ハリー・ポッターと銀髪の少女   作:くもとさくら

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アズカバンの囚人
再会


毎年9月1日。

 

ロンドンのキングス・クロス駅では、二ヶ月後に控えたハロウィーンの仮装の格好をした者達がたむろし、客からは9番線では人が柱の中に消えていったと興奮した様子で訴えられ、しまいには10歳そこそこであろう子供に何度か「9と4分の3番線てなんですか?」と質問される駅員が多発する事態となっていた。

ハロウィーンの日付をどう間違えたらそのような格好をすることになるのか甚だ不思議だ。

 

ここ、9番線で列車の出発を見送ったある青年も、初めこそそのような質問をしてくる者に冷たい目線を送っていたがここ二年は、「こちらが聞きたい!」と啖呵を切るようにしていた。

 

新期の忙しい9月初めに、毎年毎年懲りずに嫌がらせを受けるこちらの身にもなってほしいものだ。と、ため息をついたその青年の前を…やけに目を引く家族が颯爽と通り過ぎた。いや、正確には目を引く母娘だろうか。父はなんというか……いかにも父親という感じで母娘と並んでしまってはどうもぱっとしない。

 

その女性の綺麗に纏められた銀色の髪はあまり見ない色で、太陽の光を受けきらりと揺らめく。染めてあるのであればその様な艶はでないだろう。

 

人目を引くその美貌がその髪によって惜しげもなく引き立てられ、周りにいる者達の視線を引き付ける。

それなりに上質だとわかる服に身を包んだその家族はあっという間に柱の影に消えてしまった。

 

その駅員は、ハッ!と我に返る。

 

何てことを…客に見惚れるなど。

 

駅長に見られてしまえばなんと咎められるか…。

 

その青年は被っていた帽子のつばをきゅっ、と掴み目の前の列車に視線を投げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キングス・クロス駅の裏側。魔法学校へ向かうホグワーツの学生が列車の出発を待って集まり、ホームは煙と人と荷物でパンク状態となっていた。

 

「みんな!久しぶり!」

そんな中、ティアラは家族と早々に別れ荷物を積み込むと、ホームにいたウィーズリー家族とその集まりに声をかけた。

 

「「「ティア!!」」」そこにいたハリーやジニー、ロンやハーマイオニーの目が見開かれ弧を描く。

「久しぶりね!元気だった?」

「ええ!みんなも?」ハーマイオニーに促されるままハグを交わす。

「僕らは元気だったよ。まあ、ハリーが伯母さんを膨らませたり、家出したり色々あったけどね」

へへっ、とどこか得意気に言うロンは相変わらずのようだ。

やはり今回も伯母さんを風船の様にしてしまったのだろう。まあ、身体的にも実害はないし記憶は消されるから大丈夫だとは思うけど……。

 

「さあさあお嬢様方!あと5分で出発だよ!さあ行った行った!」

ハリーとティアラはモリーに背中をバシン!と押されよろっ、と前につんのめる。

 

確かにまだトランクを預けていないハリー達はすぐにでも準備をした方がいいだろう。

子供達一行はぞろぞろと大きな荷物を抱えて歩き始めた。

「元気でいるのよー!ティアラ、またいつでも遊びに来て頂戴ね!」遠くなるモリーおばさんに振り返り微笑み掛けたティアラはハリーやジニー達と別れスリザリンのコンパートメントがある先頭車両に向かった。

 

──みんな元気そうでよかったわ。早くルーピン先生に会いたいけど……取り敢えず…

 

 

 

「「ティアーー!!!!」」

先頭車両に着き、いざ空いているコンパートメントを探そうとしたとき、

きゃーーー!!という甲高い声と共に、ドン!と大きな衝撃がやってきた。

「わわっ!」

その衝撃に前につんのめりそうになるが肩を何かにしっかり支えられる。

「っぶねぇ……」ティアラが驚いて目をぱちくりさせ目を前を見上げると、盛大に眉間に皺を寄せたドラコがティアラの背の方を睨み付けながら立っていた。

「おい、お前ら、危ないだろう」

「ティアーーー!!!!久しぶり!」

咎めるドラコの声を遮りシャルルがティアラに抱きついた。

「んんんん久しぶり!この感じ!」

ドラコの存在を全く無視したシャルルをドラコは目を細めて睨み付けた。

 

