ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる   作:トン川キン児

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今と炭酸と俺

 遡る事二日前。天使宮(クルンテープ)の自室にて、ユリウスがミッションの概要を熟読していた時の事。

 背後から突然ドアの開く音が聞こえ、ユリウスは即座に振り向く。この時間に待ち合わせなど一切していない、つまりは招かれざる客。

 

「よーぉ。前はヘルメット越しだったっけな」

「その声……!?」

 

 忘れもしない声……人生で三番目に出会った厄介者。自分の全財産をエサにしてまで自分を釣り出し戦いを挑んできた、狂った粘着男。

 フォン・スパーク……この男のためだけに自分はとんでもない死闘を繰り広げさせられた。てっきりあの後降りて来た謎のガンダムによって粛清されたものだと思い込んでいたが、ソレスタルビーイングに入り込んでいるとは思いもしなかった。

 

「あの時のは、スカウトだったってことかい」

「そういうワケよ、これでノーサイドだ。オレ様としてもあん時殺すつもりなかったしなァ」

「……結果的に死んでもいいとは思ってたんだろうが」

「ご明察。あげゃげゃげゃ!!」

 

 見ればその腕には分厚い手錠がなされており、首元には不吉なチョーカー。恐らく、この男……フォン・スパークが受けている待遇はそれほど良いものではない。

 重犯罪者や組織倫理を侵す可能性がある者には、こうした反逆防止用の措置がなされることは往々にして聞いたことがある。実際この男が地球社会で何をやってきたかは大体想像がつくというもの、それに対しては驚きもしない。

 通り名どおり弾けるように、狂った笑い声を飛ばすフォン。その後に話を続ける。

 

「オレ様がわざわざまたアンタのとこに来た理由もわかるか?」

「知るか……消えろ。イカれの相手はアレだけで手一杯だ」

「アンタいい加減、自分は特別な力を持ってんだって自覚してんだよなァ?」

 

 言われて、ハッとする。伏せていた顔を咄嗟にフォンの方へ向けるユリウス。

 

「……何を」

「エスパーだなんだって言われてるよな? オレはそいつを確かめるためにアンタとやった」

「んな……っ、たかが、俺の勘のために?」

()……()()だってか。本人の認識はそんなもんなのな。無意識なのかまだ力が弱ェのか」

「何言ってんだお前……!」

「自分でも解ってねェ能力をオレ様が調べてやったんだぜ? あげゃげゃ!」

 

 何故? 何の得があって自分に付きまとう? 何のために……?

 ユリウスには理解できない。困惑するしかない。その困惑が、フォンをさらに付け入らせる。

 

「最初は敵意とか殺意とか、考えを読んでそういう指向性のあるものを直感しちまうのかと思ってたけど、相方の女の方も併せて見ればどうももっと大雑把っぽいんだよなァ」

 

 手錠で繋がれた右手でユリウスを指差し、さらに続けるフォン。

 

「アンタの能力はアンタ自身の『危険』に反応するし、抑えは効かねえ。逆に言やあ、そんなときにしか使えねえ。まるで究極の動物みてえだなって考えてるトコだぜ」

「究極の、動物……?」

「御託を並べねェでも、『野生の勘』って奴がここは危ないって思わせるときあんだろ? だから動物だってワケだ。生存本能の究極形……くぅ~~~~いいねェ!!」

 

 ひとしきり喋り終えて、床に胡坐をかいて何やら興奮した様子で両手で器用に頭を搔きまわすフォン。当のユリウスといえば、考えが追いつかないままだった。

 

「何で、そんなことがわかる……そんなオカルトじみたような」

「アンタとの戦いだけじゃ確証は得られなかったけどな、相方の女の方だ。操縦自体がそんなに巧くねえから見過ごしてたが、戦闘記録開示させたらまあ異様なもんが出るわ出るわ」

「パスレル、だって?」

「腕が吹っ飛ぶ前の話だぜ。地雷原の手前で急に方向変えたりよ、もう思考がどうとか関係ねェ。危険なもんはほとんど感じ取れちまう。アンタより一段上の能力ってワケだ」

 

 自分の力の向かう先に、パスレルがいる。それは、自分もああなるという事なのか?

