懐かしの……
肌を焼く日差しに麦わら帽子が必要になる夏休暇。ティアラは自分の部屋の窓際に座り、図書館で借りてきた本を読んでいた。
「………」
パタンという音と共に、ふー、と長いため息が漏れる。結っていた長い銀色の髪をほどき、背伸びをする。
家にいてもやることがあまりない。
魔法は使えないし、宿題はとうに終わった。
借りてきた本も今読み終わったので最後だ。
──ハリーはどうしてるかな。
鉄格子をつけられてヘドウィグが部屋の中でイライラしている頃だろう。
今年はドビーに会える。
ハリーはもうドビーに会ったかな。
「ドビー…か……。」
懐かしさに思わず口角を上げる。
あと暫くすればウィーズリー兄弟がハリーを迎えに行ってくれるはず。
ティアラはロンからハリーに手紙を送っても返事が来ないと相談を受けており、今夜救出に行くと言う内容の手紙を受け取っていた。
ティアラも『ウィーズリー家にお泊まり』という名目で彼らと合流する予定だ。
今夜、煙突飛行ネットワークで隠れ穴へ向かう。
「……成功するといいけど…」
ティアラは窓の外の湖を眺めながらそう呟いた。
ワンピースの上にレースのカーディガンを羽織って階段を降りる。
「母様」
「あら、ティア、今夜よね?モリーの所に行くのは」
「うん」
「うれしいわ、あなたが寮関係なく友達がいて」
母様は、私が言うのもなんだが天然だと思う。 敢えて言えばルーナみたいな感じかな…。
ルーナほどじゃないけど、ふわふわしている。 そんな母様は一緒にいるだけでリラックスできて、そんな母様の事がルークも私も大好きだった。
「父様は?」
「急患が入ったみたいなの。ついさっき病院に向かったわ」
父のルークは聖マンゴ院長で癒者として働いているらしい。
突然家を空けることは良くあった。
「…そう……お別れ出来なかったわ…」
「たくさん手紙を書いてちょうだいね。そのままホグワーツへ行くんでしょう?」
「うん、そうなの。」
「気を付けてるのよ、あなたが怪我をしたときルークったらもうボグワーツまで出向く勢いだったわ」
マリアはクスクスと笑いながらティーカップを持ち上げる。
マリアもルークも娘が大切で、可愛くて仕方がないのだ。
「気を付けるわ、ありがとう母様」
ヴァレンタインの屋敷はイギリスの南部、少し森の中に入ったところ、大きな湖のそばに建てられていた。
マグル避けの呪文が広範囲に施され、マグルはその存在を探知できない。魔法界の中でも、親しい者しかその場所を知らされなかった。
私が生まれる前、ルークとマリアに怪我や命を救われたハウスエルフ達が住み着き、今でもこの広い屋敷の管理をしてくれているのだという。
奴隷として買った訳でもなければ縛り付けているわけでもない。屋敷のハウスエルフ達は自由に外出し、自由に服を着ていた。
2年前以前のヴァレンタイン家を知らないティアラも、そんな話を聞いていたら彼らが悪い人ではないとわかった。
紅茶を蒸らしている間の少しの時間、ティアラはホグワーツでの一年間を思い出していた。
学期末に、誰であろうあのヴォルデモートとの対決があった。そのヴォルデモートを見る影も無く衰えてはいたものの、未だに恐ろしく、未だに狡猾で、未だに権力を取り戻そうと執念を燃やしていた。
この小さな体では十分に魔法を操ることができない、と身に沁みて感じた。どうにかして訓練をしなくては。
ヴォルデモートは今どこにいるのだろう。あの鉛色の顔、あの見開いた恐ろしい真っ赤な目…………。
ふるふると頭を振って思い出していたものを振り払う。
ティアラは手際のいい手付きでティーカップに紅茶を注いだ。
*
「じゃあ、行ってきます」
大きなトランクを片手に持ったティアラがマリアとハグをかわす。
「行ってらっしゃい。気を付けるのよ」
「うん。手紙書くわね」
「ウィーズリーさんによろしくね」
「うん。母様も体調に気をつけてね」
ティアラはフルーパウダを暖炉の炎に粉を一つまみ振りかけ、緑色に変わった炎の中へ入る。
『ウィーズリー家 隠れ穴』
