ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる   作:トン川キン児

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生き残る覚悟

「どう診てますか」

「助かりはするさ。だが……」

 

 結論から言って、ロックオン・ストラトスは一命を取り留めた。

 トランザム中の強化された機体表面のGNフィールドが至近距離の爆風から身を守り、デュナメスはどうにかコクピットブロック周辺を保ったまま漂流、退いたGN-Xから解放されたネフィリムがそれを回収した。

 機体は完全に大破したものの太陽炉も無事。ロックオンも重傷を負ったものの、生きてはいる。

 それだけで、自分の知る結果とは随分マシなものになった。甲斐があったとは思えたユリウスだが、JB・モレノが下す医師としての診断は非情な現実だった。

 

「圧縮粒子の付着した破片が神経をやった。右腕は……駄目だ。右眼もな」

 

 高濃度圧縮処理を受けたGN粒子は、時に人体の遺伝子を破壊し曝露された部位へ不可逆的な細胞障害を引き起こす。

 特に今回、ロックオンはコクピットが破損した右半身を中心に敵機の爆発前から外傷を受けていたのが災いした。創傷から粒子が神経へと浸潤し、結果、ロックオンの右腕は上腕短断端を余儀なくされた。

 再生医療を後回しにしていた右眼にも容赦なく粒子は侵入しており、視神経を損傷したそちらも最早手の施しようはない。今後、以前のように視力が回復することはあり得ないだろう。

 救いといえば、眼窩から脳へと毒性が到達しなかったことぐらいのもの。

 

「……医者の言うことは聞くもんだろうが。全く……!!」

 

 怪我人に鞭打つようにロックオンへの悪態をつくモレノだが、その場で聞いていた人間は、みなモレノがこの艦で命に対して最も真摯に向き合っている人間であることをわかっている。

 彼としても不本意な結果に終わってしまったということを、重々承知している。

 狙撃手から指先と利き腕と、狙い撃つための眼すら失われた。

 それは、ロックオン・ストラトスが、ニール・ディランディがもはやガンダムデュナメスのマイスターを続けられないということに他ならない。

 

 カプセルの中で眠るロックオンを、沈痛な心持ちで見下ろす面々。

 刹那が、ティエリアが、スメラギが。それぞれがそれぞれに、この状況を招いたことへの自責を感じずにはいられなかった。

 フェルトもブリッジに待機こそしているものの、大事な者を失ってしまうかもしれなかったという恐怖に怯えていた。

 マグナスにとっても、同じようにそれは痛恨だった。

 予想外の横槍と言えばそうだったが、救援に間に合っておきながら、グラハムを振り切ることが最後までできずにむざむざロックオンをやらせた。

 ……それでも、謝ってしまうようなことはしたくなかった。

 "そんなことはない"ということなど、この場にいる誰もが言うに決まっている。慰めるような答えの決まりきった言葉を発したくはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「間に合うだけ間に合わせた。だが、俺はどの程度戦力になる?」

「あなたはよくてサポート程度。太陽炉搭載型に有効な装備があるとは言えないもの」

「……そうもなるか」

 

 スメラギの自室で、モニターに映し出されたデータを見ながらのマグナスとスメラギの会話。

 次回の会敵予想時刻は敵が補給を終え、残存兵力を統合するまで。あるいは増援を待つかだが、多く見積もっても8時間、早ければ6時間。

 デュナメスは完全に大破し修復不可能、よって戦力外。キュリオスは追加装備であったテールブースターを喪失、ヴァーチェは損傷の激しい外装をパージしてナドレでの出撃。

 完全な形の戦力として換算できるのは、もはやエクシアとGNアームズのみ。切り札のトランザムは敵を殲滅しきれなければとてつもないリスクを背負うシステムな上にネフィリムにはできないと来て、できればこれに頼った戦い方はしたくない。

 マグナス・アルハンゲルという凄腕のパイロットが救援に来たからといって、相手も三大国のエース中のエースたち。先の戦闘でも1機に抑えられていた場面も存在するように、アドバンテージになり得るとは言い難い。

 ……損害を鑑みて相手が撤退してくれれば最上、という状況だった。

 

「……逃げたくならない?」

「あいつらはそうは思っていない。なら、できるだけあいつらの望み通りをやってみせたい」

 

