ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる 作:トン川キン児
「既定のルートは向こうにバレてるとなると……」
「大きく迂回する必要がありますわね」
誰のせいだと思ってるんだか、とでも言いたげにネーナは留美を見やる。
状況がいったん落ち着き、セレベス海中を進む船内の4人はユリウスの主導でブリーフィングを行っている。
地球上には敵の、イノベイターとやらの監視の目が多すぎる。擬似太陽炉搭載型の運用を確認するという任務は達成できた今、無茶を打つ必要もない。ここは一度ラグランジュ3へと帰還するのが最善の策。
スローネドライの擬似太陽炉の粒子残量は脱出のためにトランザムを使いガス欠状態。GN粒子を生成するための電力は常に減り続けており、ネフィリムの方とて戦闘行動で多少の粒子を消費した。この消耗も考えれば、尚更撤退は必要。
だが大気圏脱出のために万全を期すには、一度トランザムを使用する必要がある。しかしネフィリムのトランザムを使用すれば、残りは本体稼働のための僅かな貯蔵粒子のみとなる。
それを使いリィアンでラグランジュ3へ到達しようとすると、中途で何らかの不確定要素に遭遇すれば即座に漂流するスペースデブリとなろう。
この状態のまま宇宙へ上がり、ラグランジュ3への帰還を目指すにはあまりにも心許ない。地球上で補給を行い、ネフィリム・スローネドライ両機の粒子残量をフルチャージの状態にすべきである。
とはいえ追われる身の現在、留美のホームグラウンドである人革連領に向かって補給を受けるのは難しいと判断を下した。留美がイノベイターへとリークしたのは、あの無人島という合流ポイントではなく、その後の予測進路だったが故である。
当初の予定では所有の無人島にて留美へと秘密裏に会合し擬似太陽炉搭載型の確認を行った後、人革連領のいわゆる中国大陸にて再び短い補給を行い一度ラグランジュ3へと帰還。そういう手筈であったはずが、そのルートを読まれているとなれば同じ航路は使えない。
そうなればどこで補給をするか。主題はそこであった。
「提案があります。私の手が回る場所を鑑みて……」
「アンタの提案で大丈夫だっての? 裏切り者」
「……信じてもらえねば話が進みませんわね?」
「ふン」
……言い分尤もとは言えるが、この場でいちいち蒸し返してもしょうがないことを言い出すネーナもネーナであるし、留美も留美で顔をしかめながらもう少し悪びれて欲しいものである、と思うユリウス。
先の揉め方で、この二人の間の仲は元々悪いと言っていいものがさらに悪化した。
ネーナの出自を鑑みれば先の言い様はとても許しがたい物だと思うし、自分の肉親をあれほどぞんざいに扱えてしまうというのも理解できないだろう。しかし、最悪に噛み合った口と意地の悪さがその謝罪すら拒絶したのが非常にまずかった。
『くせーんだよ喋んなヒス女』だとか。その他もあまりにひどいので思い出したくない。
なけなしの罪悪感と誠意を振り絞った謝罪が拒絶された留美の方も、プライドの高い性格が災いしてそれをとてつもない屈辱、そうした負い目を超えるほどの仕打ちに感じたのか、以降はネーナだけに対してはあまり負い目というのも感じさせない様に振る舞った。
『ああわかりました、謝罪は不要ですか』とか。キレ気味でとても謝る側の態度ではない。
(言い聞かせてやってこれか……?)
