狩人さんと首輪付きがオバロ世界で目覚めた   作:黒雪空

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お気に入りして頂いたり、感想頂いたり、ちょっと考察の様な物頂いたりとても嬉しい限りです。好き勝手書きなぐってるだけなのに本当にありがとうございます。
あと何故か私の汚部屋にオーバーロードの二巻が二冊あるんですけど何なんでしょうね、これ…。
 
感想でも頂いたのですが、ACシリーズは過去に有っただけで現実ではもう存在していません。多分内容的に発売許可が下りなかったんじゃないのでしょうか。特に4とfa辺りが。



◇問い◇微睡/おまけで痴女

 首輪の付いた、小さな仔猫の大好きで、絶対で、世界その物の様な養い親は言いました。

 

 お前が正しいと思う道を選べ、と。

 信じて居るから、お前がどんな答えを出そうとも私は共に歩もう。

 

 彼女はそう言いました。

 

 首輪の付いた小さい仔猫は、養い親こそが世界なので彼女さえ傍に居てくれるのなら何も悩む事も考える事も無いと安心しました。

 そもそも首輪の付いた可愛い仔猫は生まれてからこれまで悩んだことはありません。大好きな養い親の喜ぶことだけをやって来ました。今後も迷う必要はありません。

 仔猫にはそれ以外必要なかったので、何も不思議に思いません。

 

 

 ━ただ殺すことだけを覚えさせたか…。

 

 

 首輪の外れた獣は呆然と立ち尽くします。

 一体何が悪かったのだろうと、途方に暮れて、それでも大好きな養い親に捨てられた事は理解できました。

 

 何がだめだった?どこが違った?何を間違えたの?どこが気に入らなかった?獣がひとりで考えた所で答えは出ませんでした。

 

 

「ああ、狩人様。こちらにいらしゃったのですね」

 

 夢の中を歩き回る人形は大樹に背を預けて眠る狩人を見つけた。大きな白い満月の下、月の光の様な花が咲き乱れる土の上に直接腰かけて眠って居る。

 

 その傍らには使用者の居ない不要の車椅子がぽつりと置き去りにされている。

 

 傍へ寄った人形にも気づかずに、すぅ…と酷く穏やかに狩人は眠り続けている。

 腕と足を組み、固い樹木に背を預けていると言う割には本当に心地よさそうだった。

 

「狩人様。こんな所で眠って居ては冷えてしまいます」

 

 放置された車椅子とはその逆隣りへ、人形は屈み込み声を掛けるが起きる気配はない。

 ただ、人形の静かに澄んだ優し気な声に反応したのか僅かに指先が動く。小さく唸り、足を組み替えてまた、穏やかな寝息が聞こえ始める。

 

「まあ」

 

 まるで遊びたいだけ遊びまわり、そのまま遊び疲れて眠ってしまった幼子の様だった。

 そして夢の中でもまだ遊んで居る様に、微かに爪先が動く。

 

「お可愛らしい」

 

 表情が変わる事は無いが、心底から慈しむ様な声で呟く。関節の稼働を可能にしたが為に人とは異なる様相を呈した指先を伸ばし、未だ眠る狩人の頬をそっと撫d━━…

 

 

 首輪付きの知って居る『お墓』とは随分と感じの違う墓地へやって来て、その辺を漁り出した変な連れ。何だか頭が可哀想な奴な気がする。背骨だか、内臓とかを探しているらしい。何に使うのかは分からないが、そこはかとなく可哀想なので一緒に探してあげる。人間の中身なんてあんまり見た事無いから、どんな形の臓器が欲しいのか、良くわからないけど。何でカビは良くて、うんこは駄目なのだろう。嫌な人の顔面に投げつければ食中毒になるかも知れないのに。

 そんな事を考えながら、うろうろと探し物に付き合ってあげる。セレンを探してくれているから、お返しに。

 それにしても広い墓だ。それだけ墓に入る人間がいっぱい居るんだ。死んだ人間にまで、汚染の無い土地が用意されているのは凄いと思う。

 探し物は何も見つからない。

 

 うろうろと墓場のもっと奥まで進んで行く。

 黒い連れはちっとも不思議がって居なかったけど、目に映るもの全てが変な作り。非武装の車両が掠った位で壊れてしまいそうな建物ばかり。ここもそう。結構大きいけど…なんだろう。公衆トイレかな?

