投稿はじめて早四ヶ月。いやー。長かったー。といってもまだまだ本編始まったばかりなんですけどね。
まぁ、前書きはここまでにして、第一章入学式編最終話、本編をどうぞ!
そして、一高裏門前で克人が回した一台のオフロード車が止まり、ブランシュ襲撃メンバーが各々の準備を済ませて集まる中、
我らが夜色名詠士、黒崎冬夜は
「………あのぅ。そろそろ手を離していただけませんかね。雫さん」
「ヤダ」
「一言ですか」
全力で、雫と手を繋いでラブコメをしていた。側にいるほのかと英美がーーというか襲撃メンバー全員が生暖かい目でその様子を見ている。………周囲が襲撃事件の収拾に走っているんだから空気読めよコノヤロウと言いたいが、あらぬ誤解を受けないよう、順を追って冬夜と雫がこんなことをしているのかを説明しよう。
ブランシュのアジトに殴り込みに行こうとしているところを雫に見つかって止められている。
以上である。冬夜がまた危険なことをしようとしていることに『女の勘』で察知した雫が冬夜を捕まえたのだ。確かに襲撃メンバーは克人や深雪が入っている分戦力としては申し分ないわけだし、カラスを使って遠視ができる冬夜はわざわざついていくことはない。いざとなれば空間移動で名詠生物を送り込めば済む話だ。
これから彼らが向かおうとしているところがテロリストのアジトだと告げられた時、雫たちは深雪や達也も心配したが、克人が「問題ない」と言ったためそれで引き下がった。………あの厳つい顔に真っ向から反論できるほど、少女探偵団の三人の神経は図太くなかった。
しかし雫だけは、冬夜の体をギュッと抱き締めたまま離そうとしなかった。大丈夫だとわかっていても、こればかりは口で言っても仕方がないのである。
「あのー雫さん?早く行かないと日が沈んでしまうんですけど……」
「………もう良いよ。これ以上頑張らなくて。後は十文字先輩に任せよう?」
「いや、だからさっきから何度も説明していると思うんだけど」
くっついて離れない雫に冬夜は三度説明し始める。その気になれば空間移動で離れることも出来るのだが、こうなったらキチンと雫に理解してくれた上で解放されたい。
「このまま放っておけば
「…………うん、分かってるよ。冬夜は自分の責任を果たそうとしているのも分かってる」
「だったら」
「でも不安なの。昔から冬夜は無茶していっぱい怪我するんだもん。テロリストのアジトなんて本当は行ってほしくない」
「雫………」
「…………でも、信じてるから。絶対帰ってきてね?」
「………あぁ。必ず帰ってくるよ」
((((……死亡フラグ?)))))
なんて、達也と深雪が時たま繰り広げるような甘い雰囲気を作り出すバカップル(仮)。シリアスだったはずの展開が、一瞬にして無性にブラックコーヒーが欲しくなるようなラブコメになったのを見て、ブランシュ襲撃メンバーは顔を見合わせた。顔を見合わせた彼らは、自分達の抱いている感情が一つであることを確かめーーそのまま無言でオフロード車に乗り込み、ドアを閉めた。
克人がキーを回してエンジンをかける。もう日の入りまでの時間がない。早く行かなければ夜間戦闘になりかねないと判断した彼らは、一足先にアジトに向かうことに決めた。ここ最近の車は静音性が高く、静かに発進できることが特徴的だ。克人が用意したオフロード車も例外ではなく、車を背にしてギュッ、と抱き締めあっているバカップル(仮)に気付かれることなく、ブランシュ襲撃メンバーはアジトに向かっていった。ーーシリアスがシリアルな展開になることだけは、許されないのだ。
そして、すっかり二人きりの世界に入っている冬夜と雫を除いたほのか、英美、摩利の三人が襲撃メンバーを見送った後、
「すまん、待たせたなみんな。さて、叩き潰しにいこ………」
ようやく雫から解放された冬夜が見たときには、大型オフロード車は跡形もなくその姿を消していた。
「………………あれ?」
◆◆◆◆◆
太陽が地平線の向こう側に沈み、月が空に浮かぶ間際。
世界が黄昏色に染まる頃。
一台の大型オフロード車が
一高近くの廃バイオ工場の門扉を突き破った。
「レオ、ご苦労様」
「………なんの。どうってことないぜ」
「疲れてる疲れる」
いきなり時速百キロ超のスピードで走る大型オフロード車全体に、衝突のタイミングに合わせて硬化魔法をかけるというハイレベルな魔法行使を要求されたレオは車の中でへばっていた。
車の中から降りてきた人数は六人。
達也、深雪、エリカ、レオ、克人、そしてなぜか達也たちより車に乗っていた桐原だった。
「レオ、エリカはここで逃げようとする奴の始末。殺さなくてもいい。安全確実に無力化してくれ
十文字先輩と桐原先輩は裏口から侵入してください。
オレと深雪で正面突入します」
