ハリー・ポッターと銀髪の少女   作:くもとさくら

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入学前
始まり


ヴォルデモートは死んだ。

 

今、ここに戦いは終わった。   

 

激しい戦いの舞台になったホグワーツの戦いに終止符が打たれた。

 

 

 

 

 

 

─────闇に勝ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

あちこちで歓声が湧き、お互いに抱き締め会う人が大勢おり、怪我を心配し合っていた。

 

それでも人々は皆、満面の笑みを浮かべていた。

 

 

 

カタンッ

 

 

 

ある一人の少年が手に持っていた杖が、音をたてて床に落ちた。

 

ハリー・ポッター。

 

彼はそのままガクリと膝を崩しうつ伏せに倒れ込んだ。

 

「───終わった……」

 

戦いが始まってからずっと張り詰めていた糸がプツリと切れた。

 

 

 

皆に守られて生きてくることが出来た。

 

 

 

皆に守られた命だった。

 

 

 

いったい何人の魔法使いが、この結末を僕が迎えるためだけに命を失ったのだろう。

 

 

 

きっと、それは、数えられないくらい。

 

 

 

それなのに僕は何が出来た?

 

 

 

彼らに何をした?

 

 

僕に関わった大勢が死んだ。

 

 

ヘドウィグも

 

 

ムーディも

 

 

ドビーも

 

 

フレッドも

 

 

セドリックも

 

 

トンクスも

 

 

ルーピン先生も

 

 

ダンブルドア先生も

 

 

母さんも

 

 

父さんも

 

 

シリウスも

 

 

───そして

 

スネイプ先生も…

 

 

 

 

名前をあげたら限りがない。

 

 

 

僕は……僕はただ…ただ守られていた。

 

 

きっとその人たちにも大切な家族がいて、きっとその人たちも愛されていて…。

 

その人の死を悲しむ人もいっぱい居るはずなんだ。

 

 

 

ヴォルデモートは居なくなった。

闇は消えた。

 

 

 

でも、それを成し遂げるためだけに彼らは死んだ。

 

───後悔はしていないだろうか。

 

 

自分に関わったせいで彼らは死んだ。

 

 

───僕を恨んでいないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

もう。英雄でいるのは疲れた。

 

 

 

 

 

なにもしていないのに英雄だと崇められるのは耐えられなかった。

 

 

苦しかった。

 

 

本や新聞に載っている自分を見る度に叫びたくなった。

 

 

──僕は英雄なんかじゃないと

 

 

 

 

 

 

 

全身が痛い。デスイーターやヴォルデモートとの戦いでハリーは全身に傷を負っていた。

 

 

 

「あぁ……。」心も、体もじくじくと痛み涙がとどめなく溢れる。

 

「ハリー?!」ハリーの異変に気が付きジニーが駆けつける。

 

「ああ…ハリー?!なんて怪我…!」ジニーが慌てて鞄を漁るも、既に用意してあった治療薬は底をついていた。

 

「そんなっ!やだ!!ハリーッ!!しっかりして!」ジニーがハリーにすがりつくようにして泣き、杖で治癒魔法を掛けようとするが、ジニーの魔力も限界で、大きな効力はなかった。

 

「ハーマイオニー!皆っ!!どうしよう!このままじゃハリーが!」

 

皆がジニーのその叫ぶような声にわらわらとハリーの元へと駆けつけ息を飲んだ。

 

ハリーの周りには既に血溜まりが出来ており、誰が見てもハリー・ポッターの命はそう長くなかった。

 

「ジニー…」掠れる声でハリーがジニーを呼んだ。

「ハリー!!しっかりして!お願い!死なない「もう………いいんだ…。」

 

「もういいんだよ………ジニー……。」

 

ハリーは傷だらけの手でジニーの頬を撫でた。

 

 

「君が……無事でよかった…──。」

 

ジニーの瞳から流れ出た涙がハリーの手を濡らす。

 

 

「泣かない…でよ……ジニー。……笑って。幸せに……なるんだ……。好きになってくれて…ありがとう」

 

ハリーが震える指先でジニーの涙を拭った。

 

「「ハリーっ!!!」」

 

人混みを掻き分けてハーマイオニーとロンがやって来て、ハリーのそばに膝をつき、二人がかりで治癒魔法をかけていく。

 

だが、それは到底ハリーの全身の傷には追い付かない。

 

「やめてよ……。二人とも……、」

 

ハリーがふんわりと笑ってそれをやんわりと止める。

 

 

「僕は…もういいんだ。十分だよ……。英雄は…もう……必要ない。なんにもない僕と…、親友でいてくれてありがとう。幸せになってね………。二人は、僕の自慢だ」

 

ハリーはくしゃりとした笑顔を二人に向けた。目尻からは一筋の涙が伝った。

 

