ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる 作:トン川キン児
アフリカ大陸北西部の人里離れた山間部に、それはあった。
チームトリニティが地上での作戦行動を行うための秘密基地。外壁は偽装されており、遠目には山々の一角としか映らない。さらに万全のセキュリティが成されており万に一つも露見する可能性はない、はずの場所。
「流石傭兵は勘がよくってね」
だが今日、そこにチームトリニティ以外の者が脚を踏み入れた。
するはずがないドアの開閉音と、響いた少女の声に、トリニティの三人全員が驚きをもって振り向いた。
「!? なんで!? どうやってセキュリティを…………ッッ!!」
それ以上に驚かされたのは、少女とそのお付きの後ろにいた人物だった。
三人がよく知るところの人物である。それもそのはず、彼はチームトリニティという存在に、記念すべきファーストミッションにおいて最大の屈辱を与えた張本人である。
マグナス・アルハンゲル。
彼を初めて直接目にした瞬間、長兄であるヨハンは身体が強張り、次男のミハエルは怒りに全身を支配され。
末妹であるネーナは、全身が縮み上がるような思いが本能から湧き上がった。
"金髪碧眼はポイント高いけどゴツめで無駄にデカいのは好みハズれてる"とでも本来なら思っていたであろう場面のはずが、そのようなところまで目を通す余裕が既にない。
「……ぁ……あんた……ッ」
「ノコノコ来やがって! ちょうどいいから死ねや!!」
絶句のあまり続く言葉が何一つ出なかったネーナをよそに高周波ナイフを構えたミハエルが、猪突猛進にマグナスへと駆けていく、が。
「ご……ッ!?」
突き出したナイフは
怯んだ隙にマグナスはコートの中から拳銃を取り出し、その足元に向けて1射、2射と撃つ。
「次はお前が質になるか」
「っ……!」
銃口を突き付けられ、目前に迫る死に流石に黙り込むしかないミハエル。
「や、やめてよ、ねぇ……!! なんでミハにぃにまで……!! 何しに来たのよ!!」
目の前に同じ構図ができあがったことでネーナの心中に想起される、以前の出来事。
最初の遭遇で、この男に選ばされた。兄の命を取るか、戦争根絶を取るか。
深く考えると自分がどうにかなりそうな気がして、ネーナは考えずにいた。
そして今、まさにもう一度それを思い出さなければいけない瞬間を押し付けられ、頭が真っ白になりかける。声が震えて、振り絞ったような音しか出て来ない。
「おやめなさい」
「……いいんですかね」
「ファーストインプレッションがこれではわたくしの方も交渉になりませんわ。雇い主の言うことでしょう、聞いてもらいます」
「ミハエルもよせ」
「けどよぉ……!」
……だが、ひとまずこの場はそれぞれの監督役が抑えた。
ミハエルを制し、怯えるネーナの方をちらっと見やった後、ヨハンが先んじて口を開いた。
「この場所に来たことで、貴女方の能力の高さはわかりました。ソレスタルビーイングのエージェント、王留美。そして付き人の紅龍」
「名乗る前から知っていてくださっていて光栄ですわ」
「彼に負けてからいろいろとその近辺の人間を調べたもので。それで、私たちに何か御用ですか? 彼がやってきてしまうと……」
ヨハンが、牽制するようにマグナスの方を睨む。それをマグナスは意にも介さない。
「妹が怯えるので」
「先の攻撃には理由があったことをそちらもご存じだと思っていましたが」
「もちろん、レイフ・エイフマン教授の抹殺がヴェーダに認可されていないまま我々がミッションプランを実行してしまっていたという事実は把握している。しかし、あの時の彼には私情が多分に含まれていた気がしてならないのです」
「……不信を招いているのは当然ですわね。ご安心を」
初対面から要らぬ敵愾心を抱かれ話が面倒になっていく。名目上とはいえ手の内にある人間の勝手で不利益を被った形になり、留美は内心苦々しく思った。
「今日はご挨拶です。一度事情がわかれば、エージェントであるわたくしたちがソレスタルビーイングの一員である貴方がたをサポートするのは至極当然のことだと思いまして」