達也の指示に一高選抜メンバーで構成された【ブランシュ襲撃部隊】は互いに頷き合いそれぞれ行動を開始した。
◆◆◆◆◆
遭遇は意外にも早かった。
二人とも、障害物など気にせずに進んだ結果、相手はホール状のドームに整列していたのだ。
「ようこそ。歓迎するよ司波達也くん。そして妹の司波深雪さん。君たちが迷わずここにやってこれたと言うことは、冬夜くんには裏切られちゃったのかな?すごく残念だよ」
「生憎とこちらは歓迎されるつもりは毛頭ない。お前がブランシュのリーダーか?」
「その通り。僕がブランシュ日本支部のリーダー、司一だ。以後お見知り置きを」
アサルトライフルやマシンガンで武装した部下の前に立ち、司一が恭しく達也と深雪に頭を下げた。人を小馬鹿にしたような態度をとる男だと達也は思った。
しかし、だからと言って関係はない。
自分がここに来た理由は一つだけなのだから。
「一応、投降の勧告はしておく。全員武器を捨てて両手を頭の後ろに組め」
「おおっと、いきなりCADを突きつけるなんて怖いなぁ。そんな物騒なものを向けないでおくれよ。話し合おうって気はないのかい?」
「ないな。降参して痛みなく捕まるか、抵抗して苦痛を味わった上で捕まるか今すぐ選べ」
「僕が言うのもなんだけど、君のそのセリフも十分テロリストと変わらないよね?」
ククク、と司一が笑う。にこやかに笑っているように見えるが、その瞳からは暗い欲望の炎が見える。
拳銃型の特化型CADを構える達也は魔法式の構築をすでに済ませていた。
「交渉というのは対等でなければならないものだから、こちらも機会をあげよう。
司波達也くん、我々の仲間になりたまえ。
弟が教えてくれた君のアンティナイトを必要としないキャスト・ジャミングに、我々は非常に興味がある。
君が仲間になるというのなら、我々はもう二度と一高には手を出さないと誓おう」
「テロリストの言うことを信じろと言うのか?」
「信じる信じないは君の勝手だよ。でも信じた方が良いと僕は思うね」
気持ちの悪い薄ら笑いを浮かべたままそう言う司一。その彼の姿に達也は違和感を覚えた。冬夜が裏切ったことを知っているということは、自分が
そしてすぐに、その答えに思い至った。
「まさかお前………」
「お兄様?」
「お前、この状況でその余裕。まさかここから逆転できるような策でもあるのか?」
司一はニヤリと笑った。達也の読み通りこの男は一発逆転の切り札を持っていた。
「僕はこう見えても用心深いタイプでね。君たちが襲撃してきたときの対策など、既に考えてあるんだよ!」
一がそう言った直後ーー奇怪な声がホールに響いた。達也と深雪が上を見上げると、そこには空を舞う二体の名詠生物の姿。
ーーセイレーン。白色
「幻惑の声で狂気に堕ちろ!」
一の声をきっかけにセイレーンがさらに喉を震わせ、達也と深雪が膝をついて床に倒れた。ホール中に響き渡るセイレーンの歌声を聞いた者は誰であろうと正気を失ってしまい通常は錯乱状態に陥ってしまう。しかし一は、名詠した段階で気を失わせるだけに留めるようセイレーンに命令していたため、達也たちは気を狂わせることなく、意識だけを刈り取られた。
「ハハハッ!魔法が全能の力だとでも思っていたのかな!?甘いね。魔法の力は確かにスゴい。だが……そんなもの名詠生物の前では無力に等しい!
自分の力を過信しすぎだよ魔法師!」
薄っぺらい化けの皮を被るのを止めた一の高笑いが、床に倒れた二人に浴びせられる。セイレーンの声を聞けば一とて正気を失うのだが、それはCIL製の特製耳栓を使って防いでいた。ブランシュの仲間もまたしかり。対名詠生物専門の研究機関が開発した製品の効果は絶大だった。
「さて、ここに来ていたのは君たちを含めて六人だったね?うち一人はあの十師族の十文字家次期当主様ときた。彼を人質に使えば君たちに捕らえられた仲間を取り戻すこともできるだろう。後は……気を失わせたままどこかにでも売り飛ばすかな。そろそろ資金不足で困っていたところだし。そこのお姫様ならさぞや良い値がつくだろう」
なかなか外道な言葉を呟きながら、一はセイレーンを還す。耳栓を外し、アサルトライフルやマシンガンを構えたブランシュの構成員は、銃火器を降ろして床に倒れた達也と深雪を拘束するために近づいていく。
「しかし、それにしても夜色名詠士はどこにいる?あの男のことだ。必ずどこかに潜んでいるはず。人質がいるとはいえ、アレと戦うのは面倒だな……まぁ良い。この借りはいずれ必ずーー」
「借りを返すつもりか?残念ながらそれは無理だな。お前たちは今ここで捕まるんだから」
一の何気ないその呟きに若い少年の声が答えた。一やブランシュの構成員が声の聞こえてきた方向を見るーーさっきまで気を失い、床に伏せていたと思われていた達也と深雪が、平然と起き上がって一の顔を見つめていた。
