ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる   作:トン川キン児

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今日から1週間ぐらい連続投稿だと思います


告解

「……やめた方がいいと思います」

「なぜですか! 私たちは命が懸かっているんです!」

「今に至るまでの私の経緯はお聞きになった通りです。その経験則だと思って聞いてください」

 

 ユニオン勢力圏、経済特区・日本の首都、東京内の高層マンションの一室での会話である。

 テーブルに向かい合っているのは、部屋主の女ひとりと突然の来客である男女ふたり。

 男女ふたりの名はそれぞれ、MS開発史研究者のロベール・スペイシーと、国連軍軍事条約査察チームに所属するパイロットであるデボラ・ガリエナ。

 部屋主の名は、絹江・クロスロード。

 ロベールの剣幕はまさに切羽詰まったという焦りが多分に含まれたもので、およそ女性に向けるものでないとも言えるかもしれないものであったが、絹江は冷静にそれに対して答え始めた。

 

「私が尋ねたほとんどの方々がすでに殺されています。有力な情報を提供してくれたユニオンの兵士の方、そこから辿り着けるはずだったラグナ・ハーヴェイ氏、恐らくその知り合いであろう方までも」

「……そして、貴女も殺されかかった」

「そういうことです」

 

 彼らが訪れた事のあらましはこうである。

 デボラ・ガリエナとロベール・スペイシーの両名は、極秘裏に行われているあるMSの開発に招かれ、そこで自分たちがソレスタルビーイングにまつわる大きな陰謀の最中に呑み込まれたことを悟る。そして命の危険を感じ、全てを終えて自分たちが用済みとみなされる前に脱出した。

 そのMSこそ、先のラグランジュ1で行われたという大規模作戦「フォーリン・エンジェルス」においてソレスタルビーイング壊滅を成し遂げた国連軍の秘密兵器、GN-Xである。

 

 絹江は、イオリア・シュヘンベルグを、ソレスタルビーイングの始まりを追ったこれまでのいきさつを凡そ両名に話し終えている。それがいつの間にか血みどろの道になっていたことも。

 そして、両名も絹江には既に話し終えていた。

 

「国連大使のコーナー氏が全ての黒幕……確かに、それができるだけの背景が彼にはあるのかもしれませんが」

 

 ユニオン所属の国連大使、アレハンドロ・コーナーがこの逃避行の原因となったことも。

 両名によるところ、彼はソレスタルビーイングのメンバーであり、同時に裏切り者であったという。

 国連へGNドライヴ技術及びGN-Xの提供が成されたのも彼の差し金。全ては組織を打倒するためであり、コーナー氏曰くところ正義を成し遂げたいという思いによるものであるとも。

 だが、それに協力する中で二人によぎった歴史の教訓。

 裏切り者は、また裏切る。

 これまで幾度もの武力介入でその実力を示してきた世界最強のモビルスーツ・ガンダムと同等の性能を持つ機体の量産。それが成れば、世界の支配さえ容易であるかもしれない。

 そして自分たちは知らずとも企ての片棒を担がされ、その秘密を知っていることになる。

 ……もしアレハンドロ・コーナーが世界の支配を目論むというのであれば、そのような人間を捨て置くだろうか?

 デボラとロベールの二人に脱出を決意させたのは、まさしくそのような推測であった。

 

 地球に無事降りることができた二人が、なぜ絹江の下を訪れたのか。

 絹江・クロスロードは、世界的メディアの1角であるJNNのジャーナリストである。

 ソレスタルビーイングの真実と題した視聴率40%台もの特番の発起人になるほどの(ペン)の持ち主とは二人も知らずのことだったが、兎にも角にも、自分たちの掴んだ情報を、自分たちの身の安全に繋げられる存在が必要だったのである。

 そこでロベールが思い立ったのが、MS開発史研究者として以前にガンダムについて取材を受けたことのある、貪欲な姿勢のマスコミ関係者。それが、絹江であった。

 ……しかし、絹江の知るアレハンドロ・コーナーは、既に()()()()()()()()

 

「しかし、兵士の方は近づきすぎ、ハーヴェイ氏らは用済みになり、組織は壊滅した。であれば、行方不明の裏付けも取れているコーナー氏も"そう"なのではと思わないですか?」

 

 アレハンドロ・コーナーは、先の国連軍とソレスタルビーイングの戦闘の最中に行方不明になったとされている。彼の搭乗した宇宙船も、破壊された状態でラグランジュ1付近を漂っていたことが国連軍の公式報道からも写真付きで明らかになっている。

 

「行方をくらましただけにすぎないという考えもあります」

「……そう……実の所、私も同じように考えていて。裏付け取材もなしにこういうことを言ってしまうのも、報道者としてどうかという話ではありますが」

 

 結論を急ぐロベールに対してその言葉で一拍を置いて、絹江は話の初めに語った自らの経験則を伝え始める。

 