 つい癖で中に誰か居るかな?と確認しようとしても、当然自分の身体だけではレーダーの性能も何もない。自分の目で見るしかない。それでも目はいいけど。

 なんだろーと、呑気に覗き込もうとする首輪付きに声が掛かる。

 

「ねー。おチビちゃん。こんな所で何してるのかなー?」

 

 振り返ればそこには痴女が居た。

 思わず目が点になる。面白い小動物でも見つけたみたいに首輪付きを眺めて居る女は露出狂だった!

 一応、上衣の心算なのかマントは羽織って居る。それでも腕を腰に当てれば正面丸見えだ。フードを被って居るせいで、その手の変出者だと首輪付きは判断する。

 金髪のボブカットも相まって、可愛い系の綺麗な女性だとかは変態行為の下では機能しない。美男美女でも許されない事もある。

 残念ながら、首輪付きにビキニアーマーなどと言う知識は無かった。彼の主観ではてらてら光沢のある素材の下着女。それである。

 

「…わぁああぁあぁああ!?」

 

 変態だぁあ!

 ここ暫くで一番長い発声時間を以てして首輪付きは叫んだ。

 元々人見知り…と言うよりも、雇った僚機ともろくに喋らずセレンに丸投げ。会話をするのはもっぱらセレン。後は殆ど会う事の無い、他所の企業のおともだち、と少し話す程度。すっかり対人弱者になって居た。命のやり取り的なコミュニケーションならもっと上手く取れたのだが…。

 兎も角、あまり人間と接するのが上手くない。その上で過保護な育て親は不審者に容赦は要らないと教えていた。

 突如として現れた痴女い恰好の女に驚き、叫んだ反射のままに人差し指と小指を立てた、珍妙なハンドサインで両目を突く構えで突き出した。手が小さいのでピースでは一度に両目を狙えないのだ。そして身長差故に、ジャンプ込みの加速でもってだ。白い殺人毛玉と化した首輪付きは飛び掛かった。

 

 セレンが言っていた!変質者に声を掛けられたらしっかり対応しろと!

 耳、目、米神、鳩尾。主に人間の急所を狙え。大体穴は急所。おへそは行き止まりで穴では無いが、そこだけ脂肪が薄く直内臓でお腹壊しちゃう。だからおへそはしまって寝ろ。布団を蹴飛ばすな。仕方ない、一緒に寝よう。

 最後は何か違ったがそういう事だ。有澤やトーラス的な意味ではない変態は滅しろ。私のリンクスに手を出す奴を許すな。

 そういう教育方針だ。

 

 突然急所狙いで飛び掛かって来た白毛玉。真後ろから声をかけておきながら、痴女が酷く驚いた顔をする。随分と動体視力が良いのか、素早いのか、思考する前に『変態だ!』という反射で飛び掛かって来る仔猫を叩き落とそうとするが、仔猫はすばしっこいのだ。

 

 機体にもよるが、リンクスは皆時速数百キロから千キロとかいう、冗談みたいな速度で機体を動かす。時速2000キロ越えで動く、頭おかしい濡れティッシュ装甲機体もいる。そんな機体制御のフィードバックを脳味噌で処理して居る連中だ。勿論、手を加えて機能向上を図ったりもするがそれだって体質。ずるではない。大なり小なり皆強化人間。だってその方が傭兵稼業的に便利だもの。首輪付きだってAMSぶち込むついでに出来る限りの事はした。

 

 出来る限りナニカしたのだから、露出狂の痴女が何かしようが首輪付きはちゃんと反応する。目的通り目つぶしを決め、勢いのまま指をつこっむ。猫ふんじゃった的な『にぎゃっ』という声が洩れた。残念ながら指が短いので脳までは届かなかったが、ぷちゅっと眼球を潰せた感覚は有る。爪の先に硝子体が詰まったかもしれない…気持ち悪い。

