ハリー・ポッターと銀髪の少女   作:くもとさくら

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ハグリッドとティアラの朝

 

 

次の日の朝、ティアラは日が昇る前の早朝と呼べる時間にのそのそと起き上がり、同室のニカとシャルルを起こさないよう準備をして静かに城を抜け出した。

「さて…と」

目的は1つ、ハグリッドとバックビークに逢いに行くのだ。ドラコを傷つけさえしなければ彼は死刑にならないし、今年起こることは事前に知っていれば簡単に防げそうなことばかりだ。

 

──絶対に、絶対にピーター・ペティグリューだけは逃がさない。

 

遠くに広がる暗く深い森を見据えたティアラは力強く手に持った杖を握りしめた。

 

「ハグリッド!」

 

ちょうど時計が朝の5時に回った頃、ティアラはちょうどハグリッドの森小屋の前に到着した。

裏口から木の軋む音が聞こえたかと思うと、わくわくとした笑みを浮かべたハグリッドが出てきた。

 

「おお?!お前さんこんな時間に何しちょる」

「今日はハグリッドの初めての授業でしょう?楽しみで楽しみで仕方がなかったのよ」

「ははっ!!嬉しいことをいってくれる!」

「今から何をしに行くの?」

「今日の授業で披露する動物の様子を見に行くんだ。お前さんも来るか!」

 

いいの?と輝いた顔を見せる少女の様子にハグリッドはあったりめえだ!と大きく頷いて見せた。

 

「楽しみだわ!」

 

暫くして森を歩き、光の溢れる少し開いた場所に出ると、数頭の色違いのヒッポグリフが固まってこちらの様子を伺っていた。

 

「おうおう、知らんやつが来て緊張しちょる。お前さんは少し離れてまってるのがいい」

「わかったわ」

久しぶりに見たヒッポグリフは記憶よりも少し大きく見え、黒く光る長い鉤爪がティアラの恐怖心を掻き立てる。

 

──私が怖がってたらだめよね……

 

頭をふるふると振って、下ばかりに目を向けるのを辞めたティアラはその黄金に輝く瞳に目を向けた。

「そうれ、朝食だ」

ハグリッドのその掛け声にこちらをじっと伺っていたヒッポグリフ達はこちらを気にしながらもゆっくりと近づいて来た。

「ティアラ、こいつらはヒッポグリフだ!美しかろう?」

何やらの肉を投げながらハグリッドは至極嬉しそうに話す。

不思議なことにヒッポグリフがハグリッドの隣に行くと小さく見えて、みるみるうちに芽生えていた恐怖心が薄れていくのがわかった。

「ええ、とっても綺麗…」

「お前さんも触ってみるといい!いいか、必ずこいつらを侮辱しちゃなんねぇんだ。誇り高いからな。最初にお辞儀をする、返してもらう。そうしたら触ってもええって合図だ」

 

──この子……

 

先頭でこちらを見つめるふたつの黄金の瞳はどこか懐かしい光を放っていた。

 

「貴方があの時の…」

 

バックビーク。

彼はシリウスが亡くなってからも慕ってくれた。私がシリウスを殺したのにも関わらず。

最終決戦の時も、何度も敵との間に立って守ってくれた。

 

──この子は戦いの後どうなったのだろう……

 

ぼう…と考え、虚ろだったティアラはバックビークが1歩こちらに近ずいてきたことによって我に返り、慌てて深くお辞儀をした。

 

──あの時は…ごめんなさい。きっとこの子も、私のせいで失ったものは少なくないはず。

 

「よおーし!よくやったティアラ!」

ハグリッドの嬉しそうな声にゆっくりと顔を上げたティアラはゆっくりと近づき、銀色のふわふわな額に手を滑らせた。

そんな様子に栗毛色や漆黒のヒッポグリフ達もゆっくりとティアラに近づいた。

「ほらほれ、お前たちはまた後でな。ティアラ、ビーキーは優しいからな。背中にも乗せてくれると思うぞ!そぉれ」

「わわっ!」

片手で軽々とティアラを持ち上げたハグリッドはバックビークの背中に乗せ、にっこりと笑う。

「ビーキー!直ぐにもどるんだぞ」

そう大きく声をかけると、バックビークは理解したように立ち上がり、身震いをした。

「お前さんは羽を引っこ抜くんじゃないぞー!」

「はーい!」

軽やかな足音を立てて、軽い助走をつけたバックビークは力強く羽ばたき始めた。

 

頬を切る早朝の冷たい風が緊張していた心を解してゆく。

「ふふっ」

おもわずこぼれた笑みは昨日のディメンターによるくらい記憶を薄める魔法のようだった。

 

飛行訓練が無くなり、クィディッチの選手でもなくなるとめっきりと箒に乗る機会が減る。

───ああ……やっぱり好きだなあ…

ハリーの頃初めて箒に乗った時の頃を思い出す。

バックビークの首元を撫でると彼は楽しそうにピィーー!!!と鳴き、城の方へ向かって旋回を始めた。

「バックビーク?そっちはダメよ。先生方に見られたらハグリッドが怒られちゃうわ!」

そう声をかけても、風と遊ぶように大きな翼を羽ばたかせながら天文台や時計塔の周りをあっという間に回ってしまった。

渡り廊下の橋の屋根に止まったバックビークは褒めて欲しいというようにティアラの手に頭を押し付けた。

「…もう」

早朝から空を目を凝らして見ている人がいないことを祈りながらティアラはそっと艶やかな羽を撫で付ける。

「そろそろハグリッドが呼んでるはずよ?帰りましょう?」

少し不服そうに身震いをしたバックビークは仲間の待つ森へと顔を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまハグリッド!」

