ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる   作:トン川キン児

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世界の戸惑い

 ……といった具合に、一連の事件によってユリウスの気が滅入っている間。

 

「エクシアがスローネと戦っている!?」

「たった今、ヴァーチェも交戦に加わった模様」

「ガンダム同士で戦うだなんて……下手すりゃ共倒れだぞ?」

 

 地上における非常事態ということでブリッジに集まった面々。フェルトからの報告に戸惑うスメラギと、戦いの行く末を懸念するイアン。

 エクシアとヴァーチェ。二機のガンダムは現在、地上にてチームトリニティのガンダムスローネ三機との戦闘状態に突入。

 世界を揺るがす力……ガンダム同士の歴史上初めての戦端が、ここに開かれたのである。

 

「ガンダムじゃなけりゃあいいのか」

「よかないがお前さんの大立ち回りはそりゃあ気持ちよかったさ」

「……そいつはどうも」

 

 ユリウスにとってはこれも、()()()()

 自分の先の行いによっても"コイツがやるならやっていい"という考えは生まれてしまっただろうし、起こって困ることでもなかった。

 ……余談だが最近のイアンは妙に活力がみなぎっていて増して若々しく見える。

 GNドライヴ(ズル)なしのMSがガンダムをぶっ倒して誰が世界最高技術者なのかが自分の中でハッキリしたからなのだろうか、とユリウスなりに推測してみるが真偽は定かではない。あまり首を突っ込むと話が長くなりそうで踏み込めずにいる。

 

「貴方の影響よ。これ」

「否定はしないな」

「またクールキャラに逆戻りですねぇ」

「大人の落ち着きと言ってほしいもんだが」

 

 真っ先に戦端を開いたのが自分である以上、スメラギの言葉に否定はしないが、クリスからの言葉については正直そろそろ勘弁してほしいと思うユリウスであった。

 あの一件以来、誰相手でもこんな感じに茶々を入れられることが増えた。威厳が薄まったことを悲しむべきなのか、親しみやすいと思われたことを喜ぶべきなのかはわからない。

 が、いずれにしても。アレに襲われて泣いてた男という印象がいつまでもついてまわるというのは、自分にとってどうにも恥が過ぎる。

 

「ま、いいじゃねえか。遅かれ早かれこうなるだろ」

「トリニティのやり方、ムカつきますよ!」

「……でも、彼らの存在も計画のうちに入っているのかも……」

 

 ラッセとリヒティの二人が刹那とティエリアの決断に賛同する中、アレルヤは懸念を表する。

 チームトリニティが計画の中の存在であるなら、その妨害は計画の妨げも同然なのでは、と。

 

「そのことだが」

 

 ……ガンダムマイスターは散り散りの状態ではあるが、ネフィリムのオーバーホールが終わった以上自分が宇宙にいられる期間は少ない。

 全員の集まったこのタイミングは、チームトリニティの真相を明かすよいタイミングではないか、とユリウスは思った。

 

「俺なりに調べていた。結論としては奴らが計画のうちの存在だとはどうしても思えない」

「……それはなぜ?」

「モレノ医師から少し説明してもらう」

「あぁ!? お前医務室から出てきたんか!?」

「興味深いことができたんでな。聞かせてやる」

 

 めっきり出番の来ない上に室内からほとんど出ようとしない医務室の番人、JB・モレノがブリッジに現れたことに彼の旧い親友であるイアンを含めたクルーの面々は驚いていた。

 

「ちょいと昔話になる。5年前の話だ、私の患者に……ま、興味深い奴が二人いてな」

 

 そう言うとモレノは手にしたPDAからメインモニター前面にとあるデータを映し出す。

 

「これは?」

「そいつら二人に、ティエリアとあのやかましい義手の嬢ちゃん。パスレルを含めた四人分の血中ナノマシン濃度を並べたもんだ」

「……これ、多いんスか少ないんスか。そんなん健診で聞いたことないんスけど」

「明らかな異常値だ」

 

 通常の人間に投与されたナノマシンはその役目を終えた後、無害化し分解された後に不純物として各種循環系によって排出される。髪染めなどにさえナノマシンが使用される時代ではあるが、その働きによって人体に与える影響は緻密にコントロールされる。

 だが、この四人はそれが全く異なる。

 細胞の一片に至るまでナノマシンが構成し、それらは常に活動している。それこそが、通常の人間には検出され得ない量のナノマシン濃度の秘密であった。

 ……肉体の構成物質がこれほどまでの割合でナノマシンに置換されている、という事実。

 つまりそれは、これら四人が、()()()()()であることを意味する。

 このことに気づいたプトレマイオスクルーの面々は、背筋が少しづつ冷たくなるのを感じた。

 尋ねたリヒティに関しては、とある理由で人体における人造物の割合が大きい苦労というものを知っているが故に少し違う感情を持っていたが。

 

