ハリー・ポッターと銀髪の少女   作:くもとさくら

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セブルス・スネイプ

上質のベッドから気持ちよく目覚めシャワーを浴びると、部屋に備え付けられたソファーには、既にニカとシャルが私の事を待っていた。

 

「ティア、おはよう」

 

「おはよう」

 

ニカとシャルとは本当に気が合った。 二人とも純血だけど完璧な純血主義者じゃない。 それに二人と話すのはグリフィンドールの生活を思い出すことができてとっても楽しい。

 

朝食を済ませ寮を出たとたん、ハリーについての噂がホグワーツ廊下中を飛び交っていた。

 

「全く…ハリー、ハリーって!落ち着きのない…!迷惑よね」

 

二人は純血主義者じゃないけどグリフィンドールの事は毛嫌いしている。

 

「まあすぐに静かになるわ、ね?」

 

「そうね。そんなことより校内の地図を覚えなくっちゃ!この学校広すぎよね!?」

 

 

 

そう。

 

ホグワーツには142もの階段がある。

 

広い壮大な階段。

 

狭いガタガタの階段。

 

金曜日にはいつもと違うところへつながる階段。

 

真ん中辺りで毎回一段消えてしまうので忘れずにジャンプしないといけない階段。

 

 

 

扉も色々ある。

 

正確に一定の場所をくすぐらないと開かない扉。

 

丁寧にお辞儀をしないと開かない扉。

 

扉のように見えるけど実は何でもないただの壁のもの。

 

それにここでは物というものが動いてしまう。

 

例えば 肖像画の人物もしょっちゅう訪問しあっているし鎧だって歩ける。

だからそれも目印に使うことができない、覚えるのを大変にするひとつの理由だ。

 

 

 

確かに新一年生には慣れるのにとてつもない努力が必要だろう。

 

苦労した覚えがあるからニカが怒るのもわかる。

 

だがティアラはすでに6年をここで過ごしたことがあるのだ。多少は抜けてしまっているとはいえそこを補充するだけであとは迷わずに歩ける。

 

 

それから3日が経過し今日はティアラが待ちに待った授業がある日だ。

 

マクゴナガル先生の変身術と 

 

スネイプ先生の魔法薬学だ。

 

もちろんティアラにとって一年生の最初の授業など目をつぶって1㎞離れていても出来る内容だ。

 

つまりただ単にその二人に会いたいだけ。 

 

 

 

 

 

 

変身術の教室に入り、みんなが揃った。

 

するとすぐにマクゴナガル先生は変身術の説明を始めた。

 

「皆さんおはようございます。変身術ではホグワーツで学ぶ魔法の中でも最も複雑で危険なもののひとつです。いい加減な態度で私の授業を受ける生徒は出て行ってもらいますし、二度とクラスには入れません始めから警告しておきます」

 

…説明…というよりは脅し…?

 

それから先生を机を豚に変え、また元の姿に戻して見せた。 生徒たちは感激し早く試したくてうずうずしていた。

しかし家具を動物に変えるようになるまでにはまだまだ時間がかかることがすぐにわかった。複雑な板書をノートに写した後、一人一人マッチ棒が配られそれを針に変える練習が始まった。

 

ティアラの目標は《目立たない》だ。

 

もちろん最初に成功するのだけは一番避けたかった。が、いくらが授業の終盤になっても…誰一人成功しなかった。

 

そして授業の終わりかけ、先生の前で一人一人やることになる。

 

「どうぞ、ミス・ヴァレンタイン」

 

「あ…えっと………」

 

「やって見せてください」

 

ティアラがマッチ棒に向かって杖を振ると一瞬でマッチは美しい装飾入りの銀色の針になった。変身術は苦手でも得意でもなかったけど、1年生の最初の呪文を失敗する方が無理難題だ。

 

「…!これはこれは…!」

 

「皆さん!見てください!ミス・ヴァレンタインが成功しましたよ!」

 

すると生徒たちはわらわらと私の周りに集まってきた。

 

───今度はもっと慎重にしないと…

 

その後滅多に見ることができないマクゴナガル先生の笑顔を見ることができてこれもこれでよかったと思ってしまったのはティアラだけの秘密だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ティアラは昼休憩を早めに終わらせグリフィンドールの寮の入り口でハリー達が出てくるのを待っていた。

 

魔法薬学の授業が始まる前にハリーに言わなくてはいけないことがあったのだ。

 

3分ほど待ったところで肖像画がパッと開きハリーとロン。そしてハーマイオニーが出てきた。

 

 

「「「ティアラ!?」」」

 

「ハリー、ロン、ハーマイオニー。久しぶり。私のこと、覚えてる?」

 

