ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる 作:トン川キン児
「あ~~好き好きこのソファ。嬢ちゃんこれちょうだい」
「ご自分でお買い求めなさって?」
至極まっとうな返答をよこされながら真横になって一人でソファを占有するパスレルと、余裕の態度を崩さない留美。考えてみれば、彼女はペースを崩すことなくこの女と普段通りに接することができるというユリウスの経験の中でも珍しい人間のひとりである。
何かしら壊れている者同士、波長が合うのだろうか……と思わなくもなかった。
現在は留美のプライベートジェットにて天柱へと向かい、宇宙へと上がる道程。
ネフィリムには先の戦闘で駆動系にとてつもない負荷がかかっており、もし二度目の全力戦闘がこのままあれば分解もあり得る、オーバーホール一直線の機体状況。故に機体のみ一足先に宇宙へ上がっている。
「それにしても驚きました。貴方は常々面白い存在だとは思っていましたが、とはいえまさかあれほどの無茶をするとは」
「……やりたかったもんでな」
「それだけで済まされるような行為とは到底思えませんが。監視者のひとりであるアレハンドロ様は貴方に苦言を呈していましたよ」
「……そいつは。どうも」
「ぬかすわ~アイツぅ~。自分で動かしてるくせしやがってさァ」
「なっ……」
「……アレハンドロ様が!?」
「お゛ッ♡やっべ♡これオフレコで♡」
……隠したいという気持ちが微塵もないからまったく面倒な形で口を滑らせてくれる、とユリウスは舌打ちしながら心の中で毒づく。
これでチームトリニティの黒幕はここに居合わせる4人が知るところとなった。自分たち二人に留美と、紅龍。
「……では。あの新型のガンダム3機はアレハンドロ様の私兵だと仰るのですか?」
「……その可能性があるから試したってのも、まあ、ある」
「ガンダムマイスターとして相応しいチームか否か、ということですか。そして、貴方のその懸念は当たった」
紅龍が続けるように、ソレスタルビーイングの組織内においてチームトリニティの武力介入方針を好意的に受け止める者は少ない。監視者たちはあれらを認可したが、ガンダムマイスターとして相応しいのか否か、と問われれば、少なくとも既存の実行チームであるチームプトレマイオスからは否が挙がるだろう。
一度の敗退を除いた6度の武力介入において、いずれも戦闘状態にない軍事基地において先制攻撃し、その全てをただの一人の目撃者も残さず殲滅している。
そして、問題になるただ一度の敗退において未だ謎に包まれているのは。
「問題となるのは、結局のところどうやって貴方はあの武力介入を事前に察知したのか。結局のところそれに尽きますわね」
「…………」
「話すつもりはないとでも言いたげですが、わたくしとしてはそうは参りません」
留美はこれ見よがしに気障ったらしく目を閉じてみせ、唇に人差し指を当ててこう続けた。
「ミス・スメラギはどうかは知りませんが、結局のところどのようにして、というのはわたくしには興味がありません。ただ、貴方にはチームトリニティの計画を事前に知る方法があった」
「…………それで?」
「ならば、チームトリニティと名乗る彼らと接触する方法も知っていても不思議ではないでしょう。わたくしはそれを知りたいのです」
「アレとコンタクトを取りたいか。教えると思うか? 俺が」
「交渉が決裂するのならばわたくしは貴方との契約を解除するだけです。お忘れですか? 貴方はソレスタルビーイングの正式な一員ではなく、形式上わたくしの傭兵ですから」
「はあ!? オイ!! 聞いてねーんだけどそんなん!!」
……思ったよりも随分強引な方法で来たものだ、と思わされるユリウス。
流石に自分に手に入らないものなどないと思い込んでいるお嬢様。元々わかっていたことだが、彼女はこの辺りまで来るとより手段を選ばなくなってくる。
「ご丁寧にネフィリムと引き離してあるのもそのためか」
「貴方の望む変革のためにも、あの力はまだ必要でしょう?」
「くれてやれよあんなボンクラ共! 金!! 金!! おい嬢ちゃんサービス料取るからなテメー」
「ええもちろん。お金で解決できるのならばわたくしの壇上ですから」
パスレルは留美に弱いというより金に弱いのかもしれない。俗からよっぽど離れた存在であるイノベイドの癖して。
……などと思える程度に余裕があるのは、ユリウスにとってはその流れの方がいいと思えるからである。