その言葉の直後、あっという間にティアラの体は緑色の炎に包まれた。
「あなたがティアラね!ようこそ、よく来たわ!」
「わっ、!」
目的地に着くやいなや、ティアラはウィーズリーおばさんにしっかりと抱き締められた。おばさんの背中越しにロンと双子、そしてジニーが見える。
「こ、こんばんは。今日からよろしくお願いします」
少し乱れた髪を抑え、ペコリとお辞儀する。
「ティア、ようこそ!狭い家だけどくつろいでね」
「ありがとうロン」
双子とロンは、この後ハリーの救出作戦のため出掛けるからか、どこかそわそわと落ち着きがなかった。
「も、もう夜だし部屋に案内するよ!こっち来て!」
おかしな物がたくさん置かれた階段を上り、部屋に通されたとたんロンはティアラに作戦を説明してくれた。手紙の交換はしていたけれど、言葉で説明しようとしてくれているのだ。
ティアラの役割は簡単だった。朝まで車がないことと3人が家にいないことを両親に気がつかせないようにする。それだけだ。
「わかったわ。絶対気が付かせないから安心して」
「じゃあ行ってくるよ」
「気を付けてね」
こっそりと家を出る3人を見送ったティアラは、リビングにあった家族の居場所を示す時計に魔法をかけ、ガレージに呪文をかけて偽物の車を作り出した。
───これで完璧!
ここまですればおばさんが3人が家にいないことに気が付くことはないだろう。
「無事に戻ってきますように……」
翌朝、早く目を覚ましたティアラは窓から出かかっている朝日を眺め、背伸びをする。
──ハリー達は着いたかしら……
簡単に着替えを済ませ、階段を下りるとそこには懐かしい顔があった。
「……ハリー…!」ティアラは小声で叫びぎゅ、と抱きついた。
「ティア…!元気かい?」
「ええ、よかったわ。無事についたのね」
「うん。今着いたんだ君たちのお陰だよ」
「ティアラ、無事に気が付かれなかったよ、ありがとう」
ロンが吹き抜けを覗き込みながら言った。どうやらバレずに事を終わらせられたらしい。
「さあ!全員、部屋に戻るんだ。時間になったらいつも通り朝食に来い。俺とジョージは寝坊するからな。ハリーはロンの部屋にいけ」
フレッドがテキパキと指示を出し、5人は顔を見合わせ一斉に頷き、忍び足で各自の部屋に向かった。
時間になるとハリーはロンと指示通り共にリビングへ向かった。ヴィーズリー夫妻はハリーの突然の登場に驚いていたがすぐに「よくきたわね」と手を広げ、歓迎してくれた。
──この家族のこの笑顔に何度救われたことか、とティアラは"前"の世界を思い出して懐かしそうに微笑んだ。
その後も、隠れ穴での生活はすべてが新鮮で、ハリーは目を輝かせてばかりだった。しゃべる鏡に屋根裏お化け。フレッドとジョージの部屋から聞こえる小さな爆発音に誰も驚かないことも。
ハリーがウィーズリーおじさんにマグルの道具を使って見せたり、トランプを一緒にやったりしている横で、ティアラはジニーとたくさん話をした。話題はまったく尽きない。ジニーに男兄弟しかおらず、ほぼ同年代のティアラはまさに話し相手にぴったりだったからだ。
隠れ穴に来てから 一週間ほど経ったある朝、ホグワーツからハリーとティアラ、そしてロンに向けて手紙が届いた。 朝食をとりにロンと一緒に台所に降りていくとウィーズリー夫妻とジニーがすでにテーブルについていた。
ジニーはティアラを見たとたん、嬉しそうに微笑み、手を振った。そしてしばらくしてから眠そうなハリーが台所にやってきた。
するとジニーはハリーを見た途端、うっかりオートミールの深皿をひっくり返して、床に落とし、皿はカラカラと大きな音を立てた。
ハリーがジニーのいる部屋に入ってくるたびに、どうもジニーはものをひっくり返しがちだった。 皿を拾い、またテーブルの上に顔を出した時にはジニーは真っ赤な夕日のような顔をしていた。
───ふふっ、かわいい
ティアラはそんなジニーが可愛くて仕方がなく毎回微笑みながらそれを見守りつつ、ウィーズリーおばさんが出してくれたはちみつトーストをかじる。
