ペルソナ5 The wild edge   作:ザ・ファントム

37 / 46
36.The weather waits

 20XX年、4月18日、火曜日。

 朝。

 

 ロアンナは流石に帰っていた。

 部屋にいるのは、奏とあかり。

 奏は日課通り、朝起きてテレビをつける。

 床では布団を引いたあかりが寝ている。

 女の子と同居、その事実で奏は変に緊張していた。

 

『順調に勝ち星を挙げている東郷六段。かつては八百長姫などと呼ばれましたが…』

 

(将棋か…あんま興味ないな)

 

 チャンネルを変える。

 何処もニュースで同じようなことばっかやっている。

 日本が平和な証拠である。

 

(まぁ、裏では平和、とは言い難いんだろうけどな)

 

 面白いニュースやっていないかな、とテレビ番組を切り替えていく。

 と、何処かの店を紹介するような番組をやっていた。

 朝のニュースのワンコーナーみたいな感じだ。

 奏は気づく。

 その店がなんなのか。

 

「これって…ルブランか?」

 

『それでは23歳と言う若さで、このお店をお引き継ぎに?」

『ええ、私は主夫なので、子育てと仕事。両立出来るようにこの仕事を引き継ぎました。仕事終わりの妻にカレー出すこともできますし』

 

 そう言ってテレビの中の、伊達眼鏡の主人は笑みを見せる。

 

『雨宮 蓮さん。ズバリこのカレーの秘密は!』

『秘密というほどでもないんですが…コーヒーと合う、ところですかね』

 

 雨宮 蓮。

 それがルブランの主人の名前であった。

 

 テレビをつけたままキッチンに向かう。

 そして朝ごはんを作り始める。

 昨日はご飯を買うような力がなく、コンビニに行けなかったのだ。

 つまり、朝ごはんがない。

 ならば、と奏は作り始める。

 

 そんなところで、あかりが起きる。

 

「…んっ、おはよう…だったっけ…?」

「おはよう。少し待っててくれ。すぐにできるから」

 

 奏は祖父母の家に住んでいる。

 祖父母はいい人であったが、同時に厳しい人であった。

 彼に料理を教え、一人で生きていく術を教えた。

 だから奏は、ある程度料理ができるのだ。

 

 あかりは、布団の上で少し座っている。

 どちらかと言うと、まだ寝ぼけている感じだ。

 

(…女の子と過ごす、か…憧れていたが、こう実際やると、なんか恥ずかしいな…)

 

 ペルソナに目覚めて二週間。

 一ヶ月も経っていないが、既に生活は濃いものであった。

 

 適当なご飯。

 トーストである。

 それに加え、適当に作った目玉焼きなど。

 後はコーヒー。

 あかりはコーヒー牛乳である。

 テーブルの上に持っていく。

 気づけばあかりは既に座っていた。

 

「いただきます」

「…いただき、ます」

 

 あかりは奏がやったように真似る。

 それはなんとも拙い行動であった。

 まるで子供のように。

 

「学校行ってる間。あかりはどうするんだ?」

「町を、見てくる。ロアンナ、と…」

 

 どうやらロアンナが保護者代わりのようだった。

 奏は時計を見つつ、頬張っていく。

 そしてパパッと準備を済ましていく。

 鞄を持って出かけようとする。

 

「いってらっ、しゃい…」

「ああ。あー、っと、そこに鍵があるから、それ持っていけよ?」

「うん」

 

 そう言うと奏は外に出て駆け出した。

 

 

 

 

 20XX年、4月18日、火曜日。

 放課後。

 

 いつものメンバーで、いつも通り屋上にいた。

 

「校長、休みらしい」

「休み? 改心が成功したんですかね?」

「ンだといいんだがな」

「そうでなくては困るんだが」

 

 改心されていないと、奏は退学。

 亜里沙は妹たちが…。

 と言う状況であった。

 改心されていないと、大変なことになるのだ。

 

「それで、今日はどうすんだ?」

「特に何もないけど」

「じゃあ解散します?」

「ンだな。そうしよう」

 

 と言うことで、解散した。

 のだが、亜里沙に呼び止められる。

 話があるようだ。

 

「…どうした? 亜里沙」

「ンとだな。少しな…」

 

(これは、なんらかの知識が必要になるのかもしれない)

 

 理由は単純。

 亜里沙に頭がいいからである。

 

 だが今の知識で話せるだろうか…。

 とにかく聞くだけ聞いてみよう。

 話を。

 

 奏はそう考える。

 

「ちと手伝いが欲しくてだな」

「手伝い? 俺でいいのか?」

「ああ、単純に手伝いが欲しいだけだからな」

「わかった。なら何をすればいい? 

「よし、じゃあまずは…」

 

 と、スーパーに行く。

 店内を周り、次々と商品を買っていく。

 それはまさか…。

 

「荷物持ち、頼んだ!」

 

 そう、荷物持ちであった。

 なんとも言えない顔をしつつ、荷物を持つ。

 既に時間は夜であった。

 

「家まで頼む」

「ぐっ…怪盗団リーダーがこのザマか…」

「…ンまぁ、ありがとな。あたしの家はよ。親がいねぇから」

「俺と、同じだな」

 

 奏にも親はいない。

 そもそも家族は祖父母だけなのだ。

 

「そうなのか?」

「ああ、家族は俺を除いて事故で死んでいる」

「そう、なのか…私とは違うな。ああ、でも兄貴は…事故死だっけ」

「…親は、どうしていなくなったんだ?」

 

 本来は聞くべきことではないのだろう。

 奏は、ある程度の度胸があったため、聞いてしまう。

 

「…そう、だな。親父がな、浮気して出て行ったんだ。母さんも同じだ。男を作って出て行きやがった。私がまだ11歳の時だ。0歳の子供もいたのにな」

 

 なんとも言えない笑顔で奏を見る。

 奏は、何も言うことができなかった。

 様々な過去を持っているのだと。

 そう知った。

 

「今日は、あんがとな。助かった」

「いや、いいよ。いつでも頼ってくれ」

「ああ。また頼む」

 

 

怒りに身を焦がす少女 コープランク:2

 

 

 そこで今日は別れ、俺はあかりの待つ家へと帰って行った。

貴方は怪盗団を支持しますか?

  • YES
  • NO

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。