魔法科高校の詠使い   作:オールフリー

10 / 76

お気に入り登録数が滅茶苦茶上がりました。しかも日刊ランキング六位にも!バンザーイバンザーイ♪ヽ(´▽`)/

これからも『魔法科高校の詠使い』をよろしくお願いします!


クラブ見学 前編

 魔法科高校にも部活動というのは存在する。

 いやむしろ、魔法という特殊な技能を育てる魔法科高校だからこそ、魔法を使うスポーツが盛んな面がある。メジャーな魔法競技には第一から第九まであるまで魔法科高校間の対抗戦も行われており、その成績が各校間の評価の高低にも反映される傾向にある。特に一般公開、テレビ放映もされる九校戦と呼ばれる対抗戦で優秀な成績を収めたクラブには、クラブの予算からそこに所属する生徒個人の評価に至るまでさまざまな便宜が図られ、今後の人生を大きく左右する。

  それゆえ有力な新入部員の確保は各部にとって最優先事項でありこの時期の最重要課題でもある。学校もこれを公認、むしろ推薦している。その証拠に入学試験の成績者リストが密かに出回っていても目をつむっているくらいだ。

 

 かくして、この時期の恒例行事であるクラブ活動勧誘期間――もとい新入部員獲得合戦は熾烈を極める。

 

 

「なぁ雫、ちょっと良いか?」

「なに冬夜?」

 

 母親から忠告を受けた次の日。

 放課後になってさっそく風紀委員の応援に参加した冬夜は、その見回りついでに雫、ほのかと一緒に部活見学に行くことにした。新入部員を確保しようと先輩たちが声を張り上げ勧誘し、たくさんの新入生が校庭の中を行きかっている中で冬夜は隣にいる雫に声をかける。

 色々と私事も含めて忙しい生活を送っている彼は部活に入る気などさらさらないのだが、毎年負傷者が出ているほど危険な行事であるこの部活勧誘で、か弱い女子生徒である幼馴染に何かあったら大変だと思い、こうして護衛役をかって出たのだが……

 

「いや、確かに離れないようそばにいろ、とは言ったけどさ、どうしてオレの腕に抱き付いてるんだ?」

 

 予想外の出来事が起こっていた。というか、凄く羨まし――ゲフンゲフン。冬夜本人からすれば困惑してしまう事態になっていた。どうしてこうなった?と考える中で、腕に抱き付いている方である雫はより一層体を密着させて首をかしげる。

 

「困る?」

「困るっうか、なんというか……」

 

 当たってるんですけど。というか周りからの視線が痛いんですけど。と口には出せない本音が冬夜の頭の中をよぎる。十分役得なのだが、彼はこんな状況になりたくて護衛役を言い出したのではない。世界を渡り歩いたとはいえ、まだ冬夜は思春期真っ盛りの十五歳。異性の体には興味があるし、時には家で目のやり場に困るような状況になったこともしばしばある。煩悩が頭の中に充満してスマートな思考が出来ないでいた。

 

「もう少し離れてくれると嬉しいかなぁ、って」

「ヤダ」

「なぜに即答?」

 

 雫の行動の意図が読めずひたすら困ってしまう冬夜。個人的にはとても嬉しいが以前の引っ込み思案な雫からは想像できない行動にただただ戸惑うしかない。

 一方、腕に抱き付いてる雫の方はというと

 

(逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ)

 

 心のなかで般若心経でも唱えてるんじゃないかと言わんばかりに恥ずかしいのを堪えていた。

 一晩経って「今攻めなきゃいつ攻める!?」と自分で自分を追い込んだ雫は本人もびっくりの色仕掛け(ハニートラップ)を行っていた。司波深雪を始めとした美少女な友人が多い冬夜を取られまいと恋する十代乙女は必死だった。

 実際には、現段階で一高に在籍している女子生徒の中で冬夜を狙っているのは抱き付いている彼女一人だけなのだが、そんなことは神のみぞ知る事項であって雫が知っているわけがない。

 

(私より可愛い女の子なんてたくさんいるんだし、冬夜のことだからモテるだろうし幼馴染のアドバンテージに余裕感じちゃダメ……!)