「何言ってやがる!? 俺らはてめえの飼い犬にもそっちのガンダムにも攻撃されてんだぞ!」
「そのことについては聞き及んでいます。ですが、わたくしもマグナスも、一概にあちら側の人間というわけではありません」
ミハエルに突っかかられながらも、意に介さず留美は続ける。
「つまり、中立の立場であると?」
「いいえ。わたくしは、イオリア・シュヘンベルグの提唱する理念に従う者」
妖しく目を細めて、留美は言った。
「それ以上でも、それ以下でもありません」
その問いを聞き届けて、ヨハン・トリニティは理解した。
言葉がどこまで信に値するか、それはわかりようがない。だが、彼女は確実にチームトリニティという力を必要としている、と。
そしてそれは、自分たちが戦争根絶を達成するために使えるカードの1枚にはできる、とも。
思いがけないところから味方は現れるものだ、と思いつつ小さく笑って、ヨハンは返答した。
「……なるほど。そういうことでしたか」
「ええ」
「……?」
ミハエルにはこのような駆け引きを解するために必要な知性が産まれてから
ネーナも同様であるが、こちらは天敵とも言えるマグナスの一挙手一投足を警戒するばかりで、話はそもそも頭に入っていなかった。
「わかりました。必要に迫られたとき、貴女の援助を期待させていただく」
「よしなに」
「貴方にも助けを頂けるのならば実に心強い。それが一度負けた相手とくれば尚更」
「本意とは言い難いが」
そう言ったマグナスが一瞬睨んだような気がして、ネーナは思わず視線を伏せた。
「フッ。お二人ともこの場所のことを……」
「伝えない事をお約束しますわ。では」
三人のエージェントは去っていった。
それと同時に、張りつめていた緊張が解けて力が抜けていくような感覚を覚えるネーナ。こんな所にまで来るなどと、思いもしていなかった。
そしてそれよりも。断片的にヨハにぃの語った話を咀嚼していくなら、あの怖いおじさんは、これより先は自分たちトリニティと行動をともにすることがある、ということになる気がネーナにはした。
……御免こうむる、とてもありえない話だった。
「あの人、また来るの!? なんで!? 冗談じゃないよ、ヨハにぃ!!」
「彼は素晴らしいパイロットだ。身を以ってそれを知っただろう」
「俺も反対だぜ!! いつ裏切るかわかったもんじゃねえじゃねえか」
揃って反対の声を上げる兄弟に、頭を悩ませつつヨハンはその意図を説明した。
「ソレスタルビーイングには彼の妹が在籍している。それも溺愛する妹が。彼にとって決定的な弱みだ、裏切るということはまずあり得ないと判断してもいい」
「妹ぉ?」
「あの敗戦も特殊な状況下のものだ。大気圏突入にGNメガランチャー、ツヴァイ以外の粒子供給が一時的に不足していたからこそとった不覚だが、通常ならば3人で難なく対処可能な存在だ。だいいち、あの後ネフィリムはパワーダウンを起こしていた」
「パワーダウン……んじゃあ、ハッタリじゃねえかありゃ!」
「そういうことだ。再戦など不可能さ、不意打ちも加えてようやくの戦いなのだから」
ヨハンのその言葉を聞いた瞬間、ネーナはすっと目が覚めていく思いだった。
なんのことはない。あの怖いおじさんにはあれがギリギリいっぱいで、ヨハにぃを殺すことなんてあの時にはもうできなかったのに、虚勢を張ってあたしをだまくらかしただけだった。
そんなおじさんの言うことなんてちっとも響かない。ヨハにぃの言う通り、あいつの言ったことなんか気にするようなことじゃない。
所詮ガンダムマイスターでもない、組織に縛られて言うことを聞いているだけの情けない男。
(バカみたい、あんな奴の言うことやることに惑わされちゃってさ。あたし、らしくないよ!)
戦争根絶のために造られ、戦って。そんな自分たちトリニティは特別な存在。
いつぶりかに気が楽になってくる。何も考えずに目に映る物を壊せそう。
長めの期間が開いて休養もたっぷり。次のミッションが俄然楽しみになってくるような、そんないい気分にネーナは浸っていた。
ガンダムに乗って、誰を殺したってかまわない。世界が変わるには必要な犠牲なんだから。ついでにちょっと楽しんだって、何か悪いことがあるとでも?
