魔法科高校の詠使い   作:オールフリー

9 / 76

ここ最近眠気が酷いオールフリーです。眠い( ノД`)…

今回はオリ話。前回の話のラスト、シスコンだけで済まされるとでも?

とまぁ、本編をどうぞ!


実家

 急に鼻がむずむずしてくしゃみが出た。

 

「……だれか噂しているな、これは。……誰だろう?」

 

 噂されるようなした覚えはないんだけどなぁ。と冬夜は考えながら空間移動を使い森の中を駆ける。足は地面についておらず、現在冬夜は中空に現れては消え、現れては消え、を繰り返して移動している。学校から直接向かうことになった面倒な用事もやっと終わり、家へ帰るのだ。現在冬夜は母親の実家に住んでいるのだが、いかんせん実家が山梨県の山奥にあるものだから学校ヘ通うのも一苦労な状態にある。固有魔法があるので相当なことがなければ遅刻しないが、通学の利便性を考えるならもっと都内のほうに住めば良かったと入学早々後悔していた。(二日目の遅刻は例外とする)

 

「まぁ、住まわせてもらっている身分で言えることじゃないか」

 

 一言そう呟いて空間移動を止めて地面に降りる。見えた先にあるのは大きな屋敷。武家屋敷という言葉がぴったり合うお屋敷があった。山奥にある屋敷という、これが推理小説だったら殺人事件が起きても不思議じゃない場所が、今の彼の住まいである。実際には殺人事件という生温(なまぬる)い出来事ではなくもっと凄惨で生々しい出来事(実験)があったのだが、ここでは割愛させていただく。

 

「………『妖怪屋敷』、か」

 

  自宅に近くなったため地面に降り立った冬夜は、山の麓で自分の家が何と呼ばれているのかを思い出した。なるほど、昼間はともかく真夜中にこの屋敷を見ると確かにそう見えると思った。深い森の中という魑魅魍魎(ちみもうりょう)が出そうな周囲の雰囲気だけでなく、実際に住んでいる人のあだ名を踏まえて言っているのだとしたら、最初に言った人に座布団を一枚差し上げたいぐらいぴったりな例えだ。確かにここには、油揚げを好物にしている化け狐が一匹住んでおり、この屋敷の主として君臨しているのだから。

 

「………母さんが化け狐ならオレは子狐かな」

 

  そんなことを言いながら冬夜は監視カメラやらセンサーやらで厳重に閉ざされた正門まで歩いていく。屋敷へ通じる唯一の道を固く閉ざしているこの門扉は、何人もこの先の屋敷に入ること拒絶しているように見える。

  扉の側まで行くと、この屋敷の主から冬夜の世話をするよう言い遣わされた少女が静かに立っていた。

 

(わざわざ外で待っている必要なんてないのになぁ……)

 

 今年に入ってからいきなりこの屋敷に住み始めた冬夜のことを慕い、甲斐甲斐しく世話をしてくれる女の子。その少女は冬夜が早い時間に帰ってくることを知るとこうやっていつも出迎えてくれる。申し訳ないと思う反面、その顔を見るとどこかホッとしている自分もいることに冬夜は気付いていた。

 学校が始まったのだから、なるべく早い時間に帰宅しよう。そう冬夜は決めてその少女の側まで歩いていった。

 

「ただいま水波。今日も出迎えありがとう」

「お帰りなさいませ。冬夜様」

 

 笑って出迎えてくれたメイドの女の子、桜井水波にそう言った夜色名詠士、黒崎冬夜は暖かな家の中へ入っていった。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 ところ変わって、東京郊外にある大きな豪邸、北山邸の一室では。

 

「はぁ……」

 

 北山雫がため息をついていた。

 別に憂鬱になるような出来事があったわけではない。ただ、一人の恋する乙女としてのため息だった。

 

「冬夜……」

 

 昨日五年ぶりに再会した初恋の人の名前を口にする。ぎゅう、と近くにあったぬいぐるみを抱き締めて寂しさを紛らわせる。

 

 会いたい。会って色んな話をしたい。まだ全然なにも話せてない。

 