「四人の共通点はひとつ。この異常な血中ナノマシン濃度に加えてヴェーダとのアクセス権を持っていたことだ」

「ナノマシンが生体でのヴェーダへのアクセスを可能にしている? つまり鍵のようなもの……?」

「そこまではな。で、だ。この話がなぜチームトリニティ共と関係あるのかって訳だが、あいつら、ウチの船にお邪魔したな」

「ええ。医師には彼らのパーソナルデータの解析を以前からお願いしていたわ」

 

 ネフィリムとチームトリニティによる戦闘の少し前。三人はここプトレマイオスを訪れ、挨拶風の煽りをかましていきそのままユニオン領でのミッションに移行した。

 ……迂闊にも、ヘルメットを脱いで。

 それを受けてスメラギ・李・ノリエガは、その際にあらかじめ採取された数本の髪から彼らの正体を探るための行動を既に始めていた。

 

「髪の毛一本でも個人情報の時代に、迂闊な子たちとは思っていたけど」

「実際迂闊だった。髪の毛のような末端じゃあ身体を循環するナノマシンの総量は推定できなくたって、それでも遺伝子はモロに出ているんだ」

 

 モレノが操作をすると、その"結果"が、横に並べるような形でメインモニターにさらに映し出される。

 遺伝子上に、パスレル・メイラントとかなりの部分で似通う点が確認された。それこそ、()()()であろうかという程の一致率で。

 専門的な知識はなくとも、クルーたちはその結果の意味がなんとなく察せていた。

 

「……クローンに、遺伝子組み換え。 可能性はいろいろあります」

「デザイナーベビーって線もあるかも……」

「武力介入の時とかあの人に似て凶暴っスからねぇ」

「俺たちの組織ってのは、んなとこまで踏み込んでやがったのか」

 

 ……これに少なくないショックを受けていたのが、形は違えど超人機関においての近しい経歴を持つアレルヤであった。

 

「……ミス・スメラギはこのことを……」

「私の閲覧できるレベルにはなかったわ」

「……超人機関に続いて僕の潰さなきゃならない場所が増えましたかね」

「検討するわ。場合によっては」

「私の所見としては、トリニティってのは()()()()()という感想だ。元のパスレルの遺伝子と一致する点は確かにあるが別の人間の因子を組み込んで薄めてある、設計段階の能力はかなり劣る」

 

 天才戦術予報士であるスメラギ・李・ノリエガの脳内で、ひとつの図式が組みあがっていく。

 世界各国による合同軍事演習という本来ならば計画の第一段階をクリアできていたかもしれないタイミングでの登場。

 チームトリニティの苛烈な武力介入の方針。ヴェーダのデータに存在しない理由。原型より能力の劣る、造られた人間のさらに粗悪品とも言えるマイスター。

 ……ただ、解せない点はひとつある。

 

「マグナス・アルハンゲル。貴方は、なぜこの真相に辿り着いたの?」

 

 委細を明らかにして証拠を固めたのはモレノ医師。だがそもそも、この真相の話を主導したのはソレスタルビーイングのエージェントであるはずの、マグナス・アルハンゲルに他ならない。

 ソレスタルビーイングのエージェントのひとりとしてその行いの理由を問われ、マグナスはしれっと答えた。

 

「俺はソレスタルビーイングの裏の動きを以前から追っていた」

「……背信行為をさくっと明かしてくれるわね」

「……チームプトレマイオスの活動を考えてのこと……と思ってほしいが。ともかく、計画への必要性を疑う事項を追っている最中にある人物にたどり着いた。クレーエ・リヒカイトという生物工学者、そしてソレスタルビーイングの監視者であるひとりに」

「その男がトリニティを造り、武力介入を促したと?」

「一人の財力でガンダムが作れるはずがない。別に高い地位のある同士が必ずいるはず」

 

 ……加えて、力ある監視者同士の結託。

 これらが全て事実だとすれば何を意味するのか。スメラギ・李・ノリエガは、その結果をすぐにはじき出せてしまう人間だった。

 

「……監視者たちによるイオリア計画の簒奪……」

 

 あり得るシナリオのひとつではあったものの、チームトリニティが現れたということは既に水面下での計画は阻止が叶わない段階にあるかもしれない、とスメラギは顔を伏せた。

 そしてそれは同時に、あれが太陽炉の量産型とするならば、監視者たちは自分たちチームプトレマイオスの持つ4基のオリジナルと言える太陽炉をも奪おうとしているだろう、とも。