 本能のままに生き、突き動かされるままに戦う。ユリウス・レイヴォネンという人間がそのようなものに堕しては、殺した者たちに示しがつかないというのに。

 この男……フォン・スパークが言う自分の能力の正体がもし本当に話の通りなのだとしたら、自分自身の力でそれを抑え込んでいくことなど、到底できない。

 であれば、一体どうしていけばいいと?

 

「とまあオレ様の推論を並べてったが、結局まだデータ足んねえな。これからもっと励みな」

「はあ……!?」

「研究発表に付き合わせた礼ってことで、あの日の話の続きをしてやっとくぜ。あげゃげゃ」

 

 あの日……というのは、即ちフォンとのろくでもない初会合。聞けなかったことというのは、即ちコクピットからこの男を引きずり出した後、ガンダムに遮られた言葉の事。

 それは、つまり……。

 

「AEUに降りるってな。これ聞いて、アンタがどうすっかも気になんなァ。あげゃげゃげゃ!!」

 

 あの日に同士討ちを目論み、友を、友の恋人を、エミリオを殺させた者。

 この男の口から、それに関するすべてを聞けるということに他ならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時と場所が戻って、AEU領フランス・軍人墓地。時刻は早朝。

 日も差さないどんよりとした曇り空の中で、ひとつの墓碑の前で立ち尽くす男がひとり。

 碑には「Emilio Ribisi」と刻まれている。男は、ユリウス・レイヴォネンである。

 

「花の事はわかんねえから、これでもいいよな……」

 

 墓地の近くで買った手向けの花を添え、目を閉じて祈るユリウス。

 

「よく眠れよ。もう、こういうことがない世の中にしてやるから」

 

 祈りの中にはいろいろな感情が入り混じっていた。

 懺悔と、悲しみと、憐憫と、無力感、労い。そして少しの憎しみと怒り。

 本来なら後ろ二つのような感情をこの場で抱くことはなかっただろう。だが、いつかのカティ・マネキンが語った疑惑と、フォン・スパークから伝えられた事実が、それを掻き立てていた。

 あの事件に確かに黒幕はいた。首謀者は中東戦線の前司令官であり、リーサ・クジョウを取り立て戦線の終結を実現させた現司令官の存在感の拡大を快く思っていなかった。

 かつてフォンの率いていた傭兵組織がAEU軍との専属契約を果たせたのはこの前司令官の力添えによるものが多く、仕事を選ばぬその方針に、汚れ仕事の押し付け役として目が留まったらしい。事件に関しても一部の裏工作を請け負ったことから、このことがフォンに知れていたとのこと。

 憎しみと怒りをぶつけるべき人間がいるということを、ユリウスは知ってしまった。

 

「今からどうするかは……悩んでる。お前の意見はどうだろうな?」

 

 コートの裏に隠している拳銃に、ユリウスの意識が向いた。

 

「俺はな」

あ゛!! お前ユリウスだな!?!?

 

 ……と同時に、静謐な墓場に似つかわしくない大声と、ずかずかと草地を踏み鳴らす音が背後の方から聞こえてきた。

 聞こえてくるこの歩き方は、間違いなく。だが……何かおかしい。

 

「な、なに……!? 何で」

「何でって、お前が呼んだんだろうが! 何年も……何年経ったっけな、 とにかくしばらく会ってねえからってこのパトリック・コーラサワー様の顔を見忘れたってのか!?」

「……お前、偽物じゃないか!?」

は!?

本物のコーラサワーが予定の時間通りに来るはずがねえ……!!

