ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる 作:トン川キン児
「……ハワード……ダリル……仇は取ったぞ」
戦いの痕の砕け散った残骸に向けられた、グラハム・エーカーの手向けの言葉は誰に聞かれることもなく虚空の宇宙へと消えた。
そして同時に、先ほどまでのひと時の高揚がまるで嘘だったかのように、眼前に広がるこの宇宙と同じだけのものとも思えるような言いようのない虚しさがその心を満たしていた。
人の道を外れた畜生への怒り、戦う定めと妬み憎んだ者、好ましき愛を抱いていた者。
すべてが一堂に会したこの場で、その全てが散っていった。
グラハム・エーカーは、ソレスタルビーイングという存在との戦いの理由となるもののほとんどを一瞬にして失ったのである。
そんな自分自身を前にして彼は思う。誇りを捨てて得たものがこんな例えようのない虚しさだけだったとしても、己という存在は、やはり戦いのある空の中でしか生きられない男なのだろうと。
それでも、グラハム・エーカーという男は、軍人として自分を誤魔化すことができる人間であった。
「……こちらGN-X21、グラハム・エーカー上級大尉。ガンダム及びアルヴァトーレを撃破した。生存者は応答願う」
GN-Xのメインカメラをしきりに動かして、現状の把握に努める。
ここから見えるのは大まかに二つ。ひとつは、自分とガンダムの共闘によるアルヴァトーレの撃破に成功した残骸の様子。ガンダムもその支援ユニットも、ユリウス・レイヴォネンのヘリオンもどきも爆発によって吹き飛ばされ大きく離れたのか、この場にはもう見つからない。
もうひとつは、勝手に離脱した本隊の目標であったソレスタルビーイングのスペースシップがボロボロに破壊された残骸。
(スペースシップの撃沈には成功したか……)
Eセンサーを索敵に徹底させても、周囲に友軍及び敵機との戦闘は確認されない。
つまるところ、こちらの部隊が自分を残して全滅したか、あるいは3機のガンダムは全て撃墜されソレスタルビーイングが崩壊したか、その両方か。
前者ではないことは、次の瞬間の通信でわかった。
『こちら、GN-X11……セルゲイ・スミルノフ、中佐だ。ぐっ……!』
「中佐……負傷されておりますか?」
『中佐、喋らないで!! ……GN-X20、ソーマ・ピーリス中尉です。中佐に代わり現状を報告致します!』
報告されるまでもなく、どうやら向こうもタダでは済んでないことが通信越しにもグラハムに察せられた。
『こちらは羽根付きのガンダムと交戦しこれを撃破。生存者は恐らく……私と中佐の2名のみかと思われます。そちらの状況を知らせてください』
「了解した。こちらはスペースシップの撃沈及びガンダム1機とその支援ユニット、そしてアルヴァトーレの撃破をすでに確認した。残りのガンダム1機の所在は不明だが、索敵の結果交戦はすでに終息したと判断する」
『……了解、した……では、上級大尉……!』
報告の終了と同時に、暗号通信によってセルゲイ機からの座標データを受信する。
『我々が……ッかは! 撃破した、このポイントのガンダムを、鹵獲し……集結できる者のみで、全機、帰投……!』
「鹵獲、でありますか……?」
『作戦は、終了した……! 収容後、現宙域より、離脱する……!』
「……了解しました。行動に移ります」
部隊指揮官による、フォーリン・エンジェルス作戦終了の宣言。これを以って、戦闘は終了した。
団結した世界はソレスタルビーイングを退けた。
傲慢なる天使・ガンダムに、勝ったのだ。
「……勝利か……」
その事実に、どれほど価値があるのかと思えてならない者も確かにいた。
(生き残りがたった3機、無事なのは恐らく私ひとり。これでは奴の捜索もできんな……)
お互いの恩師の手がかりを掴むという友との約束も果たせず、"これが勝利だ"と言われたところで、自負通り我慢弱く落ち着きがなく業つくばりな男は納得できるはずもなかった。
・