冗談混じりに挨拶をするとハーマイオニーがばっと飛び付いてきた。

 

「ティア!会いたかったわ!」

 

「私もよハーマイオニー」 

 

ハーマイオニーを受け止めて背中越しに心配そうにしている二人を見た。

 

「ティアラ、寮は大丈夫?」とロン。

 

やはりそこをとても心配しているらしい。

ハーマイオニーがパッと離れて同じように心配そうな顔をした。

 

「そんな顔しないの!大丈夫!上手くやってるわよ?みんないい子だしね。 でも噂に聞いた通りグリフィンドールとの仲は最悪ね…」

 

今話しているこの瞬間にも緑のローブを着ている私に向けられる視線は刺々しい。

 

「ティア…あのね!僕らで話してたんだけど、やっぱり僕おかしいと思うんだ。ティアがスリザリンのはずがない。だからさダンブルドアとかマクゴナガル先生とかに言って「ハリー」」

 

一気に捲し立てたハリーの言葉を静かに遮った。

 

「ハリー?言ったでしょ?私は心のどこかでここの寮がいいと思ってたのかも知れない。それを帽子が判断しただけよ」

 

「…でも…。」

 

「大丈夫!さあ!ハーマイオニーもロンもそんな顔しないの!さあ、次の授業の予習しましょ?スネイプ先生はおっかないらしいわよ」

 

 

 

 

 

ティアラがわざわざここに来たのはそれが目的だった。

 

おそらく今回もスネイプ先生はハリーに質問を出してくるだろう。 全問正解とはいかなくても1問くらいは正解してほしい。

 

 

だけど正直あのときなんて質問をされたのかあまり覚えていない。

 

 

──覚えてたら答えを教えればいいだけなんだけど…

 

 

「いいアイデアね、早めに教室行って予習しましょう!」

 

それから四人で魔法薬学の教室へ向かい教科書を開いて予習をした。基本問題を中心に。

 

 

 

 

授業が始まるまであと五分になりパラパラとスリザリンとグリフィンドールの生徒が部屋にやって来て視線が気になりはじめた頃、ハリーが素晴らしいお誘いをしてくれた。

 

「ねぇ、ティア、ロン、ハーマイオニー。この授業が終わったらハグリットにお茶に誘われてるんだ。よかったら一緒にどうかな」

 

「え、いいのかい?」

 

「もちろんさロン!ハーマイオニーとティアは?」

 

「私も行ってもいいの?スリザリンだけど…」

 

「スリザリンだからって怖がるなってティアが言ってたじゃないか」

 

「…、そうねハリー、ありがとう。私もお邪魔させてもらうわ。ハーマイオニーは?」

 

「とっても残念だけど今日は図書室に行きたいの。ごめんなさい」

 

「…残念ね……」

 

「ごめんなさい。ハリー、また誘ってね」

 

「うん!もちろん!じゃあねティア。またあとで!…って言っても教室は同じだけどさ」

 

「ふふっ、そうね。じゃあ」

 

ティアラがスリザリン側の席に座るとすぐにニカとシャルがやって来た。

 

「ティアラ!もう来てたのね?心配したわ」

 

「ごめんなさい…、先生に質問があって先に来ちゃったの。先生居なかったけど…」

 

「そうだったのね…」

 

シャルが右に、ニカが左に着席したところでバンっ!とドアが開きスネイプ先生が入ってきた。

 

早くもハリーに向けられた冷たい視線にこの頃から嫌われていたと改めて思い知り、 胸がきゅぅーっ、と痛くなったのに知らない振りをする。  

 

バンッ!と教科書を机に置くとスネイプ先生はおもむろに口を開いた。

 

「さて。このクラスでは杖を振り回すような馬鹿げたことはやらん。そこでこれでも魔法かと思う諸君が多いかもしれん。 フツフツと沸く大釜。ゆらゆらと立ち上る湯気。人の血管の中をはいめぐる液体の繊細な力、 心を惑わせ感覚を狂わせる魔力……。この見事さを真に理解するとは期待しておらん。我輩が教えるのは名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえ蓋をする方法である。ただし、我輩がこれまでに教えてきたうすのろ達より諸君がまだまだましであれば…の話だが。」

 

スネイプ先生の大演説のあとクラスの大半はぽかーんと口を開け、意識が明後日に飛んでいた。

 

 

 

 

とスネイプ先生が突然「ポッター!」と呼んだ。

 

それにより全員の意識がここに戻ってくる。

 

 

「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」

 

「あ、えっと…」

 

頑張ってハリー!