(……お恥ずかしながら……)
(ワガママお嬢様よぉ……)
隣の紅龍に耳打ちしたところ、今打てる手を尽くしてもこれがいっぱいいっぱいである様子だった。
以降もこのような調子で動き続けられると非常にこちらとしても扱いづらい。どこかで修正できないものかと思っても、訊いてみればネーナもこれに関しては譲れないとの一点張り。
同じティーンエイジャーの女子同士こういうところまで似通わなくていいだろ、とユリウスが毒づくのもさもありなんという所であった。
「やはり西に出ましょう。インドシナの空白地帯の基地を使えば、補給を行い帰還できるかと」
「……露見を免れている基地を除けてるのか?」
「把握している限り確実なのが2ヶ所、未確定の場所が4ヶ所です」
政治的空白地帯の多い地域は必然的に国家による監視の目も薄く、それ故にソレスタルビーイングも秘密裏に基地を建造することができた。
その代表的な場所は空白地帯の多い中東・アフリカ近辺であるものの、多くの国境問題を抱え未だ数々の国で政情不安が続く人革連領インドシナ半島近辺、旧世紀から続く民族紛争の決着の目が未だ見えないAEU領東欧圏、軌道エレベーター「タワー」付近を除けば単純にあまりにも劣悪なインフラで広大な無人地域が広がるユニオン領アマゾン熱帯雨林地域なども挙げられる。
管理者たちが所有
――尤も、これまでの主要な実働部隊であるチームプトレマイオスのガンダムはオリジナルの太陽炉を有し粒子供給を自前で賄えるがために、隠密性をさらに重視してそのような場所で補給を行うことはほぼなかったが――。
「G-5か、C-14……」
「なんにしても、イノベイターってのはヴェーダ使えんだからモタモタやってらんないでしょ?」
『ジカンネーナ! ジカンネーナ!』
ネーナの言う事も同様に確かである。次もあの紅いネフィリムが狙ってくるのか、はたまたラグランジュ3のように別の機体が狙ってくるのかは知れないことだが、ヴェーダがある以上はたとえ一時的にでも基地の機能を回復した時点で敵はこちらの動きに気づく。
向こうとてルートの変更は織り込み済みでこちらを追うはず。最速で補給を済ませ、最速で離脱する。これ以外に方法はない。
「C-14でいく。時間をやるだけの遠回りはできない」
「貴方の判断を信じます」
……ユリウスとしても、この判断が最善であったと後に誇れる結果になって欲しいものだと思えた。
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国連軍によるソレスタルビーイング及びガンダム掃討作戦・フォーリンエンジェルスの成功が大々的に世界へと発信された直後、世界各地では、天上人からの抑圧から解放された反動かのように紛争地域での戦争・テロが再び動き出した。
先の作戦において国連軍は供与されたGN-X30機のうちのほとんどを喪失し、これまでの対ガンダム戦においても三大国家群は各戦線を支えていたエース級のパイロットや指揮官、MSをはじめとした通常兵器を大量に喪失している。
当然ながらソレスタルビーイングはテロ組織に対しても武力介入を行っており、これらを壊滅に近い状態まで追い込んだケースも相当量ある。しかしながら、活動後期に主立って武力介入を行っていたチームトリニティはほぼ正規軍ないし民間人を標的としていたこともあり、リアルIRAのように活動停止で行方をくらましたグループ等の、テロの芽は未だ世界各地に燻ぶったままであった。
三大国家群としても当然この反動を予測していなかったわけではない。しかし、その抑制を脇に置いてもソレスタルビーイング壊滅は最も優先されるべき目標であったというだけだ。
即ち。
現状の三大国家には、同時多発的なこの紛争再開に対して対テロ戦争の全てを十分に遂行できるだけの能力が失われていた。
「そのツケがこれかよ……」
リィアンの外壁部迷彩被膜を展開しながらの索敵の結果として目の前のモニターに映し出された新しい問題に、顔を手で覆ってがっくりとうなだれるユリウス。
目標であるインドシナ半島のC-14基地。その周辺には、いかなる偶然でそこに駐留することと相成ったのか、ファントンとヘリオンなどで構成されたテロリスト軍が展開していたのである。
「擬似太陽炉搭載型の展開が少し早ければ、このようなことにならなかったのでしょうが……」
「頑張っといて欲しいもんだったな……」
