魔法科高校の詠使い   作:オールフリー

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ほのか&深雪「「ゑ?」」

まさかの新ヒロイン登場(大嘘)。本編をどうぞ!




司波達也、恋の季節(?)

 『一高』『試験』と言えば、今年度は忘れてはならない重要人物がいる。そう、実技はからきしダメなくせに理論はぶっちぎりで一位を取った、まあ何ともアンバランスな自称劣等生こと、司波達也のことである。

 叔母が山梨の本宅で荒ぶり、従弟(いとこ)が将来のお嫁さん候補の家でイチャイチャし合っている頃、一高の入学試験で理論一位を取った彼は「テスト?そんなことオレには関係ない」と言わんばかりにテスト勉強そっちのけでニュースサイトを閲覧していた。定期試験まで一週間を切ったというのにリビングでくつろぐというこの余裕。やはり天才は頭の出来が違うのだろうか。

 

「なるほど、そういう方法もあるのか」

 

 だが、なにも暇潰しにリビングにいるわけではないらしい。海外のニュースサイトが表示された画面を食い入るように見る彼の目はまさに真剣そのもの。最愛の妹である深雪を守護する『ガーディアン』とは違う、【ループ・キャスト・システム】を完成させた稀代の天才魔工師『トーラス・シルバー』としての顔が出ていた。ニュースサイトに表示されていた断片的な論文データを読んで彼は物思いに耽る。

 

「確かにあれも永久機関に近いものだからな。三大難問に拘らず、永久機関を製造してエネルギー問題の解決させるには一番の近道。しかし魔法式の保存方法が分からなければどうしようもない。だがそれを古式魔法で補うとは……こうなればオレも忍術以外の古式魔法を学ぶべきか」

 

 『錬金術とか面白そうだな』とこっそり一人で盛り上がる十五歳の青少年。ニュースサイトにある文だけでなくFLTに送られた永久機関の製造方法データにも目を通し、古式魔法と現代魔法の融合に未知なる可能性を感じるマッドサイエンティスト。心なしか強い感情など失っている自分の胸に熱いなにかが沸き上がって来るのがわかる。それは『やる気』という言葉でもあり、『対抗心』と表せられる感情だと彼は知らない。

 

「オレも負けていられないな」

 

 思い立ったが吉日。よしでは早速、とディスプレイを操作して学校の教科書、ではなく自身が進めている【重力制御型熱核融合炉】研究用のファイルともう一つ推し進めている【常駐型重力制御魔法】用のファイルを呼び出す。彼自身の最終目標としている熱核融合炉の研究はまだまだ実現には程遠いが、常駐型重力制御魔法(飛行魔法)はあと一歩のところまで来ている。細かいところのプログラミングがまだ終わってないため、やりきってしまおうと思ったのだ。学校の定期試験?そんなものは頭の中からとっくに抜け落ちている。

 ファイルの読み込みが終了し、飛行魔法のファイルを展開してさぁ打ち込もうと思った矢先ーー彼のいるリビングの扉が開いたのを彼は知覚した。

 この家にいるのは彼の他にもう一人しかいないので、振り返るまでもなく扉を開いた人物を当てられる。

 

「お兄様、深雪です。そろそろお茶にしませんか?」

「ん、そうだな……。じゃあそうしようか深雪」

 

 展開した研究用のデータを閉じ、自室からやって来た達也自慢の妹、司波深雪が彼にそう言う。妹の誘いを重度のシスコンである彼が断るはずもなく、達也はそのままリビングに隣接しているキッチンに向かった深雪が、挽きたてのコーヒーとお菓子を乗せたトレーを運んでくるのを待った。

 良いところだったのに、とは達也は言わない。彼にとって妹との時間は、何よりも優先すべき事柄なのだから。

 一口、二口と二人一緒に無言でコーヒーを楽しむと、深雪は兄の顔を見て話題を振ってみる。

 

「ところでお兄様、先程は端末でなにを見ていたのですか?なにやら盛り上がっていたようですが」

「………聞いてたのか?」

 

 深雪の発言に達也はさっきまでの自分の言動を思い返す。まるで、子供のように(と言っても十五歳は法律上から見てもまだ子供だ)はしゃいでいた自分の姿を見られていたことに彼は気恥ずかしさを覚える。意識せずに低いトーンで話してしまったからだろう。兄の機嫌を損ねたと捉えたのか、深雪は慌てて達也に謝った。

 