 

「おい、いい加減離れろ」

 

 

シャルルの肩をぐいっと押し、ティアラとシャルルを引き剥がしたドラコは近くにあったコンパートメントの扉を開きティアラを自分の隣に座らせた。 

 

 

 

二人に続いてニカとシャルルとそこに入ってティアラとドラコの向かいに座った。

「なによ!独り占めしちゃってさ」

「そ、そんなんじゃない!」

「ふぅん?」

「煩い!」

顔を覗き込んでくるシャルルの顔をドラコはぐいぃと手で追いやった。

 

 

 

 

シャルルは目の前の友人2人の関係がじらったくてしょうがないのだろう。ニカは何かとドラコに突っかかるシャルルを見やる。

 

ドラコの片想いはかれこれ3年続いているのだ。耐え性のないシャルルが我慢できないも頷ける。

 

 

──まあティアラはそんなこと、これっぽっちも気が付いていないようだけれど…。

 

 

 

「ティア、元気にしてた?」

真っ黒なストレートヘアを低いところで1つに結っていたニカが声を挙げた。

ぎゃーぎゃーと喧嘩を続けていたシャルルとドラコもふんっ!と顔を背け会話の輪に転がり込む。

「ええと…特にこれといって出来事はなかったけど楽しい夏休暇だったわ」

「そうなのね、ああ、みんなにお土産があるのよ!ギリシアに旅行してきたのよ」

 

 

やがてホグワーツ列車がゆっくりと発車し始めた。

会話は中断され窓の外の家族に手を振る。

ホームの奥の一段高いところにいた両親にティアラも手を振りかけた。

 

それから暫く、ニカとシャルルとティアラはたわいのない話をしていたが、

 

「で、……ティナはさっきから何を嬉しそうにニヤニヤしているんだ」

「え…」

 

特急で向かい側に座り、頬杖をついたドラコが突然口を開いた。

 

ティアラ本人は口元が緩くなっていたつもりは毛頭なかった。まあ、でも久しぶりにルーピン先生に会えるのだ。気分が湧かない筈もない。

 

「ニヤニヤしてた?」

「ああ」「ええ」「してたわ」

 

ドラコを筆頭にシャルルとニカに言われてしまえば否定は出来ない。ティアラは「学校が始まるのが楽しみなのよ」と嘘のような本当のような言い訳をついた。

 

「そうか?僕は楽しみとは言い難いな」

はぁ、と頬杖をついたままのドラコがため息を溢した。

「そうねぇ、3年からは勉強も急に難しくなるし……」

ニカのその声にティアも心の内で激しく頷いた。確かに前も3年からはそれまでのように遊んでいられなくなった。レポートは勿論合格のハードルは高くなるし、科目別のテストも比べ物にならない程回数が増える。進級するのを心から喜べなかったのは前の私もだったのだから、みんなには同情せずにはいられない。

 

 

 

その時、列車が急に速度を落とし始めた。

 

──ガタンッ

 

バチッ

 

「え?」

車輪がキキィと嫌な音を立てるのと同時に車内の電気が全て消え、車内が深い闇に包まれる。近くのコンパートメントからも戸惑いの声がざわざわと聴こえてきた。

「停電かしら?」ニカが不安そうに電球を見上げる一方、シャルルが窓の外を覗き込み「何かいるわ!」と不安げに瞳を揺らした。

 

外はいつのまにか深い霧が立ち込めており、数メートル先が見えない。シャルは窓の外のディメンターを見てしまったのか。

 

「……窓が、凍ってる……」

 

ドラコは窓のヘリにそっと指先をなぞらえた。夏休暇は終わりを向かえたとはいえ、まだまだ秋、ましてや雪の降る冬の到来は遠い。

だが、途端にコンパートメント内を急激な寒さが襲った。

 

