ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる 作:トン川キン児
「で、どーすんのよ。殺すか? あたしのこと」
「できればそうしたい。いい厄介払いだ」
「おっほ。強がっていくぅ! でもゲロ甘赤ちゃんのユリウスにゃあちょっとねえ」
「……できねえと思うか? 俺には……」
正直な所、自室で銃を突きつけたこのパスレル・メイラントという女に情がないわけでもない。
傷が癒えないまま戦いを求めてあらゆる場所を放浪した、そういう自分についてきた女だから。
ただ、撃てと言われれば撃てる。それくらいの関係ではある。
それくらいのドライな関係は今まで保ってきていたし、パシーの方とてそんなことは承知している。少なくとも、ユリウスはそう考えている。
「さみしぃねェ。今まで二人三脚やってきたっつーのに、最後は
「そういう仕事だろ」
「そりゃそーだけどさぁ。んまっ、いずれにせよこうなっちゃ終わりだな」
まるで観念したような口ぶりをするパスレルだが、ユリウスが気を緩めることは一切ない。元々、彼女の口から語られる言葉の中に信用に値するものは数えるほどしかないのだから。
「でもさ? おめーそれでいいワケ?」
「何が」
「ホントのとこ世界なんぞどーでもいいクセしてさ。やりたいことズレてんじゃないの?」
銃口を向けられたところで、パスレル・メイラントの舌の根が渇くことなどない。ニヤついた笑いと共に、ユリウスを煽りたてる口は止まらない。
「人間やりたいことなんか二つも三つもある。そのうちの一つだ」
「でも一番じゃない、ってな。そこまで言うんなら、訊いちゃおっかな~」
銃口を向けてみたところで、パスレル・メイラントのやることは読めない。
できるならばユリウスは、この女の話に耳を傾けることなく部屋を開けた瞬間に撃つべきだったはずである。そうしなかったのは、ひとえに彼の甘さに他ならなかった。
……尤も、パシーの持つ力にかかれば本気の殺意ならばとっくに見切られているわけだが。と、ユリウスは心の中で結果が変わらないということで納得しようとした。
「世界を変えるだ誰かを守るだなんだっていろいろやってっけど、一番はさ、あのお嬢様にトリニティの赤いアホそばかすだろ?」
「……な……」
なんでそれがわかる。と言う前に、間髪入れずにパシーは続けていく。
「わかるよ~ユリウスくぅん。でなきゃあ、傭兵なんかやってねえでとっとと酒クズの姐さんにちゅきちゅき妹に姪っ子のいるソレスタルビーイングやってりゃあいいんだからさぁ」
「何を根拠に……。王留美はともかく、ネーナ・トリニティなんてのは顔も合わせてない奴……」
と、脳に響いた鼓動と共に、ユリウスは理解した。
トリニティとの戦いのとき、パシーと自分は確かに共振していた。だから、思考の一部もそうなっていた。
それ故に繋がった心の間から、向こうに漏れたのだろう。自分が本当に欲していることが。
「で、よ? 考えてみ? お前、持ち物多すぎじゃねって話よ?」
「何が言いたい!?」
「女のシュミ悪りーのは置いといてもよ、あの二人といろいろやるんなら、どう考えたってこっちにいた方がいいんじゃねえの? ってなるよな」
「そっちと……?」
「そらそーだろお前。とりあえずあいつら生かしたいってんなら、そもそもあいつらどーすっかはリボンズだのなんだのが決めることじゃん?」
「……だが、そんなのはあいつの一存次第だ……!」
「あたしが言ってやっかぁ? こー見えてもあたし、重宝されてっからなあ~~~~? どうすっかな~~~~?」
……パシーの言うことにも、一理がある。そう、思わされてしまったユリウス。
確かにそうだ。
ただ生きていてほしいというだけなら、その方が遥かに確実だ。彼女らをどうするかの裁量を、実質的に自分が握れるということになるのなら。
でも、それは。
「あのじゃりン子二人、あたしが守ってやんよ。条件はひとつ、おめーもこっち来な」
「……パシー……お前、なんで、そんなに俺に付きまとうんだよ……?」
「え~~~~もうマジでなんべん言ったら伝わるワケ~~~~!? マジダルいコイツほんと」
向けられた銃口を掴んで、胸に押し当ててパシーは言い放つ。
「…………!」
「あんたとも~~~~っと話がしたいワケ。死ぬまで!」
パスレル・メイラントに、嘘偽りはありえない。
それに、あの時繋がった心の間から漏れ出たのは、何もユリウスからの一方だけではない。
パシーからも確かに伝わっていた。自分に対するあふれ出る意地悪が、友情が、好意が、ともすれば愛が。
