ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる 作:トン川キン児
リーサ・クジョウの初陣は鮮烈なものだった。AEU本国でも中東戦線のエース部隊と名高い第222戦術モビルスーツ隊の技量もさることながら、その神算鬼謀は作戦の初めから終わりまでをまったく支配しきっていた。
リチエラ民族統一戦線及びリチエラ王国軍はこの一連の紛争において、数度の作戦を担当した彼女に対してついに一つの損害さえも与えられることなく2302年の暮れ頃に敗北したのだった。民族統一戦線のリーダーは降伏を受け入れた王国軍により引き渡され、AEU連邦地方裁判所により裁かれる運命にある。
しかし、戦争が産んだ難民たちはAEUの中東干渉に対する国際的な批判風潮を高め、侵攻を推し進めたAEU領各国代表の地位を危ぶませたことで連邦議会は混乱し始める。国内世論もまた過干渉の危惧に傾き、AEU軍は2303年3月に至ってついに主力部隊の中東撤退を決定する。対テロ戦争を名目に影響力の拡大を行うことは、もはや不可能だった。
……という訳で、俺たち第222戦術モビルスーツ隊もいよいよお勤め終了のお役御免。晴れてAEU本国への「凱旋」を許されることとなった。
「聞いたかよ! 帰ったらオレらいくつも勲章貰えそうだぜ、昇格もするってよ」
「お前も大人しくしときゃあ今頃大尉だったかもしんねえのになあ」
ということで、帰還の前日となれば基地の奴らは飲めや食えやの大騒ぎ。しかし俺は知能指数が高いのでこれまで酒が入ったことで起きた数々の惨劇を鑑みてちびちびと酒を煽っている。
コーラサワーが語る、司令官から聞かされた俺たちの帰還後の待遇はまあ妥当だと言える。この3年間でMS隊全体を含めた撃墜数は90機を超えているし、90のうち半分以上を俺とコーラサワーで占めているわけだから戦功章に名誉勲章のふたつやみっつ貰えなくては困るというもの。
いよいよスコアが確定したとあってか一部には俺の方が撃墜数が多いからAEUのエースはユリウス・レイヴォネンだ……なんて言い出す奴もいるが、ンな訳ねえだろ。
悔しいが模擬戦でも負けなしのスペシャル様って謳い文句は本物なんだよ、30回模擬戦やって1回も勝ったことねえんだぞ。しっかり見てればコーラサワーの方が何から何まで上だなんてすぐわかるだろうに、飛行隊の外からの視点だとなんか知らんがコーラサワーエアプ勢やたら多いのなんでだ? 地下アイドル推してる気分になってくる。
まあコイツが侮られる理由もだいたいわかるがな。被撃墜は仕方ないとしても素行不良さえなかったら実際に隊員になって実感しなくてもちょっとは正当に評価してもらえんのに、その機会を自分から投げ捨ててるから始末に負えん……実働三年で中尉になるの三回目とかAEU史上初だろ。
あと、この一年でやっぱりこうなるんだなって思ったのが……。
「ね、ねえ。やっぱり私、場違いなんじゃ」
「隊長のところなら大丈夫だよ」
「お!! エミリオこっち来いよ!!」
……噂をすればなんとやら。そう、スメラギさんもといリーサとエミリオの二人だ。
あの日の完全勝利以来、リーサの戦術予報精度とその指揮は日増しに評価を上げていった。その信頼たるや一度は紅海を飛び越えてアフリカ戦線から戦術予報と直接の指揮をねだられ飛んで行くほどだった。あの時は何やらエミリオが毎日ソワソワしてたのをよく覚えている。
アフリカから帰ってきた頃からはもう二人はベッタベタで、俺もいつ砂糖を吐くハメになるかというほどになった。そうなる時期があるのは当然わかっていたが、こうも早いとは思わなくて……。
心の中で今まで重なっていたソレスタルビーイングのスメラギ・李・ノリエガと、AEU戦術予報士のリーサ・クジョウが分けて考えられるようになり始めたのもここからだった。
「軍師サマも硬くならねえで座りなァ~~」
「で、でも私お酒とか飲めませんし……」
「こういうのは雰囲気がいいんだよ、リーサ」
これもだ。ぶっちゃけアル中と言っても過言じゃないスメラギさんが未だお酒には無関心だなんて本当なら考えられないことだろう。
エミリオもエミリオでもう名前呼びまで行ったのかよ、羨ましいこって……だってそのツインドライヴが好き放題なんだろぉ? いいよなお前……。
「おっぱい……」
「は?」
「え……えぇ!? ユリウスさん!?」
……なんだこいつら。三人そろって人の顔みて雷でも落ちたようなツラしやがって。
おれがいま、なんか変なこといったか?
