ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる 作:トン川キン児
『モビルスーツ確認! モビルスーツ確認!』
「来たよ」
「……情報通りか」
王留美のエージェントが得た確定情報。人革連領・ゴビ砂漠にて、国連軍……実体としては人革連部隊によるとある秘密裏の演習が行われるというそれを基に、ユリウスとネーナとHAROの乗る、光学迷彩を展開したリィアンがポイントの観測を続けていた。
問題となるのは演習の内容。
使用されている兵器は、モビルスーツ。機体はティエレン高機動B型と、GN-X。
新型機と旧型機とのハイ・ロー・ミックスによる部隊の運用を図るための演習と見るのが自然である。高機動型がチョイスされているのは、恐らく一般的な地上型ではGN-Xの進行速度についていけず、高速ホバー走行の可能なタイプとしか部隊単位での行動ができない故だろう。
そして、ここで問題となるのはやはり……。
「擬似太陽炉の量産成功、ってわけね」
ソレスタルビーイングとの決戦において、当初観測できる限りでは三十機存在したGN-Xの殆どが破壊された。にも関わらず、この演習に参加しているであろう擬似太陽炉搭載型であるGN-Xは十数機を数える。
この事実が意味するところはただ一つ。三大国家は擬似太陽炉・GNドライヴ
そしてそれは同時に、ある別の可能性をも生み出す。
「……やはり、ラグランジュ3に来たのは……」
国連軍との決戦から半年。そして、ラグランジュ3において謎のガンダムが観測されてから3ヶ月。
そこには3ヶ月の開き。
擬似太陽炉がその時点で先行量産に成功していたとしても、地球に降下して様々な軍事活動を監視していたこの3ヶ月間、あのガンダム3機以外の擬似太陽炉の使用が地上において一切観測されなかったということが、降下前からスメラギ・李・ノリエガによって提唱されていたある説を補強した。
「あたしらを生贄扱いした奴らってこと?」
『ムカツクゼ! ムカツクゼ!』
「可能性は高いよな」
敵は国連軍ではなく、国連軍に技術が渡る以前から擬似太陽炉の運用が可能だった勢力。
それはつまり、ソレスタルビーイングの裏切り者。
トリニティを作り世論を扇動した上で切り捨て、パスレル・メイラントとあのモビルアーマーを差し向け、ヴェーダに対しハッキングを行うことができたと思われる何らかの組織。
……ユリウスだけは、恐らく
それにしても、まさか4機のガンダムのコピーなどという代物まで運用しているとは思わなかったが。
「そういう奴らのやることも、しばらくは黙って見てなきゃいけないんでしょ」
「……そうもなる」
「じれったいよね」
ネーナの言わんとするところは、ユリウスにも解る。
彼女の中には当然焦りがある。ともすれば一生自分の望みは、敵を討つことは果たされないのではないか、という焦りが。
ネーナには元々短絡的で堪え性のないところはあるし、そういう性格が一朝一夕に矯正されるわけはない。だから、上手く操縦してやらなければならないという所は承知していた。
「そういう奴らが未だに裏から世界を動かしてんなら、必ず歪みが出るさ。出番だって回る」
「……そう思う?」
「ネズミ一匹捕まらないマヌケが、力を付ける時間をくれてんだよ」
「フフン。そーとも言えるかぁ」
ネーナはこのように言い換えることを好む。うまくいけばこのように、ケロっといつもの小生意気な調子を取り戻す。
実態としては泳がされていると言っていい状態であることをユリウスは知っているし、現時点での可能性にもあることだが、それは心に留めておく。
「だから、きっちり鍛えろってんだよ。世ン中を見る目と、操縦」
「ねーぇ。そーいう説教臭いとこがおじさんなんだっての。機嫌取りきりなよ」
「あのな……」
『ウルセーヨ! ウルセーヨ!』
放っておくとサボりかねないから口酸っぱく言われるんだろうが、とそろそろ何度言ったのかわからない枕詞を付ける気力も失せて来たユリウス。
足元でバタバタと騒ぐHAROに対しても、どっちがだよと苛立ってくる。
