ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる 作:トン川キン児
「うが!!」
野太い声と共に、背中からしたたかに叩きつけられるユリウス。地べたから見上げる漢服の上からヘッドギアを着ける男は、王留美の付き人にして実の兄である紅龍。
ユリウスが床を舐めるハメになっているのは、エージェントとして肉弾戦の機会もあると考えれば格闘の心得を取り戻したいという軽い気持ちで彼に挑んだためである。いつだかの彼の原作での活躍を考えれば生身の格闘を挑めば勝てないなどとわかりきっていたが、実際に身をもって味わうとそれが完全にはっきりした。
「……さ、すが、お強い。達人に身体さばきじゃ敵わないな……」
「まだ続けますか」
「この辺で締めで。お嬢様もこんなのを見てたってしょうがないだろうし」
「わたくしはお気になさらず。それにお時間もまだ余裕がありましてよ?」
ボディガードである紅龍は片時も留美の傍を離れるわけにはいかないため、スケジュールの合間を縫ったこのトレーニングにも留美がついてきている。そうした事情もあるし、年頃の女子がむさい男同士の取っ組み合いなど、と思っていたユリウスだが留美は存外楽しそうにこちらを見ている。
とはいえ、ユリウスもこれ以上続ける気はない。身体の動かし方は大方思い出せたし、勝ち負けをつけるためにやっているわけでもない。
「時間を割いてくれたことにありがとうと思いはします。でも今日はこれまでで」
「あら……なかなかいい勝負に見えましたのに」
「続けても勝てるわけじゃありませんから。身体の勘を取り戻したいってだけです」
「初めの方は優勢だったでしょう?」
「結果はこうですよ」
運動ついでに把握できたこともある。どうやらこの
それは、相手から繰り出される手数が自分の処理より早いか多すぎる場合。いくら先を読めていても、人間の身体がそれについていかない。
今回の肩慣らしでは序盤にユリウスが紅龍の仕掛けに対して次々にカウンターを決めるも、紅龍がその狙いを見切ってインファイトに持ち込んでからは一方的だった。増える手数とその速さに、対処が追いついていかなかった。
少し前にフォン・スパークが仕掛けた、モビルスーツ一機仕留めるには大掛かりすぎるトラップの物量戦の理由も、恐らく自分の能力の噂を仕入れて分析した結果なのだろう……しかし振り返ってみると、少ない情報で戦わざるを得ない状況を作り、周到に準備を重ね最後には自分の能力の正体を掴んだであろうあの男の執念は異常だ、とユリウスは思わざるを得なかった。
といったように、ある程度自分の限界をユリウスは察していた。ただの人間の勘がそれほど万能であるはずもないと思っていたので、この事実はさほど意外ではなかった。
「俺は超能力者じゃありません。そうだとしても人間一人なんて弱点や限界は山ほどあります」
「しかし、貴方とパートナーのパシーさん。お二人は他の誰にもない特別な能力を持っている可能性がある……その事実は変わらないのではなくて?」
「……それはそうですがね」
「渋らずにお話をしてくださってもいいでしょう?」
予想外なのは、留美が勘の域を出ないようなこの能力に強く興味を示していることだった。
とはいえ、ガンダム00という作品における王留美という人間がどういう理屈を持って動いているかを考えればユリウスにとっても納得のいく動向ではある。
要は、なんでもいいのだ。紛争根絶でもイノベイターでも超能力者でも、自分の世界を変えるかもしれないものであれば見境なく興味を示してくる、リボンズ評するところの「意地汚い小娘」。それを理解していれば、あながちその評も的外れとは言いにくい。
そのくせ世界がどうなって欲しいかという展望もない上、自分にとって最も重要なことをわかっていない。変わって欲しいのは『世界』ではなく、『自分の世界』。そして、そのためにどうすればいいのか……。
ただし、それを赤の他人であるユリウスが直接言ってみたところで恐らく不興を買うだけに終わるというのもまた事実。
