ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる 作:トン川キン児
忙しい
天使の降りた裏側で
遭遇からすぐ後、パスレルは少し考えを改めた。
「や~~~~悪ィね悪ィね、こんなんおごってもらっちゃってよ~~~~」
「君の言うことが尤もだと思ったからこそだ。気にすることなくおごられてくれたまえ」
「別にハナから気にしてねーけど」
「そうだろうとは思っていたよ」
暖色のライトとシックな空間が彩る、格式高い高級ホテルでのランチブッフェ。それを目の前のストーカー男であるリボンズ・アルマークが費用を負担してくれている訳であるからして。
故に、パスレルからリボンズへの評価は"ストーカー"から"奢ってくれるストーカー"に変わったのだ。
そして今は、取り皿に取れるだけのものを積んで戻ってきたパスレルとリボンズが向かい合って語り始めている。
「んで?あたしがツラ貸せ金よこせっつって考えが変わったってか?」
「ああ。同類だからといって初対面に気安い態度を取ってしまったね、これは非礼のお詫びととってほしいな」
「ほーん」
気の抜けた返事を返したパスレルは、その興味を目の前のごちそうに向け直して頬張りはじめた。
「話を聞いてもらえるということでいいかな? もちろんそのままでいい」
「
「単刀直入に言おう。僕の下で働くことにしないか?」
「
「すまないが僕はどうしても君の力が欲しくなったんだ。利用させてもらいたいのさ」
その大胆なリボンズの発言に、さすがのパスレルも面喰らった。
それと同時に、その傲慢不遜さを隠そうともしなくなった姿勢におかしみがこみ上げてきて、漏れ出すように笑いをあげた。
「……ぷっ! おま、面と向かってさァ、利用させてって!」
「君は嘘が嫌いだろう?」
「へへへ。二度目となるとまあよく調べてきてるこって」
「話を聞いてもらう気になったということで、いいかな」
「いいよ~話してみな。聞いてやるぜ? なんか、面白くなったみてーだし」
パスレルの返答を聞いてからふっ、と含みのある微笑みをひとつ浮かべて、リボンズは言葉を続けていった。
「僕の手駒となって働くこともある。が、それとは別に僕は君を知りたいのさ」
「調べるもクソもオメーらが造ったんじゃねえのあたしを」
「そう、だからこそわかる。君は造られたころから全く異なる力を手にしている、それを僕は知りたい。僕のものとしたい」
「おーん。そっちもよくご存じみたいで」
「その言い方。つまり、君は自分の特別さに無自覚ではないわけだ」
くくく、と不敵な笑い方をした後、前傾姿勢だったパスレルは背もたれに深く腰掛けて、足を組み替える。
義手の右腕は背もたれに横たえたまま、左の親指を額に当ててこう続けた。
「そうよ。な~~~んか知らんけどあたしは特別、ユリウスもだよ」
「それも知っている。彼は僕らの同類ではないから、こういう呼びかけはしないが」
「まァまァ、あたしらにキョーミあんのはわかったよ。調べれば? カネくれりゃあさ」
ありえないほど享楽的で俗、行動指針は快と不快のみ。嘘さえなければ、この女はこんなにも扱いやすい。
そういう操縦法を心得たリボンズは、自分でも信じがたいほど口が軽くなっているのがわかっていた。
危険だと知りながらも、目の前のこの女をなんとしても引き入れたい。
「そんで?あたしらみたいになって何がしてえわけ?」
そして、おそらくこの問いが最大の試金石。
核心に迫る情報を偽らずにどこまで話せるか。それを、パスレル・メイラントという女は見ている。
そう言うのであれば、何もかも包み隠さず。そうできるだけの用意があるということを、示す。
「君の力さえ取り込めば、僕はヴェーダに造られた者でありながらヴェーダから切り離される。そうなれば、いずれはアレのご機嫌など伺う必要のない完全なる掌握さえも成る」
「…………」
「その力で僕は僕のためのイオリア計画を完遂する。最上位種であり神となる僕は、すべての生命を正しき方向へ――――」
「あっはいもう結構です。ありあとやした~帰りますんであたし~」
……そして、にべもなくそれをパスレルは振りほどく。
「……何故、かな?」
「ん~~~~そうだな、あたしにウソついたわけじゃねーしわかんねえわな」
パスレルの言う通り、リボンズは先の言葉に少しの嘘も含んだ覚えはない。
だからこそ、思い通りに事の動かない苛立ちとじれったさが怒りに変わろうとしている。こうまで激情を煽られるのはリボンズにとっても久しくない経験だった。
「君の気まぐれさは承知のつもりだが、今のも気分次第と言われたら流石の僕も君を殺しそうだ」
「お~こえ。でもなー、アンタってなんか、自分にウソついてんじゃん?」
「……なに?」
「支配とか計画とかってアンタ、ホントにやりてーワケ? あのクソジジイの言う事聞いて
「………………それは」
人類の革新のために先達として産み出され、それを存在意義として尽くす。
何のために? 既に我々には彼らより優れた能力がある。
何故に、あのような愚か者たちの面倒を押し付けられる?