「あ……あ…。もう……終わりみたいだ………」

 

視界がだんだんと白くなっていく。

 

不思議と痛みは感じなかった。

 

「やだっ!!!!なんでっ?!何であなたがっ!!!」

 

すべてが真っ白になる直前。

ハーマイオニーの悲痛な叫びが聞こえた。

 

だんだん体に重みが圧し掛かって、上手く息ができない。意識が遠のく。

 

薄れていく世界で、ハリーは願った。

 

もう一度…やり直せるのなら…。

 

 

──僕が皆を守る……。救う─。

 

 

 

 

 

 

 

「──ありがとう」

 

 

 

命の炎が消える直前。

 

ハリーは小さな、小さな声でそう呟いた。

 

 

─────────

───────

───

──

 

 

 

「ここは……」

 

目が覚めるとそこは知らない部屋であった。

 

ハッ、と我に帰りガバッと体を起こして、左、右、と見たあと自分の手じっと見て、自分の額に手を当てた。

 

 

「────え…?」

 

 目覚めたハリーがまず目にしたのは、病室の白い天井――ではなかった。天井ではない何かに頭上が覆われていた、横にもカーテンのような布が垂れている。

 

(これは……天蓋付きベッド……?)

 

 

 

 

白い壁、窓に掛かった薄いピンクのカーテン。

見覚えのない机やクローゼット等のアンティーク調の家具。ベッドの周りに置かれたたくさんの可愛らしいぬいぐるみ。

 

 

そして高い声。

 

自分の声じゃないみたいな声。

 

激しい困惑に襲われる。

 

全身の傷がない。

 

当然痛みもない。

 

体が軽い。

 

身長が縮んでいる…?

 

 

 

 

───ついさっき。

 

 

いや、今さっきまで僕はホグワーツでヴォルデモートと戦っていたはず…。

 

「ヴォル……デモート……?」

 

そう口にした途端、ハリーは激しい寒気に襲われた。

 

「うっ、、、」

 

激しい頭痛。

 

吐き気。

 

体の芯が蝕まれるような悪寒。

 

ハリーは状況を理解しないまま気を失い仰向けに倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ティアラ…、目が覚めた…?」

 

 

ふっ、と意識が暗闇から浮き上がり薄く開いたまぶたの向こうに人影が見える。

 

 

ぱちんぱちんと数回まばたきをしていくとその輪郭はだんだんと線になっていく。

 

 

 

 

「……ティアラ?」

 

 

 

 

「っ……?!」

 

 

 

「ああ、ティアラ……!よかった……目が覚めたのね…」

 

 

 

その女性の姿を目に捉えた瞬間、ハリーは身動きがとれなくなっていた。

 

 

ベッドの脇にいた女性はハリーのことを抱き締めていたのだ。

 

 

状況を全く理解できていないハリーは、ただ口をパクパクするしかない。

 

 

「……ティアラ。本当によかった…!」

 

 

───ティアラって誰?

 

そもそもなんだこの部屋は?

 

僕は何をしていた…?

 

 

考えようにもガンガンと変な頭痛に襲われて思考がうまくまとまらない。

 

 

「ティアラ…?どうしたの?」

 

 

何も言葉を発っさない僕を不思議に思ってか、僕を抱き締めていた女性は絡めていた腕を手解き今度は肩に手を置いた。

 

 

「……え……っと…。」

 

 

──ここはどこですか

 

 

──ティアラって誰ですか

 

 

──あなたは何者ですか

 

 

──みんなはどこですか

 

 

──ヴォルデモートはどうなったんですか

 

 

聞きたいことが一斉に溢れ出して、喉の奥で詰まり、目の前の景色がくしゃりと歪む。

 

「……っ…、」

 

頬に体温と同じ温度の水が流れているのを感じて、あわてて手の甲でそれを拭った。

 

「ティアラ…、?……大丈夫よ。どうしたの…?ゆっくりでいいから話して…?」

 

優しい声が降ってきて、一気に気が緩み自制が出来なくなる。

次々と涙が溢れだし押さえられなくなって頭の中心が熱くぼぅ、と滲んだ。

 

「……っ……。…あ、なたは…誰?……みんなはどこですか…?」

 

「……え?」

 

「……?…お願いします…。教えてください…。ロンは…?ハーマイオニーは…?……ここは…どこですか?」

 

 

 

「……ティアラ?大丈夫?」

 

 

「………?」

 

 

「私の事わかる??ティアラ?どうしたの?」

 

 

その女性はだんだんと必死になっていくようだった。

 

「…わ、かりません」

 

「……!」

 

「どなたです…か…?」

 

 

 

「……っ…そんな……、……待ってて。ルークを呼んでくるわ」

 

 

 

 

 

 

 

ひとり部屋に取り残されたハリーには状況を理解することはできなかった。

 

 

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