「気のせい……じゃないわよね?」
「う、うん。ユリウス君のこんな姿は初めて見るよ……」
「もう頭にまでアルコール回ってんな」
「んだよ……おれはかんがえて、のんでるって……」
人をよっぱらいあつかいしやがって……そうそうなんども
「ユリウスお前、相変わらずザコい肝臓だな……おっぱいが欲しいならミルクでも貰うか?」
……耳がとおくなってきたけど、今ザコっていったか、おまえ? コーラサワーなんてふざけたなまえしてるくせにナメやがってよぉ……。
「……いちどぐらいおまえにかちてーよ……」
「あ?」
「おれにはもくてきが……たすけたいやつがなぁー……そのためには……」
「何のことを言ってるのかしら」
「さあ……?」
「えみ……い……お」
かんがえがまとまらん。くらくなってくる……くらいってことは、もうねるじかんか……。
「……寝ちゃった。エミリオの名前を呼んでたわね……」
「こ、コイツ女には興味ねえなと思ってたが、そういうシュミだったのか!!」
「えっじゃあ僕のおっぱいって事なのか今の!?」
「ち、違うわよ、たぶん。きっと違うわよ」
「なんかコイツの闇を見た気分だぜ……ベッドまで送ってくるわ」
「これじゃあ隊長とユリウス君が逆みたいだね……」
・
・
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昨日の記憶がない。
それだけならいいんだけど、なんかトイレに起きた時隣で並んでる奴に避けられた。聞けばなんか俺は基地を発つ前にコーラサワーになんかカミングアウトしたんだって?
……俺は寝てる間に何を口走ってたんだよ、アイツもアイツで何で他の奴らに広めるんだよ。AEU本国にようやく帰れて叙勲式の日だったってのになんでこんなことになっちまうんだ……。
誤解を解くのに随分苦労したし、未だにそういうことかって信じてる奴らも残った。腕利きのパイロットが集中しすぎてる第222戦術MS隊は解散してこれからはみんな別々の任務にあたるってのに、この誤解が解けなかったら俺もうAEUのどこに行ってもホモ扱いじゃねえかよ!!
「……にしても、お前がテストパイロットねぇ」
「へっへっへ……羨ましいだろ!」
俺の悪友である
しかもしばらく本国の方にいるからってんで車まで買いやがったコイツ。別にいいけどさ、稼いだ金の使い方まであーだこーだ言うつもりはないし……いきなりオープンカーとか調子こいてんなとは思うけど。
資質を問うとすれば出撃回数はとっくに1000を超えてるし、技量も申し分ないから下手な不調じゃまず墜ちないことはわかる……まあそもそも墜ちても死なないだろうが。プラン通りに飛行してくれるかどうかは不安かもしれないが、なんだかんだできちっと作戦には従うからそれも問題ない。
だけどそれ以上に、コイツ報告書書けるのか……? テストパイロットって飛ぶことよりそっちが本分だぞ? 下手したらモビルスーツがどうやって飛んでるかすら忘れてるレベルなんじゃねえのかってぐらいの男に報告書書かせられんのか?
……いやでも、将来的にはAEUが新時代の主力機に据えるイナクトのお披露目を任されるくらいの男だしなんとかなるんだろ、たぶんやればできるんだ。
「軍人だからしょうがねえけどよ、何か寂しくなるな!」
「おう……」
民間だって偉くなりゃ部署が変わることもあるし、転勤だってする。だからこれは当たり前のことだし、ついでに面倒な奴のお守りから解放されるってんなら万々歳だ。
1stシーズン開始までもう5年と迫ってる以上もうコイツの面倒ばっか見てられないし、いい加減自己管理させなきゃコイツだってもう除隊になるかどうにかなって軍隊生活続けられねえよ……お互いにとっていい選択になるはずだ。
……そうは思ってんだけど。それはそうだがな、そいつを意識するとなんだか得も言われん感情が湧いてくる。モヤモヤしてしょうがない。
「んだよ、気ぃ抜けた返事だな……おしじゃあやるか!」
「は? 何を」
「模擬戦だよォ! ボケてたらオレには勝てねえぞ」
「……どこでやるつもりだよ!?」
「軍学校行けばどっかシミュレーター貸してくれんだろ。なんてったって俺らエースだからな」
「…………マジでやるのかよ」
「たりめーだろ。いいから乗れよ」
訓練用のMSシミュレーターなんて代物が思い付きで今から模擬戦やりますって言ったところで借りれる訳ねえだろ……何考えてんだよ、アホかお前は。
だが今は、俺とてコイツのことを言えないバカだ。できるかどうかもわからねえ模擬戦に……売られた喧嘩なら何が何でも勝ちたいとか思っちまって、アホの口車に乗って助手席に座ってるバカだ。
……同じアホなら踊らにゃ損ってもんだろ?