「…………どのみちあれを質に取られちゃどうにもならん。トリニティの情報はやる」
「ふふっ。よしなに」
留美とネーナ。二人が行動を共にするようになるきっかけは、結局のところこの際のトリニティとの接触から。であれば、この場面に特に干渉する必要はない。
まとめていろいろと言えるようになるなら、それに越したことはないのだから。
「"お荷物"の方もラグランジュ3の方へ責任を持って届けられることでしょう。彼に関しては心配せず職務に集中なさってくださいね」
「……酷い言いようだな」
エイフマン教授が最も戦火を逃れつつ身を隠せる場所が現状どこか、と考えれば、やはりソレスタルビーイングの基地が存在するラグランジュ3に移送するのがベストだと結論付けたユリウスは、スメラギに既にその手配をさせてある。
これでしばらくの間の身の安全は確保される。ひとまず地球連邦が発足するまで当分会うことはないかもしれないが。
……宇宙に上がる前に、言うべきことは言っておくべきだろうな、とユリウスは思い、言葉を口にする。
「あんたは、世界が変わるならどんな形であってもいいわけか」
「ええ。壊れたってどうなったって構いませんのよ。元々好きでもありませんから」
「……好きになれとは言わんが、なら世界の方に
……ほんの一瞬だけ、険しい表情を見せた留美。
しかし次の瞬間には、元の謎めいた微笑みを保ったままのいつもの表情に戻っていた。
(……今の俺に、あれは止められない……)
……ネーナ・トリニティがネーナ・トリニティたる愚行が、時期が合っていればもうすぐAEUのスペイン北部にて行われる。
古城が見える丘陵地帯ということでポイントが割れている以上ネフィリムで二度目を仕掛けることもできたが、今の状態ではとても不可能だろう。
……何より。
彼女に何も背負わせないのではなく、背負った上で向き合うべきではないだろうか、と思えた。
「…………すまん」
そんな一言で済ませられるはずがない。
ユリウスにもまた一つ、ずっしりとした罪悪感の重しが増えた。
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ネーナ・トリニティにとっての近況は、最初にケチがついてから不満だらけである。
真のガンダムマイスターとして戦争を根絶し、世界に変革を齎し導く選ばれた存在の一人である自分は、力を意のままに揮い、破壊してもいい存在であるはずなのに。
何をするにも、あの日あの時見た光景が、選びかけたことが、投げかけられた言葉がいちいち思い起こされる。
"他者の命の重み"。
『ラグナから次のミッションが入った。目標ポイントへ向かう』
『またかよォ』
命とは数えなくてもいいもの、壊してもいいものだと常日頃教えられていたはずなのに。
あの怖いおじさんは言った。こうして話している血の繋がった愛しい兄たちと、見ず知らずの他人の命はそう変わらないのだと。
「……なんか、ずっと働きづめじゃん。あたし達」
『戦争根絶を達成させるためだ。疲れているだろうが、少し我慢しろ。ネーナ』
「あーそう!」
苛立ちに任せて通信を一方的に切ってしまう。ヨハにぃに悪いことをしたかな、と罪悪感が少しばかりよぎる。
その時視界の端に何かが見える。古城のようで、人がたくさん集まっている。
拡大すると、そこは結婚式場のようだった。招かれていた客はみな幸せを共有し合い、笑顔が絶えなかった。
「なにソレ!? こっちは必死でお仕事やってんのに、能天気に遊んじゃってさ」
世界が変わろうとしていることにも気づけない、緊張感の欠けた凡俗の集まり。
これらとヨハにぃとミハにぃの命が等価? 悪い冗談のようだ。
式場に向けてスローネドライの機体を下降させ寄せていくと、その脅威が近づいていることに怯えた様子の人間がぽつぽつと見え始めた。
ネーナ・トリニティの心中に、世界の敵となるべき存在として醸成された嗜虐心が鎌首をもたげはじめる。
同時に、兵器を壊すときよりもはっきりと見えるヒトガタの輪郭は、突き刺さった言葉をより強く思い起こさせた。
(……なんなのよ。いいじゃん、別にこんなの)
惜しむらくは。
ネーナ・トリニティは、
「死んじゃったって、さぁ」
トリガーが引かれ、スローネドライはその凶弾を無辜の民へと放った。
粒子ビームが着弾点に爆ぜて、数多の幸福は一瞬にして煙と血と肉と瓦礫だけの無機質な物体に変わった。
やはり大したことじゃない。