 

──来た………

 

廊下側に座っていたティアラはコンパートメントの鍵をガチャリと開け三人に釘を刺す。

 

「みんな、ここにいて」

「ねえ、なにか起きてるの?」

じわじわと窓から襲ってくる冷気が吐く息を白く染める。

 

不安そうなシャルルの声が真っ暗な闇に響き渡った。窓から流れてくる強い冷気がますます不安を煽る。

 

いつの間にか辺りのざわめきもしんと静まり返っており、スリザリンのいる一号車は妙な静けさに包まれていた。

 

「いい?目を瞑ってて。出ちゃだめよ」

それだけ言うと、ティアラはすくりと立ち上がり杖を構えてコンパートメントの外に足を踏み出した。

 

「ティア…!戻るんだ!何があるかわからない」

それを見たドラコは慌てて立ち上がりティアラを引き留めようととっさに腕を掴んだ。が、ティアラは"運転手さんに確認してくるわ"と言って素早く杖を振り扉を閉めると鍵開け呪文の反対を唱えた。

 

『ルーモス』

 

杖先に光を灯し、ゆっくりと歩き出す。妙に重い霧がコンバートメントの外の廊下に充満していた。

 

「…………」

 

ひどい悪寒が背筋をなでつけ、ぶるりと身震いをすした。

 

「なんで止まったの?まだ着いてないのに」

「故障したのかな?」

隣のコンパートメントからひそひそと話し声が聴こえてきた。

 

次の車両へ続く扉にそっと手を掛けたとたん、空いた隙間から妙に生暖かい風が吹き始める。

 

──いる……。

2号車の奥、風と共に黒い影がゆらゆらと揺れていた。

 

ルーモスの光を向けると黒いマントを着て頭から布をかむった爪の長い死骸のような3つの影が光に照らし出された。

ティアラが現れたとたん、それらの黒い影は磁石のようにティアラに近づいていった。

 

『──────』

 

強くなる不快感に眉を寄せ、こちらに近づいてくるディメンターと無言で対峙する。

 

 

わかってる。

 

 

──貴方達には私が魅力的に映るでしょう。

 

 

ディメンターは幸せを食う。と広く知られているが、実際は"幸福が残っていない状態"を好む生物だ。ヒトを幸福の残っていない脱け殻にするために彼らはヒトの"幸不幸の感情を食う"。

ハリーが人一倍彼らに狙われたのは、ハリーが人一倍不幸な記憶を持っていたから。

 

 

そして───"ティアラ・ヴァレンタイン"

私はあの戦を知っているもの。悲痛な記憶をもつ者だ。だからこそ、皆と一緒にあのコンパートメントにはいられなかった。

きっと、奴らは私の持つあの記憶に惹かれるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

初めは3つだった影も、4つ5つとティアラの記憶に引き寄せられその数を増やしていく。

ティアラは防音魔法を廊下に掛けると目の前の陰をじっ、と睨む。

 

「…………」

 

ティアラはふるふると震える手を必死に抑え込み、その深い影に杖を向けた。

 

 

「ディメンター。貴方達に与える物はないわ。今すぐ立ち去りなさい」

 

張り詰めた糸のような凛とした声が廊下に響き渡る。

 

「…………」

 

そんなティアラに複数の黒い影は何も答えることなく霧のなかに立ち塞がるティアラに音もなく近づいていった。

 

「──私はもう、守られているだけじゃない」

 

ティアラはそう言い切り、右手に持った杖を躊躇なく影に突き付けた。

 

『エクスペクト・パトローナム!』

 

静かに、そして正確に紡がれたその呪文。

 

瞬間、杖先から白銀の雌鹿が飛び出した。

 

「…………、!」

 

それは黒い影の周りを踊るように駆けると、影と霧を引き連れ列車の外まで一息に追いやってしまった。雌鹿の周りからは波のように暖かな光が波打ち、その他にも列車に乗り込んでいたディメンターは弾かれるように列車の外へ逃げ出した。

 

黒い影がもたらした悪寒と灰色に濁った霧は跡形もなく消え去り、パッ!と車内の電球に光が灯される。

それを確認し、ほっ、と息をついたティアラはは何事もなかったように杖を懐にしまいこんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

──バシン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無事か!!?」

 

 

 

 

「────‥‥‥!」

 

 

 

 

弾けるようなその音が、姿表しの時の音だと気がついたのはコウモリのようなローブをはためかせた男に腕を捕まれてからだった。

 

「……っ?!」

 

どうしてここに?