「バカな……貴様、セイレーンの歌声で気を失っているはずでは」
「セイレーン?あぁ、さっきの名詠生物ことか。悪いが、オレたちはここに来てからずっとお前たちの声なんて聞こえてないよ」
そういって兄妹が耳から取り出したのは、先ほど一も使っていた消音性ばっちりのCCC製の耳栓。達也と深雪は、司一が音を使って攻撃してくることをあらかじめ予測していたため、冬夜から貰っていたこの耳栓をつけていたのだ。もちろん、万が一のことも考えて他のメンバーにも着けるよう伝えてある。いままで達也と一との会話が成り立っていたのは、単純に達也が一の唇の動きを読んでなんて言っているのかを理解していたからだ。
「セイレーンのことが、バレていただと……?いったい何時から」
「いや、オレはただ単純にお前が音を使った攻撃をすると賭けただけだ。人間が外部から得られる情報の大半が視覚情報から来ているがその次は音、つまり聴覚情報が多い。弟を使ってオレの持つキャスト・ジャミング技術を探らせるあたり、お前は必ずオレのことを殺さず支配しようと考えるだろうと予測し、この耳栓をもらっていた。もちろんお前が
くっ!と若いブランシュのリーダーは臍を噛む。しかし彼は冷静に右手を挙げて部下に銃火器を構えさせた。
「だとしてもこちらの優位は変わらない!この数の銃を君はどうやって処理するのかな!?」
「くだらん。
一の指示で側にいた部下たちが一斉に銃火器を構える。しかし達也がCADの引き金を引くと、それらの銃火器は全て部品に戻った。
「い、いきなり銃がバラバラに……」
「何が起こったんだ!?」
いきなり手元にあった銃がバラバラになったことでパニックに陥るブランシュの構成員たち。
達也が使ったのは、生まれたときから自身の身に宿った固有魔法【分解】。
物体であればその構造情報を物体が構成要素へ分解された状態に書き換え、情報体であれば構造そのものを分解する、構造情報に直接干渉する最高難度の魔法。
達也は、生まれながら【分解】ともう一つの最高難度魔法【再成】に生来の魔法演算領域を占有されているため多彩な魔法が使えなかった。しかし逆に言えば、その二つが通じる範囲内において彼は無敵。今彼の隣に立つ魔法師としては最高級の
一は、マシンガンやアサルトライフルが一斉にバラバラになる様子を眺めた後、胸元にあるポケットから端末を取り出した。先ほどの達也の発言からもしやと悪い予感がしたのだ。武器がバラバラにされて狼狽しているブランシュの構成員の前で、達也は一がどこに電話を掛けているのかを言い当てた。
「校内に潜ませたお仲間に連絡か?残念だが……それもすでに読んである」
達也の言葉などお構いなしに一は端末に表向き『名詠クラブ』の外部顧問として一高に潜入していた仲間の番号を表示させる。彼の指示通りなら、今は図書館内部にある端末からデータを盗み出している最中のはずだ。自分の大学時代からの友人であるその男を一は自分の部下の中で最も信頼していた。
自分以外では知るはずのないその番号から掛けてきた電話。その電話口の向こうから聞こえてきたのはーー
『あ、こっちが連絡用ね。ハァイ!もしもし。どちらさまですか?』
若い、女の声だった。
「なっ……誰だ貴様は!」
『名乗るほどの者ではないわ。どうせ名乗ったところであなたには分からないだろうし』
ウフフ、と電話越しに聞こえる声が妖しく笑う。電話越しに出てきたのが部下でない人物に一は驚いていた。電話口の向こうにいる人物の名前は小野遥。一高のカウンセラーの一人で、【ミス・ファントム】という異名を持つ凄腕のスパイだ。
だが相手が何者であろうと今の一には関係ない。声を荒げて遥に問う。
「どういうことだ!貴様、なぜこの番号を知っている!?」
『え?そりゃあこの番号を知っている人に聞いたからよ。そうですよね、外部顧問の先生。いやブランシュの手先さん?』
技術進歩によって集音性が高まった電話口から男のうめき声が聞こえてくる。その声は間違えなく、自分の信頼している部下のもの。
もう確実に、自分の作戦がバレていたことが分かった。
「バカな……どうやってオレの作戦を見破った!」
『あーちょっと待って。実は今こっち立て込んでいるのよね。もうすぐ終わるから待ってほしいわ』
なんだと?と一は遥の言葉に疑問を持った。立て込んでいる?いったい何に?音声だけを拾うように設定しているこの電話では具体的に何が起こっているのかわからないが、電話口からこんな声が聞こえてきた。
『うわぁー。これが
『炎さえ吐かなければね!うわぁまた来た!』
『………暖かい。冬はカイロ代わりになりそう』
『って雫!?なに倒した
『ほお。北山、私にも少し抱かせてみろ。………ふむ。確かにポカポカして暖かいな。冬は良いかもしれん』
『渡辺先輩もちゃっかり便乗してる!?』
