ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる   作:トン川キン児

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初めっから仲良しこよしとはいかないよ

「どもーっす、えーパシーですけどもぉ」

「…………」

「えー実況ぉ~しまーす。えーヘリオンが~……ユリウスでーす。相手がーエクシアでーす」

 

 ラグランジュ3の小惑星、その内部に作られたソレスタルビーイング基地のモニタールーム。そこにそれぞれ映しだされているのは、現在戦闘シミュレーションに参加しているユリウスと、ガンダムエクシアのマイスター……『刹那・F・セイエイ』の視点。それと、両機のEセンサー。

 それを見ながら頓珍漢な実況を添える自称パートナーのパシーを、同じ部屋にいる残り3名のガンダムマイスターは三者三様に見る。ガンダムデュナメスのマイスター『ロックオン・ストラトス』、キュリオスの『アレルヤ・ハプティズム』、ヴァーチェの『ティエリア・アーデ』。

 

「姐さん何やってんだ?」

「……この人のやることをいちいち突っ込んでたらキリがない気がする」

「……うんまあ俺もそんな気はしてるわ」

「…………」

 

 アレルヤの呆れ混じりの冷めたコメントに苦笑するロックオン。ティエリアはと言えば、まるでいないものとしたいとでも言いたいかのように押し黙って腕を組んだまま目を閉じている。

 今回のシミュレーションの目的は、ガンダムが三大国家エースパイロットの搭乗したモビルスーツに対してどれほどの優位性を確保できているかを詳細に炙り出すこと。ソレスタルビーイングの理念を象徴する機体であるガンダムが、『エースパイロットさえいれば対処可能ではある』レベルの兵器として認識されることなどあってはならない。故にこの一連のデータが必要なのである。

 ――――戦闘は、お互いの位置を把握できない遭遇戦の状況から開始された。そうなれば当然、センサーの有効半径と確度で上回るガンダムエクシアが先にユリウスのヘリオンを確認し、GNビームライフルで攻撃しつつ接近する。が、当たらない。

 完全に感知の外からの攻撃だったはずが、ユリウスのヘリオンは全て避けきる……どころか、その間を潜り抜け、接近するエクシアに向かって逆に突進。すかさずGNソードを展開するが、そのタイムラグの間にユリウスは後ろへ回り込む。

 

「はいユリウス上手いでーすオッケーでーす。はーいちょっとエクシアスカッちゃったねこれは、流石にねーな今のはな」

 

 適当な実況がされている間にソニックブレイドでの刺突を見舞う……が、GNフィールドを持つガンダムの装甲には通らない。クリーンヒットでここまで効果がないとは思っていなかったのか、ヘリオンが怯んで近接戦闘の間合いから遠ざからんと後退する。

 

「おっオイシいよオイシいよこれ!!」

 

 右腕部にGNソード、左腕部に背部から引き抜いたGNビームサーベルを手に迫るエクシア。しかし、その剣閃のことごとくを機動力の劣るヘリオンでいなしていくユリウス。圧倒的に機動力が勝るはずのエクシアにその後を追わせないでいられるのは、ユリウスの取る()()()()()()()戦闘機動に翻弄されているからだ。

 近接攻撃の間合いに入ることができたと思えば、するりと掌を零れ落ちるように巧みに逃れていく。焦れるエクシアをよそに、ユリウスのヘリオンはそれを何度繰り返そうと対処を誤ることはなく、しかしエクシアに対しての有効打が打ち出せないまま時間だけがただ過ぎていく。

 

「……おいしっ、オイシくねえなーこれなぁどうしようもねえな、え~っとこれ死んだな。死にまぁ~すぅ~……ねぇ。あーわかんねーけどな」

「刹那の手詰まりってのはわかるが……しかしあんな見事に避けられるもんなのか」

「あいつならあれぐらい作業っしょ。撃ってる方がヘタだしよお」

 

 GNビームライフルの偏差射撃によって機動を制限しようとする試みもあったが、低い射撃精度と高い回避精度の相乗によってまるで効果はなく、むしろ牽制射のリニアライフルが次々と直撃していく。しかし、ガンダムエクシアはまるで怯まずにヘリオンに向かって追撃を続ける。

