ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる 作:トン川キン児
「ミス・スメラギから聞いてるんでな。大体の事情はわかったよ」
「……貴方の推測が真なのだとすれば、通りで彼らがマイスターに相応しくないわけだ」
ユニオン領軌道エレベーター"タワー"における会話。ここにいる誰もが、会話の主である彼ら4人がソレスタルビーイングのガンダムマイスター3人と、エージェントであることは知る由もない。
ロックオン・ストラトスとティエリア・アーデ、そして刹那・F・セイエイ。彼らと入れ替わりに地球へ降りてきた、マグナス・アルハンゲルが卓を囲んでいる。
「
「具体的にどうなるんっすかね」
「……言わずともわかる。そのうちな」
思わせぶりなマグナスの言い方に相変わらず突っ張る男だ、と思わされたロックオンは、ついでに聞いていた情報で少しばかり意地悪をしてやろうと考えた。
「あんたもアレだってな。
「……宇宙生活でのコミュニケーションってのは」
「ま、俺らもちょいと情けないところ曝け出しあったとこだし。そういうのは必要だよな」
「……聞いたな? お前。聞いてんだな?」
消えたあの姐さんがこの先生をいじくるのが趣味だった理由が少しばかりロックオンにはわかる。
「ハハハ、勘弁してくださいよ。こいつらは興味ないだろうしすぐ忘れるって」
「……パスレル・メイラントとの話か」
「死んでいないにせよ消えてくれたのは僕としては有難いが、取り逃がすとはらしくない失態だ」
「……お前らの方の情けない話は聞かないでおいてやるから、忘れろ」
「ま、ここまで俺たちどいつもこいつもやらかしてっからなぁ」
ロックオンの言葉通り興味自体が無さげな刹那に、いつも通りまだ人間の理解が微妙にズレているティエリア。この二人はいいとしても、今後の問題はロックオンとアレルヤになるだろうな、とユリウスは悟った。
消える間際にとんでもない傷跡を残していきやがって、と最近は同じ悪態を心の中でつくばかりである。
「そういうわけで、バトンタッチだ。そろそろお嬢様が来る」
「……ミルク」
「俺もガキ同然ってかよ。傷つくねぇ」
席に三杯分のミルクが置かれるのを見届けてから、マグナス・アルハンゲルはカウンターを後にしようと、するが。
「待て」
……呼び止められる。
誰に。ときて、ユリウス自身考えもしなかった人間に呼び止められた。
呼び止めたその声は、刹那・F・セイエイでのものある。
「訊きたいことがある」
「……何だ」
「トリニティをどうするつもりだ」
続いた問いは、さらに意外なものだった。
……刹那が何を考えているかわからない。意図を測りかねるユリウスは、質問に質問で返す。
「……どうすると言われてもな。何をすると思う」
「あんたは彼らの正体を暴いた。彼らはガンダムではない。だが、ガンダムになれない運命を背負わされていた」
「…………」
字面だけではまったく理解が及ばないが、ユリウスには理解できた。刹那は、チームトリニティの真実の一端を知ったことでその印象が変わっている。
「あんたは俺達を導いた。なら、彼らもガンダムにするのか」
思えば、事情を知れば刹那はチームトリニティに共感して当然なのかもしれない。
かつて神を信じ、信じこまされ、その果てに全てを失った人間。
であれば。背負いこまされた力は違えど、今まさに同じ運命を背負わされているトリニティに、何らかの共感があってもおかしいことは何もない。
「…………あいつらはな……」
「…………」
一瞬何を言おうか、と思考した。
だが、刹那・F・セイエイという人間に、ユリウスとしてもごまかしはしたくなかった。
「何を始めたのかも、その大きさも意味も自分でわかっちゃいない。教えられてない、知ることすらできない。だから、やるやらないの話はそれからなんだよ」
「トリニティ自身が決めることだと?」
「……ああ。だが、もう撃っちまってる。わかるな」
「……わかっている」
「それでも、どう思う。お前は、あいつらにガンダムをやる以外にしようがあると思えるか」
「思える」
……トリニティは、ガンダムに乗らなくてもいい。
そう言い切った刹那に、ユリウスは問うた。
「どうして?」
「俺が、ガンダムだからだ」
戦争根絶は、自分が遂げる。
