。そのどれにしろ、ゴブリンの悪辣さは身によく染みつく。
様々な形で悪意を受け、そのまま冒険者を続けられるかはその者の心の強さによって決まる。しかし初の冒険で自らの腕の中で女が事切れ、後ろ手に聞いた叫び声は耳に張りつき、彼女の法衣についた様々な液体がもたらすわずかな湿り気はまるでじわじわと彼女の体から熱を奪うかのよう…少女にとって、今までの体験は波乱万丈が過ぎた。
見かねた女性陣からどうにかしようと労いの言葉や賛辞が送られるが「アリガトウゴザイマス、ガンバリマス」の二言しか出てこない。現場に居合わせなかったせいでこうまでなるとは…二人も参ったと頭に手をやるが一人は武芸に心血を注ぎ、一人は知識を求めて過ごしていたため碌に同年代との会話をしてこなかった。さらにどちらも宗教に関しては疎いため、結局時間の解決に任せてしまう。
だが、翌日にはもう一皮むけてケロっとした顔でゴブリン退治に赴く彼女を見ることになる二人の顔はきっと想像に難くない。
「ありがとうごぜぇます!ありがとうごぜぇます!ほんにあんたらのお陰でさぁ!」
洞窟とは打って変わった明るさの村で、先ほどからこう何度も禿げ頭を上げ下げするのは今回の依頼人たる村長だった。冒険者の冒険は戦って勝つまでではない。依頼内容が果たされたことを依頼人に報告し、ギルドに戻るまでが冒険なのだ。だが今回初めてこなした冒険は、彼らが夢見た華々しくドラゴンを倒し、美しい姫から賛辞を受けるとか言ったものではなく、血生臭くゴブリンを倒し、禿げ頭の村長から訛りがキツイ謝礼を受けるという、夢と現実の差を嫌でも感じさせるものだった。
それさえも全て自分達の力で為し終えていれば悪いものではなかったのであったろうが、一党にとっては自分達は特段何も出来ていないのにこうも叫ばれると逆に心が痛かった…それに耐えられなくなったのか青年剣士は絞り出すようにして叫ぶ。
「なんで助けたんだ…俺は、お前よりも目立とうとしてああなったのに…」
喜ぶ人々の横で顔を俯かせ、ズボンを握りしめる青年剣士。顔は見えずとも恐らくはその顔を真っ赤に染めていることだろう。彼は一党の党目と名乗っていながら何一つ為せなかった自分を恥じていた。何をしていたのか、ふざけるな、若造が調子に乗るな。そのどれもが言われても仕方ない言葉である。しかし、彼に降ってきたのは想像していなかったものだった
「一党ってのは仲間だろ、なんで助ける理由がいるんだい?まさか死にたかったとかじゃないだろうね?」
「そ、そんな訳じゃ…」
「なら胸を張りなよ、君は生きてるんだ。只人の、大事な大事な一生があんな惨めな所で終わらなかった。これって、勲章ものだよ?」
何を言ってるのか理解できないと言いたげな顔で、困惑を以ってそう返されては最早何も言えない青年剣士は徐に手を差し出した。
「なら、約束する。狂戦士、この借りは必ず返すから」
「そっか、覚えておくよ」
一方は熱く手を出し、一方は茶化すようにヒラヒラと。だが確かに握手はなされ、約束が交わされた。
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サインを貰って町に着くころには既に日が傾き始めており、精神的にも肉体的にも疲労困憊となった一党はしかし五体満足でギルドへと帰ることが出来たことに安堵した。ここまでくれば最早すべきことと言えば後はもう報酬を貰うのみ。
ほどなくして受付嬢の笑顔と共に渡された袋は、上位種二体を討伐したことで色がついたとのことで少しばかり重たく感じる。思わず喉を鳴らした彼らだったがその実中身は銀貨が僅かに30枚、無償であそこまで駆けつけてくれたゴブリンスレイヤーが倒した上位種の分も含まれてこれだ。