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「くっ……クソ野郎が……!」
上半身のみとなり爆風に呑まれたのち、漂流しながらシステムダウンに陥った機体各部のリブート及びチェックを続けるユリウス。
けたたましく鳴る警報音が収まりようやくメインシステムのリブートに成功、各部の機能が復活したころには、既に全てが終わったのだろうと察せられる状況だった。
味方機の反応のみを返す広域センサーからわかる状況はおおまかにこうである。
CBS-70 プトレマイオスの反応は消失。恐らく撃沈されたと見ていい。しかしデュナメスのGNドライヴが移動を続けており、おそらく機体本体及び強襲用コンテナを用いてクルーは脱出したのだろう。
GN-001 エクシアはGNR-001E GNアームズType-Eとドッキングしたまま常に同じ方向へ同じ速度のまま動いている。なんらかの機動をとることもないため、漂流中だろう。
GN-003 キュリオスは味方機と合流するような素振りもなく、急速に現宙域を国連軍の現れた方向へと離脱しつつある。太陽炉をパージしていることから恐らく本体は行動不能な状態で鹵獲されている。
GN-004 ナドレも同様に、太陽炉を切り離している。だが状態はエクシアと近く、状況が似通っているとすれば行動不能な状態で漂流している。
キュリオスの太陽炉はGNY-001Fという識別コードを発する機体によって回収されている。これが、話に聞いていたフォン・スパークが操るフェレシュテの持つガンダムなのだろう。
推測できる結末は、おおよそ自分の知る通りに推移している。
だが先の戦場には、推測できなかったものがあった。
グラハム・エーカーがGN-Xに乗って現れていたこと。恐らく彼は先のアルヴァトーレの大爆発に巻き込まれずに、機体が五体満足のままでいる。
このまま戦場へ戻ろうとすれば、奴とかちあうことは想像に難くない。であれば、肝心要のGNドライヴとの接続を基部があった下半身ごと失い、元のカスタムヘリオンへと戻ったネフィリムの状態で勝てるはずがない。
そして、パスレルの乗ったアルヴァトーレ。
アルヴァトーレというMA部分こそ失ったが、奥の手のMS部分であるアルヴァアロンはまだ残っている。先の一合で頭部を損壊させたが、あの一撃で奇跡的にGNフィールドがダウンし大爆発をもろに受けた……だとかであれば墜ちているだろうが、あまりにも希望的観測が過ぎる。
頭部だけでの損壊でも性能がどこまで落ちるかわからない上、スペックダウンの割合で言えばこちらの方が遥かに大きい。いずれにせよ、この機体では万に一つも勝ち目はない。
フェレシュテのガンダムと連携を取ろうにも、乗っているのが
しかも、自分の感覚がまだ生きていると告げている。
つまるところ、この戦場には既に戦力となり得る存在がほぼない。
こう言い換えても差し支えない。詰んでいる、と。
(……やはりどう退いたもんか、ぐらいだな……)
上半身のみとなり、ネフィリムの機体各部GNコンデンサーが単純に半分となった都合上、稼働に必要な粒子貯蔵量もあとわずか。慣性での巡行を利用してどうにか強襲用コンテナに合流できるかできないか程度だろう。
切り離した下半身のGNドライヴ[T]はどうやら破壊されていなかったようで、レーダーにもその反応を確認できる。貴重な戦力は回収できればすべきだろう。
回収しながら強襲用コンテナに合流するとしても、こちらの反応がわかるパスレルに対して、この機体の状態でどう逃げ回ったものか。爆発から経った時間はどのくらいか。
吹き飛ばされた速度が同等だとして別方向に移動しているとしたら経過時間的にどの程度離れたものか、強襲用コンテナが自由に動けている以上はグラハムやパスレルによる追撃を受けたりはしていないようだし、今すぐ動くべきか、それとも生命維持のために最低限の電力を確保しつつ息を潜めて待った方がいいか――――。
思索を深めながら周辺警戒をしていると、サブカメラがMSの背後らしき物体を捉え拡大表示した。
(なんだ? 残骸……?)