 

 そう思ってさらにむぎゅう、と雫は体を最大限密着させる。見ない間に女性らしく成長していた幼馴染の柔らかい体に冬夜はさらに困ってしまい、動きも多少鈍ってしまう。どうすればいいのか。なにかヒントでもあるなら是非とも教えてほしい冬夜だった。

 

(……………あー)

 

 そして、そんな二人の後で第三者から見ればバカップルにしか見えない幼馴染の二人をそば静かに眺めている人物が一人。彼女はこう思った。

 

(私がここにいる意味あるのかなぁ……)

 

 とても自然な流れでハブられたほのかは、この二人になんて言って自分のことを気付かせるか考えていた 。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 勧誘期間で熾烈を極めるのは、勧誘をする各部とそれを取り締まる風紀委員の面々が主になる。特に風紀委員は最大で九名しかいないため、勧誘期間が行われる一週間はフルで働くことになる。それは新入りであろうと関係なく、今日付けで風紀委員になった二人の新入生も(うち一人は昨日指名されたばかりである)今は学校の敷地内を走り回っている。

 が、忙しさで言うなら風紀委員と引けをとらない場所がもう一か所、一高にはあった。

 その場所、一高生徒会室に突如

 

 すぱーん!

 

 というハリセンの音が生徒会室に響いた。

 

「……………」

「ふむ。一撃で真由美を倒せるとは……案外使えるなこの備品」

 

 摩利がその手に持った得物であるハリセンをしげしげと眺めながらそう言い、そのハリセンの一撃にK.O. された真由美が机に突っ伏している。どうしてこうなった?

 

「……ねぇ摩利、ちょっとそのハリセン、威力高くない?」

「おお。結構いい音がしたのにもう起き上がってくるとは。さすが十師族、柔な鍛え方はされていないようだな」

「感心するところはそこ!?」

 

 摩利がわりかし本気で驚いているのに対して真由美は眉尻を吊り上げて怒る。このハリセンは昨日生徒会推薦枠で入った新米風紀委員が、本部を片付けているときに偶然見つけたもので、ハリセンを握る柄の部分に衝撃を拡散させないようにする刻印魔法が施されているれっきとしたCADの一種なのだ。が、形が形のため使えるかどうかとても疑わしい一品だった。見つけた新米風紀委員も『お遊びで作ったものでしょう。でなきゃこんなバカバカしいCADを作る意図がわかりません』と呆れた顔で言っていたものだったがこれからは有効活用するとしよう。主に自分のことを『姐さん』と呼ぶ後輩の指導用に。

 

「全く、後輩が真面目に仕事してるんだ。会長であるお前がサボってどうする?」

「だって……今日のお昼休み、私だけ配膳機(ダイニングサーバー)の料理で寂しかったんだもん!」

「可愛く言えば何でも許されると思うなよ?」

 

 どうにもこの会長、明日はお弁当を作る気満々でいるらしい。その心意気はどうでもいいが仕事はちゃんとしてもらわなければ困る。摩利はハリセンを構え、再度真由美の頭から小気味良い音を響かせようと準備する。念のため明記するが摩利は楽しんでやっているのではない。親友のためを思ってやっているである。

 が、さすがにさっきの一撃でハリセンが持つ威力の高さを実感した真由美は両手で頭を押さえながら反撃する。

 

「で、でも摩利だって仕事サボってるじゃない!風紀委員長が見回りしなくて良いの?」

「問題ない。今日は冬夜くんも応援で見回ってくれるからな。それにすぐ私がいなくても、風紀委員会はちゃんと機能する」

 

 単純に部下のことを信頼しているようにも聞こえるし『私がサボっていても問題ない』という開き直りにも聞こえる摩利の発言に真由美はどんな言葉を返せばいいのか分からなかった。摩利が真由美の頭にハリセンを叩き込む機会をうかがっていると、その行動に待ったをかけた者がいた。

 

「それぐらいにしてください渡辺風紀委員長。仕事が進みません」

「むっ?そうか、それは悪かった。命拾いしたな真由美」

「なんでそんなに摩利は偉そうなのよ……。ありがとうリンちゃん。おかげで助かったわ」

「いえ。会長がサボるのにはなれていますので、この程度のことで漫才じみたことをされても困るだけなんです」

「「……………………………」」

 

 ハリセンで叩く代わりに今度はじっ、と疑わしそうな目で真由美を見る摩利。正直いってハリセンで叩かれた方がまだマシな精神攻撃、という名の部下の愚痴に真由美は非常に居心地の悪さを感じた。視線を窓の方に向けて現実から目を背ける。――そんなことをしたって現実は変えられないのに。

 