馬鹿にしてんのか!! ダチの墓参りぐらいきっちりできるわ!!」

 

 思わずハッとするユリウス。

 コーラサワーの普段は胡乱でしっちゃかめっちゃかなものだったとしても、男として軍人として命に誠実であることはできる。そういう男だ。

 しばらく会わない内にそれを忘れていた、ユリウスは己を恥じた。

 

「……悪かったな」

「へっ。向こうでもカゼひかねえで暮らせよ」

 

 ユリウスのものの傍に、手持ちの花を添えて祈りの言葉を捧げたコーラサワー。

 死人はカゼをひくものではないだろうと心の中では思いながらも、コーラサワーなりの死者を悼む言葉にユリウスは余計な口を出さなかった。

 

「よし! じゃあ朝飯行くか~~~~!!」

「切り替え早くねえか……!?」

「やることはやった! 俺らみたいなのがしけたツラで生きてりゃすぐにここの仲間入りすっぞ」

「おまっ、そんな言い方……」

「こいつらは悪霊じゃねえんだからよ、こっちに来いとか言うと思うか? 俺は逆だと思うぜ」

 

 ……自分の中にいるエミリオが、僕を殺したお前も死ぬべきだ、と言うかどうか。

 それはわからない。だが、コーラサワーはそんなことはないと言い切っている。

 だからユリウスにも、そんな気がしてきてしまう。本当にこのパトリック・コーラサワーという男は、自覚もなしに本質を見抜くところがある。

 

「…………俺は最近の飯屋知らねえよ」

「元々々カノと行った美味いとこ近いからそこだな! 歩きなら乗せるぜ」

「頼むぞ」

 

 駐車場の真っ赤なスポーツカーに、二人は並んで歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「朝からワイン飲みたくなってこねえか」

「お前あの車置いて帰るつもりなのか?」

「そりゃなあ……まあなあ、そうだけどよ」

 

 オープンカフェに着いて、モーニングのクロワッサンを持参の箸で食べるユリウスを尻目に、飲酒への衝動を激しくするコーラサワー。

 コーヒーに口を付けたところでようやく落ち着き、コーラサワーはお互いの話を始めた。

 

「パイロットやめて何やってたんだ?」

「またパイロットだよ。傭兵に雇われた」

「へえ~~~~っ。軍隊と違って自由にやれたんじゃねえか?」

「もっとシビアだよ。勝ち目のないような場所にも稼げそうなら行かなきゃなんねえしな」

「でも生きてるよな」

「そりゃあ、な」

 

 椅子に深く腰掛け、Vサインで「多少は腕前を上げたことを察しろ」と示したユリウス。

 

「じゃあ今もどっかで戦ってたのか? 俺またこっちにしばらくいることになったからな~」

「いいや、年がら年中戦い通しじゃあなくなった。雇われ先が太くなったもんでな」

「マジ? お前もしかして俺より給料高かったりしねえか!?」

「かもなぁ。どことは言わねえけど財閥のお抱え……まあまあなもんだぜ」

 

 ソレスタルビーイングのエージェントとして迂闊なことを言うわけにはいかないが、ユリウスの嘘をつく才能は乏しい。教えても問題ない部分の事実までを語り、ついでに少しの優越感を得た。

 

「金くれよ!」

「言われてよこすと思うのか……?」

 

 ……茶番は終わらせて、そろそろ『本題』に入るべきだ、とユリウスは考える。

 エージェントの、マグナス・アルハンゲルとして。

 

「……というか、しばらく本国にいるって言ってたな。何のためにだ?」

「決まってんだろ。ヘリオン最終型のテストもやったこのAEUのエース、パトリック・コーラサワー様にまたまたお鉢が回ってきたってわけよ。最新型のテストのな!!」

 

 机に椅子と身体を寄せ、腕をテーブルの下に。これで、机の下に伏せた小型のレコーダーの起動を見られる心配はなくなった。

 

「ヘリオンの最終型もたった一年前だろ。もう新型を出すってのか? ユニオンのフラッグがあんまり強ぇからせっつかれたか」

「イナクトが完成して俺が乗れば、フラッグなんて問題にならねえぜ!! 各国でもう量産体制を整えさせてるってんだからな。それにな、お披露目も俺に相応しく派手らしいぜ!?」

 

 ――――本題は、ここだ。

 