『ってオイコラお前ら!黙って聞いていりゃ倒した
『えー。私たちみたいなか弱い乙女に戦えっていうのー冬夜くん?』
『そうだよね。というか私たち、反唱使えないから足手まといになるだけだし』
『冬夜、ファイト』
『頑張れー黒崎ぃー』
『ちくしょぉおおおおお!』
夜色名詠士の叫び声が聞こえたような気がするが、一は同情などしない。相手は敵なのだから情けをかける気などないのだ。
『あーごめんなさいねぇ少し離れちゃって。えっと、私があなたのお仲間を見つけた理由かしら?別に大したことはしてないわよ? 学校があなたたちのような組織に侵攻を受けているんだから、外部から構内に堂々と入れる大人は怪しいって思うのが定石。でも普通に採用されている先生方の身元は就職時に徹底的に調べられるから潔白はほぼ確実。だから次に外部顧問の先生を調べてみることにしたのよ。調べてみるとあらびっくり。この人の出身大学があなたと同じで、しかも同じサークルに入っていたんだから目をつけておくぐらいしておくわよ』
「そこまで分かっていたなら……分かっていたならなんですぐに捕まえなかった!?」
『証拠がなかったのよねぇ。あなたの仲間だっていう確たる証拠。でも助かったわ。目をつけていたからこそ、人目を忍ぶように図書館に行くところを発見できたわけだし、だからこうして捕えられたんだから。あぁ、そういえばちょっと前に学校に火喰い鳥が名詠されたことがあったわね。アレ、あなたが指示してやらせたんでしょ?噂に聞く夜色名詠士の実力を測るために。アレは余計だったわねぇ。おかげで疑問が確信に変わったわ』
クスクスと笑って一を嘲笑う
『ウフフ。原作じゃあ主人公に言いように使われるキャラだけど、この作品じゃあそうはいかないわよ。
表にでない影役って結構地味で辛いんだけど、こういう機会を経験させてもらえたから満足だわ』
メタい発言やめて。と、その場にいたメンバーは、どこからかそんな幻聴が聞こえたような気がした。
『じゃあ最後に……精々頑張って生き残ってね司一さん。そこにいる生徒たちも危険な相手だけど、それよりも惚れた相手を傷つけたあなたが許せない、って男の子がそっち向かったから。
その子に斬られないように気を付けて。せめて首と胴体は繋がっていてね?』
じゃーねぇ。と、陽気な声で通話を切る
「もうこれ以上の手はないようだな。大人しく諦めて降参しろ」
「………くそっ!くそっ!ちくしょう!!ふざけるなこの!こんな展開、僕は認めないぞ!」
一は端末を床に叩き付けて地団太を踏んだ。子供のように癇癪をおこすブランシュのリーダー。そこには先程まで見せていた余裕の表情はない。みっともなく喚く彼の姿を見て、もう哀れみしか浮かんでこなかった。
少しすると、地団駄を踏むのを止めた司一が、キッ、と顔を見上げて二人を睨んだ。
「許さん、お前らは絶対に許さない………!」
「許してもらう気などない。お前はここで終わりだ」
「………ッ!殺せ!たとえ魔法が使えたとしても相手は単なる子供だ!アンティナイトを使ってこの人数で襲い掛かれば勝てる!」
最後に一は、そう部下に指示を出すと背中を向けて逃げ出した。
部下を見捨て己の保身に走る惨めなリーダーの姿がその場にいる全員に映るーーそして保身のために自分たちを見捨てた上司の言うことを、実行する人間もここにはいなかった。
達也は静かに一歩前に踏み出す。今まで周囲を見渡していたブランシュのメンバーが、達也から離れるように道を作った。悠然と、達也はモーセのように分けられた道を歩き始める。
しかし、狂信的なテロリストの中には戦意を喪失していなかった者もいたらしい。たった一人、ナイフを手にメンバーの一人が達也に向かって突進してきた。
「うおおおお!」
だが、そのナイフが達也に突き刺さることはなかった。
「愚か者」
響き渡る断罪者の声。
いつもなら周囲を魅了してやまないその声は威厳に満ちていた。無慈悲なその裁きを受けた者は、全身を霜に覆われ床に転がされていた。
まるで、これから自分たちに降りかかる光景を暗示しているように。
恐怖に支配された構成員たちが身じろぎしたが、思うように体が動かない。
すでに状況は逆転し今優性なのはたった二人の兄妹の方だった。
「お兄様、行ってください。ここは私が」
「分かった。だが深雪、ほどほどにしておけ。お前が手を汚すほどの連中じゃない」
「はい」
達也はこの場を深雪に預け、背中を向けて逃げた一を追いかけた。
◆◆◆◆◆
「お前たちは運が悪い」
司一を追いかけた達也の姿が見えなくなった時、司一と一緒に達也たちを迎えた残党たちの前で、深雪は口を開いた。
残党たちは体を動かすことが出来ないーー相手はたった一人、それもこちらは訓練された大の大人ばかりだというのに、誰一人として体を動かすことが出来なかった。