「ソレスタルビーイングが壊滅して、今も貴方方を見失ったり捉え続けていないとは、私には思えません」

「泳がされている、と……?」

「目的が何なのかはわかりませんが、そうとしか思えないんです」

 

 自分を撃つ際に"隠滅"と嘯いてみせたあの女性の殺し屋は、殺人現場を目撃されたことでその口封じを試みただけかもしれない。しかし、そもそも何故ハーヴェイ氏の敷地内で殺人が起こっていたのか。

 その直近にてハーヴェイ氏の下をたびたび訪れていたという赤いスポーツタイプの車内で行われ、証拠の一切が残らないようにされた周到な殺人が、である。

 そのことと、ハーヴェイ氏がその後間もなく殺害されたことへの因果関係は確実にないと言い切れるだろうか。

 自分に情報を提供したユニオンの兵士は間もなく死亡していた。彼と最後に接触した自分は、ソレスタルビーイングにマークされていないはずがあろうか?

 で、あれば。自分が今、狙われなくなった理由とは?

 組織は壊滅した。だから狙われなくなった。本当に、そうだろうか……?

 

「……コーナー氏を操っていた存在がまだいるのでは。そう、思えてならないんです」

 

 二人からの情報と、現状を擦り合わせて絹江が導いた解。

 見せかけの壊滅。見せかけの黒幕。

 証拠などありはしない。しかし、直感がそう告げた。

 

「この状況を仕組んだ何者かは、自分たちと敵対しようとする者を見分けているのではないでしょうか。であれば、JNNに情報提供するのはむしろ危険です」

「なぜ」

「コーナー氏にとっては邪魔でも、黒幕にとってはそうではなくて、だから未だに見逃されている。そういう可能性もあるのではと……」

 

 情報を武器に身の安全の保障を迫る。身を守るためとはいえそれはやはり組織への攻撃性を秘めた一種の脅迫に間違いなく、潜在的な脅威となり得る。

 対象がそのような存在になった時、ソレスタルビーイングという組織の黒幕はどのように動くか。

 これまでの行動からして、決まりきっているのではないだろうか。

 だとするならば、下手に刺激する方がむしろ命の危険を高める。絹江は二人にそう説き、ロベールは黙り込み。

 

「……それじゃあまるで、世界中が最初からそいつの監視下にいるみたい」

 

 デボラの呟いたその一言に、テーブルを囲む三人の首筋に冷たい感覚が走った。

 

「……知り得た情報は話の前で全てです、これ以上は協力しかねます」

「貴女は以前にお会いした時は、もっと熱い心をお持ちだったじゃないですか!」

 

 立ち上がって悲鳴のように声を荒げるロベールの肩を、隣のデボラが強く掴んで制止する。

 

「よしなさい」

「しかし……!」

「戦う意思のない人を巻き込む。軍人としては見過ごせないわ」

 

 国連軍の軍人としての矜持が引いた一線。それを踏み越えようとするロベールの言葉が続くことを、デボラは許さなかった。

 

「撃たれれば考え方も変わるなんて、私から言わせれば当たり前のこと。貴方も撃たれてみる?」

「それは……御免ですけど……」

「おいとまするわ。今ので行き先のヒントも思いついたし」

「どちらへ行かれるんですか?」

「沖縄基地に。古巣に面倒見てもらうのがいいかもね」

 

 いまいち納得を得ないロベールの手を無理やり引いて、絹江の自宅から去ろうとするデボラ。

 ……居間のレイアウトに写真立てを見ればわかる。彼女には家族もいて、もう無茶はできないと悟るだけの事件がその身に起きた。ならば今さら、戦おうとも思わないだろう。

 ユニオン軍時代に所属していた縁のある沖縄基地ならば、身を守る算段も立つ可能性がある。少なくとも、ここにいるよりは高い。そう判断した故のことでもある。

 

「……いいのか、これで……」

「お互い自分の身には気を付けましょう。縁があれば、またね」

「ええ、また……」

 

 ぶつくさと文句を垂れるロベールを押し出すように扉の外へ送り出し、デボラはお互いの身を案じつつ絹江の部屋を去っていった。

 ……弟が出払い、静かになっている部屋へと戻って改めて整理した事実を思索する。

 やはり、ソレスタルビーイングという組織は底が知れなさすぎる。

 通り魔に負った怪我は経過も含めてすっかり癒えて、もうすぐ記者としての復帰を控えている頃。しかし、記者としての直感が鮮明に告げる。

 これ以上ソレスタルビーイングに関われば、間違いなく死ぬ。

 沙慈との約束通りの生き方をすべきである。

 

「……父さん。私、みんな諦めたわけじゃないから」

 

