ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる   作:トン川キン児

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止まれない者

「絶対許さねえ!! てめえは……戦いを生み出す権化だ!!」

「わめいてろ!! 同じ穴のムジナが!!」

「てめえと一緒にすんじゃねえ!!」

 

 片目を失っているというのに、ニール・ディランディ……ロックオン・ストラトスの戦いぶりに曇りはないように見えた。

 自ら禁じ手としていたサーベルの、二本目。サーシェス駆るスローネフィーアとの鍔迫り合いの間にそれを抜きはらい、見事に左腕部を斬り落としてみせた。

 GNバスターソードと左腕をいっぺんに失い離脱して仕切り直しを計るスローネフィーアに、デュナメスは手放したGNスナイパーライフルを素早く掴み直して一気に押し込む。

 

『敵機接近!! 敵機接近!!』

 

 だがそこに、HAROが伝える通りにデュナメスの左後方から迫る機影。

 

「ハワード、ダリル……そして今しがたまたも私は部下を失った。貴様のためにだ!」

 

 先のGNアーマーTYPE-Dによる圧倒的火力によって、グラハム・エーカー率いるユニオンGN-X部隊は壊滅的被害を被った。それこそ、戦闘続行可能な機体が隊長機である彼のものしかないほどに。

 彼の怒りは既に、人間の容積を超えるほどのものへと膨れ上がりつつあった。そのはち切れんばかりの憤怒が、一直線にデュナメスへ衝突する。

 

「邪魔すんじゃねえ!!」

 

 デュナメス膝部のGNミサイルが、接近する敵機に向けて一斉射される。

 機体表面のGNフィールドを貫通し装甲表面へ突き刺さり、圧縮粒子を流し込んで内部から破壊するGNミサイルは命中すればほぼ必殺の武装。

 

「何!? く……ッ!」

 

 だがそれは、当たればの話。

 全速での突撃だったにもかかわらず、左方向へバレルロールしたグラハムのGN-Xはミサイルの弾幕に巻き込まれたGNシールドと左腕部を喪失したのみに留まり、ライフルによる追加の牽制射も避けてそのままデュナメスの右方へ回り込む。

 

「隠し玉とは小賢しいぞ、ガンダム!!」

「はあっ!? しまっ……!」

 

 それは、右眼を失ったロックオン・ストラトスの死角。

 武装を持ち替えている暇が惜しいグラハムが選択した絶好機での攻撃は、側面部へのライフル接射。

 2発、3発と直撃を浴び、そのうち大きく開いた右腕関節部へと浴びせたビームはそのままデュナメスの右腕を根元からもぎ取り爆散させた。

 

「があああっ!!」

 

 コクピット周辺に右側面から直撃を受けたために、爆発もそこへ波及する。

 内部に飛散する破片がロックオンの身体を切り裂き、振動で痛めつけ悶えさせる。そして、勢いのままデュナメスの後方へと流れていったグラハムは違和感を覚える。

 

(最後の反応、あれは……センサーの故障か? であれば!)

「……右側が見えてねえじゃねえかよォ!!」

 

 僚機の援護を盾にして一度離脱したサーシェスも、狡猾にそれを見ていた。

 スローネフィーアに残っている手札を鑑みれば、これでトドメとできる算段はついた。

 後方からサーベルを抜き払いもう一度迫るGN-Xと、戻ってきたスローネフィーア。

 GNファングで視線を誘導し、死角を突く。これであのガンダムは、詰み……。

 

「……あん!?」

 

 とは、いかなかった。

 赤い高出力の粒子ビームがスローネフィーアを狙って光り、サーシェスは攻撃をすんでの所で避けた。

 

「なに!?」

「何だ!?」

 

 デュナメスに追いすがるグラハムにも、負傷の身を押してどうにかそれをもう一度対処するロックオンにもそれが見えた。

 謎の乱入者の正体は、飛行形態のモビルスーツ。機首であるGNロングライフルからのビームが2度、3度とスローネフィーアを狙ってデュナメスから追い散らすように動かす。

 

「あの機体は! あの時の……」

「……ネフィリムか!」

 

 三者三様に見覚えのあるその機体は、これまでにはない赤い燐光を……GN粒子を放ちつつ、MS形態へと変形してその戦いへ介入した。

 GN-Xとの激しいドッグファイトの最中、ネフィリムからデュナメスへ、パイロットであるマグナス・アルハンゲルの通信が入る。

 

『対艦攻撃は終わりだ! 退がれ!! ここからは俺がやる』

 

 2対1、デュナメスは損傷拡大中、自身も負傷あり。

 この劣勢に、本来ならば願ってもいない増援。

 ……だが、ロックオン・ストラトスの、ニール・ディランディの。

 極めて個人的で身勝手な我執は、その一部を疎ましく思った。

 

「……スローネに手を出すな! アイツは俺がやる」

『……何言ってる!? ボロボロのくせにフカしてんじゃねえ!』

「こっちにゃ切り札もある!」

 

 KPSAのアリー・アル・サーシェス。父さんの、母さんの、妹の。家族の仇。

 それが戦場に出てきて、自分と対峙したのならばどうあろうと自分は退けない。

 生きている限り戦いを生み出し続けるこの男を生かしてはおかない。

 あのテロから自分の内に渦巻き続けたこの憎しみにケリをつけなければ、曇りのない目線で世界と向き合うこともできそうにない。

 だからここで、奴を倒さなくてはならない。

 その心が、ニール・ディランディに、マグナス・アルハンゲルからの忠告を無視させた。

 

「ユリウスなんたらかい! アンタ、邪魔くせぇなァ!!」

ッ!
ッ!
ッ!