顔を突き合わせたこともない、とっくに死んだ創造主がそう命じたからだ。
――――そんなものに、納得できるとでも思うのか?
「妥協なんてバカらしンだわ。あたしも乗っかるんなら、どうせならもっとめちゃめちゃにして鼻ッ柱折っちゃいてェーな?」
パスレル・メイラントの言うことは、まったく正しい。リボンズにはそう思えた。
いつの間にか妥協をしていたのは自分の方だ。抑圧の中で真の目的のカタチが歪められていた。
これが、ヴェーダから解放されたイノベイドの姿。そして、未来の自身の姿となるべき光景。
だが、今は……。
「……帰ってもらえるかい。今日のところは」
「だから帰るって。ま、あと一回ぐらいは来てやってもいいぜ~? あたしにウソついたわけじゃないし?」
「呼ばれて来てくれるのは次が最後だ、と?」
「あのブッダの頭もスリー・フェイスって呼ばれてて3つあるって言うしさ」
それを言うならば仏の顔も三度までというべきなのだろうが、言うだけの気力はリボンズの中になかった。
イノベイドによる計画への反逆行為。それは、不可能である。
その身体機能までもヴェーダの管理下にあるイノベイドは、計画に致命的な障害を齎さんとする行動を起こすと見做された瞬間にすべての機能が停止され、人格は抹消される。
思うだけならばまだいい。だが、パスレルをその気にさせるのに本心を口に出そうものなら、もしかすればすぐにでも自分は死ぬ。
脳量子波によるテレパシーも論外。量子通信である以上記録はヴェーダに残される。
(……こんな手詰まりを起こすのか……)
ヴェーダから逃れるためにパスレルが必要なのに、パスレルを引き入れるためにヴェーダから逃れなければならない。
この堂々巡りに対しての結論を、リボンズはまだ持てなかった。
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「あらあら。自分達だけぞろぞろと……勝手な人達ね」
軍服を着込み警備に当たっていた人革連軍の兵士たちが、群れを成してぞろぞろと会場中央の通路へと降りていく。
それはさながら部屋に開いた大穴に落ちていくような光景だが、パーティー会場含むこの建造物内に重力が働いている場所は限られている。故に、兵士たちは無重力に働かせた慣性に乗っているだけである。落下してケガを負うようなことはありえない。
ここは軌道エレベーター「天柱」であり、その静止衛星軌道ステーション「真柱」。日付は10月6日……電力送信10周年という記念すべき日を祝うために、盛大なパーティが催されている。
政界・官界・財界問わず、この「天柱」に携わったあらゆる大人物がこのパーティー会場にひとまとめに集っている。
慌ただしく動く兵士たちを横目に、そうつぶやいたチャイナドレスの少女……王留美もまた、本拠である人革連はおろか世界の財界に圧倒的な存在感を示す財閥・王商会の当主である。
「避難されますか」
「まさか。でも、さすがスメラギさん……見事な予報ね」
その付き人である漢服の男・紅龍は当然、当主の身を案じてこの場から離れるよう促す。
しかし、この先に起きることを知っている留美は動じず不敵な笑みを崩さぬままにしている。
「あなたならどうするかしら。マグナス」
問われたもう一人の付き人。マグナス、と呼ばれたスーツの男は、ゆっくりと口を開いた。
「ここを落とすだけでいいなら……オービタルリングと発電衛星に隠れる。電磁ネットがある程度は防いでくれるし、向こうはうかつに撃てやしない」
「流石に元傭兵。えげつないのね」
「戦いに綺麗も汚いもありゃしません。とはいえ、モビルスーツの携行火力じゃ普通はこんな構造物を狙って壊すのは難しい……確実なのはミサイルとかの爆撃。対応が早ければ迎撃は固められる」
「そうでなければ?」
「……今にわかりますよ」
答えを示すかのように、パーティー会場が激しく揺れた。
「……ガンダム。ガンダムキュリオス」
気取ったように目を閉じてつぶやく留美。マグナスは、その様を険しい目で見ていた。
