魔法科高校の詠使い   作:オールフリー

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オラトリオ投稿、まさか来るとは思ってなかった……。投稿してくれたお二人に感謝です。この場を借りてもう一度お礼を。ありがとうございます。(ペコリ)

投稿してくれたものはうまく出せるよう頑張ります!

さて説明会。冬夜たちはどうなるのでしょうか。本編をどうぞ!


再会、そして

 夜色名詠士の出現に、この騒動を見ていた周囲がざわつくのも束の間だけだった、その後すぐに生徒会長・七草真由美と風紀委員長・渡辺摩利がやって来てこの騒動の当事者たちに風紀委員会本部に出頭するように命じた。

 風紀委員による取り調べを総合して摩利が判断した結果、攻撃性のある魔法と名詠生物を喚んだ一科生側の生徒には罰則を与え、二科生の生徒と深雪、雫とほのかは罰則なしという処分が下った。

 本来、校則によれば魔法を構内で不適正使用をした場合は退学になるのだが、一科生の魔法は発動前に冬夜が破壊していたため、退学にはならず数日間の停学処分となった。この処分にレオ、エリカ、美月は不服そうな表情をしていたが、三人ともそれ以上はなにも言わずに引き下がった。二科生側について言えば、ことの始まり美月が啖呵をきったからだったが、それは罰則の対象にならない上、エリカと冬夜の魔法使用も正当防衛と見なされて罰則なしとなった。

 

 まぁ当然といえば当然の結果になったのだ。

 

 そしてようやく取り調べから解放された冬夜たちは一科生のグループから憎たらしいそうな目で睨み付けられ、再び騒動を起こしそうな雰囲気になるものの、これ以上罰を上げられても困ると判断した一科生たちは睨み付けるだけで黙って帰っていった。

 

 日も暮れかけている中、処罰を受けなかったメンバーは、未だに一高の校内に留まっていた。

 

「なぁ、あいつら反省すると思うか?」

「さぁな。余計恨みを増幅させるだけかもしれん」

 

 冬夜の問い掛けに達也は淡々と答える。罰せられる彼らを哀れには思うが、だからと言って同情する気はさらさらない。『プライドが傷ついた』というくだらない理由で傷害・殺人未遂を犯した相手に『子供だから』という理由で庇おうとする気は冬夜には微塵もない。

 

「これで少しは自覚してほしいもんだ。『魔法』がいかに強力で、恐ろしいものなのか」

 

 冬夜が願うようにそう言う。五年間海外にいて骨身に染みた教訓のひとつだ。少しだけ早く社会に出た先輩として教えられるものは教えておかなければならない、そう冬夜は考えていた。

 

「さて、とりあえず聞くけどみんなケガないよな?」

「おう。おかげでな」

「冬夜くんがキレたあたりは、正直命の危機を感じたけどね」

「怖かったです。本当に……」

「そうか。怖がらせてごめんな」

 

 振り返って昇降口から出てきたレオ、エリカ、美月の三人に冬夜そう言う。三人ともそれぞれの答えを返したが、その表情は明るい。『空間に亀裂が走る』という異常を目にしてもパニックになってないのは、さすが魔法師(の卵)だからだろうか。どちらにしろ冬夜にとってはありがたい反応だ。自分のやったことだとはいえ、気味悪がられるとどんなに気にしないようにしていても心が傷ついてしまう。だから冬夜も眉尻下げるだけにして、次はこんなことをしないように心に留めた。

 

「さて………」

 

 無事を確認したところでさっき助けた幼馴染のほうに体を向ける。騒動もケリがついたのだし、話しかけるなら今しかないのだがどうにも体が動かない。気恥ずかしさも手伝ってなんて言えば良いのか分からなっていた。

 

「あー、えっと……」

 

 なにか言おうと思ってもこんな言葉しか出てない。視線の先にいる二人の少女も同じような状態らしく、なんだか気まずい雰囲気が三人の間に流れる。せっかく再会したのに、この騒動のせいで話を切り出すきっかけがなくなってしまった。

 

「………はぁ」

 

 だが、それを見かねた深雪が黙って背中から冬夜を押した。何事かと思って冬夜が振り向いてみると、深雪は「こういうのは待たせた方が言うんですよ」と視線で伝えて雫とほのかの方を見る。そんな深雪の反応で事情を悟った二科生の友人たちも次々に背中を押して無理矢理前に進ませる。