「会長、今年度はエルファンド名詠学校との交流会のこともあるんです。例年より忙しいのですから黙って仕事をしてください」

「……………はい。申し訳ありませんでした」

 

物理的(ハリセン)にも精神的(お小言)にもK.O.された真由美は項垂れて仕事を再開した。

と、ここで、壁際に設置された机で黙々と仕事をしていた一人の生徒会役員がポツリと呟いた。

 

「………名詠学校との交流会、ですか」

「司波さんは交流会に興味があるんですか?」

「はい。ですがそういった行事が行われることに驚いています」

「そうですよね。私もこの学校に入った時には想像していませんでしたから」

 

 黙々と仕事を続けていた深雪は一旦キーボードから手を離し、声をかけてきたあずさの方に顔を向ける。深雪がそう思うのも自然なことで、魔法科高校のカリキュラムはかなりぎゅうぎゅうに組まれており、一般高校でいうところの体育祭や文化祭という行事がない。三年間という限られた時間内で、生徒を政府が定めた最低限度のラインを超える魔法師にするためには、そういった時間を削り授業に回さなければ間に合わないのだ。もちろん他にも大人の事情を含めた色々な理由が存在するが。

 そんな中で開かれるこの行事の存在に深雪は正直に驚いていた。

 そんな深雪の言葉に反応した真由美は、せっかく再開した仕事を一時中断し、十師族だから知りうる裏話を話し始めた。

 

「もともと魔法科高校と名詠学校の交流会、という話はかなり前から持ち上がっていたわ。現代魔法を学ぶ魔法科高校の行事である九校戦と、名詠式を学ぶ名詠学校の行事である決闘会はどちらもこの国にとって一大イベントだったし、そのころには名詠式を軍事に使うことも考えられていたから。『どうせならこの二つを組み合わせたイベントを計画してはどうだろうか』なんて話がどこからか出てきたのよ。その一貫として魔法科高校と名詠学校の交流会が出てきた」

「そういえば……そんなニュースが流れていた時期がありましたね」

「とは言え、いざ実際に動き出そうとしたら結構反発あったのよねぇ。『交流会の話は将来的な軍事利用のための予行練習なんじゃないのか』『娯楽のための魔法、名詠式が軍用目的になる兆候だ』なんて話が、国会議員を中心に出てきたと聞いたわ」

 

 国会議員の中には、魔法科高校の生徒の多くが魔法大学を卒業した後軍に所属する傾向にあることを根拠にして『魔法科高校では生徒を軍人にするために洗脳している』という根も葉もないデマを信じている人間が少なからず存在する。また根っからの反魔法師主義の人間も存在しているため、交流会開催に関して様々な物議が出されていた。

 

「まぁ最終的には予算とかの関係で、九校戦と決闘会を合わせた大会の話はなくなってしまったけれど、生徒同士の交流会だけは残ったのよねぇ。………おかげ様でこの有り様だけど」

 

真由美は自分の机の惨状を改めて見てみる。釣られて鈴音、あずさ、深雪の三人も自分の机周りを見てみた。そこにあるのはやってもやっても終わりそうにない仕事。思わず深~いため息が生徒会役員の四人から出てきてしまった。

 

「確かこの行事は一年生だけで行くんですよね?」

「そうですよ。冬夜くんと深雪さんは一校の代表者として参加が決まっているから、頑張ってね」

「は、はぁ……」

 

実は諸事情により交流会の参加にあんまり乗り気ではない深雪は曖昧にそう答えた。本音を言えば「参加したくない」のだが、それをはっきり言ってしまうのは心証に悪い。どうやったら上手く断れるだろうか、と考え始めた矢先

 

「それにしてもまぁ、改めて考えると冬夜くんは苦労するだろうな」

 

摩利が口を開いた。ニヤニヤと笑う彼女にその場にいたすべての人物の視線が集まる。

 

「入学して間もないのにいきなり名詠式の責任者にされ、そしてこれから交流会の件で駆け回ることになるんだぞ?生徒会役員でもないのに苦労するなぁと、思ったのさ」

「確かにねー。今のところ分かっているだけでも夏休みに入るまではずっと冬夜くんにお世話になることが決まってるわ」

「そうなんですか?」

「うん。冬夜くんはこの学校にとって、今後の方向性を決めるキーパーソンみたいなモノだからね。場合によっては生徒会(わたしたち)教職員(先生方)より強い権力を持つかも」