 

 地上でのサーシェスとの戦いでわかったこと。この男の攻撃は確かに正確だが、射撃となれば濃厚な殺意の篭っている攻撃がわかりやすく、自分の()にかかれば避けやすい。

 GNハンドガンをかわして優位に立ちまわる。しかし、デュナメスがこちら側に交戦を寄せてくる。なし崩し的にとりついているGN-Xをこちらへ押し付けたい、という動きが見えていた。

 その意図はGN-Xのパイロットであるグラハムにも読めている。それを、彼がどう受け取ったかと言えば。

 

「……望むところだと言わせてもらおう!!」

「なっ、なにィ!?」

 

 ……言葉通り、望むところであった。

 故に、スローネフィーアへと向かうデュナメスから早々に離脱し、ネフィリムへと狙いを変えて一直線に向かう。

 先程まで追いすがろうとしていた相手をあきらめて、早々にこちらの方へと向かってくるその予想外の挙動にユリウスも面食らいつつ、そのサーベルをサーベルで受け、鍔迫り合いとなる。

 

「久しぶりだな!! ユリウス・レイヴォネン!!」

「通信!? ……グラハム・エーカーだと!?」

 

 叫ぶような通信がオープンチャンネルから入り、ユリウスは心当たりのありすぎるその声の主に動揺する。本来、いるはずのない人間がここにいる。

 グラハム・エーカーがGN-Xに乗ってデュナメスと戦った。本来ならばGNフラッグと銘打った、この機体のように改修を受けたフラッグに乗って遅れてやってくるはずの男が、既にここにいるのは何故?

 ……その辺りに考えを巡らせるのは後でもいい。ユリウスはそう思い直し、鍔迫り合いを振り払ってGN-Xをアウトレンジに追いやろうとする。

 GN-Xの片腕がないのはすでに見えている。その残った片腕にサーベルを構えているのだから、射撃戦になれば少なくとも持ち替えの隙の間は撃ち返せない。

 右腕のGNロングライフルで離脱したGN-Xを狙い撃つも、グラハム・エーカーの技量が成せる業で右へ左へと巧みに躱される。その間にサーベルと背部のライフルを持ち替え、ネフィリムを撃ち返す。

 

「私から言わせれば、君がその機体でここにいることが私の決意の否定なのだよ!」

「な、何言ってる……!?」

「私は君を憎む!! 同じ翼でここまでやってきた君をな!!」

 

 グラハム・エーカーには、道が二つあった。

 フラッグに託された誇りを、矜持を、憧れを、無駄にしたくないのならば、真に失くせぬものだと捉えていたならば。たとえそれが歪んだ形になろうともフラッグを駆って戦うべきだった。

 だがグラハムはフラッグを選ばなかった。翼の誇りを捨てて新たな力を取った。

 だというのに、あの日我々の目の前で力を見せつけて去った君は、同じ翼を携えたままここに現れた。新しい力をも伴って。

 それはグラハム・エーカーという男にとって、宣告に等しいのである。

 お前の本質は、力のためならば、命の駆け引きを楽しむためならば誇りも矜持も、ともすれば国に仕えるという名分さえも必要ない人間なのだ、という宣告に。

 だから、グラハムは何としても。

 

「そう……君と私とは戦う運命にあった!! 私は、君を倒す!!」

「ふざけんな!! てめえの解釈だろうがそんなのは!! 俺に絡むんじゃねえよ!!」

「乙女座である私は執念深く、粘着質な男なのだよ!!」

「どうでもいいんだよてめえの星座なんかよおおおおおおお!!」

 

 ……今まさに僚機の命がかかっているという場面で最悪の絡まれ方をしているユリウス・レイヴォネンの、心からの叫びだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何やってんだろうなぁ? 俺は……」

 

 ロックオンの、自嘲の籠った呟きだった。

 恩師からの忠告も無視して、自分はただ私心だけで怨敵に向かっていっている。

 

「馬鹿が!! 弱点丸出しの分際でよォ!!」

 

 スローネフィーアが、GNファングを全て展開する。

 単機のMSから複数の射線が形成される武装、右側が見えない人間が処理しきれる道理なし。

 この敵は判断を誤った。サーシェスには目の前のガンダムが、わざわざエサになりにきてくれたようにしか思えなかった。

 

(けどよ……こいつを討たなきゃ……仇を取らなきゃ……俺は!)