 困り眉で弱音を吐いてしまいそうなスメラギに、やるだけのことをやるしかない、とマグナスが励ますようにして意思表明をしてみせる。

 ティエリアが先程この部屋との通信で語った。彼らマイスターたちの総意は、あくまで計画の継続。だから、スメラギに戦うための作戦を、擬似太陽炉搭載型MSを殲滅するためのミッションプランを求めた。

 

「……私たち、老けたかもね。あの子たちがすごく若く思えるの」

「気の持ちようだろ。シワが増えるような考えはよせよ」

「もうッ!!」

「っつ……!」

 

 緊張をほぐしてやろうという気持ちからの言葉なのはスメラギからもわかってはいるが、それはそれとしてデリカシーのないマグナスの言葉に対しては鼻っ面にデコピンをかましてやった。

 

「三十路のおじさんらしくなってるじゃない。セクハラよ、それ」

「わ、悪かったよ……」

 

 たじろぐマグナスに、このくらいにしてやるかと言わんばかりにスメラギは話題を変えた。

 

「……あなたが来てくれて、助かったわ」

「助けになれたかな」

「来てくれなきゃ、ロックオンはあれだけじゃ済まなかったかもしれない」

 

 ……()()()()()()()()()を変えることができたのは、確かにそうではある。

 だが、ガンダムマイスターとしての人生は彼にはもうない。その人生を果たして、彼は受け入れるのかどうか。

 そう考えると、果たして自分は本当にロックオン・ストラトスの事を救うことはできたのか。そう思ってしまうユリウスだったが、スメラギは、それを助けたのだと言ってくれた。

 

「私のことも、よ」

 

 椅子から立ち上がって、スメラギがマグナスを真っすぐ捉えてそう言った。

 

「覚悟はあるわ。でも……自分の作戦で誰かが死ぬの、もう堪えられないって、わかってるでしょ?」

 

 わかっている。

 同じ境遇からこのソレスタルビーイングにいる人間同士、痛いほどわかっている。

 リーサ・クジョウは、壊れかけのままスメラギ・李・ノリエガを取り繕って戦っている。

 もう一度ああなれば、それこそ4年の年月と荒療治がなければ、壊れっぱなしのまま生きていかねばならなくなることも知っているのだから。

 

「お願い、ユリウス」

 

 本名を呼んだ。コードネームではなく。

 

「誰も死なせないで。死なないで。お願い……」

 

 リーサの両腕が、ユリウスを包み込んで抱きしめた。

 今度こそ、そうなってしまうかもしれない。それが現実に迫っているリーサの心は、怯えて震えていて、それでも戦わなければならない。生き残るために。

 抱きしめ返してやりたかった。

 少しでも安心させてあげたかった。

 だが、彼女の心に傷を負わせた自分はその資格を持たない。

 リーサの背中に回ったユリウスの手がそれを躊躇して、逡巡の果てに両肩を掴んだ。

 

「約束する。お前の前で誰も死なせやしない」

 

 言い切ってしまうには力及ばないであろう自分を理解しながらも、それでも涙を零す彼女を繋ぎとめるにはこう言うしかなかった。

 肩を掴んだその手が離れて、互いの距離が離れてからしばらくの沈黙の後。

 

「……抱き返しては、くれないのね」

 

 顔を背けながらそう言ったスメラギに、マグナスは。

 

「そんな資格、俺にはないよ……」

 

 どこか逃げるようにもしながら、スメラギの自室を後にした。

 これ以上求められたら、自分がとてつもない過ちを犯してしまいそうで。

 その背を見送るスメラギは、ドアが閉まったのを確かめてから両手でピシャリと自分の頬を叩いて、自分をスメラギ・李・ノリエガに引き戻した。

 

「……生き残る覚悟よ。私たちは、生き残る……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっておいてくれたか」

『ハードの問題にゃあならねえから、やるだけはやっといたがなぁ……しかしな』

 

 場面は来る決戦に備えて、数時間フル稼働中の格納庫での会話に移る。

 マグナスのネフィリムは被弾がなく整備の緊急性が薄く、またコンテナが全て埋まっている上船外係留作業を行う余裕もないことから、中央カタパルトデッキにそのまま固定するというとんでもない荒業でプトレマイオスに残っている。

 そしてマグナスはネフィリムのシートからイアンに向けて、着艦時にある頼みごとをしておいた。

 

『エクシアのGNブレイドをネフィリムでも使えるようにしとけって、どういうこった。そのうち他のガンダムの武器にもロックがかからないようにするつもりではあったが、今やる事か?』