本気で、自分を好きなだけでここまでしている。
ユリウスは、そう確かに感じていた。
――――――それでも、応えられない。
「はじめっから終わりまで、二人の人生を造れるとしても、それは、あいつらの人生じゃない」
「ほーん」
「あいつらの選んだものじゃない。少しでも多く、俺はあいつらに選ばせたい。それに」
「それにぃ?」
「順番とかじゃない。やっぱり、俺は全部欲しい」
留美も、ネーナも、リーサも、リンダも、ミレイナも、ガンダムマイスターたちも、プトレマイオスのクルーも、トリニティも、エイフマン教授までも。
知っているのならば誰にも彼にも、もっとマシな未来があって欲しい。
これが欲だと言うなら、押し通せるだけの力を見せつける。
――――
「…………だから、お前もここにいろ」
……嘘偽りのひとつもないその言葉を聞き届けて、パスレルは満足げに歯茎を剝いて笑った。
「え~~~~やだよ。あたしはあたしできゃわいい奴見つけちゃったしさァ」
「……誰だ?」
「お前もそーだけど必死こいてもがもがやってんの、あたしすげー好きなんだよなぁなんか。ん? あっこれ……性癖ってヤツ!?」
「だから誰なんだって」
「リボンズ」
……ユリウスのイメージとしては必死こいているというより余裕綽々といった方が強い。
ともかく、言って聞くような奴でもない。パシーがそう言ったのならばここで話の決着はついた。
袂は分かれる。決定的に。
「んじゃあ結局お別れかよ。つまんねーの」
「……ああ。そうしてや……ッ!?」
手に持った拳銃をはたき落とされるユリウス。
心の隙間に入りこまれて、本当の距離がここまで近づいていたことを見誤った。
言い訳しようのない、完全なる油断。
後ろ蹴りで部屋の隅まで拳銃を滑り飛ばされ、ベッドの上に押し倒されるユリウス。凶器がまだあるのなら、もうここで詰む。
「おま……ッ!!」
「これさァ、あいつにゃ
そう言ったパスレルがその手をかけた部位は、と言えば。
「……お前、まさか……」
「○んぽ出せち○ぽ!! おっぱじめんぜえええええええ!!」
・
・
・
「……それでぇ~……そのですね。一応聞かない訳にもいきませんし」
「……襲われてる間に逃げられたと。アイツに」
「殺してくれ」
それから数時間ほど経って。凄惨な現場を前にして微妙な表情のアレルヤとラッセが、力なく嘆く被害者のユリウスに尋ねる。
「艦内システムが一時的にハッキングを受けて連絡船を奪われました。私のシステムをこんな簡単に抜けるなんて……」
「航跡も辿れん。完全にしてやられちまった」
「やっぱ、ヴェーダが敵に回っちまったんすかね……」
「ねえなんでお前ら俺の部屋に溜まんの!?!?!? 見なくていいじゃんこんなとこ!!!!」
「……んふ……ッ。いやね、現場検証だからね。酷いニオイねぇここ」
「絶対いらない!! こんな人数!!」
一応真面目を取り繕うクリスとイアンとリヒティ、ベッドの上で悲嘆に叫ぶユリウスをいたずらっぽく笑うスメラギ。
シーツはベタベタのぐちゃぐちゃで、辺りには何やら飛び散って濡れた形跡と乱雑に脱ぎ捨てられた衣服。ここが無重力ブロックであれば間違いなく大惨事だったであろう空間である。
どうやらパスレルは服を全て置いていってノーマルスーツにて発ったようで、ユリウスのものと一緒に普段着が散らかっていった。
ドアが開くまで換気も回っておらずやや熱気が篭ったままの室内で、もう一人、フェルトが笑った。
「……ふふ」
「フェルト?」
「あ……いえ。こういうミスをしないような人に思えていたので。すみません」
「いやそれわかるっス。すげー渋いイカしたおじさんみたいな感じに俺も見てましたし」
「やっぱりけっこーカッコつけてたんですねぇ……ま、まあ! 逆に人間味ありますから! ほらスメラギさんだってアル中だし」
「下手な同情はよせ。俺の筋肉と同じで男の見栄ってもんは――」
フェルトに、リヒティに、クリスに、ラッセに。年下に寄ってたかってフォローになってないフォローによっていじめられて涙が出そうだったが、
「お前さんアレか……アレがずっといたから男として義理通してたってワケか。まあそりゃ大事だ、そりゃミス・スメラギと付き合えんわな」
「ちょっ……前から言ってますけどそういうんじゃありませんからね!?」
「う゛ー!! う゛ー!! う゛ー!! う゛ー!!」
相変わらず変な噂を流しているイアンとそれを聞いて顔を赤らめるスメラギを見て、その尊厳はすぐ決壊した。
「……あの。一応こういう時僕はお決まりの言葉があるんで」
「なんだよ!!」