 背中を押された冬夜は恥ずかしいのをごまかすように視線を逸らして二人のそばまで歩く。

 

「えっと……さっきも色々ありすぎたし、話したいこともたくさんあって、最初に何を言ったら良いのか分かんないんだけど……」

 

 恥ずかしそうに片手で自分の頭を掻きながら、二人に話し掛けた冬夜はそこで一旦言葉を切り、手を下ろして真っ直ぐ彼女たちの顔を見た。

 

「とりあえず、その、一言言わせてくれ。――ただいま」

 

 五年前とよく似た笑顔。

 同じ目線で話していた幼なじみは背も高く体格も男らしくなり、そして――格好よくなっていた。

 

 二人の少女は顔を見合わせる。

 五年間ずっと、音沙汰もなくどこで何をしているのか全く分からなかったこの幼馴染。文句の一つや二つで済まないほど言いたいことはたくさんあったけど、今はそんなことは全部どうだって良い。

 ただ一言。もしも再会出来たなら必ず言おうと二人で決めていた言葉がある。

 

 五年前に別れた時はぐしゃぐしゃの笑顔だったが、今は二人が出来る最高の笑顔を浮かべて――

 

「「おかえり!」」

 

 五年前に交わされた小さな約束は、笑顔と共に成就した。

 

 ◆◆◆◆◆

 

「それでは、『第一回チキチキ・冬夜のおごりでケーキをおいしくいただきましょうの会』を始めたいと思います」

『イエーイ!!』

「………はい?」

 

 達也のその呼びかけにその場にいた冬夜以外が盛り上がって拳を挙げて返す中、そんな会をいきなり開かれて話に付いていけない冬夜は目を白黒させて聞き返してしまった。

 

「いやいや待て待てお前ら。いきなりなんて会を開くんだ。しかもみんなケーキ頼む気満々だし!!」

「ケーキだけじゃないぞ。ドリンクも頼む予定だ」

「それはなんの補足説明だ達也!?あとエリカ、目を輝かせながら特別(スペシャル)メニューを見ない!!」

「えー。だっておいしそうなんだもんこのチーズケーキ。この間来た時は高くて頼めなかったのよねぇ」

「だからと言ってここぞと言わんばかりに頼むか普通!?」

「あ、あのぅ……私はこのアップルパイが食べたいんですけど……」

「美月まで頼む気なの!?」

「ねぇ雫、このチョコケーキってどんな味がするのかしらね」

「………私としてはこっちのフルーツタルトが気になる」

「そこも楽しげに相談するな!っていうか、こっちの話一切聞いてねぇし!!」

「あ、すみませーん。このイチゴのショートケーキを一つ」

「あ、オレもそれで」

「そして何事もなったかのように注文しないでくれるかほのか?!最後に何気なくレオも頼むな!その顔でケーキは似合わねぇよ!

ていうか、なんで奢らなきゃいけないんだ!?」

『お金持ってるだろ(でしょう)、夜色名詠士』

「そこでハモるなぁあああああ!!!」

 

 はー、はー、はー。と連続でツッコミをした冬夜はぐいっとお冷を飲む。氷に冷やされた水に頭も冷されていく。流石にこの場にいる七人全員に対しツッコミ役が一人しかいないと労力が尋常じゃないほど大きい。ホンの数秒のやり取りでしかないのにどっと疲れが出てきた。

 

なんでこんなことになっているのか、順を追って説明すると、雫とほのかにめでたく再開出来た冬夜は「じゃあお祝いしなくちゃだね!」というエリカの発言に乗っかり、入学式に行けなかったケーキ屋へ全員で足を運ぶことにしたのだ。もともと深雪の友人であった雫とほのかはエリカの社交性の高さにフォローされながらあっという間にその場になじみ、いつの間にかお互いを名前で呼び合うようになっていた。今も女子で集まってキャイキャイと楽しそうに談笑している。

 

「くそぅ。なんだこのアウェー感。一人だけ仲間外れにされたようなこの感覚はいったいなんなんだ」

「気のせいじゃないか?そんなことよりお前もなにか頼め。ほら、店員がきたぞ」

「むぅ…………」

 

 冬夜も仕方なくケーキを一つ注文し、全員にケーキが来たところで冬夜への質問コーナーが始まった。

 