狙いは、絞らなければいけない。気づかせるのは、兄である紅龍でなければいけないのだ。
「紅龍はどう感じたのかしら」
「……頭の中を読まれているように先手を取られる。初めての体験でした、自負するようですがまさか拳をかわされるとも、当てられるとも思っていませんでしたので」
「とのことですよ?」
「……話が聞きたいならしますけど、勘の正体は俺だってわかりゃしません。できることといえばしけた昔話だけですよ」
「そういうところに気づきがあるものではなくて? サービスになると仰るなら……」
「よしてください。話で金を取る仕事じゃない」
そういう点で言えば、留美が自分に興味を示しているのは、厄介ごとばかりを呼び込む自分の能力には珍しく幸運を引き込んだとも言える。
人間不信ぎみの留美を相手取って、人柄で関心を引かせることがまずできないことはわかっているし、ユリウス自身も自分に人を惹きつけるような才能がないとは思っている。それでもこうして関わる機会が多くなるなら、少しでもこの兄妹との距離を縮めることはできる。
蜘蛛糸のように細い筋だが、こうして辿っていくしかない。
「……自覚が出てきたのは、セイロン島でのことです。相手は人革連で、指揮官があの『ロシアの荒熊』とくれば、初仕事なのに生きて帰れるかもわからんものになりますから」
「いえ、要点をまとめるくらいのことはできるでしょう?」
「………………」
……美しさに気を取られずに面と向かって話してみれば、こういう腹立たしいところがそれなりに多くある娘なんだろうなとユリウスは思った。
だとしても、この少女の運命を放り投げておく気には絶対にならなかったが。
・
・
・
「全員集まったな。心が折れていないようで嬉しい」
「……折るつもり、だったんですかね?」
「そうは言わない」
その同じ日、組み手から少し後のブリーフィングルーム。四人のガンダムマイスターが定刻通りにユリウスの下へ集まった。
ひきつった笑いと共にアレルヤがユリウスの言葉に聞き返す。先日のシミュレーションのことを思えば、そうしてしまうことも可能だったのではないか、という怯みがあった。
「話はヴェーダとスメラギ・李・ノリエガ、そして俺の見立てだ。これまでの成績や俺への対応を鑑みての推測だが、お前たちであれば現状の養成プログラムだけでも、ガンダムで与えられたミッションをこなしていくことは十分にできると判断できた」
「……え? あ、はあ?」
「俺からマイスター四人それぞれへの養成プログラムの適用は取りやめる」
ユリウスの告げた言葉に、呆気に取られる四人。ロックオンが漏らした呆けた声がこの部屋の、その瞬間の雰囲気を代表していた。
それも当たり前のことで、マイスターたちからすれば今のユリウスの言葉は『自分の出番は昨日で終わりだ』と言ったようなもの。何のために来たのだか、全くわからなくなる。
「……何だ。なにを呆れたように」
「そりゃなぁ……じゃあアンタ何しに来たんだってなるだろ」
「…………浮いた時間はもっと重要な事を教える。ひとりひとりの技術より余程重要なことだ」
その口ぶりでどうやら本題があることに気付き、それ以上の詮索を止めたロックオン。
飯時を共にした食堂の一幕のことを考えると、どうやらユリウス・レイヴォネンという人間は見かけほどクールで深みのある男といったようではなく、こうした緊張感のある立ち居振る舞いは素のままにはできないらしい。芝居がかったというほど不自然でもないが、注意してみればややもったいぶったりするところに若干の違和感がある。
二言目のやや長い間の理由も、それらに対して自覚があるからだろう。いわゆる「やってしまった」という奴である。
見かけと内面の印象が違うなんてのはままあることだし、傭兵として生きるための処世術か何かだろう、とロックオンは自分を納得させた。
「お前たちに俺が教えるのはチームワーク。四機の戦術フォーメーションだけじゃない、二機編隊単位までガンダム四機を使ったあらゆる攻撃と防御を骨の髄まで叩きこむつもりだ」
