ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる 作:トン川キン児
「……貴方がいなかったら……」
「…………」
「私、また間違えてたの。たまんないわよね、ホント」
状況が終了し、ネフィリムは軌道エレベーターを使い再度地球へ戻るための補給を受けている。その間ユリウスは、スメラギの私室に呼ばれていた。
聞かされているのは泣きそうな顔をしたスメラギの心情の吐露。なんとなくこうなるのでは、とユリウスは既に覚悟していたので、元々"リーサ"を宥めてやるつもりで来ていた。
「逆だろ」
「……?」
「過去にもしもはないんだ。俺とガンダムを君が使えば、大抵うまくいく。そういうことだろ」
「…………そうね。やっぱり強いわね貴方は、引きずってばかりの私とは大違い」
「リーサ・クジョウになっちゃう時もある。そういう時は、休め。前に言ったな」
「…………うん」
そんな"もしも"を追い求めている人間の言うことじゃないだろう、と自嘲が入ったユリウスの言葉だった。
言い終わると、お互い深く息をつく。
気まずい間ができて、スメラギが席を立つと備え付けられた庫内から酒瓶とグラスを取り出す。
「いろいろ言ってやってるのに結局呑んじゃうのか」
「逃げる酒じゃなくて。勝利の祝杯ってことにしといてくれない?」
「……そういうことなら。俺も」
「はいはいはーいあたしも~」
ぎょっとして二人が後方を見返すと、いつの間にか部屋にはパスレル・メイラントの姿が。
「ぱ、パスレルさん……? どうしたの?」
「タダ酒にあやかりてえ気分っス姐さん」
(正直すぎるでしょ……)
「おいコラ!! アンタはどっか行ってろ! 二人のいい雰囲気が台無しだろうが!」
「ああ!? 何!? ジジイ仕事は!?」
さらにパスレルの背後に現れたイアンがその服の背中を掴み、中年とは思えない力で部屋の外まで引きずり出す。
……ユリウスは素早く動いてドアにロックをかける。ガンダムのオーバーホールの続きはどうしたとか言いたかったが、それより先にこれ以上余計な乱入者を招きたくなかった。
「な、なんなんだあのオッサンどもは……」
「……前に貴方の前なら休んでもいいって言われて、そうしちゃってるけどさ……」
「え、何」
「あんまり甘えるとアレね。余計な誤解がどんどん広がるというか? おやっさんもクリスもリヒティもだもんね」
「クリス!? リヒティまで言ってるのか!?」
「あの二人そういうのは興味ありそうな子だし?」
悩みの種が増えた、と直感するユリウス。
イアンもあれほど若い妹の婿になって世間体とかが悪いのはわかるが、義兄になる自分の方をくっつければ多少マシになるとでも思っているのだろうか、そんなこと思うならそもそもデキ婚するな、などと邪推してしまう。
「いっその事ホントに式挙げる? この船で」
「冗談よせよ!」
「本気よ~? もうそろ適齢期もおしまいだもんね~。子供の顔も見てみたいかも?」
リーサの時からそうなのだが、スメラギは余裕のある時に酒が入るとダルめの絡みを始めてくる。これが出てくる頃は心身が健康な証と言えばそうなのだが、ユリウスにとってはこれがまあまあイヤだった。
「もっと甘えてたらそのうち外堀埋まっちゃうかもねぇ」
「もう俺飲まないぞリーサとは……!」
「ダ~メよそんなの。リーダーの指示に従ってよね」
昼も夜もない宇宙で、軽い調子の会話と共に二人の時間は更けていった。
・
・
・
『
「どこだって修羅場ですよ。そういう気分にはなりません」
地上に戻り、次のミッションが始まった。内容は中東新興国・アザディスタンにて宗教指導者マスード・ラフマディーが誘拐されたことで確実に予測される内戦への武力介入である。
現地では王留美及びマグナス・アルハンゲルらエージェントが、現在地球にて武力介入行動が可能なエクシア・デュナメス両機、及び合流する戦力となるマイスターを支援する。
他人種に風当たりの強いアザディスタンでは宿泊などの人目に触れることを伴う待機行動だけでもかなり行動が制限される。今回エージェントの支援が必要とされるのはそうした細々とした活動である。