 そんな想いが胸のなかでぐるぐる回っている。どうしても話をしたくて何回か電話を掛けてみたが、留守番電話になってしまい伝言を残すだけになった。

 

「会えないなぁ……」

 

 普段はクラスが違うため昼休みぐらいにしか会えないのに、今日はお昼休みも会えなかった。せめて一緒に帰ろうとしたが、用事があるようでそれも叶わなかった。

 しかしそんなことは、どうでもいい。

 

(やっぱり深雪の方が良いのかな……)

 

 思い浮かべるのは放課後の一場面。

 そこで見たのは仲良さそうになにかを喋っている幼馴染みと友達の姿。憂鬱そうな表情をしている達也と一緒に来た冬夜は、なにやら楽しそうな表情で深雪と何かを喋っていた。なんの話をしているのか内容は分からなかったが、ニュースになるような世界的な英雄(ヒーロー)であり、夜色名詠士であり顔も良い冬夜と絶世の美少女である深雪のツーショットはすごく絵になっていた。

 そんな二人に雫は心の底から嫉妬してしまう。

 

 ――自分はすぐ近くにいるのに、どうしてこっちに向いてくれないの?

 ――深雪じゃなくて私を見て。

 

 ぬいぐるみを抱きしめる力を強くして不満や愚痴を胸の中で零す。そうすればそうするほど深雪の姿が強く、大きく浮かび上がってくる。

 高校の入学式で見るまで、あんなに綺麗な女の子は見たことがなかった。まるで、おとぎ話に出てくるお姫様のように可憐な容姿と他を寄せ付けないその才能。異性なら尚のこと、同性でさえ憧れてしまうその姿に雫も羨望せずにはいられない。実際深雪の人気はすごいものだ。入学式終了直後から男子、女子問わずみんなに囲まれていて、同じ教室にいるクラスメイトの男子はみんな深雪のことを気にしている。冬夜の異性の好みというモノが、どういうモノなのか分からないがやはり冬夜も同年代の男子。深雪のことは気になるのだろう。

 いや、普通に考えても深雪に一目惚れしたっておかしくないし、英雄には綺麗なお姫様が一番似合う。

 

 やはり、自分では魅力が足りないのだろうか――

 

(……大丈夫。きっとまだ大丈夫)

 

 頭を振ってネガティブな思考を外に追い出す。

 そう、まだ学校は始まったばかり。明日からは勧誘期間だ。一緒に部活を見回ればいくらだってアピール出来る。

 そう思った雫は布団に潜り明日に備えて眠りについた。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 黒崎冬夜の家庭事情はとても複雑だ。

 それを一言二言で説明するのは難しく、またドロドロでグチャグチャな事情のため、安易に語ることも出来ない。それでも冬夜は今、幸せかどうかと聞かれれば十分「幸せだ」と答えるであろう。少し特殊ではあるものの、かつて彼が望んだ暖かな家庭がそこにはあるのだから。

 だが冬夜はまだ15歳の少年だ。夜色名詠士という肩書きを持ち、魔法師として確かな力量はあるものの、世間一般的には親の庇護下にいるのが当たり前の少年。当然、間違ったことをすれば叱られるのは当然の事であり

 

「あら冬夜さん?入学式の日に家を出てずいぶんと遅くに帰ってきましたわね?二日振りかしら、こうやって顔を合わせるのは。連絡もせずどこをほっつき歩いていたのか、説明してほしいわ」

「ごめんなさい」

 

 こうやって四葉真夜(母親)に説教をくらうのも当たり前の事なのである。現在進行形で冬夜は椅子の上に正座して座っており、真夜はとびきりの笑顔でそう言っている。見た目は全く怒ってないように見えるが、その笑顔の裏は青筋を何本も浮かべているに違いない。

 真夜はあくまでも笑顔を崩さないまま、嘆息して説教を続ける。

 