「どう派手なんだよ」

「そりゃあ、人革連のー…………なんか。なんかに日付合わせるって上官殿が言ってたし、まあとにかくド派手になるんだよ。間違いなくな!」

「人革連の……軌道エレベーターの十周年式典か? 来年の10月6日だな?」

「おおそれだ。お前詳しいな」

「イベントのある日は稼ぎの匂いもある。だが本当か? 式典にぶつけるったって、ハズれた時のリスクだって相当にデカくなるぜ」

 

 あくまで傭兵としての興味だと、その姿勢を貫くユリウス。

 この男の口の軽さは昔から承知している通りだが、それを利用するのは初めての事だった。

 

「お偉方じゃもうそれで決まってるってよ。俺は正パイロットだからな、そういう情報も正確なもんしか入ってこないってことよ」

 

 自分を完全に信用しきっているとしても、あまりにもスラスラと内情を喋る。

 ユリウスは罪悪の気持ちが存在しない人間ではない。友人を騙し、友情を裏切っているこの行為を躊躇する思いがミッションの開始前には確かにあった。

 だが、できてしまう。

 目の前にいるこの男(コーラサワー)の人間性にも問題はあると言い訳を添えていったり、自分は所詮その程度の人間なのだからと、割り切れてしまう。

 組織が、自分の目的がどうとかではない。真に友を大切に思う気持ちがあれば、こんな事を行おうとはしないはずなのだ。

 

「……来年の、人革の式典に合わせてくる。本当なんだな」

「しつこいなお前。そうだって」

「……なるほどな」

 

 レコーダーを停止し、懐へとしまう。聞くべき事は聞いた、やらなければいけない事はもう終わらせたと思えば、罪悪感が少しの間だけ和らいだ。

 

「で、お前これ部外者の俺に言っていいもんなワケ?」

「……へぇ?」

「へぇ、じゃねえだろお前……!」

「い、いやあ……言われてみりゃあそうかもな、確かに……」

 

 やはりというか何というか、未だに少尉をやっているだけあると言うべきか。

 しかし事ここに至って、本当に愚かなのは自分の方だ。ユリウスにはそう思えてならなかった。

 聞きたいと願ったのも自分、話すように仕向けたのも自分。この期に及んで白々しくもわかりきった事を訊くことで、自分を正当化しようと足掻いた。

 あまりに卑しく、それはともすれば一生ものの恥。

 

「……あ!! どうせ漏らしちまったんだしお前これ書いてくれよ」

「……………………は?

「前に書くの頼んでた奴、イナクトの開発からはいなくなっちまっててよお~~……。フラッグの空戦特化型の考察だってよ、お前が書いてくんね? な! 一生のお願い」

 

 ……とはならなかった。それがかき消えるほどの恥さらしが目の前に現れたからだ。

 鞄から取り出された書類を躊躇なくユリウスに渡すコーラサワー。『ユニオン軍・空戦偵察哨戒機についての考察を述べよ』と書かれているそれを、自分に代筆しろと。確かにそう言った。

 ……ここで疑問が生まれる。なぜこんなものを今日この男は持ち歩いていた?

 

「おまっ、お前……まさか、これハナから俺に書かせようと……?」

「あ、バレちまう?」

「てめっ……お、俺が今どんな気持ちで、いたと思って……!?」

 

 とんだ茶番だった。自分はこの男を不本意ながらも掌の上で転がしていたつもりで、一丁前に彼との友情について罪悪感を覚えていた。

 だが何のことはない、その実、利用されていたのは最初から最後まで自分の方だったのだ。

 ぺらぺらと内部事情を語ったことだって、このためでもあった。

 

「そ、そんな怒ることあるか……? じゃあ最後の署名だけは俺がやっといてやるから、なっ」

 

 この日、ユリウス・レイヴォネンは思い出させられた。この男パトリック・コーラサワーという存在は、良い意味でも悪い意味でも常識ある人間の考えなど簡単に上回ってしまう男であること。

 この男に対してどれほど思案を巡らせたとしても、すべて無為に終わるという事を。

 

(……あれ)

 

 そして、同時にあることにも気付かされた。

 エミリオの墓標の前で抱いていた、抑えがたかったはずの怒りと憎しみ。だが、今ここで、このカス(コーラサワー)に感じている怒りの衝動はそれ以上に燃え上がっていた。

 それは、何を意味するというのか。

 答えは実に単純なことだ。

 