「学校からの手紙だよ」
ウィーズリーおじさんがハリーとロン、ティアラ、そして、フレッドとジョージ、パーシーに全く同じような封筒を渡した。
黄色みがかった羊皮紙に緑色のインクで宛名が書いてある。封筒の中身はホグワーツ特急の切符と教科書リストだった。
「僕たちがここにいるってなんで分かったんだろ」
「ダンブルドアは千里眼だからね」
昔聞いたような会話が繰り返され、懐かしさにティアラはふふっ、と笑みをこぼした。
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2年生は次の本を準備すること
基本呪文集 四級 ミランダ・コース著
泣き妖怪バンシーとのナウな休日
グールおばけとのクールな散策
鬼婆とのオツな休暇
トロールとのとろい旅
ヴァンパイアとばっちり船旅
狼男との大いなる山歩き
雪男とゆっくり1年
上記.ギルデロイ・ロックハート著
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ティアラはおかしな手紙に目を通したとたん、ああ…と項垂れた。今年はあの人がいる年だ、と。
ウィーズリー夫妻が金銭的なことで話し合っていたその時、窓に何かがバンッ!とぶつかってきた。
「エロールっ!」 ロンが叫び窓を開けてエロールのくちばしから手紙を取り出した。
「やっと来たエロールじいさん。 ハーマイオニーからの手紙を持ってきたよ。ハリーをダーズリーのところから助け出すつもりだって、ティアと一緒に手紙を出したんだ」
それから封筒をビリっと破り手紙を読み上げた。
『ロン・ハリー・ティアラ(そこにいる?)
お元気ですか?
すべてうまくいってハリーが無事なことを願っています。
それにロン、あなたが彼を救い出すとき、違法なことをしなかったことを願っています。
そんなことをしたらみんなが困ったことになりますからね。
私は本当に心配していたのよ?
ハリーが無事ならお願いだからすぐに知らせてね。
ああ、でも別のふくろうを使った方がいいかもしれません。
もう一度配達させたらあなたのふくろう、おしまいになってしまうかもしれないもの。
私はもちろん勉強でとても忙しくしています。
私たち水曜日に新しい教科書を買いにロンドンに行きます。ダイアゴン横丁でお会いしませんか?
近況をなるべく早く知らせてね、 ティアラによろしく。
ではまた
ハーマイオニー』
「ちょうどいいわね、水曜日私たちも出かけてあなた達のぶんを揃えましょう」ウィーズリーおばさんがテーブルの片付けをしながら言った。
やったぁ!という声が隣のジニーから聞こえる。
ティアラは正直、乗り気に離れなかった。 なんと言ったって…その日、ダイアゴン横丁には"彼"がいるのだから…。
*
水曜日の朝、フルーパウダーを使い、ダイアゴン横丁に飛んだが、前回と同様にやはりハリーは"ノクターン横丁"に行ってしまったらしい。
ダイアゴン横丁にハリーの姿はなかった。 今は、ハグリットが無事にハリーを連れてきてくれることを願う。
「ティアラ!こっちよ!」
遠くからハーマイオニーの声がする。先に来ていたのだろうか。
声がした方に目を向けると栗色の髪の少女がこちらに向かって手を振っていた。
ハーマイオニーと合流し、高いところからハリーを探そうとグリンゴッツの白い階段の一番上に登った。 五、六分たった頃、突然ハーマイオニーが叫んだ。
「ハリー!ハリー!ここよ!」
ハーマイオニーがふさふさの栗色の髪をなびかせながら降りていく。 ハリーの隣にはなにやら袋を沢山持ったハグリットが立っていた。
「眼鏡をどうしちゃったの?」ハリーの眼鏡はさっきとは違い、ヒビが入って鼻の部品が歪んでいる。
『オキュラス・レパロ』
ハーマイオニーが眼鏡を杖で一叩きすると、すぐに眼鏡は新品同様になった。
「さぁ、もう行かにゃならん」メガネが治り喜ぶハリーの隣でハグリットが言う。
「みんな、ホグワーツでまたな!」
ハグリットは大きくてを振って大股で去っていった。