「こうなります。ここを壊すだけでいいなら、見えてから出て間に合うはずがない」
「ふふ。そのようね」
会場を襲った衝撃に、
PDAなどの個人のデバイスから軍事用レーダー問わず通信機器が一瞬にして全て不通となり、会場は外界と遮断された空間となる。これがGN粒子の電波攪乱作用による無線通信の妨害だと知る者は、この空間に留美と紅龍、そしてマグナスのみだった。
「ヴァーチェ」
留美が再びつぶやいたのち、ガラス張りの外窓から見える宇宙に一筋の光条が走る。
光の通った後には、テロリストのモビルスーツが弾けた痕である大きな爆発が会場内の誰の目からもわかるように広がっていた。
「満足ですか」
「ええ。世界の変革の始まりが見れる特等席に座れたのだから、今日のところはね」
そしてこの小娘の傍観者気取りは本当に筋金入りだ、と思わされるマグナスだった。
ソレスタルビーイングのエージェント、コードネーム『マグナス・アルハンゲル』ことユリウス・レイヴォネン。契約上は同じエージェントである王留美の傭兵であるという立場を鑑みて、紅龍と同じくボディガードとしてこのファーストミッションを見届けた。
ファーストミッション。つまりは、前世で記憶するところの「ガンダム00」の記念すべき第一話に自分は当事者として存在している、ということ。
大なり小なりひとかどの「00」ファンであるなら、この状況に居合わせて興奮を覚えない者はいないとユリウスは確信している。事実、今の自分自身もそうした高揚感とここまで辿り着いたという達成感を覚えている。
だがそれ以上に、自分にとっての第一目標の進捗がどうにも芳しくない、ということがユリウスの思考を占めていた。
その目標とは当然、王留美とネーナ・トリニティ。
彼女らに、どうにかして少しだけでも自分の知るモノよりマシな結末を用意してやること。
だがその現状は……未だ接触できないというより、この時点ではその存在を徹底的に秘匿されている故に接触すら難しいネーナはともかくとしても、留美が辿る大筋は何も変えられていない。
観劇気分が抜けきらなければ、いずれは自分の知るところと同じ結末に辿り着いてしまうことだろう。
そうならないために必要なのは、彼女の在り方を変えること。
彼女の中の空虚を埋めるのは、世界を変革させることでなく、自ら変わることそれ以外にない。
それを促せる者がいるとすればたったひとり。この少女とは縁もゆかりもない自分ではなく、虚ろな心の中に少しだけでも引っかかっている存在であり、兄である紅龍のみだ。
……だというのに、この紅龍という男がまた厄介ものだとユリウスは思わされている。
(この男ときたら、流されっぱなしなんだもんなぁ……)
「……?」
苛立ちの籠った目線が合ってしまう。ユリウスは紅龍から視線を外し、己の考えを恥じた。
自分の宿願の成否を他人のせいにして何がどうなるというのか、こういう甘えを捨てられなくてこの先どうするというか……。
いざとなれば自分一人でも、ろくな結果にはなりそうになくとも、やるべきことはやる。
何がどうなろうと、自分の目標のために。
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西暦2307年10月6日。
時を同じくして。
地上では、AEUの最新型モビルスーツ"イナクト"の公開演習に謎の機動兵器が乱入、そしてイナクトを破壊。その勢いのままに、AEUの持つ軌道エレベーター"ラ・トゥール"から迎撃のために発進
宇宙では、人革連の軌道エレベーター"天柱"の電力送信開始十周年式典に合わせた、モビルスーツによるテロリストの襲撃が発生。ここでも謎の機動兵器が現れ、これを迎撃し未然に防いだ。
謎の機動兵器の真相の一部は、そのメッセージの中で同時に露わとなった。
その名は"ガンダム"。
そしてそれは、天から降りて裁きを下す御使いの名であり、本当の裁定はこれから下ることを人々はまだ知らなかった。