精神的にも、物理的にも。
まさしく彼らにとって、今自分達のいる場所は、機嫌を損ねた女王による無慈悲な断罪が下される処刑場のように思えただろう。体を固定され、
深雪の立っている場所を除いたその部屋のすべてにかかった靄は、さしずめ形なきギロチンの刃だろうか。
「最低限、お兄様にさえ手出ししようとしなければ、少し痛い思いをするだけで済んだものを」
いまから命乞いをしようとももう遅い。それだけのことを彼らはしてきてしまっていた。
いつもと違う威厳に満ちたその声は、少しも違和感を感じさせず、ブランシュの構成員たちに絶望をもたらしていく。
イメージ上でしかないはずの、ギロチンの落下を防ぐ縄が切られたイメージを、彼らは幻視した。
渦を巻く
ギロチンの刃が徐々に近づいてくるのがわかる。
体の芯に冷気が食い込んでくる。
ーー男たちの絶望が現実になっていく。
「私はお兄様ほど慈悲深くはない」
まるで、少女の怒りの程をそのまま示すように。
深雪のCADから振動減速系広域魔法『ニブルヘイム』が発動される。
白い靄が吹雪のようになり、そして、
「ーー祈るがいい。せめてその命があることを」
魔法によって氷の国に変えられたその部屋には、可憐な氷の女王と、女王の裁きを受け氷像に変えられた男たちの哀れな姿だけが存在していた。
◆◆◆◆◆
「待て!」
「く、くそ!」
氷の女王が男たちに裁きを下した頃、達也は逃げた一を追っていた。
一がある部屋に慌てて駆け込むのを達也は見るーーその部屋に突入する前に、入り口付近で彼は【分解】の副産物で得た【
部屋の中にいるテロリストは十一人。サブマシンガンは十丁。
達也はそのまま部屋の方向に向かって『分解』を行使する。
「なっ!?」
「いきなり銃が……」
再び上がる狼狽の声。
最奥の部屋に達也が入ったとき、迎い入れたのは空虚な嗤い声と不可聴のノイズ。
「ハハッ!どうだい魔法師!本物の、キャスト・ジャミングは!」
「……
司一の表情が屈辱に歪む。高濃度のジャミング波を浴びているはずの達也は、冷たい目のまま一を見ていた。
達也を襲う高濃度のキャスト・ジャミングは、司一の右手首にあるアンティナイトのブレスレットや、彼の十人の部下たちの指にも嵌められている同色の指輪から発生させられていた。
軍事物質であるアンティナイトはとても希少価値の高いものだ。それを、目の前の男のような三下が大量に所持していると言うことはつまり、
「………これほどのアンティナイトをお前のような三流が持っているということは、雇い主はアンティナイトの産出地があるウクライナ・ベラルーシ再分離独立派で、その雇い主のスポンサーは大亜連合といったところか?」
司一の顔から、動揺が伝わってきた。
心底、つまらないと達也は思う。
この三流たちと付き合うのもいい加減うんざりしてきた。
「や、やれ!魔法が使えなければソイツはただのガキだ!」
「…………」
拳を突き合わせるのも面倒だったので、再度『分解』を使う。
射線上にいる男たちの肩や足から血が噴き出す。
達也の『分解』が射線上に存在する肉体を構成するあらゆる細胞物質を分子レベルにまで分解したのだ。
物体の、情報体の一部分のみを変化させる。これもまた現代魔法において高難度に属する技術なのだが、能力の極端な限定を代償とした達也にとって、これぐらいのことは造作もないことでしかない。達也が設定した分解の射線上には、一の体の一部分も含まれていたため一の太ももや肩からも血が吹き出てきた。
一の口からは耳障りな悲鳴が上がる。
その様子を見ても、達也は一に情の感情など一切湧かない。ただ無機質に、機械的に、【悲鳴をあげる男がいる】という事象のみを視認する。
いやそもそもーー既に達也には、激情という
「なぜだっ!?なぜキャスト・ジャミングの中で魔法が使えるんだ!?」
痛みに涙しながら一が喚くもキャスト・ジャミングは他者の魔法発動を阻害するサイオンノイズをつくる一種の無系統魔法の一種。そのノイズを達也は無害な細波に変えただけだ。この男も
まぁ、どちらにしろ。
(今から始末するんだから関係ないか)
達也がCADに指を掛け、司一にとどめを刺そうとする。
壁を背にし、もう逃げ場所を失った司一の顔に恐怖が浮かび上がってきた。
達也がCADのトリガーを引こうとする、まさにその時。
「ひぃいい!?」
司一が背にした壁が切れた。そして壁の向こう側から知り合いの先輩が顔を覗かせる。刃挽きされた日本刀に『高周波ブレード』の魔法を掛けてここにやって来たのは、剣術部の桐原武明だった。
「よお司波兄。コイツらやったのお前か?」
「えぇ、まぁ」
「やるじゃねぇか。苦戦したか?」
「いえ。桐原先輩を取り押さえた時や、勧誘期間の襲撃に比べればどうということありません」
「ハッ!案外言うときは言うんだな。お前も」