「では、一時間後にみんなフローリシュ・アンド・ブロッツ書店で会いましょう。教科書を買わなくっちゃね」
おばさんはそう言うとジニーを連れて歩き出した。ティアラはハリー、ロン、ハーマイオニーと四人で曲がりくねった石段の道を散策し、アイスクリームを買ったり、新しい文房具を新調したり、ウィンドウショッピングをしたり楽しく路地を歩き回った。
一時間後、四人はおばさんに言われたとおり、書店に向かていた。
書店のそばまで来てみると、やはり大勢の人がみな押し合いながら中へ入ろうとしていた。
その理由は窓にかかった大きな横断幕に派手な色ででかでかと書かれている。
────────────────── サイン会
ギルデロイ・ロックハート
自伝『私はマジックだ』
本日午後十二時三十分
~
午後十六時三十分
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隣のハーマイオニーが黄色い歓声をあげた。
「なんて素敵な日なの?!やっと本物の彼に会えるわ!」
ピョンピョン跳び跳ねる姿を視界に入れながらも、ティアラはテンションをあげることができなかった。
どうもあの人は好きになれない、と軽くため息をつき、四人は人混みに流されるまま書店の中に足を踏み入れた。
長い列は店の奥まで続き、その先にはもう二度と関わりたくないと心に誓ったロックハートが白い歯を見せびらかし、一人一人にウィンクをしていた。
忘れな草色のローブに身を包み、波打つ髪には魔法使いの三角帽を小粋な角度に乗せている。
気の短そうな男がその周りを踊りまわって大きな黒いカメラで写真を撮っていた。
「奥様方、お静かにお静かに願います─押さないでください───本に気をつけて──」
と、その時、写真に向かって白い歯を見せびらかしていたロックハートがハリーの姿を視界にとらえた。 目がキラリと輝いたのを見てティアラはもう一度深くため息をつく。
あとは前回同様ハリーとロックハートが写真を撮り、ようやく解放された頃にはハリーはふらふらだった。
ギルデロイ・ロックハートの著書すべてをプレゼントされてたハリーは心底疲れたというように深いため息をする。
ロックハートのそばには行かず、ハリーを支えていたティアラの事をロンが不思議を思い質問をした。
「君はファンじゃないの?」
「うーん、ちょっと…ね、…」
ティアラそう答えたのと同時に右斜め上から聞き覚えのある声が聞こえた。
「ティア?」
顔をあげると懐かしい3人がたくさんの教科書を抱え、階段に立っていた。
「ニカ!シャル!それに、ドラコも!」
「ティナ!久しぶり、元気だったかい?」
「ええ、ドラコも」
「おお、ティアラ。元気かい?」
先程まで気がつかなかったがドラコの奥にはドラコの父親。ルシウス・マルフォイが立っていた。
「ルシウスさん!ごきげんよう。気がつかずにすいません」
「ああ、よい。しかし……スリザリンともあろう君がなぜウィーズリー等と一緒にいるのかね?」
「…っ、……私は…"スリザリン"ですがだからといって友好関係に線を引くつもりはありません」
「ほう?」
片眉をあげたルシウスにドラコが慌てて弁解する。
「あ、ち、違うんだ父さん、ティアラは本当に誰とも仲が良くて、その…ウィーズリーといるのもただの偶然さ、な、ティナ」
タイミングがいいと言うかなんと言うか…今はハリーもロンもこちらに気がついていない。マルフォイ氏とはまだ表面上よく付き合っていたい。
「…………はい」
「そうか、すまなかった。これからも息子と仲良くしてやってくれ」
「はい、もちろんです!」
にこりと微笑むと隣にいるドラコの頬が赤らんだ。
ニカとシャルと話している途中にも、ロックハートは得意気に演説を続けた。
「まもなく彼は私の本、『私はマジックだ』ばかりではなくもっともっと良いものをもらえるでしょう。 彼も、そのクラスメイトも。 実は『私はマジックだ』の実物を手にすることになるのです。 皆さんここに大いなる喜びと誇りをもって発表いたします。私、ギルデロイロックハートは、この9月からホグワーツ魔法魔術学校にて、闇の魔術に対する防衛術の担当教授職をお引き受けすることになりました!」
