ペルソナ5 The wild edge   作:ザ・ファントム

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序章:Newborn Thief Band
1.その刻は未だ来らず


 20XX年、X月X日。

 午前中。

 

 混濁した意識の中、俺は頭を抱える。

 さっきから、なにが起きてるのか理解できない。

 俺は、確かに学校へ来たはずなのだ。

 来たはず、なのに。

 

「いやっ……! やめ、て……! 私は……っ!」

 

 少女の、悲痛な叫びが聞こえる。

 俺は頭を穿つような痛みと、全身の痛みが響きつつも、手を伸ばす。

 助けたい、助けたかったのに。

 

 誰でも、誰でも……ああ、違うだろ。

 誰も助けてくれるわけないだろ。

 

 手を伸ばす、俺の耳元で、声が聞こえる。

 逆転の一手となる、正義の声が。

 

 

 

 

 

 20XX年、四月一日、入学式。

 午前中。

 

 時はいつしか過ぎ去る。

 心の怪盗団騒ぎも、随分と昔のことのように感じる。

 数年前に過ぎないのに。

 俺は、心の怪盗団に憧れた。

 悪を下し、正義を貫く。

 そんな彼らに、憧れていた。

 

 

 

 俺、朝倉(あさくら) (そう)は登校していた。

 いつもとは違う通学路、それが俺の気持ちを高ぶらせていた。

 今日は入学式、晴れて高校一年生となった俺は、とある高校へ通うことになっていた。

 名前は、概選(がいせん)透徹(とうてつ)高等学校。

 県内最大級のマンモス校だ。

 千人ちょっといるらしい。

 

 で、俺は普通科の一年生。

 前からここに来たかったから、なんとも嬉しいものである。

 ちなみに俺の住まいは、学生寮だ。

 本来は遠くの田舎に住んでいたのだから、

 

「ああ……やはり、見慣れない通学路というものは、最高だな」

 

 少し気持ち悪い独り言を呟いて、通学路を進む。

 中学生の頃とは全く違い、家が並び立っていた。

 中学校の時の通学路と言うと、森。

 その一言に尽きる。

 

 虫は飛んでくる、鳥は突っついてくる。

 自然豊かと言えば聞こえはいいが、実際は地獄だ。

 毎日毎日、冬以外は死と隣り合わせの地獄なのだ。

 だが、今年からは違う。

 周りの環境も変わって、楽しい日常を送れる。

 恋愛をして、友達を作って、そしてそして……。

 

 なんて妄想を膨らませていたら、前を歩いていた人に気づかず、ぶつかる。

 俺は尻餅をついて、一瞬目を瞑る。

 俺はぶつかった人を見て、立ち上がる。

 同じ制服を着た、学生であった。

 

 誰が見てもわかるであろう、美少女であった。

 長い銀髪で、先端が少し黒く濁ったようで、目は赤色。

 外国人を思わせる容姿だが、日本人混じりな感じであった。

 多分ハーフだろう。

 胸元に着いた学年バッジを見て、同じ一年生だということがわかる。

 

「ご、ごめんなさい!」

……大丈夫

 

 俺はとにかく謝る。

 すると、何か小さく呟いて、小走りで去っていく。

 奇妙であったが、なんとも言えなかった。

 まぁ、同じ学校で同じ学年なら会うこともあるだろう。

 そう思い、学校へ向かう。

 

 数分もすると、学校へ着く。

 流石はマンモス校と言うべきか、玄関から違う。

 玄関に入ると、目の前にあるのは大きなロビー。

 ホテルを思わせるような構造をしている。

 

 すぐそばにあった地図を見る。

 敷地はかなり大きく、建物もいくつかに分かれていることがわかった。

 それにコンビニもある。

 なんというか、すごい学校だ、ここ。

 

 で、隣にあったクラス分け表を見る。

 

「俺のクラスは……と、あった。1-Gか」

 

 俺は歩いて、自身のクラスへ向かう。

 距離はここからだいぶ離れていて、歩いて数分かかる。

 これは朝、寝坊できそうにない。

 

 と、ついでに周りの景色も見ていく。

 やはり田舎の学校と違い、施設自体がすごい。

 真新しいのだ。

 都会、まだ体験できていないから、そっちの体験もしてみたいものである。

 今は学校に集中しなくてはならないけど。

 

 と、クラスのドアを開け、中に入る。

 教室では、中学生からの付き合いであろう人たちが、集まって話していた。

 いきなり難易度が高い。

 これはキツイ。

 俺だけ中学校が違うのだから、この中に突っ込んで行けるわけもない。

 どうするべきか……と、並んだ末に、取り敢えず席に着くことにした。

 

 前の黒板を見ると、仕切りされ、名前が書かれている。

 俺の名前を見つけ席に向かう。

 そして座る。

 

 が、勿論特に現状が変わるわけもなく。

 どうしようもなかった。

 

 ふと、隣を見ると、そこはさっき見たばかりの少女が座っていたのだ。

 無駄に姿勢が良く、表情を一切動かさない、氷を思わせるかのような顔だった。

 そんな顔をしてるわけで、話しかけるの隙すらなかった。

 ……八方塞がりとは、まさにこのこと。

 俺は隙を潰すためにスマホを取り出し……そして気づいた。

 目の形をしたアプリが、インストールされていることに。

 

「……NEWイセカイ、ナビ……?」

 

 見たことがなかった。

 イセカイナビ、ってのは聞いたことないし、そもそもNEWの意味が理解できなかった。

 いや、意味自体はわかるとも、だが、NEWと言うことは前のがあるわけで、だが聞いたことすらないアプリ。

 少し扱いに困りつつも、アプリをタップし開いてみる。

 

『ver.1.5イセカイナビ起動、『人物』、『場所』、『思考』を入力してください』

「……? なんだそれ……」

 

 少し考え、声を放つ。

 人物、つまり名前を言えばいいのだろう。

 この周辺で知ってる名前といえば……。

 

「『朝倉(あさくら) (そう)』」

 

 自分の名前程度だった。

 友達もまだいないのに、名前なんてわかるわけがなかろう。

 と、言うわけで自分の名前を言う、するとイセカイナビは。

 

『該当しません。パレスは存在していません』

 

 と言い放つ。

 パレスって、なんのことだ。

 それに、該当しないって……ナビって言うぐらいだから当然か。

 該当しないか、じゃあ……他に誰を……。

 少し考えていたところで、ガラガラと教室のドアが開けられる。

 俺は咄嗟にスマホを隠す。

 

 入ってきたのは、この教室の担任であった。

 

「あー、テメェら、座れ。色々話ししなくちゃならねぇからな」

 

 と、顎に無精髭を携えた男の先生がやってきた。

 そして、自己紹介を始めた。

貴方は怪盗団が好きですか?

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