「……ドンマイ」
「ぶッは!! あ、アレルヤ……ナイス!!」
教え子のひとりのアレルヤに煽り散らかされていることと、スメラギが吹き出したことで、これが天才戦術予報士である彼女なりの勝手への罰であることに気づいたとき。
トドメを刺されたユリウスは一瞬世の中の全てが嫌になった。
・
・
・
「とまあそういう感じでしたとサ」
「そうかい。感想は?」
「いやマジサイコーっスわ。やっぱアレめっちゃ生きてる~って感じするわ~」
艶々としたパスレルがリボンズの下へ戻るまでの紆余曲折を語ったあと。
戦闘用イノベイドとして造られた自身には理解しようのない感覚だが、惹かれ合う人間の雄と雌というのはいつ見ても凡そこういうものだ、としてリボンズはあまり興味を示さなかった。
語りたかったのはもっと別の話。取引によって得られた、貴重な成果。
「んで? どーだったのよ。変なスーツ使わせやがってよ」
「素晴らしい成果だよ。どうやら、同類同士というのは惹き合うらしい。そして、高め合う」
「あたしおこちゃまなんでかんたんにおねがいちます?」
「Xラウンダー同士は共振する。君とユリウス・レイヴォネンはお互いの能力を増幅しあっていた、そして以前よりもさらにその力を強めている」
「ひでえよな~~~~。そんなんなのにフったんかアイツあたしをよォ」
「ご愁傷様と言っておくよ」
軽口には軽口で返しながら、リボンズは眼前の空間投影モニターに映し出されているデータに集中している。あるいは、魅入っている。
数日前に起きたネフィリムとトリニティとの戦いを承認するために、リボンズは条件を出していた。それがこの、特殊スーツ及びメットを用いた戦闘中の脳波データをはじめとするふたりの各種バイタルの計測である。
ソレスタルビーイングの技術力に寄る特殊装備を備えるものの、依然として旧世代機の域を出ないネフィリムを用い、捨て駒とはいえ遥かに性能が上回るうえに3機もいるガンダムと同時に対決させる。
誰もが死を覚悟する布陣。しかし、この能力を得たふたりは生き残ってみせた。それも実質的な勝利という形で。
これほどの力を、欲しない者がはたしているだろうか? ……そういうことである。
「年甲斐もなく何度も見返してしまったよ。君たちは本当に素晴らしかった」
「いや……それもうファンボーイやんお前」
「そうとも言うかもね。人間はこれほど素晴らしくなれる……たとえそれがイオリアの意図しない形でも」
それこそが、リボンズがその力を、Xラウンダーとしての覚醒を素晴らしく思う最大の要因。
イオリアは予測していなかった。この未知数に塗れた人間の可能性を。
それはGN粒子による人為的に促される変革でもなく、人間が元から、原始から隠し持っていた可能性。
……ここに至って、リボンズは人間に対する考え方を完全に改めたのである。
「イオリアなどに導かれなくとも、人類は元々持っている。戦うために進化するための因子を」
「あ、そうなん?」
「僕は甘く見ていた、人間は僕が思うよりずっと強い存在だったようだ。ただ彼が、それを自分の想像力の範疇に押し込めていただけなのさ。たかが200年前の人間の想像力の中に」
「……んじゃ、どうしますぅ? リボンズさんよ」
「僕のやることは決まったよ」
ソファの背もたれから身体を前に乗り出しているパスレルの顎に手を置き、リボンズは力強く宣誓した。
「僕たちの手で、人類を彼の愚かな計画から解き放つ。そしてその後の世界を戦いで満たし、強く新たなる進化を模索しようじゃないか」
「早速やっちゃいますか? やっちゃいましょうよ!」
「いや、まだ早い。計画はもっと後……致命的なポイントで破綻させたい。そのためにもやはり、ヴェーダの掌握は必要不可欠になるね」
「え~~~~? まだあのオヤジ要るの~~~~?」
「もう少しの辛抱だよ」
ソファに溶けるように上半身を被せるパスレルを宥めつつ、リボンズはもうひとつ問いを投げかけた。
「でもデータがひとつ減りそうなのは惜しいな。君の知り合いにそういうの、いないのかい?」
「ユリウスみてえなのなんているかよ~。いたらもうコナかけてるンだわ」
「戦いの中によく身を置いていそうな人間だよ」
……そう言われて少し考えると。そういえば思い当たる奴はいた、とパスレルは思った。
「なんか違う気がすっけど、いるにはいるわ」
「へえ。じゃあ、連れてきてくれないかな?」
災難を負うとある男が、盤上に一人増えた瞬間であった。
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