『謙遜なさらず。戦闘記録はこちらでも拝見いたしましたわ、素人目にも貴方こそがこの組織で一番の腕利きというのは明らかでしょう?』
「…………どうかな」
『それほどの力を持っているというのに、貴方はご自分で世界を変えたいとは思わないのですか?』
「…………」
『思うはずでしょう?』
「何がしたいんですか、お嬢様は」
『この時間は暇なので。少しおしゃべりでもと』
自分が変えたいのはお前の運命だというのに、通信から随分な好き勝手を言ってくれると心の中で毒づくユリウス。
「わかっちゃいねえなァ~~~~お嬢さんはよ」
『……フォン・スパーク』
「アンタと同じだろうがよ。変えてえモンと変えたくねえモンぐらいあんだろうが。え?」
意外な所から助け舟がひょっこり現れたことに、ユリウスも驚く。
今回のミッションはソレスタルビーイング下部組織『フェレシュテ』との合同である。故に、そこに所属するガンダムマイスターであるフォン・スパークもここにいる。
『フェレシュテ』はチームプトレマイオスに供与される4基のGNドライヴとガンダムの他に、最後に残る5基目の太陽炉を有する。ひとつの太陽炉をアストレア・サダルスード・アブルホール・プルトーネのミッションに適した4機のガンダムで使い回す。
それらを用いて戦闘で生じたガンダムからの脱落物の回収や、致命的な目撃者の抹殺などでガンダムの痕跡を消し去るのが主な活動である。
今回はキュリオス・ヴァーチェ両機が宇宙にいるという状況を鑑みて、フェレシュテのガンダムに白羽の矢が立ったということである。
『フェレシュテ』はその秘匿性を保つためソレスタルビーイングでも一部のメンバーしか存在を知ることもなく、故に組織の存在を知らないガンダムマイスターとの連携はエージェントを介して取る。
現に、今までエージェントのマグナス・アルハンゲルもこの組織の存在を知らなかった。そこに姪の友達であるシェリリン・ハイドがいることも、フォン・スパークがいることも、よりによってこの男にガンダムを与えているという質の悪い冗談のような事実も。
そして留美がプライベートジェットにて刹那とロックオンを支援しているように、ユリウスは現在、フェレシュテ側に有事の際のバックアップに回るため基地にて駐留している。
立ち返って現在の状況がどうなっているのか。アザディスタンは保守派の反発を招いてまで改革派が推進した太陽光発電システムを何者かのミサイル攻撃によって失い、情勢の悪化を受けて国連の技術者たちは現地から撤退。
後に残るは国を分ける保守派と改革派の激化する内戦のみ。状況はまさに最悪のものとなりつつある。
だが希望はある。
ソレスタルビーイングは先程エクシア・デュナメス両機及びエージェントの活躍によってマスード・ラフマディ師の所在を突き止め、身柄を拘束していた傭兵組織からこれを保護した。
戦術予報士であるスメラギ・李・ノリエガから先程下った、この内戦を終結させるミッションの内容とは。
ガンダムマイスターである刹那・F・セイエイは攻撃の意思がないことを示すため、全武装を解除したガンダムエクシアにてアザディスタン王宮に降下し、一切の破壊活動及び攻撃・反撃を行うことなくマスード・ラフマディを無事に返還せよ、とのこと。
反対意見も挙がるミッションだが、世界にソレスタルビーイングの意思を明確にするチャンスであるという判断において、ヴェーダもこれを承認したのだった。
「
『は……?』
「世界が変わって欲しいとは思うクセして、テメェじゃなんにもしねえできねえ。んじゃ、どう変わって欲しいかも特にありゃしねえんだろうがよ」
『…………わたくしは……』
「オレが好きなのは"自分の力で世界を変えようとする奴"だ。傍観者はどこまでいっても傍観者。んじゃ、黙って見てな』
そう言い放ってユリウスのPDAでの通話をぷっつりと切るフォン。
……自分が言いたくても言い出せない事をずけずけと言ってのけてみせる。悔しいが、フォンに先を行かれたと感じたユリウスであった。
「おおおおおい!! お前、ウチの大口支援者様になんてこと言ってんだ!!」
「ンなことオレぁ知らねえな。じゃあそいつの機嫌が今後フラフラ変わっちゃ困るってもんだろ」
「お前って奴はどこまでいっても……!!」
「出過ぎた真似は控えなさい。彼女はソレスタルビーイングにとって重要な人物よ」