ここから狂戦士が倒したシャーマンの分を引き、五人で分ければ一人あたり僅か5枚。命を対価に働いたにしては思わず文句も言いたくなってしまうのは仕方がない。されど銀貨5枚、彼らがその身を以て学んだ授業料と思えばこんなものであろうと一党は口を合わせずとも心で一致した。
今回はダメだった、だが自分達は生きている。生きているならば次がある。次があるならもっと上手くやる。
「君たち気をつけなよー、最初の冒険は生き残ったけど次は…っていうの結構あるんだ。今度からは僕は単独で動くことになるだろうしさ。あ、僕はここで抜けるねー」
そう考えた所へ、腰の小袋に銀貨をジャラジャラ詰め込む狂戦士の言葉が突き刺さり、尚更もう少し気を張ろうと認識を改める一党。工房に向かうと言ってギルドを足早に出ていった彼の姿を見送ると、空気を一新するように青年剣士が唐突に拳を突き上げた。
「よし、皆で宴会しよう!金は全部俺が出すよ!そんなに高いの頼まれると困るけど…まだ金はあるから!皆を危険な目に合わせちゃった埋め合わせがしたいんだ、冒険の後はやっぱり宴会もしたいしさ」
最後の方は少しバツが悪そうに頬を掻いてそう言えば、うら若き乙女達が一瞬目を合わせるが彼の人の良さはある程度信頼がおけると判断されたのか、そのまま流れるように葡萄酒、麦酒、火酒と思い思いの酒が次々に注文されていく。
だが、20にもならない一党の面々はたかが一杯の酒であろうと耐えられなかったようで、見る見るうちに茹蛸のように赤く染まっていき、逆に青年剣士の顔は勘定を見て青ざめていく。それを忘れるかのように自然と彼の周りには杯が積まれていった。
「皆さんは、これからどうなさるのですか?」
始まりは、葡萄酒をチビチビと舐めるようにして飲んで顔を赤くした女神官の一言。初のゴブリン退治を終えたが心の何処かに傷を負った面々は、平素であれば一党の誰しもが少々顔を歪めたであろうその質問を、酒が入って気が大きくなったのか皆口端を歪めながらも胸中の言葉を口にしていく。
「危ない目にはあったけど、ほっとけないからコイツについていく。あとは…モンスター相手に使える装備に変えたいわ」
「私は変わらないわね、知識を求めて進むだけ。それに学院で学んだことだけじゃおちおち冒険出来ないみたいだし…」
「結局剣までなくなっちゃったし、俺はまず溝浚いだなぁ…でも、やらなきゃならない事も分かったし、絶対ここから這い上がってやる!」
「そうですか…皆さんは凄いですね…ふぁ…ありがとう、ごじゃいましゅぅ…」
三者三様の答えは果たして女神官を満足させたのか、確認する前に彼女は瞼を擦ってそのままテーブルへと沈んでいく。だが、寝顔をみるにどうやら悪くはなかったのかもしれない。こうして十数年後、四方世界に名を馳せることになる一党の英雄譚は幕を開け、夜が更けていった。
―――――――
「武器をお願いしたい」
町外れの工房へそう言って入ってきたのは笹葉のような耳を持つ森人だ。辺境には珍しい森人の来訪だが、それだけならば別段そこまで驚きもしなかっただろう。だが工房の主たる老爺が驚いたのはその筋肉であった。森人と言えば美麗なる顔に鹿のように細く美しい体を持つ種族と相場が決まっている。ただ目の前にいる森人の筋肉はどう見ても下手な蜥蜴人以上のものでどうにもチグハグな印象を受けるもの。
「へへッ、良いじゃねえか。で?何が欲しいんだ?」
老爺は久方ぶりに血沸き肉躍るような依頼が出来そうだと内心楽しみであった。大槌だろうか?斧槍だろうか?それともはたまた大剣か?まるで少年のように目を輝かせる老爺。いくら老練な彼と言えど心の奥底に眠るのは未だ朽ちることのない童心、面白そうなものには惹かれてしまうのだ。
「この店で一番安いショートソードを一振り」
「……そうかい、だったらそこに入ってる数打ちから好きなのを選びな」