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「んっぐうううううっ!!」
やっとミサイル吐かせた!! 急制動、逆噴射かけて……ミサイルはスラスターを狙うんだから、宙返りでかわす……と同時に、リニアライフルは単射高速弾に切り替え!!
ケツにつかせたのはわざとだ、振り向きざま一発で仕留め……る!!
「ろ、っとぉ!!」
避けんなよそれをよおおおおおおおお!!
あの腕部と胸部の脇をスルっと抜けていくギリギリの回避がすげえ既視感ある!!
向こうはとっくに接近戦に頭が切り替わって、ブレイドを構えて連射モードのライフルで牽制射しながら突っ込んできている。こっちは退がりながら振り向いちまった以上、不利な形なのは推力の向きが一致しない上接近戦の準備を終えてない俺の方……!
この形に俺が誘い込まれた。さっきの一発が避けれることを前提にして!
「うおお……すっげえ」
「やれえええ落とせええええ機首下げろおおおおお!!」
外野うっせーよ集中してんだぞ!! ここの教官も何でアホの言うことを承諾しちゃうかなあ、「AEUのエース二人、伝統の一戦をヒヨッコ共も生で見れるんなら……」とか言い始めてさあ。
おかげで気が散るのがたくさん集まってんじゃねえかよ!! 高く買ってくれるのは嬉しいもんだけども……!
とにかく一手遅れてるけどこっちも接近戦、ソニックブレイド構えて……これ全部捌けたら向こうだってライフルの弾がそろそろ打ち止め、また勝ちの目も見える!
牽制は全部かわしたし、こっちも前に出て……!
「かかったァ!」
何が……ミサイルロックオンだと、全部撃たせたろ!? この距離避けらんね……っ!!
「クソがああああああ!!」
「うっしゃあ!! 31勝だな!!」
……もうちょい地上に近かったらリカバリ利いたかもわからんが、流石に空中でミサイルが当たっちまえば撃墜判定にはなる。最後にミサイル使った時……ケツを見せてるから正面モニターで飛んできた数が確認できないってのをいいことに、全部撃ち切ったもんだと俺に思わせた。
そもそも敗因になった振り向きざまに一撃なんて博打を撃つハメになったのも、俺がそこに至るまででじりじり追い詰められてたからだ。コーラサワーと1対1でやり合うととにかく長丁場になるが、あいつはそれを狙ってるんだ……とにかく回避機動にムダがないから、長引けば長引くほどコーラサワーの方が有利になっちまう。
あとコイツ人読みがめっちゃくちゃうまい。感覚的なのか理論的になのか知らねえけど、単射高速弾モードのリニアライフルを毎度同じ方法で避けられてるのからもそれがわかる、状況ごとに俺がよく狙いを付ける場所が全部わかってる。
それでいて咄嗟の対応力もめちゃくちゃ高いからこっちから攻めようにも全然とっかかりが見つからねえ、ミス待ちの究極形みたいな感じだ。あれだけ突出して敵の攻撃を集めてても全部避けていられるのは普段からこの戦法を取ってるからでもあるだろう。
「ガンダム00」の名有りパイロット……グラハムとかサーシェスとかが最強の矛なら、コーラサワーは最強の盾だ。だからこそ攻めに回れる奴がついてきてくれる小隊単位での戦いだと強い。
……普段あんなんなのに、コクピットに乗るとIQ500万ぐらい上がってる戦い方すんの何なんだよほんと……。
「あの時のアレどうやったんすか!? ほらこの4分頃の……」
「ああコレか? へへ、最近暇ができたしいい女連れてきたら教えてやるよ」
……AEUじゃこうやって教えを請われるくらいには慕われてんのに、どうしようもないガンダムに一番最初にやられたってだけで世界的に侮られるってのがわからんもんだよな。
そんなコイツの運命を思うと少し同情する。普段が普段だからほんの少しだけ。
「帰ろうぜコーラサワー。もういいだろ」
「なあユリウス。今回もオレの勝ちだったよなァ」
……あ? 何? イヤミかお前?
第2ラウンドは格闘術で勝負しろってんなら喜んで受けて立ってやるけど?
「お前はオレに勝ちてえんだろ?」
「だったら何だよ……」
「リベンジしたいんだったら次の戦場も切り抜けるんだな。パトリック・コーラサワー様がいつでも受けて立ってやるぜ!」
…………あ、そうか。
そういうことか、この模擬戦。いくらコイツにしても唐突過ぎると思ってたけど、なるほどな? これがパトリック・コーラサワーなりの、俺への別れのエールってことか。ふーん……。
「待ってろよ」
「おうよ!」
――――なんか、いいじゃねえか。