「おお!なかなか遠出をしちょったな」

「ええ、この子がね」

お腹がすいたのかハグリッドが手に持った銀のバケツの中の朝食を狙っていたバックビークを見やる。

「仲良くなれたようだな!最初の授業はこいつらがいいと思ったんだ!ティアラはどう思う?」

「……そうね、正直最初は少し怖かったわ。体がとっても大きいし……。それにほら、もしもこの子達に失礼な態度をとったら引っかかれて怪我しちゃうでしょう?だからハグリッドと生徒とヒッポグリフを1人ずつで、目の届くところで触らせるのが安全だと思うの」

 

ティアラが考え込むハグリッドにそう伝えている時、城から朝食の開始時間を知らせる為のベルが鳴り響いた。

「大変…!もうこんな時間?」

大抵の生徒はこのベルと共に目覚め朝食のために大広間が開かれる時間の終了20分ほど前に大広間に駆け込む。

目が覚めて何も言わずに私がいなければ寮監のスネイプ先生まで心配の連絡が行ってしまうかもしれない。

「と、とにかくハグリッド!午後までゆっくり考えてみて!楽しみにしてるわ!」

「おう!よぉく考えておく!気をつけて帰るんだ!」

「ありがとう。バックビークもまた後でね!」

挨拶をするように羽を軽く広げたバックビークと別れ、来た道を全速力で駆ける。昨日の雨があがってしっとりと濡れた草地はほんの少し懐かしい香りがした。

 

寮に戻った頃には幸いなことに二力もシャルルもドラコも談話室にはまだ来ていないようだった。

 

 

 

 

**

 

 

 

普段ほとんど人が立ち寄らない北塔で占い学は開講される。前と同じ様にハリーが死の予言を受けるのをティアラは目立たない教室の端から見ていた。再び自分のマグカップを見て見てもやはり茶色いふやけたものがカップの底にこびりついているようにしか見えないのだった。

 

「ティア、カップを交換するらしいわ」

 

割らないようにそうとカップを交換し、隣に座った二力のカップを回しながらみてもやはり才能がないようで、二力の茶葉の方が量が多いなあ位しか分からない。

 

「うーん……」

「ティアラが授業で分からないところがあるの初めて見たわ」

「もう…!からかわないで」

 

トレローニー先生はカップを時計と反対回りも回して、ずいっと大きな眼鏡に近づける。

自分のカップが占われている時は皆、しんとなって先生を見つめた。

隼が浮かんでいるらしい生徒、棍棒や木、猫、羊、ドクロなど生徒によって多種多様であった。

 

ついにトレローニーがティアラの前に来るとティアラは自分が緊張していることに気がついた。正直トレローニー先生とはあまりいい思い出がない。

──今回は一体何を言われるのかしら

 

「まあまあまあ……!!!」

トレローニーが大きく叫びカップを手から離す。ティアラの前に座っていたドラコが床に落ちる寸前でそれを掴んだ。

 

「貴女……!!!」

「なん、でしょうか」

 

ハリーの時と同じような反応をしたトレローニーに次は何なんだと教室にいた生徒みなが自分のカップから目を離しティアラとトレローニーに注目した。

 

「今度は何が見えたんですか?」

ティアラを凝視したまま固まっているトレローニーに耐えかねて二力がそう声をかけると震える声で""何も言えないのですわ…!""と呟いた。

 

「え…?」

「何も、何も見えませんわ!貴女、もうお亡くなりなので「おい!!!」」

 

手に持ったカップを床に叩きつけたドラコは顔を真っ赤にしてトレローニーに詰めかかった。

 

「いくら教員だろうと言っていいことと悪いことがある!!!」

 

 

「…………今日の授業はここまでに致しましょう」

しんと静まった教室でトレローニーが呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

**

 

変身術の授業の教室はまた遠く離れた場所にあった。

ハリーがいつばったり死ぬのかとオドオドと距離を取る生徒と、未だに怒っているドラコから距離を置こうとする生徒で今までにないおかしな雰囲気のまま突入した変身術の授業。

それが終わる頃にはハリー•ポッターとティアラ•ヴァレンタインが今年度死ぬらしいという根も葉もない噂が様々な装飾をつけて構内を駆け巡った後だった。

 

ティアラ達はどやどやと昼食に向かう生徒たちに混じって、大広間に移動する。ドラコとハリー、ティアラの周りは、彼らを避ける生徒で道が開けていった。

「全く!どいつもこいつも!!!父上に報告したら直ぐに退職だ!!」

「まあまあ、トレローニー先生も少し調子が悪かったのよ」

「ティナは優しすぎる!!」

「怒ってくれてありがとう、ドラコ」

 

つん!と顎を上げて照れているのか怒っているのか、もはやわからなくなったドラコは前を歩く大切な幼なじみを見つめた。

 

揺れる美しい艶やかな髪もにこやかに笑う顔も小さい時から恋焦がれて来たんだ。ずっと一緒にいたんだ。こいつが幽霊?死んでいる?

 

───有り得ない。

 

「何ぼーっとしてんの?!行くわよ」

「いって!」

シャルルにバシッ!と背中を叩かれ、慌てて歩き出すドラコ。生徒で溢れる廊下で見失わないよう2人は二力とティアラを追いかけた。





ここまでスネイプ先生が出てこない話は今まで無かったのではないでしょうか!
次の話では先生方も活躍する予定です( *´︶`*)

更新予定は筆者プロフで随時更新しております。
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