 

 昨日も思ったけれど手足の反応が機体を組み替えた時の様な、微妙な違和感がまだ微かにある。これは何だろう?と首を傾げながら、黒い連れに借りたフードでささっと指先を拭うう。パジャマはセレンが買ってくれたから汚したくないのだ。

 

 取り合えず、そのまま更に脱ぎだすとか、襲い掛かってくる等の行動を阻止したが仔猫は警戒中だ。

 心なしか頭の癖っ毛がいつもより元気に跳ねている。

 変態を豚箱へ収納してくれそうな人間も居ないので、頭カチ割っておこ。と、その辺の古い墓石を引っこ抜いた所で頭が可哀想な連れがやって来た。一体何を切って居たのか、病原体が凄そうな鋸を携えている。

 

「痴女!」

 

 一応、黒い連れにも警告してやった。

 

 

 なるほど、ヘンタイだ。

 

 様々な狩人に出会う前だったなら、こんなに足を出した卑猥な恰好の女が居る何て…と引いて居ただろう。だが既に手遅れ。女性だって例外なくおかしい奴はおかしい。下着にトップハットと仕込み杖で殴り込んで来るのだ。様式美とは一体…。

 そう。逆説的に考えれば変態的な恰好をしているなら、狩人かも知れない。いや、血の匂いが無いので『狩人』ではないだろう。

 問題は獣かどうかだ。対話も成らず、人間の理性を投げ捨てて居ないか。

 

 …残念な事に、目を覆って罵詈雑言を吐き出してのたうち回って居るので判別不能だ。死体だったら漁って見ようかとも思うが、生きているし自身が襲われた訳でもないのでどうしていいのか困る。ただの卑猥で下品な恰好の女だったら狩る理由もない。

 

「こんのっクソガキッ!」

 

 狩人が獣か変態か見定めようとした僅かな間に、血涙流しながら体勢を立て直そうとして…あえなくすばしっこい仔猫に頭突きを食らっている。自身の得物を引き抜こうとした手も仔猫に掴まれてたせいで避ける術無く真正面からだ。かなりいい音がした。ついでに仔猫が手放した墓石が飛んで行った。

 

 顔だけ見れば猫の様な色気と可愛らしさがある変態だが、品性も糞もなく仔猫とキャットファイトをしている。これは獣では無く猫だ。そう判断した。

 

 狩人はやはり体躯に不釣り合いな出力で変態を抑え込んでいる仔猫に疑問は抱かなかった。

 

 仔猫とじゃれているだけなら害は無いだろうと結論付ける。普通で善良で良心的な故に殺意の低い狩人は再び儀式の材料探しに戻る。

 

 戻ろうとした。

 そこで人の気配を感じ振り返る。ぎゃーぎゃーと声を張り上げる雌猫と、腕の関節を外しに掛かってる仔猫の後ろ。居住用と言うより、霊廟、教会、そんな雰囲気の有る建造物から一人の人物が顔を出した。

 当然の動作でノコギリ鉈を構える。

 

「何の騒ぎだ…」

 

 狩人の感覚で言う、『人間大の使者の様な男』がそこに居た。そいつはどうしてそうなったのか、仔猫に頭を齧られている雌猫を苦々し気に見下ろしていた。それはもう、それこそ本物の使者にも負けない位顔を歪めて。

 

 正直狩人もこれが何の騒ぎか分からなかった。

 

 

 

 

 




狩人さんの『よし殺そう』センサーは大分おおらか()です。でも変なタイミングで入ります。蜘蛛のパッチは殺したら残る物でどんな存在か分るかなーって気軽に殴った。

首輪付きは反射で叩き返してるだけなのでいまの所そんなに殺傷能力無いからただのじゃれる仔猫です。ちょっと力が強めで思い切りが良いだけです。兄弟猫と甘噛みしてどれ位力入れたら『痛い!』って成るのか勉強できなかったひとっりこ猫です。
ノーカウントは何か面白かったから普通にやっつけた。

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