「ガンダム同士の連係ってことかい?」
「そうだ。この組織の中でこいつを教えられるのは俺しかいないと思った」
自惚れではないが、ユリウスには自分が強くなったという確信がある。それこそ、『ガンダム00』における本来のガンダムマイスターの強さ以上に、彼らを鍛え上げられるほどに。
しかし、それではこの世界は最悪の結末を迎えるかもしれない。仮に自分が彼らを教え、ガンダムが……ソレスタルビーイングが世界に勝利したとしても、その勝利に意味はない。世界は統一されることなく永久にバラバラのままになるだろう。
ソレスタルビーイングは存在しなければならない。しかし、勝利してはいけない。
では、自分という存在を加えながらどのように世界の流れを『ガンダム00』とある程度同じように着地させていくのか……ユリウスなりに考えた結果が、チームワークの教導に専念するということである。
マイスター各人が戦術フォーメーションを履修していたと思しき描写は確かに存在する。ならば、「やっていたであろうこと」をなぞるだけに留めれば、差し障りが出ることはないだろう、というのがユリウスの魂胆だった。
「ガンダムはたった四機。ひとりのミスが命取りになる……だが、フォーメーションが頭に入っていればカバーも容易い。それに大国をも相手にする以上は必然的に多対一を強いられる、ならば敵も当然フォーメーションを使ってくる」
「敵の戦い方をある程度理解できるってこと、ですか」
「知らなければガンダムですら絡めとれる手筈も、俺がすぐ思いつく限りですら2、3はある。だがそれはあくまで今のお前たちが乗るガンダムであって、知っていれば対処できる」
ともすれば癇に障るようなユリウスの強気な口ぶり。しかし、ある程度大人寄りの弁えを持って納得しているロックオンとアレルヤ、元々寡黙な刹那はもとより、先の初顔合わせで嚙みついたティエリアもこれに口を挟むことはできなかった。
シミュレーションとはいえ、先の戦いはユリウスの言葉にそれだけの説得力を持たせたのだ。
「……今日は座学からだから、そこまで強張らんでもいいと思うがな」
そう言って資料のページをめくり始めるユリウス。張り詰めさせすぎた場の空気を和らげようとして言った言葉だったが、雰囲気を作った当人が言っても簡単に緩められるはずもなく四人の表情は堅いままだった。
うち二人は元から仏頂面だった、というのもあるが。
・
・
・
「で、なんで俺だけ? この歳で居残り授業は勘弁だけどな、先生」
「『先生』はさすがにキツいからよせ。別に態度や能力に問題があるわけじゃない」
他三人が去った後のブリーフィングルームでの、ユリウスとロックオンの会話。解散ののちに、ユリウスがロックオンだけを引き留める形にしてから今に至る。
ロックオンの言い様に顔をしかめつつ、ユリウスが話を続けた。
「お前には頼みというか……お願いというか、そういう類のものがある。他の奴には無理だ」
「はあ」
「他のマイスターをよく気にかけてやれ。それだけだ」
「…………あ、ああ。んまあ、アンタが言うんならやらんでもないが」
ユリウスの言葉にロックオンが一瞬戸惑った。まさか本当に学級担任のようなことを言いだすとは思っていなかったし、見てくれの割に随分と細やかな配慮をしていくものだな、という口には出せない印象を受けた。
ただ、その役割を自分だけに見出したのは何故か? ロックオンはその疑問をすぐに尋ねる。
「しかし、何だって俺なのかね。アンタも何だかんだで面倒見が良さそうな方に見えるぜ」
「教える方がナメられちゃあいけない。内々で結束を固めていった方が、これからの教練にもいい傾向が出る……それにな、あいつらは危うい」
「言う事尤も。具体的にどう危ない?」
「戦争根絶なんてものを目指す組織の中核に選ばれるような奴らだし、各々事情はあろうが張り詰めすぎる。お子様二人もそうだが、ハプティズムだってその実自分のことで手一杯に見える」