ネーナ自身の過ちの原因ともなった歪んだ世界への視線に関しては、つぶさに見てそれを正すことをやれていると思える。
特区日本でのつかの間の1週間ほどの平和を享受していた際には、罪悪感を抱きながらもこういうものが戦争根絶の成った後の世界であり、目指すところなのだと理解していた。
それから擬似太陽炉搭載型を発見するために多くの紛争地を巡り、様々な現実を直に目の当たりにすることで、今の平和が犠牲の上に成り立っていることも身に染みて理解していると思える。
だが半年ほど付き合ってみれば嫌でもわかる。
この女は"努力"だの"忍耐"だの"根気よく"だとかの言葉とは本当に縁遠い。
「だって、新しいガンダムできるんじゃん。いいじゃんそれが強けりゃ」
「ガンダム3機だって俺に不覚を取るってことがあったんだろ」
「比較対象おかしーんじゃないの!?」
「敵討ちはどうすんだ」
「したいけどアンタにボコボコにされんのはイヤ!!」
以前に思った自分の考えも撤回せざるを得ない。いらぬ心配をせずとも……などというのは、このワガママっぷりを見てから言うべきであったと。
……とはいえ、なんとなく自分のやり方にも問題があったのだろうと最近になって気づいた。
ルイスへの告白から、ネーナの引き金を引く指はまた軽くなった。
軽くなった……と言うより、元々軽すぎたものが重くなりすぎ、それがようやく戦うために適切なバランスを取れたと言うべきか。
故に、当人の調子は戻っている。
戻らないのは自信だろう。
彼女のためをと思って手加減抜きを繰り返してきたが、どうやら本人の言う通りそれが嫌になってしまった様子である。
そうなれば、やりたくないことはやらないという彼女の性格が最悪な形で噛み合ってくる。
諦めさせたいというエゴ混じりのやり方が招いた結果ではあるが、ユリウスとしても半端な力でネーナを戦場に再び放り出したくはない。故に、自分の尻は自分で拭く。
「やる気次第でスイーツ行ってもいいけどな……」
「ハイハイ! そうこなくっちゃさ!」
『チョーシイーナ! チョーシイーナ!』
文字通りに、身銭を切って。
ロクに使っていない預金にそれなりに支払われている報酬と給与がある以上は、大した問題ではない。
歳と共にキツくなる一方の甘味に付き合わなければならないことも、胃腸の調子及び糖尿病へのリスクと引き換えに生き残れる確率を高められるなら悪くないトレードだろうと思えた。
・
・
・
「各地の生産ラインから予測された時期とほぼ一致……こうなるのも必然でしょうか」
「元から覚悟はしてたことだ」
太平洋上、留美の所有する無人島における会合。
今回人革連領で擬似太陽炉搭載型を発見する運びとなったのも、ひとえにこの少女、王留美の手腕によるものであった。
現状、実質的にソレスタルビーイングにおける地上での内偵活動を続けるエージェントを統括する立場となった留美は、彼女の持つ巨大な力である王商会、そのホームグラウンドである人革連領での影響力を遺憾なく発揮している。
AEUやユニオンでは必ずしもこうはいかない。人革連において余程の最高機密でもなければ彼女の耳に届かない事柄はほぼないと言ってもいい。
……残っているエージェントの7~8割方が王商会によってその活動における身元を保証されている人間、という事実を前に言えることがひとつ。
現状のソレスタルビーイングは、留美の私兵と言ってしまっても通る状態である。
「こちらからも報告を。次回の特別会についてですが、やはり多くの議員が統一に向けて注力していく方向で固まるものかと。計画の推移は順調と言えるでしょう」
「アレルヤとキュリオスの行方は……」
「やはりそちらはどうにも。最高機密となると手詰まり気味です」
その"ほぼない"事柄のうちの一つが、アレルヤとキュリオスの所在。
多くの国連大使に顔が利き、まだ開催されてすらいない国連特別総会の推移予測さえ聞き出せる彼女の諜報網をもってしても、それらを暴き出すことはできずにいる。