「……実体剣にはGNフィールドを貫徹する効果があるはずだろ」

『……そういう奴が出てくると思うんだな?』

「敵がこのまま突っ張ってくるなら、可能性はある。増援があればその中にヴァーチェを参考にしたようなのがいないとも限らない」

 

 ……もっともらしく言ってみせているが、マグナスはこの後に何が来るかは知っている。故に、それに対する対策の一環だった。

 アルヴァトーレ。ソレスタルビーイングの最期をもたらす最強のモビルアーマー。

 それが展開するGNフィールドは生ぬるい粒子ビームなど一切通さない。そうなれば、ネフィリムには打つ手がない。

 GNフィールドをネフィリムでも対策しようと思うなら、この場にある打開策はエクシアの実体剣・GNブレイド。あれ以外にはないとマグナスは判断した故の、イアンへの依頼だった。

 

『……スローネもGN-Xもわしらが知らんかった以上、あり得なくもないか』

「やれることはやっておきたい」

『そうだな。そいつはまあ大した手間じゃなかったからいいさ』

 

 武装ひとつ取っても対応には時間がかかるはず、なのに"大した手間じゃない"というからマグナスはこの男に時々恐れ入るのだが、イアンはそこから話題を変えようとした。

 

『リンダに会ったな?』

「ああ。元気だった」

『夫のわしより久々に顔合わせしやがって。で、義兄さん。何つってた?』

「俺にあんたを守ってくれってさ」

『かあっ! 泣けてくらあ……』

 

 ……義兄弟の話をしたかったようで、リンダを出汁にして二人は少し盛り上がる。

 ヘルメット越しに顔を抑えようとするイアンを尻目に、マグナスはそろそろ通信を打ち切ろうとする。元々ネフィリムのシートに来たのは、機体各部のチェックを行うためだったから。

 

「やってみるさ。妹の言う事だからな」

『頼むぜ、義兄さん。わしゃ嫁にも娘にもまた顔合わせてえよ』

「俺の匙加減次第かもよ」

『おいおい……怖い事言わんでくれよ』

 

 未だに少し恨んでるぞ、と念を込めて威嚇しつつ、格納庫との通信を打ち切った。

 ――その時、警報が鳴り響く。

 Eセンサーに反応あり、敵部隊捕捉。相対距離0235。

 チームプトレマイオスの、正念場がやってくる。

 ……ただ、それ以上にマグナスは、その感覚は何かがやってくるのを感じていた。

 

(……何だ、この胸騒ぎは……?)

 

 マグナスが感じている胸騒ぎは、ただ単にソレスタルビーイング壊滅の危機が迫っているからというだけではない。

 もっと、直接頭に響くような。

 そう、この感覚には覚えが――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 プトレマイオスの光学センサーが捉えたのは、総数14機の敵。

 ただし、その中のGN-Xは13機。

 その陣形の中央には、MSよりも遥かに大きな威容を誇る謎の機影がひとつ。

 機体中央部のみに金色が残る、GN-Xと同様のカラーリングのモビルアーマー。

 

 ……そして、異常なのはそのパイロットもだった。

 

はいち~~~~っす!!

「MAから暗号通信!?」

「……この声……モニターに出して!」

 

 モニター付きの通信が、敵MAからプトレマイオスに。

 クリスが中央の大型モニターにそれを映し出すと、そこに映っていた人間は、まさしく。

 

『パスレルで~~~~っす!! お久しぶり~~~~っす』

「……この人、向こうのMAに乗ってるってことっすか!?」

「……やはり敵……!」

『あぁ~~~~? 何だァお前ら? 挨拶はしっかりしようよ小学生でもできんだぞ』

 

 性格のことを考えればどこかのタイミングでいつかは出てくるかとは思っていたが、やはりこういうことになる。

 リヒティが驚きの声を上げ、スメラギがそう思って唇を噛むと、ふざけた軽薄な挨拶と同時にMAに動きがある。

 

基本だろォ!? おはようございますこんにちはさようならよろしくお願いしますぐらい……

 

 機体正面が展開し、砲口がこちらを捉える。

 

『しっかり言ってみろよテメーらお前ェ!!!!』

 

 アルヴァトーレの大型GNキャノンが、パスレル・メイラントの悪戯が。

 悪意となって、プトレマイオスに襲いかかる。




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