「だいたいね冬夜。あなた一高に通っている間はIMAの仕事もCILの仕事もしないんじゃありませんでしたか?」

「そりゃあそうなんだけど……ほら。オレって夜色名詠士としても有名だからあっちこっちでお呼びが掛かってさ。正直、新規顧客獲得に向けて色々と働きかけて」

「言い訳無用。どれだけあなたが有能であろうと、あなたはまだ15歳なんですから、ちゃんと家に帰ってきなさい。いいわね?」

「…………………はい」

 

 真夜に一喝されて項垂れる冬夜。その様子をメイドとして冬夜の後ろに控えて眺めていた水波はこう思った。

 ーー何度見ても、この光景は慣れない。

 それは『黒崎冬夜が叱られている姿をみること』がという意味を指しているのではなく、『四葉真夜が誰かを叱っていること』を意味していた。

 それもそのはず。水波を含めた大半の人間は四葉真夜に対して全く違ったイメージを抱いているのだから。

 

「学校も、入学二日目にしていきなりトラブルに巻き込まれているようですし……なにか問題でも起こされると困るわ」

「そうならないように気を付けます」

 

 現在冬夜と一緒にテーブルについている彼の母親、つまりはこの屋敷の主である四葉真夜について簡単に説明しよう。艶のある墨のように綺麗な色をした黒髪と、四十を超えているというのに三十代にしか見えないその容姿を持つ女性。舞踏会でも開かれるわけでもないのに常にゴスロリ風のドレスを普段着として身に纏っている。十師族『七草(さえぐさ)家』と対立する『四葉(よつば)家』の現当主であり、『夜の魔王』とうたわれるその卓越した魔法師としての力量は、日本国内だけでなく海外にも大きな影響力を持っている。大半の魔法師であるなら面と向かうだけで竦み上がるような存在ーーそれこそが周囲の人間が抱いている四葉真夜という人間のイメージだ。こうやって誰かと対等に、それも親しげな雰囲気で話すことなど、予想外すぎて誰もが想像できない姿だった。

 そんな彼女のイメージ(周囲が勝手に押し付けた)からすればとても珍しい姿を、現在冬夜と水波、そして長年彼女に仕える葉山という執事風の男に見せている。一通り叱って疲れたのか、再びため息をつくと後ろに控えていた葉山に飲み物をグラスに注がせた。冬夜もちょうど喉が渇いていたため、水波に声を掛けて水を注いでくれるよう頼んだ。

 

「でもまぁ、あなたにとっては良かったことなのかも知れませんね」

「何がです?」

 

 冬夜はグラスを傾けて水波に注いでもらった水を飲む。さすが十師族の一つに雇われているメイドだけあってその動作は流れるようで美しい。すでに一流のメイドとしての技術を身に付けていた水波にとっては、それぐらいどうとでもないことなのだが、細かいところまでキチンと教え込まれているところに冬夜は感服していた。

 内心で水波のことを称賛していた冬夜だったが、ここで真夜が投下した爆弾によって一気に現実に引き戻された。

 

「あれだけ会いたがっていた幼馴染に、いえ初恋の女の子に格好いい姿を見せられたのだから良かったのじゃない。ねぇ冬夜?」

 

 真夜のその発言に冬夜は思わずむせた。慌てて水波が駆け寄ってきて背中を擦ってくれたため、すぐに回復することができたが、しかし誰にも言っていないはずの自分だけの想いを言われた冬夜は、動揺を隠しきれなかった。

 

「な、なんでそのことを知ってるんですか!?」

「あら?私があなたの母親だからよ。お母さんは息子の事なんて全てお見通しなのよ?」

「なに自慢気に言ってるんです?!というか、そんなので納得出来るか!」

「ふぅん。そこまであからさまに動揺するってことは、事実なのね冬夜?それも相当惚れ込んでいたパターンかしら?」

「なぁっ………!?」

 

 ここから訂正しようにも時すでに遅し。時空間に干渉できる彼でも時間を巻き戻すことは出来ないのだ。自分が起こしてしまったリアルな反応を息子が盛大に後悔している目の前で、黒い笑みを浮かべた真夜は自分の考察を述べ始めた。

 