しかし返答は無慈悲にも老爺の考えを打ち砕く。てっきり魔剣か何かが欲しいと言われるかとも思っていた老爺は少々がっかりしたように肩を落とした。自分の早合点とは言え壮大な肩透かしを喰らったかのような気が湧いて何とも言えずやるせない。そしてよく見てみれば筋肉に目が行ってしまったが朝方訪ねてきた森人ではないか、斥候が付ける外套が無ければこうも印象が変わるのかと目を丸くした。
「そんな短いので大丈夫か?お前さんの力を活かすならもっと長柄の…」
「いや、大丈夫。僕はゴブリンを殺すだけだから」
「カーッ、全くお前ぇはどことなくあいつを思い出すようなことばかり言いおって」
らしくない食い下がりをしてもやはり答えは変わらず、さらにゴブリンを殺すときた。瞬間老爺の頭に浮かぶのはゴブリンゴブリンとうるさいあの男。安物で身を固めるかと思えば魔剣よりも高くつく
もしやあれと同類かと思えばこれまた森人らしからぬ鉄矢を5本ばかり買ってすぐさま出ていった。これでは人間観察もありゃしない。
「はぁ…なんでこう、冒険者には馬鹿ばかりが集まるんだか…」
「親方ー!」
「分かってらい!今いく!」
老爺のどこか諦めたかのような呟きは、丁稚の青年の声に被さって消えた。どうせ自分は怪物退治には行かないのだ、今更何を思うのか。武具を作ってバカ共を待つ、手前にはそれだけだろうと彼は工房の奥へとその足を運んだ。
―――――――
(次はそれとそれと、あとその依頼を受けて)
脳裏に響くのは男のものとも、女のものともつかない抑揚のない声。それにはいはいっと従っては慣れた手つきでコルクボードから依頼を剥がしていく自分。こうして毎日のように下される託宣の声に慣れたのはいつだったか?もう思い出せない程前であったような、それとも一日前だったかのような…どうにも記憶がハッキリとしない。まあいつだったかなどどうでも良い事だろう、どうせ自分には時間などあってないようなものだ。むしろありすぎて変に使いきることが出来ない、
今までで大分生きてきたと思っていたが、未だ
下水路は臭く、暗く、汚い。そこに無限に湧くかと思えるほど数の多い化物達を数打ちの剣で、そして汚水の中より見つかった棍棒で潰していく。その日々が4日程続き、身を綺麗にしても臭いが多少つき始めた所で再び神の指示が入る。どうやら今度は山を越える配達をするようだ。森人が只人の小間使いのような扱いをされるとは、森の中に籠りきってはふんぞり返る里の連中が聞いたらどんな顔をするのか。むしろ少々見物かもしれないと思いながらも薬草採取の依頼と共にボードから剥がし、窓口まで持っていく。
相も変わらず受付嬢殿は依頼の重複受注に良い顔をしないが、こちらも何かと金が入用なので許してほしいと心の中で謝罪をする。神がずっと頭の内で金金と鳴くのでうるさくて敵わない。記憶ではどちらも3日ほど前からある依頼であったはずなので、まあ自分が消化しても悪いわけではない筈だろう。
そのままいつもの如く話を途中で切り上げ、足早にギルドを出ていく自分は、周りから見てどう映るのか?水に泡が浮かぶかのように思いついた疑問も弾けて消えた。
森人は名の通り、森を故郷とする。それは異端たる自分であっても例外ではなく、一度願えば母なる森は子が進みやすいように蔓や枝を丁度良い具合に分けてくれる。森人の軽業はこうして為され、自分はただその間を導かれるままに進んで行く。
そのまま進んで行くと夕暮れになってようやく村へと辿り着いた。体感ではここまで掛かるような気はしなかったが、響く声から察するにどうやら神が
いかな神とて万能ではないという事だろうか?と不遜な考えが頭に浮かぶが有益なことには変わりはなく、自分は指示に従って依頼のブツを届けるだけである。
そうすぐさま思考を切り替えて探してみると、それ程広くない村で依頼者の家はすぐに見つかった。どことなく高級感のある黒が塗られたそれをみるにどうやら依頼書に間違いはないようだ。
「ギルドの依頼で届けに来たよ!」
「…おぉ!
「じゃ、サインをここに」
「もちろん良いとも!