「しっかし驚いたぜ。お前がテレビでよく騒がれる夜色名詠士だったなんてなぁ」

「だよねぇ。私てっきりそんなのメディアが勝手にでっち上げただけだって思ってたもん」

「私、もっと年配の方だと思ってました」

「まぁよく言われるよ。『お前があの夜色名詠士なのか!?』って。達也はそんなに驚いてないみたいだったけど、ネットかなんかでオレのことを知ってたのか?」

「いや。今日はじめて知ったよ。まさか、初日から遅刻するような奴が世界中の名詠士たちの憧れの的だとは予想外だった」

「………オレ、お前になにか恨みを買うようなことをしたかな?」

 

 達也の毒舌に冬夜はツッコみ、他は苦笑する。出会ってまだ二日目。まだ恨まれるようなことをした覚えがない冬夜はどうすればいいのか分からない。

 

「五年間どこをほっつき歩いてたの?全然連絡くれてないし、心配したんだよ?」

「ごめんほのか。連絡を取りたくても取れなかったんだ。ずっと海外にいたしね」

「海外?どこの国に行ってたの?」

 

 雫が首をかしげて冬夜に聞いてくる。冬夜は指を折りながら訪れた国の数を数えてみた。

 

「んー。とりあえず大国は全部行ったかなぁ。日本、USNA、大亜連合、新ソ連、東西EU、アラブ同盟、インド・ペルシア連邦、ブラジル、台湾、あとその他名もなき小国家が多数。楽しかったよ」

「まるで世界一周旅行ですね」

「まるで、じゃなくて本当に世界一周してきたよ。イギリスでクーデターが起きた時に王家の人を助けたり、だだっ広い新ソ連の雪原の中で死にかけたり、USNAで戦略級魔法師と丸一日鬼ごっこをしたりと、大変充実した世界一周旅行だった」

「充実ってレベルじゃないわよねソレ?」

「むしろよく生きてるよなお前」

 

 しきりに頷く冬夜にレオとエリカは反射的にツッコんでしまう。懐かしい旅行の思い出も、内容は人生でも経験しないであろう綱渡りの旅行だったらしい。五体満足で生きていることが不思議でならないと二人は思った。

 

「ちょっと事情があって国籍なくしてさ………生きていくためには仕方なかったんだ」

「どんな事情があったら国籍をなくすんだよ……」

「別に話してもいいけどそしたら十師族の刺客に狙われるぞ?明日には塵も残さず消滅させられるだろうな。肉体的にも、社会的にも」

「怖ぇーよ!」

 

 けらけらと笑いながら(ただし目は笑ってない)脅してくる冬夜にレオは身を引いて距離を取ろうとする。ここで試しに聞いてみようか、という選択肢もないことはないのだが、さっきまでの旅行内容を聞いた後だと聞く気も失せる。

 

「まぁそういうわけだからオレの過去には触れないほうがいい。波乱万丈かつ異常な十五年だ。きっと知ったら後悔するよ」

「お、おう。そうしておくぜ……」

 

 レオが完全に引いたところで今度は達也が質問した。

 

「じゃあ比較的最新の話をしようか。冬夜、お前あの時何をしたんだ?」

「ん?あの時って?」

「お前が北山さんと光井さんを助けたときだよ。あまりの早業だったんで、何をしたのか分からなかった」

「あーあの時か。いや実はそんなに――」

「え?なになに解説してくれるの?冬夜くん」

 

 内心気になっていたのか、女性陣も身を乗り出して聞いてくる。エリカにいたっては、興味津々といった表情をしている。

 

「あれ?みんなも聞きたい感じ?」

「そりゃあ……助けられた身としては、どうやって助けてくれたのか気になるし」

「………まさしく神業」

「あっという間に終わったもんね」

 

 あの時の冬夜は雫とほのかを助けるために最速で魔法を構築したため、魔法を視ることの出来る達也以外には冬夜がどんな魔法を使って、何をしたのかイマイチ理解出来ていなかった。

 理解していた達也が聞いた理由は、冬夜からある魔法の詳細を聞くためだ。

 

「そっか。じゃあ説明するけど、そこまで大したことはしてないよ?起動式を想子(サイオン)弾で破壊して、【空間移動(テレポート)】で二人のそばまで行き、そしてまた【空間移動(テレポート)】で逃げた。それだけ」