達也が素っ気なく答えると、桐原はニヤリと笑って何度も頷いた。
そして、達也が今止めを刺そうとしていた、一人の男の存在に気がついた。
「で、このみっともねぇ奴は誰だ?」
「
「コイツが?」
桐原はすぐ側に腰を抜かしている情けない男をまじまじ見た。一は恐怖を浮かべて桐原の顔を見る。
その様子を見て、達也はCADを下ろした。ここに桐原が来た以上、自分が手を下す必要はないと思ったからだ。
というより、もう自分の出番はない。お役御免だと彼は自然と悟っていた。
「なるほどなぁ。コイツが今回の首謀者か」
「ひ、ひぃっ!た、助け」
「ーーつまりコイツか!壬生を誑かしやがったのは!!!」
「ひ、ひぃぃいいい!!」
変化は一瞬。達也でさえ一瞬身じろいでしまうような怒気が、桐原の全身から放射された。
最後の力を振り絞ったのか、一のブレスレットから先の数倍のサイオンノイズが放たれる。
しかし、桐原の高周波ブレードは、その効果を失わないまま一の右腕を切断した。
それほどの強度で、魔法は発動していた。
「テメェの所為で、壬生がぁぁ!!」
「ぎゃああぁぁぁぁ!!」
右腕を肘から切断された司一が、泡を吹いて失神する。
一の悲鳴を聞いた後で、桐原が開けた穴から残党を片付けていた克人が顔を出した。彼は部屋の中の凄惨な状況に少しだけ眉をひそめた後。
「………やりすぎだ」
それだけ言って、携帯端末型のCADを操作し、魔法を使って腕を切断された一の切断面を焼いて塞いだ。
◆◆◆◆◆
ーー以上が、一高に入学して早々に起こった騒動の全てだった。
達也たちがやったことは下手をすれば傷害など諸々の罪に問われるものだったのだが、最終的にそれらの罪に問われることはなく、後始末は克人がすべて引き受けてくれた。
一高部活連会同『十文字克人』。彼は『四葉』『七草』に続く十師族序列第三位の『十文字』の一人だ。十師族が関わった事件に、警察や司法組織が関わることなど出来るわけもなく、この騒動は司一の逮捕を持って幕を閉じた。
漆黒の名詠生物の攻撃を受けた風紀委員や生徒会長の真由美、副会長の服部も幸いにも命に別状はなかった。しかし、それでも大ケガを負ったことは変わりなく五月上旬までは入院生活を余儀なくされることなった。
結果、交流会を控えているのに生徒会役員が二人も欠落したため、現行生徒会役員の負担は倍増。冬夜も毎日参加する羽目になり、応援ということで達也まで参加することになって、なんとか生徒会業務をまわすことになった(ここ最近の深雪の機嫌が良かったことは言うまでもないだろう)。
さらに言うと、冬夜が生徒会に毎日出ることになってしまったため、一応形で見れば雫は深雪に冬夜を取られた(?)ことになり、日に日にその機嫌が悪くなっていった。八つ当たり気味に部活に参加するその姿は鬼気迫るものがあったらしい(ほのか談)。おかげで魔法の腕前が少し上達したらしいが、なんとも複雑な気持ちである。
最後に、ブランシュに加担した先輩方は、司一によるマインドコントロールから本当に脱し切れているか確認するため、長めの検査入院をすることになった。
◆◆◆◆◆
『そっか。諦めることも大切か』
どのツラを下げて会いに行けばいいのか分からなかったが、冬夜は一度、由紀の見舞いのために病院へと訪れた。どんな理由であれ、冬夜が由紀の気持ちを利用しブランシュに潜り込んだのは事実だ。謝らなければならないと思った冬夜は、見舞いに行った時にそこで由紀から剣道部の壬生紗耶香から聞いた言葉を聞かされた。自分がいない間、司波が紗耶香に言った言葉だと言う。
『私、ずっと冬夜くんに憧れていたの。世界中から頼りにされる最高の名詠士。少しでもあなたみたいになりたかったの。ずっと……』
由紀はそう言って冬夜の顔を見た。冬夜はその瞳をじっ、と見返す。しばらく由紀は冬夜の顔を見ていたが、しばらくもしないうちに顔を逸らしてしまう。
『でも無理みたい。多分、私が逆立ちしてもきっと冬夜くんには追いつかない。君が立っている場所と、今私が立っている場所は、天地ほどの差があるから』
そう言って微笑む彼女は、どこか辛そうで、寂しそうでいて、眼の端にわずかに涙が溜まっていた。
『今回の事件が終わって、少し落ち着いてから考えて、私決めたわ。私は私なりに頑張ってみようって』
何を頑張る気なんですか?冬夜は聞いたら、これからは一人前の名詠士を目指すわと返してきた。
その言葉がどういう意味なのか、それとなく理解できた冬夜が辛そうな顔をすると、最後に彼女は無理して作った笑顔で冬夜にこう言った。
『だから………さようなら。冬夜くん。私の憧れの人』