 

その言葉は珍しくひどく慌てているその男の顔を見たとたんに引っ込んでしまった。列車からの連絡を受けたとして、数人の教員も同乗している列車にこんなにも慌てた姿で姿表しをするだろうか。答えは否。冷静に物事を図って最善の行動をするのが彼だ。

 

そのくらいのことはわかるのに、どうしてここに?という至極全うな質問は大きく目を見開いている珍しすぎる様子を見たら易々と口に出せるものではなかった。

 

「無事なんだな………?」

 

両肩を掴み、必死に無事を確認する様子に私はただただ頷くことしか出来ない。

 

すると彼はひどく安心したように深く息を吐くではないか。

 

「先生、一旦ここに」

 

曇りガラスだとはいえ声は通る。今のところ""今のはなんだったのか""と車内がざわついているお陰で彼がここにいることは誰も気がついていないようだが、誰がいつ扉を開くかわからない。

真横にあったコンパートメントが空なことを確認してそこに先生を押し込んだ。

 

 

 

 

 

「あの、どうしてここに…?」

 

ティアラはスネイプが座ったその真向かいに腰を落ち着かせると、コンパートメントの扉に鍵を掛け、ついさきほど呑み込んだ質問を投げつけた。

 

男と会うのは幾分か久し振りであるが、服も、少し疲れの見える顔も、ほんの少し心配そうに深めた眉間の皺も全く記憶のままであった。

 

 

「列車がディメンターに襲われていると聞いたまでだ。着いたときには跡形もなかったがな」

 

スネイプはホグワーツで知らせを受けると、スリザリンの生徒が多くいるであろう1,2号車めがけて後先も考えずに姿表しをした。

 

今から考えると随分と自分らしくない行動を取ったものだ…。と目の前の少女に目を向ける。 

 

「同乗している先生方が対処してくださったのではないでしょうか」

 

「そうか…」

 

「…………」

 

「…………」

 

───っ…私、今まで先生とどうやって話してたっけ

 

狭いコンパートメントを静寂が支配し、妙にむず痒い。

脳裏に学期末の会話が鮮やかに浮かび上がり、ティアラは火照る頬を手の甲でそっと押さえつけた。

 

「来い、出るぞ。お前が何故廊下に立っていたのか問い詰めたいところだが止めておこう。」

「え、…あ……」

「私は運転手に話をしてくる。怪我がないならさっさと戻れ」

「……はい」

 

先生に尋問されるのは恐ろしすぎる。…素直に帰るのが吉だと判断したティアラは促されるまま廊下に足を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

2号車にいたティアラはドラコやシャルル達が待つ1号車に続く扉を開いた。

 

「………!!」

 

───まさか…

 

1号車の廊下。

運転手のいる車両の前に、緑がかったスーツを来た男性が立っていた。

 

ティアラは思わず歩みを止める。

 

「おい…どうし──」

 

ティアラの真後ろに立っていたスネイプはその目線を追うまま顔を上げ、たった今振り返ったその男の顔を見てぴしりと固まりついた。

 

 

──「ルーピン先生…」

 

ティアラが目を見開き小さくぽつりと溢し、それを拾ったスネイプは眉間のシワを深くしてその男を睨み付けた。

 

 

一方、扉の開く音に振り返ったルーピンも同じ様に目を見開き、ティアラの後ろに立っていた人物を凝視していた。

 

「……セブ…ルス?」

 

「…………」

 

「セブルスじゃないか!」

 