――――しかし、ネーナ・トリニティには三日後のミッションが終わるまで、世界がどう変わるかなど想像もできなかった。
・
・
・
「これが……ヴェーダの本体! ソレスタルビーイングの計画そのものの根幹を成すシステム」
ヘルメット越しの眼下に広がる巨大な球状構造物を前にして、宇宙服に身を包むアレハンドロ・コーナーの心は生涯一番の歓喜と高揚に包まれて戻らなかった。
ついに自分は、コーナー家の悲願を叶えるまであと一歩進むだけと言っていい所まで来た。
量子型演算処理システム"ヴェーダ"。イオリア・シュヘンベルグの計画、ひいてはソレスタルビーイングの計画全ての中核。即ち、数多の隠蔽を暴き、その所在、そして本体へのアクセスによりセキュリティさえ押さえることができるのならば、その者はソレスタルビーイングの計画全てを掌握するだろう。
アレハンドロは、まさにその局面に立った。
「へえ~~~~。じゃあこの球っころがあたしのかーちゃんか」
「……そう、とも言えるのか? 相変わらず君の感性は独特だな」
「ハゲジジイが
……
「リボンズ、パスレル。できるかい」
「彼女と並列ができて助かります。少し早めに仕上がるでしょう」
「はいよ~。あたしアレよ? 得意よ鍵開けんの実は。今時物理鍵とかちょちょいのちょいよ」
さりげなく窃盗歴をアピールしてくるパスレルに、そんなことを言われてもどう返していいものかと返答に困るアレハンドロ。
リボンズ・アルマークを天使となぞらえた自分だが、であれば彼女は悪魔……とか堕天使とかと呼ぶにもどうも仰々しい。もう少し小物な呼び方がしっくりくるが、なかなか見つからない。
助けられているといえばその通りだが、その役割はリボンズと被っている。というのに、どうも自分の周りをウロチョロして鬱陶しい。
女の性を持っているタイプだというのもあまり気に入らない点である。
ラグナ・ハーヴェイ共々、いずれ時が来れば消してしまってもよいのではないかと思わないでもないが、リボンズがどう言うか。
あまり彼の機嫌を損ねてお互いを想うこの美しい関係に亀裂を入れるようなことはしたくないので、パスレル・メイラントの処遇について現在は保留中である。
「ところでさぁ~~~~おじさまぁ~~~~」
……気色の悪い猫なで声で、パスレルがアレハンドロへとすり寄る。
「な、何か……」
「あの金ぴかの奴カッチョいいしさぁ~、あたしにちょーだい?」
きゅるん♡とでも鳴りそうなとてつもないぶりっ子に、アレハンドロは内部が快適な気温で保たれているはずの宇宙服の中でも若干の寒気さえ覚えた。
……それはそれとして、呑むわけがない提案だった。
「すまないがそれはできんな」
「え~なんでよ~」
「私はあの機体を駆り、黄金に包まれた永遠なる栄冠に浴すのだ。最後に引き金を引き、世界を変えるのは私でなければならない……」
要するにめっちゃくちゃ舐めプして最後に気持ちよくなりたいよ、と妙に恍惚としたその言葉がパスレルの脳内で変換された。
パスレルもこの言葉には概ね同意見であるし、共感した。自分が気持ちよくなりたいというのは全てに優先される故に。
「わかる~~~~やりてーよなそれ! ウイニングランマジ気持ち~だろーな」
「ほう。浪漫を解するのは君の美点かもしれんな」
「いやでもさぁ。あたしだってやりてーしそれ」
……そう。
閉鎖空間に突然響いた一発の銃声は、パスレルのその意思を真に示していた。
「――――ッッッッ!?!?!? ッッ!! ……ッッ!!」
「うぉすっげ! こんなんなるんだ宇宙で死ぬって。ほんとに魚みてえな感じ」
「君……やってくれるね。ほんのちょっとだけ早かったんだけどな」
「もう最終段階だろぉ? いーじゃんちょっとぐらいさ、アレ乗りて~~~~マジで!」
ヘルメットのバイザーを銃撃で割られ、呼吸がままならず声にならない声を叫んでばたばたと手を動かし、無重力をもがき苦しむアレハンドロ。
パニックになりながら割れた部分を手で押さえようと無駄な努力をする間、通信回線から聞こえてきた会話の内容を脳内で咀嚼することさえもはやできなかった。
……それから間もなくの数十秒後に意識は途切れ、捨て置かれた数分後には物言わぬ死体と変わった。
コーナー家の悲願は、無音の虚無たる宇宙で、あと一歩を踏みしめることなく目前で儚く散ったのだった。
80万UAありがとうございます
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