実際の所、そうした反抗勢力となる存在は国連軍によるGNドライヴ[T]の量産化が着実に進み、量産機となったガンダムが各国に配備され作戦行動に参加するようになれば圧倒的な性能差によって着実に掃討されていき、世界は統一に向けて順調な歩みを進めていく。
言うなれば現在の状況は、単なる過渡期にすぎない。
……そういうものだと頭ではわかっていながら、しかし紅龍が言うように、これほどまでに間の悪いところでその過渡期の弊害を味わおうとは思ってもみなかった。
「機体のマークから分離主義派であるRFOと断定。活動を再開していたようですね」
「どーすんのこれ」
「やるだろ、そりゃあさ……」
「……ま、そらそーよね、悪いけど。ステルスフィールドは?」
「粒子は節約したい。俺が手早く済ませる」
「らーじゃ」
大型の目標は計6機だが、どれも型落ちの通常MS。GNドライヴを持つMSが負ける道理はない。
相手の目を盗んで、などとやっている時間も惜しい。現在の状態でも容易に排除可能な障害である以上、始末して進行してしまうのが生き残るための最も良い選択となるだろう。
スローネドライのステルスフィールドによるジャミングも、大量に粒子を放出する以上はその後が怖い上に、そもそも特段必要としない。あの程度ならネフィリム単機でも1分ほどで済ませられるとユリウスは踏んだ。
「出る。ここと基地のことは頼むぞ」
「はいーいってらー」
背を向けてネフィリムへと向かうユリウスと、操縦席に腰かけモニターから目を離さずひらひらと手を振るネーナを尻目に……。
「…………っ」
留美は、ユリウスを追いかけた。
「お待ちになって」
「……はい?」
コントロールルームの扉が閉まる音を見計らって、ユリウスを呼び止める留美。
……今度のそれは、死刑宣告のような暗いものではなく、革新した新しい人生の門出のようにも留美は感じられた。
「な……何の用事? 俺は出るって」
「貴方は……戦いを思い知らせると言いながら、一番大事なことは教えていないのではなくて?」
ユリウス・レイヴォネンは戦士である。だから、留美の言わんとするところは解る。
しかし、それは……。
「あれだけのことを教えておいて、素知らぬ顔をしようだなんて。通りませんわ」
「……その意味……わかって言ってるのか」
「私がそれほど愚かな女に見えますか?」
そうは言わない。だがそれは、それだけは、知ってしまえば後戻りのできないことである。
それだけに、真っすぐ濁りのない、決然とした眼でこちらを見る留美が直視できず、ユリウスは無意識に視線を逸らし誤魔化そうとしてしまう。
「もう一度、乗せてください。その機体に」
「駄目だ!」
留美の申し出は、しかしその兄である紅龍に遮られる。ここまで気配を見せずにこの場所に現れるのは流石達人と言うべきなのか。
「……そこまではさせられない……! なぜそこまでする必要がある!」
「私が必要だからよ、お兄様」
紅龍が訴え、留美が諭す。
半日しか経っていないというのに、朝の間とはまるで真逆のことがここで起きている。
超然とした妹と狼狽える兄。これだけを見ればどちらが上のきょうだいであるのかわかったものでもない。
留美は今度こそ、揺さぶられることも、自分の考えを曲げることはない。たとえそれが兄の言葉であっても。
「私の考えは変わった。私には覚悟がなかった、ないままに突き進んだから歪んでいた。気づかせてくれたし、気づいてしまえば、もうそれを放ってはおけないのです」
「妹が人殺しになるのを、黙って見てろと……!」
「……当主としても、エージェントとしても、立場で何人殺したとお思いで?」
「手にかけることとは違う!」
「違わない。むしろ遅すぎるくらい……どのみち、テロ組織の支援者。とっくに後戻りできないところにいるのに、気づいてなかっただけのことでしょう」
「……それは……!」
王留美は天才である。世界を手中に収められるほどの資産を有する王商会を治める王一族がその心血を注いで作り上げた、当主となるべき才覚の結晶である。
故に、その心の歪みを生み出した迷宮を抜けてしまえば全てがわかってしまう。
半日とかからないあまりにも早すぎるこれまでの自己への分析と、彼女を当主たらしめた行動力で、今まで何をしてしまっていたか、これから自分は欲するそれを得るために何を選ぶか、何をすべきか。
「お兄様に甘えすぎていたわ」
「え……?」