「幼馴染みの名前は北山雫さんと光井ほのかさん。二人とも一高の入学試験の成績は北山さんが三位で光井さんが二位という優等生。首席の司波深雪さんが度を越した美少女だからあまりそうでもないように見えるけれど、二人とも顔は十分美少女の括りに入るレベル。写真で見た限りスタイルは光井さんの方が良いけれど、あなたは胸の小さな女性(ひと)が好みですから北山さんの方が好みなのかしら?」

「なんでだ。色々バレてはいけないものが、最もバレたくない人にバレてやがる……っ!」

 

  なぜ個人的な性的嗜好が思いっきり母親に知られているのか、理由が全く分からない冬夜はあまりのショックに頭を抱える。パーソナルデータにもそんなことは載っているはずがないため、どこからその情報が漏れたのだろうか全く検討がつかない。四葉一族秘蔵の情報網は、人の好みも探れるのだろうか。

 

「とりあえずまぁ、色々聞きたいことがあるんでしょうけど、そんな些末な事は脇に置いて」

「置かないでください。些末な事で済ませないでください!」

「私の質問に答えなさい冬夜。正直どっちが好きなの?」

「答えるかそんなもの!」

 

 顔を真っ赤にして叫ぶように答える冬夜。そんな息子の年頃の反応を見ても母親の余裕は崩れない。むしろ本調子になってきたぐらいだ。

 ニヤニヤとした笑みをさらに綺麗(邪悪)にして質問を続ける。

 

「せっかくだから教えてくださいな。水波ちゃんだって気になってるんですよ?」

「はぁっ!?」

(な、何をおっしゃってるんですか奥様!?)

 

 雇い主の言葉に思いっきり動揺する水波。見た目は無表情・無反応を貫いたが、鍛え上げたポーカーフェイスの技術がなければ心のなかで思った言葉を声に出してしまいそうだった。

  既にこの反応で理解できただろうが、この桜井水波という少女も、雫と同じく黒崎冬夜に恋する乙女なのである。仕える家の息子に恋愛感情を抱くなど、従者としてあってはならないことなのだが、恋してしまったのだから仕方がない。が、それでも水波は冬夜への想いを知られないよう隠してきたつもりだったのだが

 

「フフフ」

 

 ……目の前で妖艶に微笑む美女(母親)は、それを見抜いていたようだ。さすがは系統外魔法を長年研究してきた四葉家現当主。人の心の機微は誰よりも敏感らしい。

 ………もしかしたら単なる母親の勘かも知れないが。

 

「さぁさぁ。早く答えなさい。答えてしまえば楽になるわよ?」

「誰が喋るか!喋って堪るか!」

「そう。まぁ良いでしょう。この件は後でじっくりと問いただすとして――」

「どんなことをされても喋りませんからね」

「そう言うのを巷では【フラグ】と言うのよ。そんなことより冬夜、実は一高でちょっと厄介な問題が発生しているみたいなんだけど、聞きたい?」

「………嫌です。これ以上厄介事に関わってたまりますか」

 

 偽らざる息子の本音を受けても真夜の笑顔は崩れない。ニコニコと微笑んだまま冬夜を見つめている。

 

「一応言っておきますけど、十師族の仕事なんてしませんからね?オレは母さんの後継者になる気なんてさらさらないんですから」

「あらもったいない。十師族当主の座に興味はないのかしら」

「微塵もありません」

 

 一応ここで明記しておくが、現時点をもって冬夜は四葉家の後継者ではない。また、他の十師族と血縁関係になる気もない。

 なぜなら冬夜にとって、十師族の地位は邪魔者以外の何者でもないからだ。IMAの社長として各国に存在する名詠式の研究機関にに魔法師を派遣している彼は、仕事上各国の機密情報に触れることがしばしばある。今は代わりの人間に社長業を任せているため、IMAとしてもCILとしても仕事はしてないのだが(本人は無意識の内に二つの会社のために働いている)彼が外国の機密情報を、いくつか握っていることは間違いない。

 それため、冬夜は十師族の各当主たちといくつかの取り決めをして互いの領分に入らないようにしているのだ。例えば、IMAやCILに関することについて冬夜は十師族の要求に逆らうことが出来るーーとか。