「も、申し訳ございません!あの、お兄様が珍しく興奮なされているようだったので、つい耳を立ててしまい……」

「いや良いんだ。お前は悪くないのだから謝らないでくれ」

 

 俯いて上目遣いに自分を見る妹に達也は、いつものように頭を撫でる。こちらもまた、いつも通り目を細め心地よくなってしまう。しばらく二人でそうした後、達也は深雪への回答として空中でディスプレイを再度展開し、先程見ていたニュースサイトを表示させた。

 

「つい一時間ほど前に牛山さんから連絡があってな。お昼には日本にも流れるだろうが、海外の学会でこんなものが発表されたんだ」

 

 周囲から『枯れている』との評価をしばし受ける彼を熱中させた理由(わけ)。イギリスの大手新聞が周囲に先んじていち早く乗せたその記事(英語表記、日本語ルビあり)を深雪は読む。長文かつ難解そうな内容だったが、その記事はこんな見出しで始まっていた。

 

【CIL華宮(カグラ)副所長、【マクスウェルの悪魔】の開発に成功。夢の永久機関創造へ一歩前進】

 

 なんだか難しそうなテーマとサイトに乗っている開発者だという写真。目元を覆い隠す機械帽を被った一人の少女の姿が、そのサイトにはあった。

 

「この方は……CILというと、黒崎さんのところの」

「あぁ、【Countered Irregular's Laboratory(対名詠生物総合研究所)】。【International Magic-skilled holder agency(国際魔法師派遣会社)】と並んで《対名詠生物》といえばすぐにその名前が出てくる有名研究所だ。刻印儀礼をはじめとした非情報体、例えば精霊とか名詠生物のような存在に対抗する技術に関しては随一と呼ばれる研究所だな。

 お前ももう知っているだろうが、現在魔法師が名詠式で名詠されたものに事象改変を行えるよう、特殊な仕様を施してある刻印儀礼入りのCADはこの研究所でのみ製造されている。だから研究所としての面の他に、企業としてはその方面での対応をまだ得意としていない各国の警察組織や軍、少し変わったところでは英国の『王立首都警護近衛騎士団』のような組織で高く評価されている、新進気鋭のCAD製造メーカーでもある。

 

 そして、このサイトに写っているのがそのCILの現副所長の華宮氏。現所長の冬夜が現在休業中だから、実質CILトップの、【電子・魔法工学の鬼才】と呼ばれた女性研究員だよ」

 

 達也が機嫌よくサイトを見つめながらそう言う。普段家族として一緒に生活しているが、ここまで機嫌の良い兄の姿というのは深雪でも中々見られない、レアな光景だ。可能なら兄のこの微笑を写真に収めてアルバムに収めてしまいたいが、カメラも何もないので諦める。ニュースサイトに載っていた記事を一通り読み終えると深雪は兄がこの記事の何に興味を示していたのかが分かった。

 

「【マクスウェルの悪魔】……。永久機関というと、お兄様が開発を目指している【慣性無限大化による疑似永久機関】に関するものですか?」

「いや、同じ永久機関といってもそれとは全く違うものさ。………気になるか?」

「は、はい。少し」

 

 いくら兄が天才魔工師であるといっても、深雪も達也と同じぐらい魔法工学に長けているわけではない。一般的なコンピュータやディスプレイの操作設定ぐらいの扱いは彼女も心得ているが、『永久機関』やら『マクスウェルの悪魔』やら、そういった少し深く調べないと知りようもない知識に彼女は無縁だった。マクスウェルの悪魔など、今聞くまで全く知らなかったワードなのだ。

 しかし達也は、マクスウェルの悪魔がどういったものなのか知っているがために、深雪にも理解しやすいものだと分かったうえでーーこの時彼は『そういえばもうすぐ定期試験だな』と思い出したーー深雪に復習がてらクイズを出すことにした。

 

「じゃあ簡単に説明しよう。深雪、永久機関の説明をする前に【熱力学の第二法則】について簡単に説明してごらん」

「『エネルギーに常に一方向に流れ、反対方向には流れない』……例えば、電気で水を暖めることは出来ても、温水から直接電気は作り出せない、ですよね」

「その通り。【エネルギー保存の法則(エネルギーの総和は常に一定で、状態が変化しても変化前後でのエネルギーの総量は変わらない)】と並ぶ有名な法則だ。現代魔法が真っ向から否定しているものでもある。

