ペルソナ5 The wild edge   作:ザ・ファントム

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10.Crushed hope

 お腹を空かせたまま、授業を始める。

 一時間目は担任の授業。

 担任である織田先生の科目は日本史だ。

 が、疲れが溜まっているのか、まともに受ける気にはなれなかった。

 隣を見ると、ノアがチラチラ俺のことを見ていた。

 

「どうした、ノア」

「あのですね、今日昼、誰かと一緒とか……そう言う予定ありますか?」

「特にないけど……どうした?」

「じゃあ屋上にで一緒に食べましょう」

「いいけどさ……それ今言うことか?」

「言うタイミングに悩んでいたもので」

 

 と、イセカイに行く前とは打って変わって、かなり明るくなっていた。

 そんな……すぐ変わるものだろうか。

 だが一つ思い当たることがある。

 ペルソナの覚醒。

 あれが原因だと見れるだろう。

 俺は自身のペルソナと対峙した時にわかった。

 あれは自分だと。

 自分と向き合ったのだと。

 だから彼女もまた覚醒させた時、自分と向き合えたと。

 ならば今のノアが素のノアだと言うことなのか。

 

 そんなこんなで1日が過ぎていく。

 特に面白味もない授業を終わらせ、昼時間になる。

 売店で適当なもの買って、屋上へ向かう。

 

 屋上へ出ると、乱雑に置かれているベンチに座ってノアが待っていた。

 俺を見つけた瞬間、立って手を振る。

 俺は近くに行って、隣に座る。

 

「……実は、今日。あの人と決着をつけようと思うんです」

「あの人って言ったら……やっぱあいつ?」

「そうです! 今日こそ決着をつけて……全て終わらせます!」

「そうか……俺はその……応援してるからな」

 

 俺もあいつには、聞きたいことがある。

 全てを問い質し……どうするんだろう。

 警察にでも突き出すか。

 証拠がないと、どうしようもないんだろうけどさ。

 そこも問い質して自白させる。

 録音しとけばいいだろ。

 

 と、適当なことを考えていた。

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 

 放課後

 

 

 私は足を進め、校長室に向かう。

 極度に緊張していたが、決着付かせるためにも、終わらせるためにも、私は歩みを止められなかった。

 ノックして入る。

 あいつは椅子に座って、こっちを見た。

 

「おやおや、来たんだね。ノア」

「……来ましたよ。()()()()

 

 こいつことなんて、そう呼びたくはなかった。

 お母さんと私を捨て、見殺しにし。

 その果てには、私に関係を迫ろうとしたクズ。

 怒りなんてもの通り越して、誰だって呆れ果てる。

 いや違う、私は殺意を抱いた。

 生まれて初めての、殺意を。

 

 でも私は弱かった。

 だから言いなりになるしかなかった。

 奴にとって、認知上の私は都合のいい奴隷。

 確かにそうだ。

 

「今日は、お話があって来ました」

 

 何か言葉を出すたびに気が滅入る。

 だが、もう終わるんだ。

 なら、ならばそれでいい。

 

「なんだい?」

「もう、終わりにしましょう」

「……え?」

「もう、終わりにしましょうって言ってるんです!」

 

 私は力強くそう言う。

 全てが、終わるんだ。

 これで……全てが……。

 

 そう思っていた私が、甘かった。

 

「……そうか、それは残念だよ。ならばあの話はどうなるんだろうねぇ……」

「ッ……!?」

「……実に残念だよ……でも最後に、もう一度聞いておこう。本当に終わりにするんだね?」

「…………こ、こ、今回の話は……なかった、ことに……」

 

 ダメだ。

 私はやっぱり、弱いんだ。

 ここで逃げることしか、できないんだ。

 

「……失礼、します」

 

 そう言って私は、その部屋から出て行った。

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 

 ノアがすごい沈んだ様子で出てきた。

 誰がどう見ても、失敗したとこ言うことがわかるだろう。

 ならば次は俺の番だ。

 悪事をバラして、奴を終わらせる。

 ペルソナと対峙した時、自身と向き合ってわかった。

 俺は正義を貫くんだって。

 ならやることは、これしかない。

 

「失礼します」

「君は……一年生だね。どうしたんだい?」

「校長先生に、聞きたいことがあって来ました」

「聞きたいこと、かい?」

 

 録音をつけたままのスマホをポッケに入れて、校長と対峙する。

 俺は意を決して、言葉を出す。

 

「貴方は、ノアに対して酷いことをしている。そうですね」

「……ふむ、誰から聞いたんだい?」

「誰から、と言われても。見た、ということです」

「……ああ、昨日のあれが……ふむ、見られしまったなら仕方がないな……」

 

 認めた。

 このまま押せば、行けるか。

 行ける、はずだ。

 

 俺は畳み掛けるように聞いていく。

 

「やってるんですね?」

「……ああ、やっているとも。だが君は、これを聞いてどうするんだい?」

「聞きたかっただけです」

 

 言質は取れた。

 ならばもう、これは終わりだ。

 そう言って俺は、ドアに手をかける。

 その瞬間だった。

 

「その録音、警察に突き出すきかい?」

「なッ……!?」

「持って行ってもいいよ。警察に突き出したところで、捕まるのは君だけど」

「なんだと……ッ!?」

 

 校長は、軽いため息をつくと俺を見る。

 失望したような、残念がるように目で。

 

「……君については、今月末の職員集会で話し合わなければならないな。ほら、もう行きたまえ」

「……失礼、しました」

 

 俺は部屋から出て行く。

 まずい、実にまずいことになった。

 もはやこの録音は意味なし、それどころか退学の危機。

 このままでは、大変なことになりかねないだろう。

 いや、もうなってる。

 

 俺は、どうすればいい。

 正義なんて所詮、そんなものなのか。

 

 いや、違うだろ。

 怪盗団はどんな時でも正義を貫いていた。

 周りからバッシングを受けようとも、プレッシャーを受けようとも。

 なら俺も……。

 待て、怪盗団……? 

 そうだ……もしかしたら、まだチャンスはあるかもしれない。

 

 俺はスマホの録音を止め、ノアに連絡をかける。

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 

 俺は、校長に呼ばれていた。

 果たして、何かしたのだろうか。

 

 俺は、校長が嫌いだ。

 理由は色々ある。

 あの校長は、賄賂やらなんやらして……。

 まぁ、クズの極みみたいな男だからだ。

 だがその力量は確か。

 だから誰も口出しなんてしない。

 勿論、俺も。

 

「なんでしょうか、校長」

「君に、この二人を監視してもらいたい」

 

 うちの生徒二人。

 確か『道成寺 ノア』と、『朝倉 奏』だ。

 何故急に、と思った。

 だがそれを問い質すととめんどくさいことになるとは確実だろう。

 

 なら言うことを聞くだけだ。

 

「わかりました。この二人ですね」

「ああ、向こうにも夜襲を頼んでおいたから、男の方は近々見なくなるだろうけど、頼んだよ」

「わかりました」

 

 こいつ、まだあの子を使っているのか。

 いつまで弱みを握るんだか。

 ま、こいつの場合一生だろうな。

 言うことを聞くだけ聞いて、校長室から出て行った。

貴方は怪盗団が好きですか?

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