 

「ね、眠り薬?」

 

ハリーが不安げに答えるとスネイプ先生は器用に片眉をあげいかにも意外そうな顔をした。

 

「ほう、ではポッター、もうひとつ聞こう。ベゾアール石を見つけてこいと言われたらどこを探すかね?」

 

あ…、これは…

 

そっとハリーに視線を向けるとやはり頭の上に『?』が3つ浮かんでいる。

 

「わかりません。」ハリーが答えた。

 

「ふむ。我らが新しいスターはクラスに来る前に教科書を開いて見ようとは思わなかったのかね?え?」

 

ハリーは冷たい目で一生懸命スネイプの事を睨み付けていた。

 

──私ってこんなに反抗的だったのね……まあ先生も先生だけど…

 

さあ、最後の質問だ。

 

「ポッター、モンクスフードとウルフスベーンの違いは?」

 

「え、ち、違い?」

 

しまった。さっきやったのはアコナイトについてだ。どれもトリカブトの事を指しているのだがハリーは恐らくそれを知らない。

 

「…わかりません…」

 

「ふん、有名なだけではどうにもならんらしい」 「………」

 

ハリーが下を向いたまま何かを言っている

 

「…?」

 

スネイプ先生が、それに気がついた。

 

「…ティアなら、ティアなら答えられます!」とハリーが叫ぶように言った。

 

「へ?!」思わず喉から変な声が飛び出した。

 

「ふむ。ではミス・ヴァレンタイン。答えられるのかね?」

 

「……あ、え……えと…最初の質問の答えは…ハリーの言った通りです。その眠り薬はあまりに強力なため『生ける屍の水薬』とも言われています。ベゾアール石は山羊の胃から取り出すものです。大抵の毒の解毒剤となるもの。 3つ目の質問の答えはモンクスフードとウルフスペーン、そしてアコナイトは全部おんなじ植物。トリカブトです。

 

…合ってますか?」

 

「正解だ。君はしっかり予習をしていたらしい。スリザリンに5点。しかし君たちはなぜ今のを全部ノートに写さないのだ?」

 

すると一斉に羽ペンと羊皮紙を取り出す音がした。 その音に被せるように先生が言った。

 

「ポッター、予習不足でグリフィンドールは一点減点」

 

ようやく本格的な授業に入ることができ私はドラコとペアを組むことになった。

 

「よろしくね、ドラコ」

「ああ」

 

 

この授業ではおできを直す簡単な薬を作る。ハリーが高学年の時にやっていた調合に比べると難易度が比べ物にならない。

 

「さて、最初に諸君には調合の準備をしてもらう。干しイラクサを計り蛇の牙を砕け。量は黒板にかいてあるからしっかり見るように。では始め。」

 

その声にあわせてみんながそれぞれの机で準備を始めた。

 

ドラコもさすがというべきか、会話のレベルが高くて話しやすい。そして驚くほどサクサクと調合が進んだ。

 

あとは瓶に詰めるだけ、という段階になり、ティアラがふと周りを見渡すとネビルが大鍋の上に山嵐の針を持ち入れようとしている姿が目に飛び込んできた。

 

「あっっ!!!それ入れちゃダメっ!」

 

そう言って駆け出しネビルの腕を掴んだときにはすでに針が大鍋に落ちていっている途中だった。

 

『プロテゴッ!(防御せよ)』

 

《ガチャーーンッ!》

 

ハリー達は、誰かが聞いたことのない呪文を唱える声と、何かが割れる音を同時に聞いた。

 

 

地下牢いっぱいに強烈な緑の煙が広がりシューシューという大きな音が広がる。

 

濃い煙が晴れると、ティアラとその後ろで震えているネビルがいた。

 

「ネビル!怪我はない?!」

ティアラはサッと杖をローブにしまい、振り返る。

「だ、大丈夫…、ありがとう……」

真っ青な顔をしたネビルはロボットのように固い動きで頷いた。

 

「何があった!」

部屋の向こうからスネイプ先生がカツカツと足音を響かせてやってきた。

「ひっ、、!」

 

 

散らばった鍋の破片、真っ青なロングボトムの様子を見て何があったかを察する。

 

 

「…誰も怪我はないな。ネビル・ロングボトム…貴様は罰として次の授業までに失敗した理由を羊皮紙2枚に纏めておけ。」

 

――そして…と言葉を続けたスネイプは…

 

「聞きたいことがある。ヴァレンタイン、来なさい」

 

「…え…?」

 

クラスの大半は驚いたかのようにスネイプの顔を見た。

 

スネイプが言った言葉に驚いたのだ。

 

彼は今ネビルではなくティアラを呼び出した。

 

 