「………はい?」

「言っている意味が分かんねぇんだけど?」

 

 冬夜のしたことを理解していた達也と、今の説明で理解できた深雪以外の全員がポカンとした顔をする。さすがにこれだけで理解するのは難しいか。と冬夜は思い、一から説明することにした。

 

「じゃあ最初から説明するか。レオ、現代魔法の【改変】がどういう行程で行われているか説明できるか?」

「それぐらい当たり前だぜ。この世界に存在するあらゆる事象――水やら空気やら、土やらなにやら。とにかく無限に存在する事象には、それを支える情報体、オレたちが【エイドス】と呼んでいるものが存在している。

 現代魔法っていうのは、このエイドスを魔法式によって一時的に書き換えることで、現実では起こり得ない様々な事象を引き起こすことだ」

「よし。満点だ。ちなみに補足で説明すると、そもそもこの世界に存在していないものを喚ぶ魔法である名詠式によって喚ばれた存在である名詠生物や現象は、この現代魔法の【改変】の対象外となる」

「それも知ってるぜ。で、それがどうなるんだ?」

 

 興味津々といった表情のレオに「まぁ落ち着け」と冬夜は返して話を続ける。

 

「事象を『改変』するにはエイドスに干渉することが必要で、それには魔法式が不可欠だ。では魔法師がCADを用いて魔法式を作り、エイドスの『改変』を行うまでの手順をエリカ、説明してくれ」

「えっ、アタシ!?えぇっと………

 ①CADにサイオンを送り、それを受けCAD が起動式を展開。

 ②展開した起動式を魔法師個人の精神内部にある魔法演算領域に送り込み、座標などの変数を入力し、魔法式にする。

 ③魔法式を意識と無意識の狭間にある【ゲート】からエイドスに投射。魔法式がエイドスの情報を書き換え、書き換えられたエイドスを通じて事象が変わる。

 ………だよね?」

「あぁ合ってるぞ。だから不安そうな目でオレを見るな。

 さっきエリカが説明した通り、現代魔法の『改変』は①~③の行程を経て行われる。

 逆に言えば、この①~③の行程を経なければ魔法は使えない。

 例えば、展開して魔法演算領域に読み込んでいる途中の起動式の流れを妨害するとかな。

 オレはあの時、サイオンの塊を起動式に直接撃ち込むことでこの行程を妨害したんだ」

「……それってすごいことなんでしょうか?」

 

 美月が首を傾げてそう聞いてきた。確かに聞いただけなら、誰にでも出来そうな方法ではある。

 しかしここで、達也が補足説明に入った。

 

「スゴいことなんだぞ美月。この方法は、下手をすれば魔法師にダメージを与えかねない危険なやり方で、高いサイオンコントロール技術と正確な射撃技術があって初めて出来るんだ。

 恐らく七草会長なら同じことが出来るだろうが、大半の人は無理だろうな。それを一瞬のうちに、複数の起動式すべてに撃ち込むなんて見事としか言いようがない」

 

 この時初めて全員が理解できたようで「おぉー!」と声が上がった。

 

「冬夜くんすごいね!しばらく見ない間にめちゃくちゃ強くなってるじゃん」

「伊達に音信不通だったわけじゃあないんだね」

「ふふん。五年間もなにもしていなかったわけじゃあないぞ?」

 

 幼馴染からの誉め言葉に冬夜はドヤ顔で返す。すでに十五でこのレベルに達しているのなら学校に通う必要も皆無に等しいのだが、そこには司波達也という戦略級魔法師(同類)もいるのでスルーしてほしい。

 

「そうか。じゃあついでにお前の固有魔法についても教えてくれるよな?」

「………………ナンノコトカナー、タツヤクン?」

「とぼけるなよ。無駄に長ったらしい説明でうやむやにしようとしていたようだが、オレとしてはお前のテレポートの方が百倍気になるんでな」

 

個々の魔法師が持つ固有の魔法について尋ねるのはタブーとされているが、達也はそのタブーを破ってまでも冬夜が引き起こした魔法の暴走(あの現象)の原因を知りたかった。冬夜は腕を組んでどう答えるか悩んだが、別に話したところで誰にでも真似できる魔法ではないので、話すことにした。

 