「ハッ」
冴えなくて足りなさそうな中年の男が確かエコ・カローレと言った。ガンダムマイスター選定の候補にもいたが、対応力が基準値よりはるかに低くこれでは緊急時に使い物にならない、と思ったことがあったようなないような、とユリウスは頑張って思い出そうとしていた。
フォンを窘めるのがフェレシュテの設立者及び監督責任者、シャル・アクスティカ。組織では古株らしく、顔の傷と色素の抜け落ちた白髪は過去の事故によるものらしい。
再生医療の進歩したこの世界で治療できない傷跡とは、と考えると凡そユリウスにも想像が付いた。
「ネフィリムはどう?」
「最高だが惜しいところもある。リアスカートの付近のスタビライザーがどうも要らない」
「それはさぁ……秘密なんだよねぇ」
「お前もか……」
唯一の知り合いということでシェリリンはやや距離感が近い。聞けばこの組織の中では割と無口な方ということで、この気安げな態度を見てフェレシュテのメンバーは少し驚いていた。
人見知りをするほうだとは思わなかったが、考えてみればこの中で一番の年少が見ず知らずの年上に囲まれればそうもなろうというものだった。
……それはそれとして。
「お前が俺の肩を持つとは思わなかった」
「別にィ? あの女いけ好かないんでね。てことはマグナスさんよ、アンタも二、三は言いたいことあったわけだ」
「……まあな」
「あげゃげゃ! あー、そういうね……アンタがアイツに引っ付いてる理由がちょっと解ったな。女のシュミ悪ぃぜ、アンタ」
相変わらずの見透かしてくるような口ぶり。フォン・スパークには、
「こないだの戦いはオレも見た。アンタ、強くなってんな。差が開いちまうぜ」
「……どうかな」
「いや、ありゃあアンタだけじゃない……管制と操縦が同時に行われてる。それもほとんどタイムラグなし、まるで
「言ってることが矛盾しているぞ」
「ムジュンかどうかはもう少しアンタを見て見極めンのさ。
自分が留美をどうにかしたいと思っていることも、秘密裏にチームトリニティを探していることも、わかっているかのように言ってみせる。
この男、どこまで切れる……?
「アイツ何を言ってるんですか?」
「…………さあね」
エコとシャルには解っていないようなので組織に触れ回っているようなことはしていないようだが、ユリウスは、自分の中でのフォンの危険度をさらに引き上げた。
自分の目的の障害ともなり得る。あるいは、倒さなければならない存在だ、と。
「……あァ。そういや相方はどこよ? あの抹茶プリン」
「パスレルなら別行動だ。最近はそれも多い」
「……………………」
「……おい?」
「…………ンだと……?」
フォン・スパークの表情が今までになく強張った。
何が原因で? 自分としてはあれがいないと気楽にやれるところがあったのでありがたい、とでも続けたかったが、何がそこまでこの男をそうさせたのか。そこまでして会いたかったのだろうか?
「…………アンタ、アイツには気ィ張っとけ」
「いつも気を揉んでばかりなんだが」
「あーそうかよ。じゃあ何でもいいや、勝手にやらせときな」
そう言うとフォンは、言う通り勝手にしろとばかりに話を投げうって無造作に床へ寝転がった。
……聞き間違いでなければ今のは、この男から初めての純粋な「助言」に聞こえた。
一体パスレルの何がフォンを危惧させるのか、ユリウスにはまだ考えが及ばなかった。
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「うーっす。三度目だぜ三度目」
場所は同じくアザディスタン、その首都の高級ホテルの一室。他国の高給な観光客を満足させられる水準のある国内唯一の物件と言ってもいいだろう。
やって来るなりパスレルはソファに身を投げて寝転がる。
これほど格調高い室内の様相で、これほど気安くなれるのはある意味才能だろう、と呼びつけた主であるリボンズは思った。
「今日は何ぞ?」
「前にあと一回だ、と言ったからね。これが最後だと思って僕も臨ませてもらうよ」
「へえ?」
「君の言うことは正しいと、そう思えたからね」
――――リボンズ・アルマークにとって自身の未来を占う、勝負の刻が人知れず始まった。