 特に『熱』というエネルギーは最も変化しやすく、いろんなエネルギーに変えやすい代表的なものだ。

 では深雪、熱湯が入ったカップと冷水が入ったカップ。この二つを接触させたまま置いておくと、二つのカップにある水はこの後どうなる?」

「均等な水温になります。熱いお湯から冷たい水へ、エネルギーが流れますから」

 

 さすがは優等生といったところか、達也の突然の質問に淀みなく深雪は答えてみせる。しっかりと基礎が身に付いているのを確認したところで、達也は本題に入った。

 

「そう。温度差が生じているところはそれだけエネルギーが生じる。特にさっきのカップの例えを逆転させた魔法が【氷炎地獄(インフェルノ)】だ。均質になった気温を、わざと差が生じている状態にする。さっき言った熱力学の第二法則に反する現象だな。

 

 では深雪、想像してごらん。温度差が違う二つの空気の部屋を隣接して設置する。当然、温度差が均一になるようにエネルギーの移動が起こるだろう。この時エネルギーを取り出すことは百年前でも可能なことだ。

 

 もしもその後均一になってしまった二つの箱を、 ()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「--あっ!」

「そう、今いったソレがまさしく【マクスウェルの悪魔】。提言されてから長年科学者の頭を悩ませ続けてきたニクい奴さ。だが、ついに奴はこの華宮という科学者率いる研究チームの軍門に下ったらしい。

 どんな研究方法でアレを作り上げたんだろうな……。この手の魔法を継続的に発動させるには()()()()()()する技術が必要不可欠なんだが、それも作り上げたというのもすごいところだ。オレも【ループ・キャスト・システム】を作り上げたが、このレベルまでにはまだ達してないから、このニュースを聞いたときは驚いたよ」

 

 達也のこれ以上ないというほどの賞賛に深雪も驚愕してしまう。永久機関というシステムを作り上げることがいかに困難か、なんとなく感覚的でしかないが理解できた彼女は、もう一度ニュースサイトに映る華宮の顔を覗き見る。達也が苦心して作り上げようとしている【魔法式の保存技術】。それを彼女は如何にして作り上げたのだろうか?

 自分で考えてもわからないのは目に見えていたので、深雪は素直に達也に聞いてみることにした。

 

「お兄様。お兄様も開発を目指している『魔法式の保存する技術』を、CILの方々はどうやって作り上げたのですか?」

「牛山さんが転送してくれたデータによると、どうやら『魔導書の原典』にあるシステムを参考にしたようだね。オレもまだ詳しく見ていないから、あまり細かいところまでは理解できてないんだけど」

「魔導書というと、確か、古式魔法の真髄が書かれた奥義書のこと……だったでしょうか?」

「んー。確かに一般的な『魔導書』の説明としては深雪が今言ったことで正しいんだけど、今回の場合は『魔導書全般に共通する能力』だからな……。どう説明するべきかな……」

 

 深雪の不安げな質問に達也はどう答えるべきか考えあぐねる。達也が得意としているのはCADのプログラミングであって、本来古式魔法の理論は管轄外も良いところなのだ。術式さえ見せてくれるなら、それを理解して現代魔法風にアレンジしたり彼なりの工夫を加えることができるが、知識としても経験としても、各古式魔法に関わる事柄については『あまりよく分からない』というのが彼の率直な答えだった。

 正直に言えば、妹に誤った知識を吹き込んでしまうことは達也としては絶対にしたくない。だからここで『分からない』と言ってしまおうかと思ったが、自分を見つめて答えを待っている妹の疑問を解決するため、彼はたっぷり三秒ほど考えた結果、説明することにした。

 

「--最初に言っておくが、オレは古式の専門じゃないから詳しいことはわからない。もしも魔導書関連のことが知りたかったら、師匠か冬夜のところに聞きに行ってくれ」

「分かりました」

「よし、じゃあオレがわかっている範囲内で話すよ。前に冬夜に聞いた話だと、どうにも古式魔法の奥義書、つまり魔導書の原典には、原典の写本や単なる魔法陣を書いた紙と違って、とある特別な性質が加わるらしいんだ」

「性質……ですか?」

「あぁ、なんていうのかな。『その道の知識が詰め込まれた魔導書そのものが、その知識を後世に伝えるためのシステム』というべき機能がついているらしい。あまり多く解析が済んでいなくてアイツもあまり教えてくれなかったんだが、どうにもその中に【自己修復術式】らしいものが存在しているみたいなんだ。魔導書を燃やして灰にしても、刃物で切断しても完全に元に戻る魔法のようで、魔導書の中でもその術式が組み込まれているものは破壊することが出来ないんだそうだ。