「わかった。ただしオフレコでな?コレを狙って変な連中が寄ってこられるのも面倒だ」」

「わかった」

「オレの固有魔法【空間移動(テレポート)】っていうのは時空間に干渉する魔法で、その能力は【A地点にある物質Bを、C地点に転移する】ことだ」

 

 今度の説明は達也でも理解できなかったようで全員の顔に「?」が浮かぶ。

 

「時空間干渉魔法?なにそれ?」

「すまんもっと分かりやすく説明してくれ。それじゃあ意味が分からん」

「あー……えっとだな。いったいどこから説明すればいいんだか……。

 まず前提で聞くけど、みんな【瞬間移動】という意味の【テレポート】ならすでに確立されているのは知っているか?」

「えっと、知らないんだけど……そんな魔法あるの?」

「おぅ……まずはそこからか」

 

 また最初から説明しなければならないことに冬夜は頭を抱える。が、面倒くさがっては後々さらに面倒なことになるのはわかっているので、もう一度最初から説明し始めた。

 

「じゃあ最初からなるべく分かりやすいように説明するぞ?頑張ってついてきてくれ。

 オレの固有魔法【テレポート】は日本語に直すと【空間移動(くうかんいどう)】と呼ぶべき魔法であって【瞬間移動(しゅんかんいどう)】じゃあないんだ。

 具体的な違いはその移動方法で、まず【瞬間移動】と表現される【テレポート】はすでに加重・収束・収束・移動の四工程からなる現代魔法として確立されている。移動させる対象物の慣性を消し、その周りを空気の繭で覆って、それより一回り大きい真空のチューブを作ってその中を移動させる魔法だ。真空のチューブを作る際にその周囲の空気を押しのけて気流が発生するという欠点がある魔法だから戦闘向きじゃなく、暗殺としても標的に察知されるから、精々逃走用の魔法として使われている。

 そもそも名称も【疑似瞬間移動】でインデックスに登録されているわけだし」

「ふむふむ。それで?」

「【空間移動】と表現される【テレポート】――つまりはオレの固有魔法の方は――対象物の慣性を消すわけでも真空のチューブを用いるわけでもない。()()()()()()()()を作ってその中を通る魔法だ。

 離れた地点AとBを結ぶ直通トンネルを作って移動する、って言ったほうがわかりやすいかな?

 空間に干渉する魔法だけど、()()()空間、一般的に『縦・横・高さ』で定義される三次元的な空間ではなく、『縦・横・高さ・時間』で定義される四次元(時空間)に干渉してトンネルを作る魔法なんだ。

 トンネルを通る時間が一瞬だから、離れた場所に一瞬で移動したように見える。だからこれも【テレポート】って言われる。

 ………これで理解できた?」

『だいたいなんとなくは』

「……………………」

 

 これ以上になく優しく教えたつもりだったのだが、完全に理解されてないことに冬夜は涙目になりそうだった。とはいえいきなり『時空間に干渉うんたらかんたら』なんて説明されても理解できないほうが当然だろう。

 

「ま、あまり深く考えない方がいいよ。実を言うと俺も完全に時空間干渉魔法(固有魔法)を理解しているわけじゃないし」

「やはり、わからないことが多いのか?」

「むしろわかっていることのほうが少ないかな。性質上『時間』にも干渉できるはずだけど、過去や未来に行けるわけでもないし、パラレルワールドに行けるわけでもない。発動する際は移動する対象のエイドスの情報量の大きさで飛ばせる距離や個数が変化するから、鉱石のような単純な物質なら何個でも好きなだけ遠くへ飛ばせるけど、人間のように複雑で膨大なエイドスの場合は一度に二人までが限界。その上飛ばせる距離も最大十キロ。かなり不確定な魔法なんだ。

 ……まぁ、それでも唯一はっきりしていえることは――」

「はっきりしていることは?」

「もしこの魔法を暴走させたら、この世界が消滅する可能性がある。ってことかな」

 

 その場にいた全員の脳裏に先ほどの空間に亀裂が入った光景が甦る。冬夜の言った言葉が事実なのだと否でも思い知らされた。

 間違ってでもコイツを激怒させることは避けよう。珍しいことに達也を含めた全員がそう決めた。

 




というわけで原作とは違った展開になりました。
これからどうなるのかは、また次話をお楽しみに。

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