ドタドタと家の中から壮大な音を響かせ顔を出したのは、薬の香りが染みついた、恐らく薬師か黒魔術の女だ。所々森人であることを恨むレベルで何やら見た目に合わない発言をされたような気がするが、気のせいであると信じたい。
そのまま堂に入った流れでサインがなされ、終始小さな声でワ―キャー言われることにそれほど悪い気はしなかったが、時間が時間な為すぐさま帰路に就く。
そう思って村を出ようとすれば村の若者から慌てたように引き留める声。何だ何だと聞いて見ればどうやら小鬼禍らしい。またゴブリンか…と顔をしかめたが頭の中でここ数日やけに大人しかった神曰く、この依頼も受けた方が良いとのこと。移動で少々疲れていたので最初に金貨100枚出せと言えば、若者が絶望した顔をする。それが少々面白かったので銀貨30枚程にまけると交渉が成立した。
いざ裏山である。
だが、現場についてみると村人の証言が間違っていたことが明らかになった。食べることに夢中になって前かがみなのを含めたとてどう見ても小鬼の小がない。
だが、そのまま放たれた必中の矢は刺さることなくはじかれ、尋常のホブではありえないそれに神同様自分も動揺してしまう。
なんと食事を止め、こちらに目線を向けうそれはホブではなく
それ程ない記憶に当てはめてみればどうやら目の前の個体は幼体らしく、ホブと同程度かやや大きいくらいであった。本来の大きさで言えばおよそ民家程であった記憶のトロルと比べると随分と小さいが、一人で倒すことが推奨されるものでは確実にない。
さて、一体どうするか?と神の声を待つが一向にくる気配がない。
「ちょっ、神様ァ!?」
声に出して催促しても次の指示が来ない、あるのはただただ天上と繋がっている感覚のみ。最早骰子がどうとか、自分の筋力がどうだとかの問題ではない。
「ORROTTTRROO!!」
「フボグッ!!?」
そうしてまごまごしていれば格好の的だろうことに気づけるほど戦いは遅くない。いつの間にやら手に携えていた棍棒が自身の体に強く打ち据えられ、吹き飛ばされる。緩衝材にしては固いが過ぎる大木にその威力のまま叩きつけられると体の中から何かが壊れる鈍い音がし、痛みがじんわりと胸から広がった。どうやらまずい所に傷がついてしまったらしい。
しかし生まれてこの方弓を手に生きてきたのは伊達ではない。すぐさま矢を番え、そのまま顔へと射出する。眼を、もしくは顔の何処かへと突き刺さればこの窮地を脱せるが…「日の下では体が岩のように固くなる」というトロルが持つ特性を、咄嗟に思い出すことは出来なかった。時刻は夕暮れ時、夜には近いが逆に言えば日は未だ落ちていないことを表している。
一拍置いて思い出しても時すでに遅し、顔に吸い込まれるように進んで行った矢は当たった瞬間に軌道を右に逸らして木に突き刺さる。
「ORROTOROOR…」
グフグフと口から吐き出されるのは嘲笑であろうか?こちらへと突進するトロルは平時ならば避けることが出来たかもしれない程の速さ。だが骨が折れ、体の中身すら傷んでいる今では避けられるはずもなく、そのまま凄まじいほどの質量がその身に圧し掛かる。
(狂奔を、狂奔を使って!!早くッ)
「神様!おぉおおお『あな盤上繰りし覚知の神よ、我らに狂騒を与えたまえ』!」
以前と比べるとかなり緩慢な神の焦ったかのような託宣に従い、小鬼の牙を触媒として祈りを形にしてみれば確かに奇跡は舞い降りる。どうやらまだ見捨てられたわけではないらしかった。
それに安堵しながらも体から力が湧き出る対価に急速に考えが覚束なくなっていく。だがそれでいい、今だけは、過去も何もかもを忘れて良いのだ…
目の光が次第に消えていき、体を走る血管は今にもはち切れそうなほど動きを速めその筋肉を膨張させる。
「あ”ぁ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」
呻き声にも聞き取れる咆哮を機に一気に力が増しては押し返されたその背に何か見えたのだろうか、一瞬体をこわばらせたトロルに野獣の如く肉薄し、今し方狂戦士がやられていたような態勢へと持っていく。身長の関係で完全なる逆転とまではいかないが、マウントポジションと後世の者はそう称するだろう姿勢から繰り出される拳は岩の如き表皮を削り、目や鼻等の感覚器官を奪っていく。
あとはただひたすらに殴っては徐々に岩のような硬さからまるでパン生地でも叩いているかのような感覚へと変わって行く。だがそれを陽が落ちたのだと理解する理性は既に無く、目の前の敵が最早息絶え、顔の原形が無くなった後も蹂躙は続いた。
次第にそれすらも体が限界になってきたのか手数が徐々に減っていき、口から吹き出る血と共に狂戦士の意識が浮上してくる。だが、無茶をしすぎた体に膨大な痛みと疲労が襲い掛かり、そのまま重力に従ってまるで糸が切れた人形のように落ちていった。
やっぱりオリチャーはいけませんね、全然筆が進まないゾ…でもその分リターンが、気持ちええんじゃってなるのでやっぱりやめられない。麻薬かな?
biimチルドレンの編集は個人の持ち味が大事やし、ままえやろ。
追記
誤字報告、機能説明ありがとナス!やっぱり優しい兄貴達を、最高やな!
狂戦士の過去編を?
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わたしは一向にかまわんッ!