 話を聞いた限り多分オレの【再成】と同じ魔法だと思うんだが、なぜ【再成】が魔導書の原典に組み込まれているのか、これ以上はオレにもよく分からない」

 

 以前会話の流れでで冬夜に聞いてみた『魔法式の保存』に関する知識。その時のことを正確に思い出しながら彼は説明を続けていった。深雪は、かつて自分の命を救ってくれたことのある奇跡のような魔法が、兄以外の存在にも使えることに目を丸くした。

 

「だが、少し考えれば、案外不思議でもないのかもしれない。魔導書は文字通り魔法の知識が積み込まれたものだ。ルーン文字のような書く(刻む)だけで魔法的意味を持つものもある以上、記述されたそれらの知識が複雑に重なり合った結果としてそういう魔法的性質が付いてもおかしくなはい。

 

 だけど重要なのはそこじゃない。重要なのは、いくつもの魔法的要因が重なると何の変哲もない紙の束そのものにもそうした性質が付与されて、自己修復術式のような魔法を自動で発動し続けるという()だ。

 

 今回CILが開発した永久機関は見た目は冷蔵庫ぐらいのサイズの装置なんだけど、外周部分が百以上もの薄い層に分かれていてその一つ一つに刻印魔法が刻まれているらしい。一ミリのミスも許されない、かなり繊細な設計みたいだから実用化と販売はまだ出来ないみたいだけど、それでも魔法式を保存する技術を作り上げたのは間違いない」

「そうなんですか」

「うん。しかし仮にこれが実現すれば世界中のエネルギー問題は解決する。加重系魔法の三大難問は変わらず挑戦していくけど、発表される頃にはもう無用の長物になっているかもね」

 

 『先を越された』とでも本人の気づかないところではそう思っているのか、自嘲気味にそう笑って見せる達也に深雪は身を乗り出して否定した。

 

「そんなことはありません!お兄様が製造した永久機関ならCILに負けないものが出来るはずです!いえ、むしろお兄様の作り上げた永久機関の方が、より良いものになっていると私は思います!!」

 

 まだ出来上がってもいないのに自分を信じてそう言う妹に、達也は温和な笑みを浮かべて優しくその頭を撫でた。 

 

「ありがとう深雪。お前にそう言ってもらえるなら、まだがんばれそうな気がするよ。

 だけど、やっぱりすごいな。さすがCILが誇る電子・魔法工学の鬼才。刻印儀礼だけでなくこんなものまで作り上げるとは、やっぱり一度会って話をしてみたいよ。本当に」

「…………ずいぶんとこの方のことが気になっているんですね。お兄様?」

「まぁな。魔法工学の分野では世界的に名前が知られている有名人だから、気になっているというのも嘘じゃない。人嫌いなのかどうなのか知らないが、彼女はあまり人と話さないらしいんだ。学会には出ても懇親会みたいな場では見たことはないと言われているぐらいで、彼女と話したことがあるのはホンの一握りらしいぞ?」

 

 達也は写真に写る華宮の姿をじっ、と見つめる。彼の脳内では今まさに『加重系魔法による疑似永久機関』を開発するにはどうすれば良いか、ものすごいスピードで思考が駆け巡っているのだが深雪はそれに気付かない。達也の肩に頭を乗せ、甘えている彼女としては、敬愛する兄の心を掴んでいる(と思っている)画面上の女のことが気になって仕方がなかった。

 気分的には、恋人が自分の前でほかの女の話をしているのと同じようなものだ。

 

(こんな素顔を隠している方のどこがよろしいんでしょうか……。見た感じ雫と似たような体型だと私は思うのですが……。いや、それよりもお兄様はやはり頭の良い女性の方が好みだと分かっただけで良しとしましょう。彼女の素顔は後で黒崎さんに聞いて確かめれば大丈夫)

 

 真夜さんと同じく今日も深雪さんは平常運転みたいです。

 ………だが、そうやってのんきにしていたのも本当にわずかな間だけ。すりすりと子猫のように達也に甘えていても反応が薄いことに気付いた彼女は、いつまでたっても達也がサイトの画面に映る女性研究員から目を離さないのを見て、感情メーターが一気にマイナスへ振り切ったのを自覚した。兄に悟られないよう、魔法で暴走する一歩手前で彼女はどうにか自分の心を抑える。だがそれにしても、彼女的には今の状況は面白くなかった。