この状況からいって罰せられるのはネビルだろう。なぜティアラが。

 

 

「お言葉ですが先生。ティアラはその子を助けたように見えました。ティアラに非はありません。」

 

一連のことをみていたシャルがもっともな事を質問する。

 

 

「誰が罰すると言った。聞きたいことがあるだけだ。ヴァレンタイン、さっさと来い。他の者はレポートを提出し各自解散すること。」

 

 

先生はそう言ってまた杖を一振りし鍋を消すとすぐに教室を出た。

 

「じゃあ…行ってくる…」

 

その後ろを不安そうなティアラが続いて部屋を出た。

 

 

*

 

「…あの…「長々と話すつもりはない。」」

 

冷たい廊下に腕を組もたれ掛かっていた先生のところに駆けると突然そう言われた。

 

「え」

 

「守護呪文を使ったのはお前か?」

 

「しゅ、ご…呪文…ですか」

 

「そうだ。」

 

先生は杖を取り出すと小さくプロテゴと唱え、目の前に半透明の盾を作り出した。

 

それは一目みただけで明らかに上質なものだとわかった。

盾に見惚れていると先生はバッとそれを消し「あんなに近距離にいたにも関わらず怪我がないとは信じられん。呪文を唱える声が聞こえた気もした。お前か?」

 

「……いえ、──先生。私、ついこの前入学したんですよ、その呪文、上級呪文ですよね?私には到底扱えません」

 

先生。

 

私はこれから先生に嘘を沢山付きます。

 

 

許してください。

 

 

どうか。

 

 

どうか許してください。

 

 

 

「っ……」

 

 

 

先生が突然ハッと息を飲んだ。それに私も我に帰る。

 

 

「……もういい。帰れ」

 

「…はい……」

 

 

 

振り返り一目散にみんなのもとへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後は予定通りハリーたちとハグリットのところに向かって、ハグリットを紹介してもらった。

 

色々話を楽しく聞いて気がついたらすぐに夜になってしまった。

 

「ハグリット、楽しかったわ。ハリーと一緒にまた来てもいいかしら?」

 

「ああ!もちろんだ!お前さんみたいなスリザリンは初めてだよ!」

 

「ありがとう。これからもよろしくね」

 

ハリー達と城へ戻る道は暖かく、懐かしく、心地のいいものだった。

 

 

 

 

 

 

 

それから二日後、スリザリンの談話室の掲示板の前に、一年生の人だかりができていた。

 

「なにかしら」

「行ってみましょ」

 

ニカとシャルと人だかりに近付き、紙を目で追うと、隣にいた二人がはぁ、とため息を漏らした。 ─────────────────

 

飛行訓練は木曜日に始まります。

 

グリフィンドールとスリザリンの合同授業です。

 

─────────────────

 

「グリフィンドール!ってことはこの前ティアラを怪我させかけた子が居るじゃない!」 

 

「もうシャル!あれはなんでもなかったじゃない」

 

「だからティアラは優し過ぎるのよ!」

 

「そうよ、ティアラ。あのネビルって子がちゃんと先生の言ってる事をちゃんと聞かなかったから!」

 

周りにいた子達も私たちの会話に気がついたのか、そこはあっという間にグリフィンドールの悪口を言う大会になっていた。

 

「ストップ!もうやめて」

 

ティアラがそう叫ぶと今までのざわめきが嘘のように静まり返った。

 

「そんなことを言っても何も始まらないわ」

 

「…………」

「ね?」

「……うん。飛行訓練は楽しみましょうか」

「ええ!」

 

ティアラがくしゃりと笑った。 そこにいた男子達が顔を赤らめたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

*

 

 

 

魔法使いの家の子はみんなひっきりなしにクィディッチの話をした。 ニカはそうでもなかったが、特に男子、その中でもドラコは暇さえあれば他の男子たちと大論争をやらかしていた。箒に乗るの全員が楽しみにしているのだ。

 

木曜日の朝、ティアラはハリーとハーマイオニーとロンとネビルと朝食を食べる約束をしていた。 ハリー達と仲の良いティアラはすでにグリフィンドールの中でも《スリザリンらしくない子》として有名だった。

 

だが、血筋や普段の立ち回り、美しい顔立ち、そしてティアラの優秀さはスリザリン内でも認められており別にティアラがグリフィンドールと仲良く話していても特に咎めるものは居なかった。

 

5人で話しながら豪華な朝食を食べているとき、めんふくろうがネビルのおばあさんから小さな包みを持ってきた。 ネビルは嬉しそうに包みを開け中から見覚えのあるガラス玉を取り出した。

 