 その代わり、冬夜は四葉としてのあらゆる権限を放棄させられている。まぁ、その事については彼も納得の上で合意したことだし、別に後悔もしていないのだが。

 ゆえに冬夜は、十師族としての職務を全うする義務を持ち合わせていない。

 

「分かってるわ。コレは単なる親子の会話。あなたに『お願い』することや『依頼』をすることはあっても『命令』はしないわよ」

「分かってるなら良いんです。じゃあこれでその話はーー」

「じゃあそれを踏まえたうえで話すわね。実はここ最近、一高にある組織が侵攻しているみたい」

 

 だが、だからといって冬夜はこの国でなにも出来ないと言うわけではない。例え十師族の権限を放棄しても、彼には彼個人の情報網があるのだから、だいたいのことは冬夜だって調べられる。そのため、これから言うことも 本当は言う必要のないことなのだ。しかし真夜は単純に黒崎冬夜の母親として、息子を心配して忠告することにした。

 冬夜の言葉を一切合財無視して忠告をする彼女は、世間一般ではこう呼ばれるのだろうーー『過保護な母親』と。

 

「……全く、人の話を聞かないんだからこの母親は……」

「なにか言ったかしら?」

「いいえ、なんでもありません。それで侵攻とは、いったいどういう意味ですか?」

「平たく言えば思想教育ね。二科生を相手に一科生に対する不満を煽っているみたい」

「思想教育ですか……」

 

 入学するまで分からなかったが、一科生との騒動を経て冬夜は素直に感じたことがあった。それは一科生の半端な選民思想。正直に言えばあの騒動中、『たかだか現代魔法のテストの成績が良かっただけでよくもそんなに威張れるものだ』と呆れを通り越して感心すらしてしまった。そして入学後何度か感じた一科生の嘲笑の視線。

 全員がそうではないのは分かっているが、少なくとも一部の生徒は二科生を見下している。冬夜はそういう風潮を肌で感じ取った。

 そしてそういう風潮に反対する組織、つまりは魔法師の学校に対して反対している組織の手先が魔法科高校にいる。

 

「つまりあれですか。敵は反魔法国際政治団体、例えばブランシュのような組織で、これからなにか仕掛けてくるかもしれない、と?」

「ええ。そういうわけだから十分身の回りには注意しなさい。夜色名詠士のあなたが彼らに狙われることなんて、この上なく分かりきったことなんですから」

「分かりました。注意しましょう――しかし母さん、オレに忠告する前になにか行動は起こさないんですか?」

 

 真夜の話を聞き終えたところで今度は冬夜が質問した。十師族としての立場を放棄している以上、冬夜は持ち前の情報網を使わない限り十師族の動向を知ることができない。そして四葉家は徹底した秘密主義のためか情報を拾うことが難しい。存在していると聞く自分の従兄弟(いとこ)のことだって、冬夜は何ひとつ知らないのだ。

 

「あら?十師族(私たち)がどう動こうと、あなたには関係なくって?」

「ものはついで、ですから」

「そうねぇ。他の方々がどう動いているのかは知りませんが……少なくとも()()として動く気はありませんわ」

()()としては、ですか」

()()としては、ですわ」

 

 真夜のその答えに、お互いニヤリと笑みを浮かべる。真夜の後ろに立つ老執事はその様子を見て「やはりこのお二人は親子ですな」と呑気に考えていた。冬夜の後ろに立つメイドは、化け狐の親子が仲良く笑いあうその光景に内心ビクビクしていたが。

 

「ま、分かりました。せいぜい利用されないよう気を付けます」

「そうしなさい。まぁあなたのことですから、何があっても大丈夫だとは思いますが」

「もし万が一、なにかあったら助けてくださいね?お母様」

「考えておきましょう」

 

 フフフ、と笑いあう仲良し化け狐の親子の夜はそのまま更けていった。





ちなみに真夜は親バカという設定だったりします。

え?なんで達也たちのことを教えないのかですか?
そりゃあもちろん……

真夜「その方が面白いからですわ」

これだけです。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。