 

(…………お兄様はよほど華宮さんのことが気になっているみたいですね。まったく、普段は女性には興味ないようなそぶりをしているくせになんでこんな……)

 

 あぁ、『デレデレ』がどんどん悪化していくのが分かる。なぜわずか数秒でこんなことになってしまうのか。まるで意味が分からない。幼少期より母親から淑女になるよう教育されてきた彼女にしては珍しく華宮のことを『気に入らない』と素直に思い、表情もブスッとした可愛らしくないものに変化していった。

 深雪の機嫌はどんどん悪化していく。そして『デレデレ深雪さん』が闇落ちし始めてわずか五秒後にはーー

 

(私のほうがお兄様のことなんでも知っていますのに……。頭が良いだけのくせして、この機械帽のどこが……)

 

 『ヤンデレ深雪さん』がご登場。どうしてだろう、司波家の食卓はすべて彼女の手料理なのだが、今日は彼女に包丁を持たせてはいけないような気がする。なぜだか分からないが、とてもバイオレンスなことが起こりそうな予感がする。

 しかし、そんな妹の変化には気づかない兄は、鼻歌でも歌いそうな上機嫌な口ぶりで、さらっと妹に話題を振った。

 

「こうなると、IMAとCILが一高に来た時が楽しみだな」

「………………お兄様。今、何と仰いましたか?」

「近く、この華宮っていう研究者を含むCILとIMAのメンバーが一高に来るらしいぞ。ほらここ」

 

 達也がサイトをスクロールさせて示した場所を、深雪が身を乗り出して確認する。生徒会所属の彼女でも知らなかったこととなると、どうやら教師陣が独自で進めていたことらしい。「交流会のこともあったし、この来訪に関しては全部教師陣がやったんだな」と達也は推察した。

 一方の深雪はそんなことを考えている余裕はないようで、必死で達也が示してくれた部分周辺の記事を読む。

 

「『なお、今回現代科学の常識を覆した華宮氏を含むCIL・IMAの幹部は、近々日本の国立魔法大学付属第一高校に見学しに行く模様ーー』………え!?本当に一高に来るんですか!?」

「あぁ。タイミングを合わせて是非とも話を伺いたいものだ。冬夜に頼めば出来るかな」

 

 交流会後の寝耳に水なイベントの開催に彼女は動揺するが、達也はむしろ大歓迎といった雰囲気だ。基本トラブルやイベントには消極的な彼がここまでやる気を見せるのは珍しい。そんな兄の、無邪気な少年のような熱の籠った態度を見られたことに深雪は嬉しく思う反面、『華宮に合わせたくない』という醜い嫉妬の感情が正面衝突してどう返せばいいのか困り果ててしまう。他のことに頭が回らない。こんなことをここで言うのもなんだが、達也にとって深雪が一番のように、深雪にとっても達也が一番なのだ。

 

(これはもうーーテストどころじゃありません!早急に対策を立てなければッ!!)

 

 なぜだろう、なぜか取り返しのつかない瞬間を目撃したような気がした。

 

 

 かくして、本日六月二十六日。一高中間考査まで残り六日間と迫った今日。

 他の生徒たちが試験範囲の復習に勤しむ中、自称劣等生と、自他ともに認める優等生の兄妹である司波兄妹は、『テスト勉強をしない』という暴挙に打って出たのである。

 




今日のまとめ。【悲報:華宮さんが原作ヒロインにロックオンされました】

……さて、華宮はどうしようかな、一足先に昼ドラでもやるべきかな(全然考えてない)。カイロ持たせれば平気だよね?

 あ、今作品の古式魔法に関するデータは、すべて『とある魔術の禁書目録』にあるものを参考にしていきます。魔法科用に解釈が変わる可能性はありますが、大体あそこから引っ張ってきます(そのうち天使とか出てくるかも、ていうかSIRENのアノ人?は天使だし出るのかなぁ)

 ですが、作者は旧約全巻と新約五巻ぐらいまでしか読んでないので、原典とかの新情報とかあってもわかりません。一応wiki見て頑張りますが、あまり期待しないでください。魔法科用に解釈を変えることもあるので、あくまでベースは『禁書目録』だということでどうかよろしく。


………ふぅ。やべぇ、ストックねぇ。どうしよう……(困)

感想お待ちしてます。次回もお楽しみに!

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