誇らしげに言い終えたとたん、人垣がワァー!と湧き、カメラのフラッシュがパシャパシャと光る。
「これ、あげる」 ハリーはジニーに向かってそう呟くと、本の山をジニーの鍋の中に入れた。
「あ、ありがとう…」
その時、私たちと話していたドラコが一瞬眉をしかめ、ハリーの方に向かって言った。
「これはこれは、ハリー・ポッター殿。ちょっと書店に行ったことさえ1面の重大ニュースかい?」
「ほっといてよ、ハリーが望んだ事じゃないわ!」ジニーが言った。
「おお、どうやらポッター、君にはまともに1つの呪文もかけられないような幼いガールフレンドがいるよう「ドラコ!」」
ドラコがねちっこく言っているのに口を挟んだのは怒った表情のティアラだった。
たった一言、ドラコの名前を声にだしたけなのにその周辺にいた者を黙らせる不思議な響きをしていた。
「……ティナ…えっと、…その…」
「彼らはあなたと変わらない私の大切な友人よ?私は友人を侮辱する人は決して許さない。たとえあなたでも」
いつもはふわふわと笑っているティアラの怒りはその場にいる人たちに悪寒を感じさせた。
「………ドラコ。そこまでだ。」ルシウスが口を挟む。
「…ごめんなさい…。」ドラコはしゅん、と俯いてしまう。
「ロン!」と、その時、ウィーズリーおじさんが、 フレッドとジョージと一緒にこちらに来ようとして人混みと格闘しながら呼びかけた。
「何をしているんだ?ここはひどいもんだ。早く外に出よう」
「これは──これは──アーサー・ウィーズリー」ルシウス・マルフォイだった。
「ああ、ルシウス」ウィーズリーおじさんは首だけ傾けてそっけない挨拶をした。
その後は、互いの汚点の言い合いだった。そしてルシウスがハーマイオニーの両親を侮辱したのを聞き、おじさんは顔を真っ赤にしてルシウスに飛びかかり、背中を本棚に叩きつけた。
数々の古そうな本が数十冊皆の頭の上に落ちてくる。はずだった、が、落ちてこなかった。ハグリッドだ。
「ほれほれ、お前さんたち、やめんかい」
ハグリッドはあっという間に二人を引き離してくれた。 その頃には既に店中の人が二人の喧嘩の行方に注目していた。
一方その頃、ティアラは。
──…あの中に日記が入ってる…
ごたごたの中でそっと引き抜こうとするも、ロックハートのファン達によって鍋どころかジニーに近づくことも出来ない。
人の波にもみくちゃにされるティアラを見かねて階段の上にいたシャルがティアラの腕を掴んだ。
「ティア、こっちよ」
「あ、…でも……」
「いいから」
ニカとシャルはぐいっ、とティアラの体を引き抜いた。
ジニーの鍋が一層遠くなる。
「ついさっきホグワーツでな、っちゅったのに、かこっうつかないじゃねぇか、なあ、ハリー」
「え、あ、うん。でも…ありがとう」
ルシウスは不機嫌そうに目を妖しくギラギラ光らせてジニーの変身術の本を突き出しながら捨て台詞を吐いた。
「ほらチビ、──この本のおかげでお前の両親が餓死しないようにするといい。 ──いくぞ、ドラコ」
「…はい。」
ドラコはちらっとこちらに目を向けてきた。にこりと微笑み、"またね"と無言で口だけを動かして伝えると、もう怒っていないことが伝わったらしく12歳らしいまだあどけなさが抜けない笑顔になってほっとしたように店を出ていった。
それからはウィーズリーおばさんの機嫌が最悪だった。そんなこんなでみんな買い物は済ませていたため、"漏れ鍋"の暖炉に向かうことになった。一行は皆、下を向いてしょんぼりしている。
そこから煙突飛行粉でハリーとティアラとウィーズリー一家は買い物一式と共に隠れ穴に帰ることになった。
──まだっ、日記が…
ティアラは事あるごとにジニーに近づこうとしたが、気の立っているウィーズリーおばさんと手を繋ぎ先頭で歩いていたため、変に近づくことが出来なかった。