 GNドライヴを搭載し現行兵器に対して圧倒的な優位性を持つガンダムは、その防御力ひとつとっても西暦2305年現在に存在する兵器で破壊することは非常に難しいと言っていい。ましてやAEUヘリオン単機での破壊など万に一つの可能性もなく、模擬戦として見るなら初めから勝負は見えているシミュレーションである。

 この戦闘シミュレーションの意義は、むしろ『どれだけ早くガンダムで三大国家エース級のパイロットが搭乗したMSに対処できるか』というところ。たった四機での作戦行動を余儀なくされるガンダムは、素早く敵を排除しなければミッションを達成できない。

 このシミュレーションには『ガンダムは10分間の制限時間内に敵を撃破しなければならない』という制限が設けられているのはそのためである。しかし現状では既に9分が経過し、ロックオンでさえ悲観的なパシーのコメントに納得せざるを得なかった。

 

「これはねぇほんとこういうもんだよなMS戦って、そんなもん。しょうがねえしょうがねえ」

 

 パシーによる雑な締めくくりと同時に、10分が経過しシミュレーションは終了した。終わってみれば刹那の駆るガンダムエクシアは完全にスペックの劣るAEUヘリオンに終始いなされ続けただけならまだしも、通常の機体であれば何度も撃墜判定を出されているほどの被弾率である。

 機体性能の差以上に、MSパイロットとして未熟な刹那と経験豊富なユリウスとの実力差がはっきりと示された形になった。

 

「はい次お前な。まあ頑張んな」

「ふう。おっかねえな……」

 

 せいぜいワークローダー程度しか動かせなかった自分も()()()()()デュナメスを扱えるようになった、と思っていたロックオンだが、目の前で見せられたプロ中のプロの姿というものを思えばまかり間違っても太刀打ちできるような相手ではないということがわかる。

 パシーに言われてシミュレーターに向かうまでの通路はまるで処刑台までの道のりに思えた。その道中で、地獄から帰ってきた刹那の姿をロックオンが捉える。

 

「気にすんなよ。本職に比べちゃあまだまだ経験不足ってだけだ」

「……ああ」

 

 いつもの調子であればスルーも覚悟していたロックオンだったが、少なくない疲労と打ちのめされた状態故か刹那は拒絶する気力もないようだった。

 ミス・スメラギもとんでもないパイロットを連れてきたものだ、と思わせられる。数時間前の顔合わせまでは、こうも勝ち目のないものだとは思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全員集まってるな、ガンダムマイスター」

 

 その遡る数時間前。待機するブリーフィングルームの扉が開き、刹那、ロックオン、アレルヤ、ティエリア。ぞろぞろとやってきた四人のガンダムマイスターに、ユリウスがそう呼びかける。

 四人にとっては初対面だがユリウスにとっては顔なじみとも言っていい。紛れもない『ガンダム00』のメインキャラクターたち……その四人と、ついに顔を突き合わせることになった。

 

「既に聞き及んでるかと思うが、スメラギ・李・ノリエガの提案によってマイスターの養成プログラムへ新たに実戦形式の訓練が追加された。それを担当するのが俺、ユリウス・レイヴォネンだ」

「そんでこいつの補佐があたし。パスレル・メイラントな」

 

 予想通りというべきか、とりあえずの自己紹介を終えた後の反応は芳しくない。何もテロ組織で学校のクラス分け初日のような反応を期待していたわけでもないが、それにしても四人中三人が仏頂面では何だか葬式に来ている気分だ、という意味である。

 

「質問がなければすぐにでも始めさせてもらうが」

「俺からひとつ聞きたい」

 

 ユリウスがそう言うと、ティエリアが挙手する。何事もなく進むかと思われたが、どうもここで突っかかってくるには意外な人物だった。

 同時に、そういえばこの頃の一人称は『俺』だったな、とも。

 

「そもそも君が来るまでにヴェーダは正規の軍事教練のような人員が必要としない養成プログラムを作成し、我々は今までそれに則って訓練を行ってきた。能力基準値は問題なく更新され続けている、スメラギ・李・ノリエガにも言ったが今さら君のような人員は必要ないはずだった」

 

 ……なるほどそういう絡み方もありえるのか。と、ユリウスは思う。そして口を開くよりも早く、補佐してくれなさそうな補佐担当になった隣のパシーが真っ先に茶々を入れてくる。