「……で、余裕たっぷりそうな俺にやってくれと」
「たっぷりとは言わないが。ただ、お前しかいないだろうなと」
言葉通り、ユリウスは痛感していた。この時期のソレスタルビーイングは誰も彼もまだまだ不安定で、少しづつでも引っ張っていけるような存在はロックオン・ストラトス……ニール・ディランディしかありえないのだ、と。
だからこそ、自分の介入があったために彼らの絆が育まれないということはまかり間違ってもあってはならない。そう思えばこそのお節介焼きのようなこの対談である。
……つまるところ、保険のようなもの。
ロックオンは首を縦に振った。ただし、タダでというのも面白くないとは考えていた。
「いいぜ。けど、俺だけ頼みを聞くってのは変だよな」
「それは……そうだ。しかし訓練で贔屓目をしろなんてのは聞けないぞ」
「違うって。ただアンタともこういう付き合いがあれば、妹さんとかともお近づきに――――」
「あ゛?」
――――ユリウスの声が野太いドスの効いたものに切り替わった瞬間、ロックオンは己の間違いを悟った。
「お前……お近づきだあ? アレだぞ、人妻子持ちだぞ
「い、いやっ……違うんすよ。俺も家族とは会えねえしそういう家庭っぽいとこ見たいなとか……ハハハ」
先程までの冷静深慮なユリウスの語り口がまったくチンピラのようなものへと変わり、射殺すような眼光を向けられながら、しどろもどろでそう言ったロックオン。
しかし、ロックオン・ストラトスがソレスタルビーイングにいる以上は、この世界においても、彼の家族は……と思えば、それは偶然にも彼の正体と家庭事情を知っているユリウスに対して頭を冷やさせるための最善の返し手となった。
「………………それなら、構わない。悪かったな」
「……ふう……」
……この先もユリウス・レイヴォネンという男と関わりが続いていくのなら、決してリンダという妹さんには変なちょっかいを出すまい。
そう心に固く誓うロックオン・ストラトスであった。
・
・
・
それから少し経って、夜……――――宇宙には昼夜などないが、世界標準時においてのこと。
あらかじめこの時間にイアン・ヴァスティから呼び出しを受けていたユリウスは、格納庫へ向かい、モニターの前で何やら考え事をしているイアンと対面する。
傍らには小さな影。初対面に見た技術者のタマゴ、シェリリン・ハイドもいた。
「イアン?」
「お……よく来た。これ、お前さんに心当たりあるよな?」
「何をいきなり……これは」
言われて二人がにらめっこしていたモニターを覗き、驚くユリウス。そこに映されていたのは、いつぞやのフォン・スパークとの戦闘記録だった。
「……見れちゃうんだな。イアンもヴェーダを使えるのか?」
「ミス・スメラギに頼んで見せてもらったんだ。わしの手掛けたヘリオンを理論値まで使い倒すのみならず、こんな無茶苦茶までやるとはなぁ」
「元エースって言われてもピンと来なかったけど、こんなことできちゃうんですね……」
力技にまかせた無理やりな変形と、胴体から下をまるごと質量弾に使うという戦法。思い返しても確かに、無茶苦茶と言われたら返す言葉がないなと思ったユリウス。
二人のこちらを見る目が明らかに変わっていることがわかったが、わざわざ格納庫まで呼び出しておきながら、お褒めの言葉が本題というのはないだろうとも感じていた。
「褒められて悪い気はしないが、違う用事もあるんじゃないか?」
「おお……それなんだよ。いやなあ、わしゃァな、ヘリオンってのを見るたびやり残したことあったな~っつうか、半端な仕事したなぁって感じてモヤモヤするんだ」
「……何のこったよ」
「お偉いさんの発注はもっと洗練されたリアルドをってことだったがな、もうちょいAEUで時間と金くれればあん時にだって……いやぁ無理かな、アブルホールなんてもん作ったしな……」
「え? 何?」
「とにかくなぁ! わしは本当ならヘリオンを換装なんかいちいちせんでいい完全可変機にしてやりたかったわけよ、んで、今なら絶対できる! わしの手にかかりゃフラッグやらAEUの同じような機体なんざ目じゃない出来になる」