質に取ることも考えられるのだから、救出に必要な絶対条件は完全に所在を掴んだ上での確実な先制攻撃。それ以外では、動けない。
「それだけお金あってもどうにもならないわけ?」
「資金だけでどうにかなるのであれば、私もソレスタルビーイングに関わっていませんことよ」
瞳を閉じて気取ったように返す留美に対して、訊いたネーナは苛立ったような表情を隠さない。
言葉ではそう言う留美だが、実際の所、ユリウスは聞いている。
(……最近じゃあ本当だろうと思えてきてるよ……)
地球に降下する前に、スメラギから忠告のように聞かされた言葉。
『彼女は、やろうと思えば今から世界征服だって出来る子よ。私たちを他にすればね』
国連にまでその影響力を及ぼせるということは、今後発足する地球連邦政府すらもある程度自分の意のままに動かしていけるということとも同義である。
そしてヴェーダによる端末へのハッキングなどの情報収集による支援を完全なるゼロとしてすらも、速度を落としながらにソレスタルビーイングとしての諜報活動が可能となっているのは、全てにおいて世界一の絶大な資金力を背景にした王商会の、王留美の力あってのもの。
今の彼女が国連を動かしていくのでなく、ソレスタルビーイングを動かしているのは、彼女自身の極めて個人的な事情、気まぐれにすぎないということ。
故に、今は彼女を刺激すべきではない。それがスメラギからユリウスに刺された釘である。
(でも、そうもいかないんだよ)
彼女には変わって欲しい。少なくともあんな死に方はしないように。
それがユリウスの願いである。
「……先に戻ってていーい?」
「何でだ」
「居心地悪いしぃ。なんとなくさ?」
横目で留美を睨みつつ、そう言ってネーナは一足先にリィアンへと戻っていく。
この二人の関係に、芳しいと言えるところは何一つないと言っていいだろうとユリウスは思う。
かたや兄弟も存在意義も全て失い、それでも立ち上がろうと戦っている少女。
かたや家族も地位も全てを持っているはずなのに、それでも満足いかず戦おうとはしない少女。
見ているものが違いすぎるし、なんて贅沢な女だろうと思うのも当然である。
「飼い犬のしつけはうまくいってないようですね」
「…………あいつは人間だ。そういう言い方はやめてもらう」
「フフ。失礼」
当人の言うように"飼い犬"程度にしか思っていない人間の下で、本来なら嫌味を付けられつついいように様々使いっ走りをさせられていたのなら、それはネーナにとって耐え難い屈辱の年月だっただろう。
少なくとも、自分がしたことで今のネーナをそういう所から解放することはできている。明確に彼女にとって良くなったことだと考えたい。
眉間に皺を寄せつつ、そんな留美の言い様にユリウスが堪えていると。
「お嬢様……こちらもそろそろ
「ええ。存じてますよ」
紅龍が留美へと、次のスケジュールまで許された時間の終わりを伝える。
「表の話か」
「そんなところです。面子を保っておくのも楽ではないので」
そう嘯く留美を前にして、ユリウスは思う。
彼女は既に、
「……お嬢様」
「何かしら」
お互い歩きつつも一歩引いたその背から語りかけてくる紅龍に、留美は一切表情を変えることなく取り合う。
だが、次の話題にはその眉を顰めざるを得ない。
「このような行い……やめるべきです。彼らをいたずらに危険に晒すだけのことは」
その言葉に、思わず留美が立ち止まる。
「何を言い出すの?」
「貴女にとて危険が及びます」
「彼らも私を必要としている。そのような心配は……」
「必要とされなくなった時、彼らは貴女をどうしますか……!」
「商会の財力を不要とするとでも? 資金が無ければどんな組織も立ちゆきは」
「そんな理屈が通る相手だとお思いですか!?」
付き人として付き従い、己の行いを黙って見ているべき者であるはずの紅龍が今こうも食い下がってくる。
"彼ら"の目当てが自分ではなく自分の持つ力、価値にあるのだという事くらい理解している。利用し、利用されるだけのこと、それは駆け引きの範疇のこと。
よく理解しているはずのことを、まるでわかってないとでも言いたげにしてくる