そういった彼女が、一高に退学届を提出したのはわずか二日後のことだった。後で調べて分かったことだが、どうやら彼女は名詠学校に編入したらしい。すでに友人も出来て楽しくやっていると調査報告にはあった。きっと彼女は、これからは志を共にする仲間と名詠式に専念していけるだろう。そう冬夜は願わずにはいられなかった。
春。出会いの季節でもあるが別れの季節でもある。きっとこれからも多くに人出会い、別れていくのだろう。そう冬夜は、由紀が退学届を提出したと聞いた後で思った。
これ以上、彼女の人生に夜色名詠士である自分が直接かかわることは恐らくもうない。だけどこれからの彼女行く道に幸が多くあることを、冬夜は祈っていた。
冬夜が一高に入学して早々に起こった騒動はこれでおしまい。
夜色名詠士、黒崎冬夜の波乱に満ちた高校生活は、こうして始まったのだった。
【第一章 入学式編 完】
ーーなんていう風にいきたかったのだが。
『さて冬夜さん?私の言いたいこと、分かっていますよね?』
生憎とそうはいかないのが、世の中の非情なところである。由紀のお見舞いから家に帰ると、今度は
屋敷の前で真夜自らが自分の帰りを待っているのを見た冬夜は、全力で『今日はホテルに泊まろう!』と背を向けて逃げ出したのだが、タイミングを見計らったように水波がハリセンを当ててきたため
『トラブル思いっきり起こしてるじゃない。起こすな、って言いましたわよね?』と、その後屋敷の中で笑顔で真夜に問われた時は『もうダメだ……』と諦めていた。そして『口で言ってだめなら体に刻み込ませますわ』と、魔法を掛けられーー抵抗できずに12時間くすぐられる悪夢を体験させられーー心身ともに疲弊した。
…………母親の怖さを、文字通り心身ともに刻み込まれた冬夜だった。
そして、ベッドに倒れた後は水波に膝枕された。
「お疲れさまでした」と彼女だけは彼を労ってくれた。けれど、「もうこんな無茶はしないでくださいね」とも言われてしまった。
雫に心配をかけ、真夜に説教され、水波を不安にして……
なんだか、一高を守ったのにダメージの方が多いような気がした冬夜だった。
でも、同時に護れた者も大きかったんじゃないかとも冬夜は思った。
◆◆◆◆◆
桜の花びらは散りきり、木々に新緑が芽吹く。
気付けば、五年前に分かれたあの時と同じような景色に周囲はなりつつあった。
「………懐かしいなぁここの景色」
四月下旬。
一高全体を巻き込んだ騒動も一段落して、やっと一息つけるようになった冬夜は北山邸へ向かっていた。五年前は二度と見られないと思っていた景色を目の当たりにして、冬夜は感慨に耽る。その様子を二人の幼馴染たちは可笑しそうな表情で眺めていた。
「よく、学校から帰ってきてからここで遊んでいたなぁ。………懐かしいなぁ……」
「冬夜。なんか縁側で緑茶を啜っているお年寄りみたいな顔にになってるよ」
「ホントだ。普段より顔が老けて見える」
「失礼だな二人とも。人が物思いに耽っているというのに」
冬夜が不満気に頬を膨らませる。雫とほのかがそれを見て笑う。小学校の頃。よくこの三人で仲良く遊んでいた並木を成長した彼らが他愛もない会話をしながら歩いていく。ふと気付けば、遊んでいたあの頃より視点は高くなっており、遠くの景色までよく見えるようになっていることに冬夜は気付いた。
「この五年間で、色々変わったなぁ」
自分が、とは冬夜は言わなかった。
この激動ともいえる五年間で冬夜の人生は一変した。
力も立場もまるきり違う。いまや未成年といえど責任ある仕事を任されるようになった。
あの騒動の中で、冬夜は一点だけ気にかかるところがあった。
見舞いに行った際、由紀から聞いた話では彼女が
つまり、あの正体不明の名詠生物が現れた原因は、幽霊が防犯用にかけた魔法を解除したからとしか思えなかった。バカバカしいにも程はがある仮説だが、その時冬夜は妙な胸騒ぎを感じていた。
まだ分かっていないことはある。
それでもーー冬夜は今この時を大切にしようと決めていた。
「………ねぇ冬夜、一つ聞いていい?」
「なんだ?」
「なんで冬夜は、一高に通うことにしたの?」
景色を眺め幼いころを思い出している彼に、隣に立って歩く雫が不意にそんなことを聞いてきた。
「あの真っ黒な名詠生物と戦える冬夜の実力なら、冬夜が学校に通う必要はないと思うんだけど。それに、魔法科高校じゃなくて名詠学校の方が良かったんじゃないの?」
「………その言葉、校長先生にも言われたよ。『どうして君は我が校に入学しようとしたんだ?』ってね」
冬夜は少し間をおいて、雫の顔を見ながらその答えを言った。
「オレ、実を言うと最初は一高に入学する気なんてなかったんだ」
「え?」
「いや、一高どころかもう一度も学校に通う気すらなかった。雫の言う通り、オレは実力あるし、創立に携わったIMAやCILのこともあったしな。通う必要もないと思っていたしーーなにより生温い平穏な時間は、もう二度と手に入れないモノだと思ったから」