 

「ふぅーかっくいいねぇー!! 気取りすぎじゃねお前!?」

 

 それを聞いたティエリアは眉をひそめ、蚊帳の外のマイスター三人の中でロックオンだけが小さく笑う。その苛立ちを隠さぬ口調でもう一つティエリアが言葉を続ける。

 

「にも関わらず、ヴェーダが君の登用を承認した。つまり、一定以上の実力と成果を期待してもいいということだろうか」

 

 ある意味挑戦的とも取れるティエリアのその問いに、ユリウスが答える。

 

「成果はお前たち次第だ。実力は今からわかる……違うか?」

 

 そう言いつつ、ティエリアが右手に持っていたヘルメットを引っ掴んで押し付ける。

 

「パイロットスーツまで着て来てもらって何もしないって事はない。こいつの言う通り俺の実力やら何やらを疑問視するのも当然だし、俺もお前たちの腕の程はわからん。お互い一戦交えるのが相互理解への近道だと俺は思ったな」

 

 売り言葉に買い言葉といった様相で、ティエリア含むガンダムマイスターとユリウスの間に緊張感が走る。ユリウスもこれには一瞬ためらったが、この時期の人間味が薄いティエリアを言葉だけで納得させられるだろうか、と考えた結果だった。

 

「そういうわけだ。シミュレーターに移動するぞ」

 

 ユリウスがそう言ってブリーフィングルームを後にすると、その背中を追って次々とガンダムマイスター達が移動する。しかめっ面のままティエリアが最後尾から後を追い、その後ろからニヤケ面を隠せないパシーがやってくる。

 

「わかるよ~~おセンチくん」

「不愉快だ。俺に話しかけるんじゃない」

「あたしら二人がヴェーダに認められたのがどお~~してもわかんないってことだろ? いやあ、()()()認められないって言った方がいいんだけどさァ」

 

 馴れ馴れしく話しかけてくるパシーに対して拒絶を露わにするティエリア、それでも煽りつつしつこく付きまとわれたので、完全に無視を決め込み始める。

 

「教えてやろっか? 知りたいんじゃねーの?」

「数日前まで部外者だった君がヴェーダの何を知っているというんだ」

 

 言われたパシーは、ティエリアの横顔に近づいて穴が開くほどに彼を見つめる。()()()()()

 

「……な、に!?」

()()()()()()だよ」

 

 鉄面皮と言うべきティエリアの表情が初めて崩れる。

 しかし、それも無理からぬこと。目の前に見えているのはつまり、この女――――パスレル・メイラントが、初めて目にする同類だということ。自分と同じ、不完全な人間に代わってイオリア計画の基幹を支えるために生み出された存在に他ならないということの証明。

 

「どっ……いうことだ!! なぜ君が僕と同じ能力を!?」

「ぶははは!! 僕ちゃんかよ!! カッコだけだなやっぱ」

「そんなことはどうでもいい! 計画にはこのようなこと――――」

「…………はあああぁぁぁ」

 

 ティエリアがまくしたて始めると同時に、パシーは大きくわざとらしいため息をついた。

 

「なんなんだろうなお前らって。二言目には命令だの指令だの計画だの……鬱陶しくなんねえの? いや違うなるわけねえよな、そういう造りなんだし……ごめんそれは別にしょうがねえんだよな」

「僕らは計画遂行のために生み出された存在だ!」

 

 パシーは少し苛立ち始めた。補佐と言いつつこのままの流れで行くと自分のやることが極端に少なくなりそうなこと、ティエリアと同じく初めて実際に目にする同類というのは思っていた以上に『人形』だったこと、それらが気に食わなかったためだ。今でこそ何故だか自由の身だが、自分も元々は()()()()()ことを意味するからだ。

 …………尤も、本来パスレルにはシミュレーションデータ測定結果の分析やそれに則った養成計画の見直しなど探せばいくらでもやるべきことがあるはずなのだが、そうした面倒の多分にありそうな仕事は全て脳内でなかったことになっている。

 

「あっちょっと待て、いい事思いついた。この先一回でもシミュレーションであたしに勝てたらみんな教えてやるよ」

「な、なぜそんな条件を付けられなければならない……!? 情報の開示は……」

「ヤなの? じゃあ教えねー。どうせお前じゃ見れないもんねえ~~」

「く……!!」

 