ルーピン先生は至極嬉しそうに笑いながらこちらに近づいて来た。だがそれを両手を広げて受け入れる彼ではない。

「…ここで何をしている」

「いやあ、さっきディメンターが襲ってきたろう?運転手と話をしようと思ってね」

「とぼけるな。私が聞きたいのはそうではない」

「うん?」

「何故貴様がこの列車に乗っている。」

 

呆然と立ち尽くすティアラを挟んで大の男二人が言い争って(?)いる。ティアラは動いているルーピンをただただ暫く眺めていた。話をしていること、動いていること、困り顔をしていること。そんな小さいこと一つ一つがとてつもなく嬉しい。

 

あの大戦で失った大切な人。

彼が居なかったらどうなってたかなんて想像も出来ない。本当に沢山のことを教えてくれた。

 

 

スネイプとルーピンを見上げるしか出来ないティアラはおろおろと自分より幾分か背の高いその男の黒緑の上着をきゅっ、と引っ張った。

 

「あ、あの……」

 

スネイプの質問から飄々と逃げ回っていたルーピンがティアラに気がつく。

 

「……君は………?」

 

「あ…、わたしはティアラです。ティアラ・ヴァレンタインと申します。」

 

「そうか…。君がヴァレンタイン家のご息女だね?」

 

「はい。あの、ハリーは無事ですか?」

 

ティアラ背中にグサグサと刺さる視線に気が付かないフリをしつつ気にかかっていたことを口に出した。

 

「ああ、一瞬気を失ってたけど無事だよ。だけど……」

 

言葉を途中で切ったルーピンは身を少し沈めてティアラの瞳を覗き込んだ。ティアラは突然の行動に呆気にとられてただただ見返すことしか出来ない。どこか懐かしむように細められた彼の瞳。

 

「君は───………いや……なんでもない。顔色が少し悪いようだね、これを食べるといい。チョコレートだよ。気分がよくなる」

 

「あり──わっ…」

 

"ありがとうございます"。差し出されたチョコレートを受けとる直前、そう最後まで言えなかったのは真後ろに立っていたスネイプ先生が突然私の肩を持って後ろに引いたからだった。

 

手は空を掴み、次の瞬間にはルーピン先生の姿がすっかり見えなくなっていた。

 

「お前はさっさと行って準備しろ。もうすぐ到着だ」

 

トンッ、と背中を押されてしまっては反論できない。

ティアラはしぶしぶドラコたちの待つコンパートメントに入った。

 

 

ティアラが立ち去ったあと、廊下に残されたルーピンは器用に片眉を持ち上げてたった今ティアラが消えていったドアを眺めた。

「まったく、受け取らせてやってもいいじゃないか」

「煩い」

手の平に置かれたチョコレートが行き場をなくしてまたポケットに舞い戻る。ルーピンは目の前の同級生を見やった。

 

「あの子の目………ハリーにそっくりだ。それに…どうして私が彼と一緒にいたことを知ってたんだろうね…」

 

「そんなことは貴様が気にすることではない……。……あの子に近づくな。…貴様が教鞭を取ることを私が知らなかったのは………校長の仕業か?」

 

「ああ、君が反対すると思うとおっしゃってたよ。…まったく心外だけどねぇ。…それにしても……セブルスが生徒に深入りするとは意外だよ」

「黙れ。」

「誉めてるんだよ」

 

目尻に皺を作ってルーピンはつくつくと笑いを溢した。スネイプは睨むような目でそれを一瞥し、ティアラの入っていったコンバートメントに視線を動かした。

濃い曇りガラスである扉に遮られ中を覗くことはできない。

 

──顔色が悪い……か…、

 

自分では気がつかなかった小さな事を目の前の男は簡単に見抜いて見せた。

チョコレートを食べさせるべきだったか、と今さらながら後悔が胸に浮かぶ。

 

「さて、目立った被害者は居ないようだし、運転手に会いに行こう」

「……ああ」

 

世の中の大半が"爽やか"と評するであろう笑みを浮かべ奴はさっさと歩いて行ってしまう。

 

「………後で確認するか…」

 

男は小さくそう呟き、忌々しい同級生…いや、同僚となる男の背を追った。

 

 

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