「は、はあ……そうだろうけど。とにかく要点をくれよ」
言葉を続けるたびに年甲斐もなくヒートアップするイアン。自分を置き去りにして一人で熱くなる彼には十分困惑していたユリウスだったが、次の言葉はもっと衝撃的だった。
「お前さん乗る機体ないだろ?」
「そりゃ、乗ってたのは会社のモノだし。まあ要る時に手配は頼むから別に」
「お嬢さんにヘリオンの一機でも貰え! どうせゴロゴロあるんだ、んでわしが改造する!!」
「――――は!?」
……突拍子もないその提案に、驚くしかなかった。
「……いやっ、あのさあ、俺一応外様だぞ!? そういう考えは嬉しいけどモビルスーツくれるったってヴェーダが何て言うんだよ」
「計画遂行に支障がなけりゃ大抵の承認は通る!」
「え、ええ……? そういうもんなの?」
あまりにも力強く語るイアンに、思わずそういうものなのかと飲み込みそうになるユリウス。
「そういうもんだぞヴェーダって。なあ?」
「うん。わたしにもガンダム作らせるぐらいだし」
イアンが問い、シェリリンがうなずく。
初耳だった。いくら天才児なのだろうとはいえ、ソレスタルビーイングの根幹であるヴェーダは十代の技術者をガンダムの制作に関わらせるGOサインを出してしまうようなものだったとは、ユリウスは夢にも思っていなかった。
ガンダムマイスターにも刹那・F・セイエイが、プトレマイオスクルーにもフェルト・グレイスなどがいる時点で今更の話と言えなくもないが……それにしても、というものである。
「えええ……つったって、俺にMS持たせるったってどういう理由付けで……」
「教導が終わったら留美のお嬢様と諜報とか便利屋に回ってもらうことになるが、ガンダムだと目立って動けないって場合にもこういう機体があれば小回りが利くだろ。世界が敵に回るんだから普通の輸送機じゃヤバいなんてことはいくらでもある」
「……ホントのところは?」
「誰が世界最高技術者なのかハッキリさせて一人で満足してぇ」
「それガンダムじゃダメか!?」
「ガンダムは…………ズルだろありゃあ!」
「GNドライヴ付けちゃったら何やらせたって勝てるしズルですよねぇ」
イアンの語った……というよりかはぶっちゃけた、技術者の矜持……っぽく見せかけているワガママじみた何かに再び深くうなずくシェリリン。
『わからんでもない』ということなのだろうが、『ガンダム00』を見ていた時も、今生きているこの世界においても、漫然とかっこいいなとは思いながらも特にモビルスーツそのものに対してそれほどこだわりが無いユリウスにはさっぱり理解できない概念だった。
こだわり無いとはいえ以前に92年型のヘリオンを寄越された時のように不便なのはごめん被るし、今までの職業柄、一応それらについて詳しくなりはしたが。
「……だって、ガンダムのオプションとかの制作がまだ途中……だよな!? そっち疎かになったら本末転倒にっ」
「こんなこともあろうかと暇な時に図面引いてたんだよな~! 時間は取らんぜ」
「用意が良すぎる!!!!!!」
小型モニターにこの提案に至るまで相当の用意があったであろうことがわかる複数枚の図面が映し出された瞬間、ユリウスは頭を抱えてそう言うしかなかった。
「観念してわしの野望に付き合ってくれよ~」
「やらない理由探しばっかでカッコ悪くないですかぁ?」
……全部やるというなら、なるようになってしまえばいいといった次第だった。
「…………うん、もう好きにやれば……? 何でもいいよもう、帰る……」
「よっしゃあ! 任せときな」
「お手伝いするよ師匠!」
盛り上がる二人をよそに、どっと疲れた足取りでとぼとぼと格納庫を後にするユリウス。
渡る世間は変人ばかり。彼らのテンションについていけない自分はただただ疲れるだけ……いっそ同じだけおかしくなれれば楽なのだろうが、と思うユリウスだった。
マキオンで大元帥になってたりしたらめちゃくちゃ遅れました