 それをいっぺんに解消する方法というのが、この条件である。こうすれば自分は生の戦場でないとはいえシミュレーションに参加してリハビリ兼ねての久々のモビルスーツ操縦ができるというものだし、この同類が持っているであろうコンプレックスを刺激し、小さな人間味を引っ張り出して遊べるというもの。

 

「…………ッ、俺が勝てばいいんだろう。記録は取っておいた」

「よっしゃあ!! そうこなくちゃさ、じゃあ行くぜ!!」

 

 両掌を叩いて喜ぶパシー、押し付けられた謎の条件を歯噛みして受け入れるティエリア。

 言質は取った、相手は片腕義手の女性。自分と同じ能力を持っているからと言っても同じ条件ならば訓練を重ねた自分が負けようはずもない……ましてや自分はマイスターに選ばれた存在、パスレルと名乗るこの女は選ばれなかった。

 冷静さを取り戻すために、そのような思考で自身を奮い立たせるティエリア。しかし、現実としてそううまくはいかせられないのが世の常であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隣いいすかっと」

「ん? ああ……」

 

 シミュレーションから一日経って、『天使宮(クルンテープ)』内の食堂でのこと。ユリウスとパシーの相席に声をかけてきた男がひとり、それにユリウスが生返事で承諾すると顔を上げてみればその男はロックオン・ストラトスだった。

 知り合ってから昨日と今日でこうも距離を詰められる協調性の高さは、流石にあのコミュニケーション能力に乏しい四人のガンダムマイスターの中で精神的支柱になった人間というべきか。

 

「二人っきりの時間を邪魔しちゃいましたかね」

「おい、冗談でもやめてくれ……こんなのに恋はできない」

「は~~? 何だお前失礼だな」

 

 先制して繰り出されたロックオンの笑えないジョークに、ユリウスは苦笑いしながら返す。日頃の事を思えば失礼でもなんでもないと考えるので、パシーの言い分は無視する。

 

「悪かったっすね……まあ俺も昨日のを見ればお二人に色々聞きたいことがありまして」

「年上で教え役だからって敬語なんかよせ。こそばゆい」

「そうかい? じゃあお言葉に甘えて……」

 

 かしこまった口調を改めて、ロックオンが喋り出す。

 

「レイヴォネンってのはエース部隊にいたってAEUで聞いたことあるが、本物かい。傭兵になってたってのは流石に知らなかったけどな」

「本物だよ。だからどうだってこともないだろ? 辞めてこんなとこいても不思議じゃないさ」

「へえ……そりゃまあいいとしてだ、本題はこれだ。傭兵ってのはみんなあんたや彼女みたいなのばっかなのか?」

「……そりゃあどういう意味だろうか」

 

 同じ傭兵という職業とはいえ、まさか自分とパシーが何やら同類みたいだと言われているのはどうも気に食わない。どこをどう切り取ったって自分にはパシー以上の慎みがあるし、パシー以上の落ち着きも備えている。続く言葉で、そういう意味ではないとすぐ分かったのが吉ではあった。

 

「あんた昨日俺と刹那とアレルヤとやって、パスレルさんはティエリアとやったろ」

「……まあ、最後のは予定になかったんだが」

 

 そう、昨日の一連のシミュレーション……最後に残ったティエリア・アーデとの一戦。その時ユリウスはいつの間にか近づいていたパシーによって無理矢理シミュレーターから放り出され、操縦を乗っ取られたのだった。

 後で理由を問い詰めたところ『久々に慣らしがてら動かしたかった』という。もちろんパイロットが違うとデータ収集の意味がないなんてことは全く頭に入ってなかったし、『ちょっと因縁作ったから』というものに至ってはティエリアに何をやったのかも秘密にされてしまっている。

 前の三回に比べて非常にヘリオンが()()()()()()()()()()になっていた様子がティエリア除く三人から見てもわかっており、そこから説明せざるを得なくなったという経緯だった。

 ……ユリウスと違い危なっかしい動きながらも、それでもティエリアの駆るヴァーチェの攻撃をことごとくスレスレのところで回避していって10分間逃げ切ったのだが。

 