望む望まないに関わらず
これ以上自分のような存在が生み出され、戦うことは絶対に望まない。そう、刹那は断じた。
「…………」
「……だから、あんたも押し付けはするな」
「……考えておく」
これが、彼がこの世界の主人公であるが所以。
世界の歪みは自分が断ち切るという揺るがない信念は、平和を望み戦いを許さぬ強い優しさの裏返し。
直接口に出すことはない。が、ユリウスはその意思の在り方に改めて敬意を心の中に示し、その場を背にして去った。
「俺もちょっと前ならこの会話についていけなかったと思うんだよな」
「……彼はよく前からあれを解していたものだ」
・
・
・
知らない天井。腕に繋がれるたくさんのチューブ。カーテンに仕切られたベッド。唯一見覚えがあるのは、最初の1週間程は見られた弟の顔だけ。
それが、ここ数週間ほどの絹江・クロスロードを取り巻く環境であった。
出血性ショックで気絶し血胸を起こしていた自分は、事件当時その場にいたラグナ・ハーヴェイ総裁による緊急通報でやってきた救急隊により一命を取り留めた。
右腋窩に右肺、それに肝臓右葉。いずれも銃弾は貫通していて、倒れ込んだ際に犯人によって脚の脛を轢かれそちらも骨折。
……それでも、自分は生きていた。
運良く動脈等の致命的な損傷は避けられていた、初期対応が偶然早かった。要因は様々あるがよく命があったものだと、自分でも思う。
恩恵に与ることが今まで少なかった故に軽んじていたが、再生治療をはじめとした医療の進歩というのは実に偉大であった。
「……話聞きたい人に助けられるってさァ……はあ」
リニアトレイン公社総裁の別荘の近隣で起こった、衝撃的な銃乱射事件の犯人は未だ見つかっておらず、もうひとりいたとされる被害者である運送業を営んでいた男性の消息も不明。
この男性は直近までラグナ・ハーヴェイ氏との会談を行っており、銃撃にハーヴェイ氏の関与を疑う声もあるが、それを裏付ける証拠は一切なく流言の域を出ない。
ハーヴェイ氏自らが緊急通報を行ったという経緯もあり、彼の犯人説を疑う声は世間的にも少ない。
……というのが、ここまでのJNNの報道。そして自社ジャーナリストが被害に遭ったというニュースも勿論飛んでおり、数日前には病床にありながら取材される羽目になった。
取材をする人間であると自負していた絹江が、こんな形で取材されているというのだからヤキが回ったものだと自分でも恥に思っている。
……絹江・クロスロードは、ジャーナリストであっても命の恩人に仇で返そうなどという企みができない人間である。
平気でそれをできてこそ世間一般で云われるところのジャーナリストという人種にふさわしいのかもしれないが、絹江はそうではない。
故に、"ラグナ"を追って自分の手繰り寄せてきた糸はここで切れた。
今の自分に、訊けるはずがないのだから。
「……沙慈……」
いい加減に帰れと言い続けてようやく帰った7日目まで、弟の沙慈はずっと姉さん姉さんと引っ付いたまま離れなかった。まるで幼い頃に戻ったかのように。
事情を聞けば、それも無理からぬことだと思わされた。
ガールフレンドのルイス・ハレヴィは、以前のガンダムの攻撃により親族全員を失い、その右腕も無くした。沙慈は、休学届を出してからずっと彼女の下にいて寄り添っていたという。
連絡を寄こさないものだからここでそれを弟の口から初めて聞いて、なんと痛ましい事件だろうか、なんという不幸だろうかと思わされた。
弟が存外、あの世間知らずそうなお嬢様を本気で想っていたのだとも思わされた。
弟の涙を見てようやく、残された家族のことを考えていなかった自分の浅慮さを思い知らされた。
……そして何より、弟にはまだ自分がいなければならないのだと、心の底から思い知らされた。
それほどまでに自分の身を案じていた弟が折れてくれたのには、当然理由がある。
「……約束は約束。しばらくは割り切んなきゃね、絹江」
沙慈の独り立ちまで、夢を叶えるまで、危ないヤマは決して渡らない。
弟に復学の約束を取り付けるための条件であった。
宇宙に出てハレヴィのお嬢さんを支えて生きるというなら、それを見届けるまで自分は身の丈に合ったことをする。
真実を求める意志に変わりはないが、それ以上に、人間ひとりとしてやることをやらねばという意識が、開いた掌を見つめて自分の背中を押すような独り言をつぶやく絹江の中に確かに芽生えていた。