「じゃあ、なんで?」
「IMAやCILの人たちがオレにこう言ったんだ『子供なんだからちゃんと学校ぐらい行って来い』って。
最初は反発したんだけど、みーんな手を結んだのかオレのやってた仕事を全部持ってちゃってさ。やることなくなっちゃったから、帰ってきたんだ」
ここ四年で出会った、いろんな人たちの顔が冬夜の脳裏に出てくる。冬夜は苦笑して、一高に通うよう説得された時のことを思い出していた。
『十年ぐらいお前がいなくても何とかやってみせる。だからとっとと大学まで卒業してこい』
IMAもCILも、彼に身近な部下たちは口をそろえてそう言った。
冬夜が彼らのことを大切に思っているように、彼らもまたーー冬夜のことが大事だったのだ。
「参っちゃうよな。みんな、オレを除け者みたいにして追い出すんだから。あの時はさすがのオレも参った」
「………良い人たちに出会えたんだね」
「あぁ。まったく困った奴らだよ」
冬夜は口ではそう言うが、その表情は非常に嬉しそうだった。そんな冬夜の顔を見て、雫も顔を綻ばせた。
「じゃあ、なんで魔法科高校に通うって決めたの?それなら、名詠学校でも良かったんでしょ?」
「名詠学校じゃなくて魔法科高校にしたのは、魔法科高校なら夜色名詠を使わなくて済むと思ったからだ。オレは夜色名詠式を【
「それに?」
「それに……」
冬夜はそれ以上なにも言わなかった。
ただ、黙って雫の顔を見つめている。
雫が首を傾げて不思議そうな表情をしているが、冬夜はただ黙って、自分の瞳を見つめる彼女の瞳を、見つめ返しているだけだった。
ーーそれに、もう一度
なんて言葉、恥ずかしくて口が裂けても言えない。
でも、いつかはきっとーー
「それに……ここから先は秘密だ。オレのプライバシーに関わるからな」
「む。ここまでひっぱいておいてそれはない」
「ハハッ。ごめんな雫。けど、いつか必ず教えてあげるよ」
そのために、彼は戻ってきたのだから。
「むぅ。ヤダ、今教えてほしい」
「ダーメ。教えてあげない」
「…………あのさぁ二人とも。イチャつくのは勝手だけど、ここに私がいるの、忘れないでくれるかな?」
「「………ごめんなさい」」
冬夜の気持ちを教えてほしいとムクれる雫だったが、また空気にされていたほのかが不満げに二人の間に入ったことで、この話題は打ち切りになった。へそを曲げたほのかが先に行くのを、冬夜と雫が慌てて追いかける。
一高に入学して早々に起こった騒動は、これでお終い。
夜色名詠士、黒崎冬夜の波乱の高校生活は、こうして幕を開けたーー。
「ねぇ。待ってよ」
「ん?」
慌てて冬夜がほのかを追いかけようとすると後ろから声を掛けられた。冬夜が声のした方向に振り向くと、小学生ぐらいの男の子が冬夜の方に走ってくる。
その少年は、冬夜の前に立つと、冬夜に一枚の紙切れを差し出した。
「これ、白髪のおじさんがお兄ちゃんに渡してくれって」
「オレに……?」
冬夜は怪訝そうな顔をして男の子から紙切れを受け取った。冬夜は渡された紙を広げてみる。少年は「渡したからね」と言って彼の前から走り去っていった。
どこにでもありそうなメモ用紙に書かれていたのは、たった一行の文だけ。
『また、いずれ……』
夜色名詠士、黒崎冬夜の波乱の高校生活はこうして幕を開けた。
そして、この時彼はまだ知らなかった。いや、漠然とした予感だけは感じ取っていたのかもしれない。
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【第一章 入学式編 完】
はい。と言うわけで入学式編完結となります。
皆さんからの要望が強かった【怒られる主人公】。雫じゃなく真夜さんにやってもらいました。やっぱり子供が危険なことやらかしたら、怒るのは親の義務だよね。
黄昏ファンの皆さんには、イブとアーマを出してあげられなくてごめんなさい。交流会編、九校戦編で出せるよう頑張ります……!早くだしたいよぅ……。
まぁ、つい我慢できず投稿した今作品ですが、オールフリーの予想を越えて反響が大きかったのは嬉しいです。皆様これからもよろしくお願いします!
………そんなわけで、ちょっと皆さんにお知らせが。
オールフリーのリアルでの生活(主に大学の中間試験で)が忙しくなったので、少しの間、更新をストップしたいと思います。具体的には二週間。もしかしたら三週間かかるかもしれません。
これは、第二章の方も中々執筆が進んでいないため、ストックを少し増やしたいという意味もあります。………一応五話分あるんですけど、ストーリー的にまだまだなので。
頑張って執筆するので、皆様待っててくださーい!!
※予告通り1/24を持ちまして、これまで公開していた交流会編をすべて削除しました。次週、1/31から改訂版投稿開始です!