 量産型の太陽炉と劣化コピー品のマイスターで構成されるチームトリニティは、そのための捨て駒。世界からソレスタルビーイングへの憎しみを加速し、最後には統一されゆく世界へその命を捧げられる哀れな生贄の仔羊。

 計画の中の存在でないことも必然だろう。本来であれば必要なかったのだから。

 

 ――――静まり返ったブリッジをよそに、マグナスはその場を後にしようとする。

 

「……俺は地上に降りる」

「私のここからの読みが正しいなら、恐らくこれからの戦い、今までとはもはや次元が異なるものになるはず。ネフィリムじゃ限界があるわ」

「お嬢様を置いてきているし、証拠を固めなきゃならん。いずれにせよ行かなきゃならない」

「……死なないでよ」

「わかってる」

 

 スメラギとマグナス。二人の様々な感情を孕んだ視線が一瞬交錯して、しかしそのままブリッジのドアに遮られて切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう。エクシアがチームトリニティに」

「こんなことをしていいのでしょうか……?」

 

 夜の別荘にて、真っ暗な海を見ながら佇む留美を心配するように紅龍が問う。

 もとより答えなどない問いだというのに、それでも問うてしまった。

 ……このような顔色を伺うような形でしか、自分は妹であるはずの留美を気遣えない。

 当主と使用人という、厚い壁がいつも邪魔をする。

 

「紅龍、彼に言った時と同じよ。私はね、この世界が変わりさえすればいいの」

 

 どんな手段を使ってでも。

 ……それが、チームトリニティらとの接触の画策。

 

 ――あの子のお遊びをそのままにしとくのはもうよせ。

 ――手綱は自分で引けよ。

 ――死ぬ間際よか早く、付き人よりも兄貴らしいことをあいつに言ってみせろ。

 

 紅龍の頭の中を、彼が、ユリウス・レイヴォネンが言った言葉が反響する。

 今の彼女はこのままにしておいてはいけないと、自分でも直感しているからこそ、このような言葉が響いてくる。

 それは自分でもわかっている。だが……

 

「…………っ…………」

 

 負い目と、長い時間をかけて作られた分厚い心の壁が、それをさせてくれなかった。

 

(……貴方の言う通り、私は、情けない兄だ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時はやや進み。ユニオン領アメリカ、MSWADイリノイ基地。

 ビリー・カタギリは、怪我の身を押しながらも一気になだれ込む凄まじい情報量と戦っていた。

 

 ソレスタルビーイングによって度重ねて行われている凶悪テロ行為に対して、ユニオン・人類革新連盟・AEUは軍事同盟を締結。

 国連の管理下でソレスタルビーイング壊滅のための軍事行動を行っていくことを、公の場で宣言した。

 史上最大規模の国連軍が、ただひとつのテロ組織を打倒するためだけに誕生する。

 そして時を同じくして現れたという、ソレスタルビーイング内部からの裏切り者。

 彼はガンダムと同タイプのエンジン及びMS、30機分もの数を手土産にしたという。

 

「フラッグの性能ではガンダムに敵いやしません。隊長の過去は俺も知っていますが、今は……!」

「俺たちはフラッグファイターだ、その矜持を捨てるな! 隊長も、同じ思いなのでしょう!?」

「…………」

 

 そして目の前で行われる、オーバーフラッグス隊隊長、グラハム・エーカーを挟んで行われる隊員同士の諍い。

 現実主義に徹するダリル・ダッジと、理想を追い求めるハワード・メイスン。

 何より珍しいのは、即断即決の男でも通るグラハムがここに至って迷っていることだった。

 

「カタギリ」

「な、何かな……」

「フラッグで飛ぶ空、ガンダムで飛ぶ空。私は、どちらを取るべきだ」

 

 このように自分に意見を求めてくる事とて、片手で数えるほどにあったかどうか怪しい。

 しかしそれは、グラハムにとってあまりに重い決断であることは他人ながらに理解していた。

 フラッグで飛ぶ空は、()から託されたグラハムの誇り。

 ガンダムで飛ぶ空は、ユニオンから託されるであろう新たなる矜持。

 グラハム・エーカーは、どちらをも取れる男である。

 ……だからこそ、ビリー・カタギリは、親友として決断を促した。

 

「…………僕らは、ユニオンのMSWAD。そうだろう」

「………………」

 

 ビリーも、ダリルも、ハワードも。グラハムの長い長い沈黙を固唾を飲んで見守った。

 

 グラハム・エーカーの、一人の軍人としての決断は。

 

 

 

「ガンダム。その力で……私はユニオンの軍人としての男、グラハム・エーカーを貫く!」




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