ペルソナ5 The wild edge   作:ザ・ファントム

3 / 46
3.Starting the game

 201X年、4月1日。

 放課後。

 

 長い長い話が終わる。

 だが、結局ナビの最後のキーワード、『思考』が解けることはなかった。

 なんだったんだろうか、これ。

 画面を消して、ポケットに入れる。

 

 教室に戻ってくると、適当な話が始まる。

 そして数分もすると、話が終わる。

 結局ナビのこと考えていて、ほとんど話を聞いていなかったが、明日のことを話していたのだろう。

 

「まぁ、そんなところだから、今日はとっとと帰れよ。いいな?」

 

 そう言って織田先生は教室から出て行く。

 俺はスマホを見つつ、帰る準備をする。

 と言っても、特に準備もないのだが。

 

 隣をチラ見すると、少女は姿を消していた。

 もう帰ったのだろうか、だとしたら早過ぎる。

 ま、もう既に関係のない話なのだが。

 と言うことにし、スマホの画面を見つめる。

 

「思考……か、それってつまり……『校長先生』が、何を考えているか、と言うことだよな? 場所についてはよくわからないけど……この学校が何か関係していると言うことか……?」

 

 ナビに書かれているのは、校長先生の名前と、学校、とだけだ。

 情報が少なすぎる。

 そもそもこのナビが何のためにあるのかすらわからない。

 ナビって言うくらいだから、何処かに行くためにあるのだろうけど、何処だ。

 

 が、情報が何もないため、諦めてポケットにしまう。

 俺はカバンを持って、廊下に出ると校長先生と、あの少女が話をしているのを見た。

 俺は咄嗟に少し後ろに下がって、覗き見するような形で聞いてしまう。

 出ていけない俺が、何とも情けない。

 

 少し遠くて、声が聞こえない。

 だが校長先生の表情を見る限り、なんか嬉しそうだ。

 一方、少女の方は困っていた。

 困っているより、拒絶に近いだろうか。

 なんとも嫌そうな顔をしていた。

 

 それに、少し言い寄られていたように見える。

 前のめりになる校長先生に対し、少し後退りする。

 と、校長先生の顔が少し険しいものになる。

 

 なんというか、不味そうだ。

 出て行きたいが……度胸が足りない。

 どうしよう、どうしたら……。

 

 と、思いつく。

 俺は大きな音を上げ、ドアを開けた。

 そしてこう言い放つ。

 

「あー! 疲れたなぁ! とっとと帰ってゲームしたいなぁ!」

 

 怪しまれてないだろうか、大丈夫だろうか。

 言えることは、すごく恥ずかしい。

 なんで俺こんな馬鹿みたいなことしたんだろう。

 が、それを見た校長先生は、何か言ってから、去っていった。

 

 どうやら、話を終わらすことはできたようだ。

 ……なんで、こんなことしてんだろう。

 一瞬冷静になって考えたが、そこに関しては思考放棄することにした。

 

 そんな事を考えていたら、向こうから少女が小走りでやって来た。

 そして何か言う。

 

あの……いま……てまし……か? 

「え?」

いまの……て、ましたか……? 

「……えっと?」

 

 どうしても声が聞こえない。

 声が小さいのか、喋るのが苦手なだけなのか。

 よくわからない。

 

「いまの! きいて! ましたか! ……うぅ……」

「あ、あぁ……ごめん、よく聞こえてなくてさ。その、何というか……」

「聞いて、たんですね……」

 

 そう言って勝手に落ち込む。

 何も言ってはいないが、俺の反応から勝手に推測したようだ。

 まぁ、多分俺の演技力はクソ以下だから、そうなるのも予想できる。

 ……このまま話を聞いてみるか。

 少し、気になるしな。

 

 それにしても、入学して早々、こんなことに巻き込まれるとはな。

 人生何があるかなんて、わからないものだ。

 

「……あの、人がいないところで、いいですか?」

「うん、大丈夫だけど……」

 

 そう言って場所を移動する。

 

 屋上に出るところの前に、少しスペースがある。

 そこはほとんど人が来ないため、秘密の話をするにはぴったりの場所だった。

 一人飯もここなら進みそうだ。

 いや、こんなに数がいれば同じこと考える人がいそうだな。

 

「その、聞いてたと思いますけど……私はあの人に……関係を迫られているんです。嫌だって、言ってるのに……」

 

 ……それは、どういうことなんだ。

 待て待て待て、校長先生が? 

 何の冗談だ、おい。

 

 校長先生の噂は良いものばかり、そんな変な噂なんて一切聞かない。

 これは……なんか嫌な予感がして来たぞ。

 

「それは、断ることが……」

「できませんよ。だってしたら……あの人は、私のこと……」

 

 うん、これは裏の顔ってやつだな。

 校長先生は、とても慕われている。

 だが、実際は裏の顔があって、なんかすごいことをしている、のかもしれない。

 そこについては流石に聞き込みでもしてみないと、わからないだろう。

 

「その……うーん……俺に、何か出来ること、ないか?」

「……え? あの、それは……」

「困っているなら、力になりたい」

 

 俺は真剣にそういう。

 そして、かつて憧れた人たちのことを思い出していた。

 悪を挫き、正義を貫く。

 幼い俺にとっては、変身ヒーローと同じ、英雄だった。

 そう、心の怪盗団だ。

 

 俺はあの人たちに憧れた。

 だから、困っている人がいたら、力になりたいと思った。

 

「……あの、それじゃあ……私の文句を、聞いてくれませんか? また今度で、いいので……」

「うん、大丈夫だよ」

「……それでは、IDを交換しましょう。いつでも連絡を取れるように」

 

 そう言ってスマホを取り出す。

 ナビを付けたままにしていたのを忘れていて、ホームに戻る。

 そしてIDを交換した。

 これはまさか、友達というやつでは。

 いや、ただの協力関係みたいなものか。

 

 で、一応自己紹介した。

 少女の名前は、道成寺(どうしょうじ) ノアと言うらしい。

 やはりというかなんというか、ハーフであった。

 

「さてと、じゃあ俺は帰るとするか」

「あの、途中まで一緒に行っても、いいですか?」

「あ、ああ……大丈夫だけど」

 

 え、いいの? 

 逆にこっちがいいの? 

 まさかまさかまさかのまさか。

 

 いやいや、この程度でそんなことを考えるのは、浅はかというもの。

 もう少し関係が深くなり始めてから疑うものだ。

 

 そう思いつつ、二人で廊下を歩く。

 

 と、すれ違った同じ学年の生徒から声が聞こえて来た。

 

「なぁなぁ、隣のクラスほんと酷かったよな」

「あぁ、1-Bか。ほんと酷かった。あれじゃジャングルか、動物園だぜ。全く……」

 

 と、その瞬間だった。

 立ちくらみがして、壁に手をつく。

 それを見たノアは、心配そうに俺を見る。

 まだ駆け寄るような関係ではないようだ。

 

 と、ポッケから、例のナビの声が聞こえて来た。

 

『ヒットしました。ナビを開始します』

 

 立ちくらみが治り、俺は周りを見ると、壁が消えていた。

 いや違う、周りの景色が一変していた。

 そこに学校なんてものはなく、あるのはただ、柵と檻が乱立する、平原の上にある施設だった。

 それを見た俺とノアは呆然として、立っていることしかできなかった。

貴方は怪盗団が好きですか?

  • YES
  • NO
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。