「なんかこう……MS乗りの日が浅いからかうまく言えねえんだが、似てるんだよ。動きが」

「ええ?」

「やっぱり!? お前もそう思う!?」

 

 続くロックオンの言葉にユリウスは困惑し、パシーは合点がいくという感じに大きく納得する。

 ユリウスにしてみれば、それは戦闘経験の浅さから来る観察の誤りだとでも言いたくなった。どちらが優れているとは一概に言えないものの、正規軍で訓練課程を経た自分の機動と、我流丸出しのパシーとでは全く動きが違うことは自明である。

 だが、ロックオンが目を付けていたのはもっと別のポイントだった。

 

「普段の動きじゃなくてな、こう……追い詰めたり噛み合ったり運が良かったりで、『絶対当たる』とか『当てる』って自信入った射撃、あるだろ。こりゃ俺がスナイパーだったからかもだが」

「あるあるある! すげえわかるそれ」

「そういうのを決まって()()()()()()()()()ギリギリ避けてくる。お二人さんそこだけ共通してるんだよ、その様子だと自覚ないのかもしれないが……アレどうやってんだ?」

 

 ――――確かに覚えがあった。パシーにも、ユリウスにも。

 違いは、ユリウスの方がそれをあまり良い事だとは思っていないということぐらいだった。

 

「…………勘だよ、アレは」

()()? ……って、あの勘かよ」

「おうよ。なんかこいつも鋭くなってきたな~~って思ってたんだよなァ」

 

 ユリウスがときたま感じる、そうとしか説明しようがない感覚……うんうんと頷くパシーをよそに、ユリウスがそれをロックオンに語り始めた。

 

「何でかはわからん……恐らく場数踏んだ経験則だと思うんだけど、『今狙ってる』とかっていうタイミングがわかるんだよ、見てないのに。だから勘でしかないんだ」

「経験則って……ありゃあてずっぽうって動きじゃなかったろ」

「そう。だからよくわかんねえんだよ……」

 

 本人にも理屈がわからない技術、あるいは能力。ユリウスの本気の困惑で、それがごまかしや適当な言いぐさではないことがロックオンにもわかったので、尚更その謎は深まっていく。

 

「でもびったし避けれるだろアレ? むむって来た奴をガッて避けてビャって反撃して終わり! 勘なら勘で戦えばいいんだって」

「そんな戦い方で身が持つわけないだろうが!! ……なんかさ、コイツだよコイツ。俺が来る前からパシーがこんな調子だったらしいんだ」

「姐さんの方が先にそういう……勘が強かったってことかい?」

「姐さんって……なんかカッコいいな。いいぞそれ」

 

 呼ばれ方を気に入るパシーは置いておき、勘に頼る傾向とその感度は確かにパシーの方が強い。はっきり思い出せる直近の事例は、フォン・スパーク(あのイカれ野郎)と戦った時の事。合体した機体のコントロールを奪って、アラートも鳴っていない上空からのビームを避けてみせた時。

 

「ああ。だからコイツから感染ったもんだと思えてならない感じだよ」

「病気みたいに言うんだな」

「ある意味そんなもんだと思ってるよ」

 

 ――――いつかの悲劇を思えば、ユリウスは本当にそれが病気のような気がしている。

 あれ以来考えることをやめて、本能に任せる戦い方を律することができるよう心掛けてきたというのに、そうした勘だけが育っていくのではまるで真逆の結果になっているも同然なのだから。

 

「……んまあ、経験だって言うんなら俺らには無理だしな。次いいか」

「次ってまだ何か?」

「おう。なんかソレスタルビーイングに家族一同で参加してるって聞いたぜアンタ」

「ああ、そりゃあまあ……全員ってワケじゃないがだいたい当たってるよ」

「へえ~~っ。ハハハ、何かすげえなそいつは? 妹とか弟いるのかい」

「弟はもともといないけど、妹がいる。リンダは凄くデキる奴でなぁ」

 

 ……根の深い話題を察してか、すぐに切り替えていけるところがロックオン・ストラトスという男のコミュニケーション能力を象徴している。そうユリウスは思う。

 こういう所があの三人ともやっていける理由なのだと、身をもって体感した。同時に、見習うべき男だな……とも。


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