優しいヨハにぃに疲れがあったとはいえ理不尽にキツく当たることよりも、罪悪感はよっぽど軽い。
『ネーナ。何をしている?』
「ごめーん。スイッチ押し間違えちゃって♪」
『作戦続きで疲れてんだろ?』
『勝手な行動は慎め』
確かめてみればなんてことはない。一瞬振り返って自分のもたらした破壊の後を見やるが、心に大きな揺らぎはないし、むしろ、破壊は心地よかった。
だから、ネーナ・トリニティは気づけなかった。
その罪は、今は軽く感じられるだけでも、確かに背負っているのだということも。
その本当の重みがわかった時、自分には後悔しかできることがないのだということも。
・
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プトレマイオスに帰艦して、最初の出迎えはスメラギによるビンタの一発だった。
「馬鹿ッ!!」
キツいのをお見舞いしてくれた後にはすぐに、スメラギは、リーサは、ユリウスの胸にすがって泣いていた。
「何考えてるの!? あんな戦いをして!! 死ぬつもりでいたの!?」
「…………生きて帰るつもりではいた」
「口ごたえしないでッ!! ねえ、わからないの……!? 貴方までいなくなったら……死なせたら……私……!!」
……こんな状況で自分にできることを、ユリウスはひとつしか知らなかった。
「…………ごめん」
「ええ、それで済ませられると思ってるからいいわよね……!!」
引き倒されるほど耳を強く引っ張られながら、その耳元で怒り心頭のリーサはこう言った。
「今度あんな真似して死んだら、部屋の酒みんな飲み切って貴方と心中だから。エミリオのとこに行けるわね」
「そ、それは……っ。よしてくれ、ホントに……」
「反省の気持ちがあるのなら、死なない様に無茶を避けてくれるのよね?」
「リスクは避ける。な、だからさ……」
「…………ハァ~~~~……」
ようやくユリウスの右耳を解放したスメラギ。まだ怒り足りないという様相だが、ひとまず話を次に進めようとしている。
「……まだ怒ってる?」
「そう思うんならここから機嫌取って。貴方がチームトリニティの動向を掴めた理由だけど」
「それは……」
「粗方こっちで予想ついてるから。ティエリアから聞いちゃったからね」
どうすっとぼけてかわしたものかと考えていたら、予想外の返答がスメラギから出てきた。
ティエリア・アーデが、一体何を知っていた?
この時点でのリボンズの一派の動きはティエリアには知りようがないはず。だからこそ、ユリウスには予想外だった。
「パスレルさんよね? 彼女はティエリアと同じようにヴェーダへのアクセス権を持つ造られた人間。そうでしょ」
「…………なんでわかる?」
「彼女、前に自分からバラしてたらしいから。ティエリアと違って計画がどうこうとかは思ってなさそうな自由の身だけど、貴方の頼みなら聞きそうだもの」
あの女は本当にいつでもどこでも自分には制御できない動きをしているものだ、と幾度目かわからない再確認をさせられる。
「で、ラグランジュ3に連れてきた人のことを考えれば何がしたかったかはわかる。教授を守っていたわけね」
「……何のために」
「あの人、天才だから。貴方とはどういう繋がりがあったのかは知らないけど、ソレスタルビーイングの何らかの核心に迫ったんでしょうね」
これほど材料が揃っているなら、なるほどバレても不思議ではない。目の前にいる彼女もまた、天才戦術予報士なれば。
「そこで問題になるのは、パスレルさん……彼女には以前からチームトリニティ、あるいはその関連組織との何らかの繋がりがあるということになる。貴方の情報源はそこからなんでしょう」
「…………ああ」
「貴方はその口車に乗せられて、教授を助けようと動いた。無断で……ああ、もう正直この時点で許せないけど、置いといて……彼女は危険よ。あまりにも」
「…………そう、だろうな」
「ヴェーダがハッキングされている可能性も考慮して計画を進めていかなければならない可能性もある中で、彼女は……いいえ、その特性を考えれば、彼女こそが主犯の可能性さえある」
「…………」
「私が何を言いたいかわかるわよね」
……パスレル・メイラントを、捕らえるか、難しければ抹殺するか。
いずれにせよ、彼女とは手を切るべきだ。スメラギ・李・ノリエガは、冷静にそう言った。
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