 

 ――――瞬間、デュナメスがサーシェスのモニターから消えた。

 

「! こいつぁ……!」

 

 乗機であるスローネフィーアの初陣で、サーシェスは同じ現象に出会った。

 であれば、今回も。ならばあの状態は、クルジスのガキのガンダム特有のものではない。

 

……トランザム……!

 

 各部に蓄積された高濃度圧縮粒子がデュナメスの機体全面を駆け巡り、その全身を赤く染め上げる。喪失した右腕部からは、行き場のない粒子が勢いよく噴き出している。

 残像が発生するほどの高速移動で、6基のGNファング全てを振り切る。

 複数の射線を作り右眼の死角を狙う。それならば、圧倒的な速度で1方向しか射線が形成できなくなるまで振り切ればいい。GNビームピストルを構えたデュナメスは、後方にまとめたGNファングを振り向きざまに全て撃墜する。

 

(射撃は当たらねえ、とくりゃ……残る手はひとつだな。くそったれが!)

 

 同じ手品は二度も通用しない、と言いたいサーシェスではあるが、どうにもこの状態となったガンダムへの対処方法が見つからない。

 圧倒的機動力のアドバンテージが大きすぎる。誘導兵器は振り切られ、射撃は狙うことすら困難。格闘戦に持ち込もうにもそもそも土俵にさえ上がらせてはもらえない。

 それならば、パイロットはどうか。

 先ほど胴体付近に直撃を貰っていたのであれば、負傷している可能性も低くはない。

 そして私怨の籠ったあの通信といい、GN-Xを振り切って自分を追ってきている事実といい、なんとしてもここで自分を殺すつもりでいる。つまりは、必ず自分をどこまでも追いかけてくる。

 失血のダメージが尾を引くまでひたすら逃げ回り、時間を稼ぐ。アリか……と思ったところで、サーシェスは思い至る。

 

(……あれだけ粒子を噴き出しといてそう長く保つってか?)

 

 純粋なスペックアップならば最初から手札を切っているはず。であれば、ここまで出し惜しみをしたのには理由が必ずある。

 恐らくは、莫大なデメリット。

 それが見えてくるまで追いかけっこで時間稼ぎ。幸いにして戦闘機動の間に戦いの場が徐々に変わっていたので、いけなくもないプラン。サーシェスは生き残りを賭けて、その判断にオールインした。

 

「逃げるが勝ちってな!」

 

 背を向けて全速で逃げるスローネフィーアを見て、ロックオンは自分の頭に血が上っていくのを感じた。

 

「てめえ……逃がしゃしねえぞ!!」

 

 逃げ込む先は、多くのデブリと資源衛星群が遮蔽物として浮かぶ宙域。

 あそこに紛れて逃げ込まれ、トランザムの限界時間で機体性能が低下すればもはや勝ち目はない。

 なんとしてもこの場で勝負を決めたいロックオン。逃げ切りをかけるサーシェス。

 

「……捉えた!!」

 

 それでも、ソレスタルビーイングの切り札、トランザムの力が勝った。

 

「がああっ!!」

 

 トランザムにより出力と射程が向上していたGNビームピストルの放つ粒子ビームの数発が、スローネフィーアの背中をすんでの所で捉える。

 遮蔽物に隠れる前に捕まる。こうなればサーシェスの目論見も御破算となる。爆煙が上がるスローネの機体を見て、ロックオンはすぐさまGNビームサーベルで確実なトドメをかけに行く。

 世界のために、家族のために、自分のために。

 

くたばりやがれぇぇぇぇ!!

 

 だが。人間の悪意はニール・ディランディを捕らえて離さなかった。

 

「こいつぁ下の下だがなぁ……!!」

 

 GNファング、2基。トランザムで振り切られた時点で無駄に失うだけだと判断し、何かに使えるだろうと収納しておいた最後の隠し玉。

 被弾した時点で機体から脱落したフリをして射出していたそれが、サーベルにスローネフィーアの胴部が刺し貫かれると同時に、デュナメスの頭部と脚部を貫き返す。

 勝って生き残ることが最優先の傭兵として、言葉通り下の下の使い方。

 だが、最後までこのガンダムのパイロットを少しでも苦しめる方法としては最上であった。

 

「……相打ちだ……一人でも多く死ねや……!!」

 

 最期までも粘りつくような、戦争屋の持つ底無しの悪意。

 それを肌で感じながら、それでも、ニール・ディランディは笑った。

 

「……父さん……母さん……エイミー……俺、仇は――――」

 

 ――――ガンダムデュナメスが、スローネフィーアと己の生み出す爆炎の中に飲まれていく。

 既にひび割れていたデュナメスのコクピットの内部にも、至近距離で起きたそれは容赦なく吹きこんだ。




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