「『思いだし玉』だ!ばあちゃんは僕が忘れっぽいってこと知ってるから──何か忘れてるとこの玉が教えてくれるんだ。見てて、こういうふうにぎゅっと握るんだよ。もし赤くなったら…あれ…」

 

突然中に入っていた煙のようなものが真っ赤に光だした。

 

「…何かを忘れてるってことなんだけど…」

 

何を忘れてるのか忘れたや、とネビルが頭を捻る。

 

ティアラは視界の端で近づいてくるドラコの姿をとらえた。

 

「ねえネビル?私も握ってみてもいいかしら!」

「ああ勿論だよ!」

「ありがとう」

 

ティアラが玉を手に持つと同時にドラコがハリー達の後ろを通った。

 

「あらドラコ!みて!ネビルの思い出し玉!とっても面白いのよ?」

 

「…そうか。」

 

そう呟くとドラコはつまらなさそうにそのまま離れていった。

 

「なんだ、あれ」と唖然としたロン。

 

「へんなの」同じような反応のネビルとハリー。

 

「ティアラ、見てみて、これ。」そんなことはお構いなしに『クィディッチ今昔』を読んでいるのはハーマイオニーだ。

 

 

 

 

その日の午後。ティアラ、ローズ、アーネの三人は飛行訓練を受けるため正面階段から校庭へと急いだ。 校庭につくとスリザリン生は居るもののグリフィンドールの生徒は一人もいなかった。

 

「あら?今日って合同授業よね?」

 

「グリフィンドールはいつもギリギリなのよ」 そんな会話が聞こえてきてティアラは少しだけ前の人生を反省した。

 

それから10分後、無事にグリフィンドールの生徒も揃いマダム・フーチがやって来て訓練が始まった。

 

最初の段階の『上がれ!』で箒が上がったのはハリーとティアラだけで二人は顔を見合わせてふふっ、と笑い合った。 それをドラコが恨めしそうに見ているのには誰も気がつかなかった。

 

そして事は起きた。 フーチが地面を蹴るときのカウントをしていた最中にネビルが思いっきり地面を蹴ってしまったのだ。

 

 

 

「「「ネビル!」」」

 

 

「こら!戻ってきなさい!」先生の大声をよそに、ネビルはシャンパンのコルク栓が抜けたようにヒューと飛んでいった。

 

──ぐんぐんと高さが上がっていくにつれネビルの顔も真っ青になっていった。

 

「っっ、このままじゃ!」

 

ティアラは居ても立ってもいられずに強く地面を蹴った。

 

「ヴァレンタインまで!」

 

そう叫ぶ先生の声が聞こえたけど今はそれどころじゃない。

 

──大丈夫。うまく乗れてる。

 

これでも前はクィディッチのシーカーだったのだ。

 

箒には手慣れている。

 

2、3秒でネビルと同じ高さに着いた。

 

「ネビルっ!いい?!落ち着いて聞いて!」

 

「し、ティアーーーー!!!」

 

「ネビル!いい?そのまましっかり掴まって柄を水平に保っ「うわぁぁぁぁーーー!!」」

 

「っっ!!!」

 

ティアラが言い終わらないうちにネビルは箒の柄を離してしまった。 声にならない悲鳴をあげ、ネビルは箒から真っ逆さまに落ちていく。

 

 

ティアラは片手で柄を真下に向け急降下しながら、片手でローブから杖を取り出しネビルに向かって呪文を唱えた。

 

『アレストモメンタムッ!(動きよ止まれ!)』

 

するとネビルはだんだんとスピードを落とし無事に、急降下してやってきたティアラにキャッチされた。

 

ネビルは気を失っているだけで全くの無傷だ。

 

「ああ、ミス・ヴァレンタイン!無事ですね?!よかった。」

 

先生は他の生徒の方に向き直った。

 

「私はこの子を医務室に連れていきますから、その間は誰も動いては行けません。わかりましたね?」

 

二人が声の届かないところにいったとたんドラコが大声で笑いだした。

 

「あいつの顔見たか?あの大まぬけの。またティアラがかばっていたじゃないか!」

 

他のスリザリン生もはやし立てた。

 

「そうだぞ!2回目じゃないか!」

 

「ティアが怪我したらどうする!」

 

 

 

「ごらんよ!」 マルフォイが草むらから何かを拾い出した。

 

そのあとは大体前と一緒だ。

 

ハリーはシーカーに推薦され、そわそわと落ち着きがなくなったことが目にとれる。きっと、クィディッチの練習が始まったのだろう。

 

ネビルが怪我をしなかったこと、そして歴史の流れが変わっていないことに安堵し、ティアラは落ち着きのないハリーを見守った。

 

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