「もうよせ、留美……!」
――――
「ここまで来て今更に言い出す。大したお兄様ですわね、貴方というお人は」
「言われても仕方のないことくらい、理解している!」
「なら、黙って見ていればいいじゃない。名を捨てたお兄様に、兄をやる資格もありはしない」
「…………ある!」
辛辣で突き放すような言葉を努めたにも関わらず、そう力強く返してみせた紅龍に留美はここで初めて面食らわされる。
「兄であろうとする者が兄だと、そう教えて頂いた。その通りだ……だから不格好でもなんでも、お前を止めたいんだ。死ぬ前に!!」
"兄貴をやろうとする奴が兄貴だ"。
"付き人よりも兄貴らしいことをあいつに言ってみせろ"。
ユリウスが紅龍に撒いた種は、本人も与り知らぬところで、確かに花開いていた。
「何を……」
留美には、信じられなかった。
目の前で両肩を掴んで、名も棄てたくせに、何もしてくれないくせに兄貴面をし始めたこの男が。
全てが灰色に見えているいつもの世界にさえ、怒りの色が満ち満ちてくるのが感じられた。
「何を、格好の良い事……言ってッ!!」
怒りに突き動かされて、咄嗟に紅龍を突き飛ばす留美。
感情の昂りと咄嗟に激しく身体を動かしたことで息を乱しつつ、次の罵声をその喉に込める。
「貴方がッ――――」
――――だが世界は、個々人の思惑とは別に状況を動かす。
『Eセンサーに反応!! 真っ直ぐこっちに来てるヤツがいる!! こんなん絶対敵!!』
リィアンからの警告音と同時に、搭乗するネーナの雑な状況報告が近辺に響き渡る。
当然、ここで揉めている兄妹喧嘩など全てかき消す。
「……なんで……交戦はもっと先の海域じゃ……」
その正体に、留美は心当りがある。
だがそれは、少し先の時間に現れるはずの敵。目的が変わっていないのであれば、ここには間違っても攻撃を仕掛けないはずの敵。
……しかし、状況は全く異なる現状を示している。
呆然とする留美を現実に引き戻すかのように、使者がやってくる。
「お嬢さん方! こっちに乗れ!」
ユリウス・レイヴォネンが、駆け寄ってくる。
「……わ、わたくしの船が」
「あんなんで今から出ていくつもりか!? 撃ち落とされるぞ! あっちの方が遠いだろ」
現状を生き残るならベストな提案を、ユリウスは提示している。
敵の発見がここまで遅れたのは相手が擬似太陽炉搭載型であるからに他ならない。そうなれば真っすぐにここを目指している以上、最早戦闘距離に入るのは時間の問題である。
プライベートジェット程度の推力で振り切れるような相手でもない。GNフィールドを有し戦闘にも堪えうるリィアンへと緊急避難すべき。それが、命を守る最善の択。
……だが留美が知り得ている情報において、あれは
必然的に戦いに巻き込まれる。そんなものに乗らなければならない。
死の恐怖が、迷いを引き出す。
「――――お嬢様! 行きます!」
「なっ、何を――――」
先程までいがみあっていたはずの
妹の命を守るのであれば迷っている時間などない。その一点においてブレがないからこそ、先に判断し行動した。
そんな二人をよそに、コントロールルームへと辿り着いたユリウスがすぐさま状況をネーナから聞き出そうとする。
彼女がリィアンに先んじて戻っていたのは幸運だったと言える。その点を褒めてもやりたいがそれは後回しとした。
「敵は……1機か」
「…………」
「……おい。どうした、何が――――」
Eセンサーへの反応を示すのはたった1機のみ。であれば、擬似太陽炉搭載型と言えども叩くこととて視野に入る数である。
しかし、モニターを見て絶句するネーナを見て自分もそれを注視すれば、言葉を失った。
「……ネフィリムだよね、アレ……」
「――――ああ……赤い、な……」
ネーナが先んじて最大望遠の画像を拡大表示していたモニターには。
深紅に染まった高速巡航形態のネフィリムが、確かにそこに映っていた。
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