にしては綺麗に残っている、とユリウスは思った。
どうやらGN-Xの下半身のようで、綺麗に上半身だけを吹き飛ばされている。装備が上半身に集約しているGN-Xがそれを失ったのなら、戦闘能力はほぼ失われている。
あてもなく漂流している。このままならば外宇宙へと飛び出していくだろう。
それだけならば、ユリウスはただ無感情にその場を通過していっただろうが……。
「生体反応!? あれってあそこがコクピットなのか……」
パイロットは股間部にあるハッチを開けて、虚空になにやらヘルメットに両手を当てて叫ぶかのようにしている。
もしかすると、こちらに助けを求めているのか。
……先程まで戦った間柄とはいえ、ユリウスはこれを見捨てられるほどの薄情者ではなかった。
背後から近寄り、回線を開くために腕部でGN-Xの下半身へと接触する。
「接触回線で聞こえるな? 機体をあっちに……」
『おわああ!! た、助けて~~~~!! 大佐ァ~~~~~~!!』
……そういうことかよ、と天を仰いだ。
・
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・
「いやあ~~~~助かった~~~~!! やっぱ持つべきもんは友だなァ」
「……俺、ソレスタルビーイングなんだけど……」
『こんな状況で敵も味方もあるかってんだ!』
接触回線での通信ゆえ記録には残らないだろうが、現在の世情でここまでノーサイドを貫く軍人というのもこいつぐらいだろうな、と思わされるユリウス。
『それにしてもセミヌードの赤ら顔にはまいったぜ。なんなんだよありゃあ』
「そのうちわかるよ」
『あ~? 知ってんなら教えてくれよぉ』
「教えるか!!」
『誰にも言わねえからさ! なっ』
そしてノーサイドにも程があるというものである。こんな軽はずみな会話の中でこれからのソレスタルビーイングにとって最大の切り札であるトランザムの正体を明かせと言われたところで、無理に決まっている。
この男の"誰にも言わないから"が履行されているところも、まるで見たことがない。
とはいえコーラサワーがしつこいのはここからなので、馬鹿にも納得できそうないい感じに品のない例えでごまかすだとかをした方がいい、と思い立って一瞬の沈黙を作り、すぐにまたユリウスは口を開いた。
「……お前……大佐のスリーサイズ教えてくれって頼まれたら教えるか? 俺に」
『……言う訳ねえな……』
「だろ」
その言葉に深く納得した様子のコーラサワーの声色を聞き、これまた深くため息をつくユリウスだった。
「そろそろ加速は十分になる」
『あ。なあお前』
「あん?」
『なんでソレスタルビーイングなんかやってんだよ。大佐がお前のことになるとおっかねーよ』
……もう少しで艦隊に拾ってもらえるよう速度を付けるだけ付けておさらば、というところに答えづらい問いをくれやがって。
そう悪態をつきたくなるほど、自分にとっての命題とも言えるような問いを無邪気に投げかけてくるこの男が憎らしかった。
――――ただ、なぜだかこいつにだけは、ごまかしはいらないと思えた。
「……妹がそっちにいるってのもあるが……」
『あー。シスコンだもんなお前』
そうですけど何か?…と言いたくなるチャチャ入れをぐっと堪え……。
「結局のところ、女のケツ追っかけてってのが一番デカいのかもな……」
別れの時に言い放たれたパスレルからの言葉を心の片隅によぎらせながら、そう言ってのけた。
だからといって他を諦めるようなわけでもないが、結局のところ自分が戦いを続ける一番の理由はそこにある。
あの二人こそが、自分にとっては――――。
『妹のケツを?』
『リンダのケツっつったか? あ゛? 今からでも外宇宙行くか?』
『ひぃ!! 行きません!!』
……真面目に取り合うと次にはこうなる。本当にこの男は、神経を逆なでする才能があるとつくづく思わされる。
『あれだけやられりゃあ、お前らももう終わりだろ。どーすんだ? 帰ってくんのか?』
「帰れるわけねえだろ。処刑に決まってんだから」
『そりゃそうか』
帰る場所などない片道切符、元よりそのつもりである。
コーラサワーのその言葉は優しさ故のものか、単なる興味本位からの問いだったのか、それはユリウスにはわからない。
いずれにせよ、再びの別れまでの時間はもうなかった。
「これだけ速度がつけば拾ってもらえる」
『そうかぁ? だといいんだけどよ……』
「お前は運はいいから。なんとかなるって」
コーラサワーの乗るGN-Xの下半身は十分な加速度がついた。
あとは自分が、ネフィリムの手を離すだけになる。
『言っとっけど、命の恩人になったからってテロリストでもやってりゃ容赦しねえからな!』
「……まあ、頑張って取り締まれ」
『またな!』
「おう。またな」
再び遭えば相容れぬ仲と知っていながらも、再会を期す言葉に、ユリウスはそのまま返事を返してしまった。
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