「持つだけならいいが、【黒崎冬夜】という生徒が学校にとって重要なキーパーソンであることが漏れているらしい。今頃は盛大に勧誘に追いかけられているかもな」

 

摩利は冗談でそんなことを言うが【空間移動】という便利な固有魔法を冬夜は持っているため、摩利はそこまで心配はしていない。魔法の無断使用も勧誘から逃げるためだったら誰でも見逃してやろうと彼女は考えている。

だがその場でただ一人、深雪は摩利の言葉を冗談に受け止めず真剣に冬夜のことを心配し始めた。理由は、ここに来る前に聞いたほのかの一言。

 

(…………ほのかは雫と冬夜くんと一緒に見回る、って言ったけど、大丈夫かしら)

 

何かしらのトラブルに巻き込まれてなければ良いんですけど、と深雪は友人三人の無事を願い仕事に戻った。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 さて深雪がそんな心配をしている中、冬夜、雫、ほのかの幼馴染み三人組はというと。

 

「走れ雫!ほのか!アレに捕まったら終わりだぞ!!」

「わ、分かってるよ冬夜くん!」

「でも冬夜走るの早すぎ……」

「んなこと言っている場合か!後を見てみろ!!」

『スピード・シューティング部でぇーす!そこの三人、是非部活見学してってくださーい!』

『テニスに興味はないですかー!?』

『Welcomeラクロス部ー!!』

「「さっきより増えてる!?」」

「くっそ、捕まって……たまるかぁーー!!」

 

 案の定絶賛逃亡中だった。脇目もふらず猛ダッシュしている。

 冒頭のいちゃつきも出来たのは束の間。夜色名詠士(黒崎冬夜)二位(光井ほのか)三位(北山雫)がならんで歩いているのを見た各部は『鴨が葱を背負ってやって来たぁあああああああ!』とテンションを上げて勧誘を開始。狙った獲物は逃がさないと言わんばかりに目の色を変えて三人を襲ってきた。身の危険を感じた三人は冬夜の手に引かれる形で勧誘の壁を突破。今は生存本能に従って超逃げている。

 

「なんで!?なんで私たちばっかり狙われるの!?なんで肉食動物(チーター)に狙われた草食動物(ガゼル)の如く私たちは校庭を走り回らなくちゃいけないの!?」

「それはきっと、オレたちが期待の新入部員(よだれが出るぐらい美味しそうな獲物)に見えているからだろうな!見ろ後ろの先輩方を!獲物を見つけた狩人の目をしてやがるっ!」

「………二人とも、実は余裕?」

 

 あまりの恐怖、というかパニックになっているのか妙なテンションで会話をするほのかと冬夜。雫が冷静にツッコミを入れるがスルーされる。

 

「だけどこのままじゃあどうにもならん!なにか手を打たないと!」

 

 比較的余裕がある冬夜は後ろをチラチラ見ながら距離を測る。しかし徐々に女子二人の走る速度が落ちているのか肉食動物(勧誘)との距離は縮まっていた。このままでは確実に喰われる。なんとかしなければ。

 

「それなら、冬夜が一人惹き付けて逃げてくれれば良いんじゃない?先輩方の目的って冬夜でしょ?」

「それで二人が逃げられるなら喜んで囮になるけど――」

『北山さん光井さーん!女子テニス部に入ってくださーい!』

『女子水泳部――!北山さん興味ないかーい!?』

『光井さーん!新体操やってみませんかー!?』

「――明らかにお前たちを狙った勧誘も聞こえるから却下だ」

「納得」

 

 雫の水着姿やほのかのレオタード、二人のパンチラに興味がない訳ではないが、今は欲望に素直になるべきじゃないと冬夜は判断した。

 

『黒崎くーん!美術部ですぅー!デッサンのモデルになってー!』

 

 …………この勧誘に身の危険を感じたとかそんなことは決してない。

 

「はぁ、もう……ダメェ……」

「ほのか!がんばって!」

「仕方ない。かくなる上は……」

 

 冬夜は走りながらサイオンをコントロールし手のような形にして二人の背中に触れる。そして人気のなさそうな場所を特定して座標を入力。

 

「冬夜!?まさか」

「口を閉じろ!舌を噛むぞ!」

 

 冬夜がそう言ったその直後、時空間干渉魔法『空間移動(テレポート)』が発動した。

 





入学式編が終わったら交流会編です。黄昏要素をどれだけ出せるか……

感想お待ちしています!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。