(……そういう、ことかよ)

 

 環境が変わった。立ち位置も、見る場所も変わった。

 自分の、ユリウス・レイヴォネンの心において、三年前にもなる事件に自己満足の落とし前をつけるかどうかなどより、もう目の前のコーラサワーが占める割合の方がよっぽど大きいのだ。

 頭が冷えてくると、あの日のカティ・マネキンの約束のことも思い出せた。

 黒幕がいるのなら白日の下に引きずり出すと、そう約束していた。

 ソレスタルビーイングのエージェント、マグナス・アルハンゲルとしてもそうだ。

 エージェントとして、プロとして、仕事に私情を挟んでもいいのか?

 一時の怒りで彼女との約束を無下にするのか?

 答えはもうとっくに出ていた。

 

「…………イヤ、もういい、わかった。やっとくわ俺が」

 

 観念したといったような口ぶりで、ユリウスはそう言った。

 

「マジで!?」

「なんかもうキレすぎて逆にスッキリしてくる」

 

 不思議な男と縁ができたものだ、と思わされる。

 パトリック・コーラサワーというのは無遠慮で、無作法で、無精で、つきっきりの助けがないと凡そ世渡りもできなさそうな男である。

 というのに、たまにこの男が与える気づきは何にも代えがたいものを思い出させる。

 

「帰るわ」

「あ? もう帰るのかよ」

「いろいろ納得できた。満足した」

(こいつ何勝手に満足してんだ……?)

 

 これ以上ここにいる必要はない。長居をすれば、戻りたくなくなるかもしれない。

 ユリウスは席を立って、コーラサワーの下を後にしようとする。

 

「またな」

「おお、またな」

 

 街道を歩きだして広場に出ると、分厚い雲の切れ間から真昼の太陽が顔を出し始めていた。

 

 

 

 ……その数か月後のニュースに、AEU中東戦線の前司令官が軍事査問委員会の招集を受けたとのスキャンダルが流れる。これによって、人革連国境付近の山岳基地奪還作戦における同士討ち事件の真相の一端が初めて公の場に出ることとなる。

 ユリウスはそのニュースを、それから三日も経ってようやく知った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユリウスとコーラサワーの会合、そのほぼ同時刻。

 王留美のVTOL機にパスレルが乗っていたのは、何も付き添いなどのためではない。彼女もまたヴェーダからのミッションを受け、エージェントとしてAEUへやってきたのである。

 

(情報貰って帰るだけだろ。つまんねえの)

 

 当人の意向はともかく、ミッションの内容はごく単純なもの。情報の入手を悟られずにソレスタルビーイングへと流すため、別のエージェントと指定のポイントで合流しろとのこと。

 指定されたポイントは、格式高い高級ホテルの前。

 泊りもしないのにそんなものを見せつけられたって腹が立つだけだ、と苛立ちながらも、パスレルはそこへ向かって移動していた。

 

「着いたぜ姉ちゃん」

「あいよ……」

 

 タクシーが止まり、運転手が支払いを催促する。やや割高だが、どうせケツ持ちは組織がやると思えば躊躇なくパスレルはそれを支払い出て行った。

 

「…………あァ?」

 

 客を降ろして去っていくタクシーから振り返る。

 するとパスレルの視界には、知っている顔の人間がいた。

 一度も顔を合わせたことはないが、パスレルは……その人間を知っている。

 

「やあ。よく来てくれたね」

 

 その声も、知っている。

 

「あの時は名乗っていなかったね。僕はリボンズ・アルマーク……少し話をしたいんだ」

 

 この少年は、あの再生治療の時に頭に語り掛けてきた者と同じ。そして……。

 

(…………やべえ!!!! ストーカーだったのか!!!!

 

 パスレルの運命を大きく変える、人生で初遭遇した変質者だった。




これにてPreseason終了です
00Nを買って最初の武力介入の日付に設定あるの知って修正しました
知らなかったそんなの…
00好きな人は00Nも見といた方がより幸せになれると確信しています

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