この目で見た"もうひとりの被害者"について、未だ進展がないという心の引っかかりは、ベッドに寝っ転がるよりしようがない今だけ見ないふりをした。
・
・
・
「1名様ご案内で~~~~っす」
「うが!!」
どこともわからぬ暗い格納庫。男の載せられたストレッチャーが乱雑に滑らされ、車輪が引っかかった結果男は病み上がりの身で床へ投げ出される。
"もうひとりの被害者"も"犯人"も、ここにいる。床に転がったのがアリー・アル・サーシェスで、そうしたのがパスレル・メイラント。
「く……クソ女がァ……!!」
「え? なんでわかった? そうそうさっきめっちゃいいの出たんだわ」
「何がしてえ!! てめえで撃ったらてめえで治しやがって、どういう魂胆で……」
不機嫌な午後に昔殺し損ねた女のツラが見えたと思えば、今度は報復にやってきた……かと思えば、自分は生かされていてしかも治療が済んでいる。
長く戦いに身を置いていたサーシェスとて、このような事態は初めての遭遇で動揺を隠せない。
――――その時、不意に格納庫の照明が点く。
「初めましてだね、サーシェス」
「……ンだぁ……!?」
身を起こしたサーシェスの視界に入ってきたのは、クソ女のパスレルと似たような顔をして照明に照らされた少年。似たような、というよりも同じとさえ言いきっていいかもしれなかった。
「誰だ、てめえは……」
「リボンズ・アルマーク。僕は君の雇い主に名乗りを上げようと思ってね」
「ガキが何言って……」
「そこの彼女が手荒な連れ方ですまなかったね。お詫びとして治療はすべて受け持ったよ」
高額な再生治療に、"てへっ"とでも言いたげに舌をペロペロ動かしている傷物イカれ女のパスレル・メイラントを顎で使える立場の人間。
サーシェスの鋭敏な野生の勘が直感する。目の前のガキが、只者ではないと。
「……クライアントですかい。しかし御生憎様、俺も就職先は選びたいもんでね」
「君の欲しいモノならわかっているよ」
「ハッ。なら俺にガンダムを持ってきてくださるってんですか?」
「ああ。もちろんだ」
――――リボンズの奥の照明が全て点き、格納庫の
こいつには、ついていく価値が余りあると。
「もう少し経てば場は作ってあげよう」
「……大将。あんたの望みは何ですかね? 好条件も重なりすぎると胡散臭いってもんでね」
「戦いだよ。君も大好きだろう?」
「……なぁるほど」
そして、今この瞬間に自分ほどツいている人間もそうはいないだろうと自惚れた。
世の中自分を抜きにしたところで、なんのかんの理由をつけて戦いたがる連中はどこにでもいる。それこそソレスタルなんたらの中にとて、と常日頃思っていたが、まさにその通り。
黙っていても向こうから、大好きな戦争が舞い込んで来た。それも戦争根絶を掲げるテロリスト共から。小躍りを見せろというなら、そうしてもいいほどの愉快さであった。
「部屋を用意してある。今日のところはそこで休むといい」
「はいじゃあ頑張ってちょ~だい。はいよろしく」
相変わらずヘラヘラとムカつく女が恐らく同僚になるというのはどうも気が悪かったが、ガンダムで戦争ができるというなら、そんな不満も呑み込んで見せる自信があった。
「ね~やっぱアレ要らねって。違うしなんかフツーに」
「もう少し様子を見たい。それに、僕としては彼は面白いしね」
「オエ~~~~シュミ悪。それよりコレよコレ!! あたしにやらせろコレ」
「……どうしようかなと思ってるけどね。彼の棺桶に相応しいと思ったりしているのだけど」
「でもね……おっさんこれ完全に使えないの!!」
「……まあそうだが」
「実戦で動けなきゃ!! ゴミ!!」
「……フフ……ッ……!」
「シミュレーションだけ強いのは!! ゴミ!!」
「……ま、毎回言ってるが、笑わせないでもらえないか……! 思い出すだろう彼を見たら……」
……パスレルの指す、ガンダムの放つ粒子を撒き散らして鎮座する巨大な金色のモビルアーマーには、サーシェスにその決断をさせるだけの説得力が確かにあった。
なんか思ったより原作20話が長くなる
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