 ソレスタルビーイングを抜きにしても、この世界には報じられるべきあらゆる問題が残されている。

 弟が独り立ちして、自分の幸せを自分で掴めるようになった時、燻り続けているであろう父から受け継いだ信念に習った仕事を、もう一度始める。

 その事は、誰にも知らせずに心の内に秘めておこう……。

 再起の決意を、より一層固くした絹江であった。

 

 ……その弟に関して。

 留守中に話をつけるようにいたつもりがつい長く話し込んでしまったと思って時計を見やるが、まだ帰ってこない。

 

「とっくに講義は終わってると思うけど」

 

 今さっきまで話していた内容が内容であるゆえ、絹江は唐突に不安に駆られる。

 あの組織の活動内容に限って、人質を取るなどという回りくどいことはないと思えるが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地上に降りて真っ先にやるべきこと。これから先も武力介入を続けていく上で、マグナス・アルハンゲルとネーナ・トリニティがしなければならないこと。

 それは過去の罪と向き合い、重くなりすぎた引き金を引く指の力を少しでも取り戻すことだとユリウスには思えた。

 罪を背負いながらも戦うというのであれば、その罪に押し潰されて未だ立てないというのでは話にならない。

 引き金は、重すぎても軽すぎてもいけない。

 だからこそ、この経済特区・日本に来た。

 

 

 

「あなたたちが……本当に……」

 

 彼女に、ルイス・ハレヴィに会うために。

 

 

 

 ネーナの持つ脳量子波によるヴェーダへのアクセス能力。イノベイター勢力に位置を特定されかねないためにラグランジュ3の基地内での試用は憚られたが、地球上で使用したところ問題なく使用できた。当然レベル4以上の情報、ましてやレベル7へとアクセスすることなど到底叶わないが何らかの追手も来ない。

 ――もっとも、その理由がパスレル同様ユリウスの"能力"が脳量子波へ干渉しイノベイター勢力からの監視を攪乱しているからである、ということはユリウスにもわかっていない――。

 故に、ルイス・ハレヴィの連絡先を暴き、ソレスタルビーイングを名乗って"家族の仇に会わせる"とメッセージを残すことも、人気のないこのポイントが映る監視カメラを一時的にダウンさせることもネーナにかかれば簡単だった。

 あとは、そんな怪しいメッセージを見たところで来るかどうか。しかし、ルイスはこの場にやって来た。

 

「……あたしが、あんたの家族の仇。赤いガンダムに乗ってた」

 

 重い口を開いて、白い息を吐いて、ネーナが答える。

 その答えを聞いた、ルイスの身が強張る。

 恐怖で寒気が走り、悲しみに目がぎゅっと開かれ、怒りに拳が強く握られ、憤りで唇がわなわなと震える。

 身体が感情の坩堝と化して、喉から絞り出す言葉も全てがない交ぜになって怒りとも悲しみともつかないものが震えたままはじき出された。

 

「……なんで……なんで、あんな……!」

 

 覗き上げて睨みつけるそのルイスの眼に、ネーナは思わず後ずさりそうになる。

 生まれて初めて見る、家族を殺された者の憤怒。

 生まれて初めて向けられる、生の人間からの本気の殺意。

 縮み上がりながらも、ネーナは続けた。そうであったとしか言えない、普通に育ち、普通に社会を生きた人間からすればあり得ないような話を。

 

「……あたし……わかんなかったの……だから、いいと思ってたの。()()()()()()()()、って」

()()()()()……!?」

 

 あんなこと、と言った。私の家族を殺したことを。

 その一言でルイスの瞳孔がかっ開かれ、ネーナはその様子を見ながらも続ける。

 

「人が死ぬとか、生きてるとか、よくわかんなくて、バカで……でも……」

 

 左右のコートの裾を両手で握りながら、ネーナも同じように震え始めた。

 

「……おんなじように、あたしも家族がみんな死んで……それで、わかって……!!」

 

 言葉と同時にネーナの脳裏に浮かぶ、兄たちのいた瞬間と、失われた瞬間。

 俯いて涙を堪える。武器も持たなかった家族を皆殺しにしてしまった相手を訪ねて、先に泣き始めるなんて、何をしにきたのかわからないから。

 話を、ここに来た目的へと進めなければならない。それは……。

 

「だから……だからね。ケジメ、付けにきたの」

 

 くしゃくしゃの顔を正対させて、ネーナは懐に納めていたそれを取り出し、渡そうとする。

 ――――右掌に乗せられて渡そうとしているそれは、紛れもなく、人を殺すものだった。

 

……使って、いいから……

 

 この場で撃ってもいいから、と。

 ネーナが言わんとすることの意味は、ルイスにもすぐに伝わった。

 ルイスの左手が動く。

 あの時失われなかった左手が、右手の仇を取れと促す。

 愛する人の指輪がはまったその手が、銃へと伸びて――――。




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