「そばに居続ける決意を利用して、お父様が死んで行き場のない鬱屈をぶつける先にしていた。なのに、それを受け入れてついてきてくれた。だから甘えていたと言うの」
「……それが……兄としての務めだ……」
「私はひとりで立ちたい。もう終わりにしたい。自分の求める物に言い訳はしたくないの」
そして、目の前の兄をこの場で堕とすためにどんな言葉をかけたらよいか。
……
今ここに至って、ようやくそれは正しい忠言であったのだと思い知った。
自分の望みとは。自分が世界に求める何かとは。
それを、ハッキリさせるために……。
「私は引き金を引くわ。自分の決意のために」
決然と言い切ってみせるその姿に、紅龍は気圧される。
今までの自分の行いを顧みて、それでもそう言い切るその姿は、今までのあどけない少女の面影を残す姿と打って変わってあまりにも"御当主"となり切っていたから。
……半日前まであれほど強く妹を引き留めることができていた紅龍。しかし、今まで見ていた妹とは別の誰かに変わったような、あるいは、己の畏れた
あの一瞬でさえ、持てる力を振り絞ったつもりだったのだから。
「途中で手をほどくなんて、私に恥をかかせる気?」
「…………」
「エスコートは最後まで。社交界の常識ですわ、マグナス・アルハンゲル」
「……お」
「それとも今はユリウス・レイヴォネン? どちらでも構いませんことよ」
乗降用のタラップから様子を伺っていたところに、いざこちらに歩み寄られて言葉を交わしてみれば、ユリウスもその例外ではなかった。
明らかに何かが違う。たった半日経っただけだというのに、なぜこうまでこの少女から風格のようなものさえも感じられるのか、理解できなかった。
目の前に立つ少女の言葉に、途切れた間抜けな声を漏らすだけになるなどというのも、大の男二人が揃って黙らされるのも初めての体験である。
……だが、いずれにせよ。
ユリウスは感じている。彼女は迷走の果てに全てを捧げて命までも散らす、あの哀れな女とは違う何かになろうとしているのだ、と。
自分の願いは、あれとは違うどこか、彼女にとってより良いどこかへと彼女を導いてやること。
ならば……引き金を引いた果てに、彼女が納得できる終着が在るというのなら。
「……もう殺しているなら、手を使おうが使うまいが同じことだって考えか?」
「同じ命など、ひとつとしてありませんでしょう?」
「……そうか。わかったよ」
最後の確認を終えたユリウスは、操縦席へと先に着き、留美の手を引いて誘う。
誰かが見れば、それは"暴力を生み出す卑劣な儀式"だと云うかもしれない。
それでもユリウスは手を伸ばし、留美はその手を取った……。
・
・
・
上空からGN粒子が散布されはじめれば、旧世代型のMSに搭載されているような通常の無線通信はすべて不通となる。
それを受けて慌ただしく周囲を警戒するヘリオンのうちの1機を、ネフィリムの照準は既に捉えている。
あとは、撃つだけで決まる。
問題は、その引き金を誰が引くのか。
「…………はー…………っ」
後部座席に座る留美が大きく緊張の息を吐く。
目の前のモニターにはガンサイトが表示されている。射撃管制が後席に移譲されている証左である。
その手は既に操縦桿へとかかり、その指は既にトリガーへとかかる。
「…………」
その様を、ユリウスは黙って見届けている。……見届けるといっても前席が故に表情も様子も窺い知ることはできないが、その息遣いだけで伝わっている。
"大丈夫か"に、"本当にいいのか"など、既にここまで来た彼女を惑わせるだけの言葉に過ぎないと思わされて、口にすることはできなかった。
1分で済ませると考え、手早く済ませると言っておきながら、既に数分を経過していることはネーナにいろいろと言われそうだとは考えている。責任は当然後で留美になすりつけるが。
「…………ふー、っ」
何度目かわからないほど深く吐いたその息がノーマルスーツのバイザーに当たって、留美の心中は、ついにクリアになり始める。
指先にかかる、遠く固く感じたトリガーがすぐ近くへと引き戻される。
その手をもう一切、震えさせることなく。
「っ!」
引き金は、引かれて。
GNロングライフルの粒子ビームは、真っすぐに進んでヘリオンの機関部を頭頂部から完全に貫通して、爆炎に包みばらばらに吹き飛ばした。
「…………!!」
遅れて周囲の敵はMS越しでも狼狽が伝わるほど、ばらばらの方向をそれぞれ向こうとする。誰もいない密林の方向へ射撃を試みようとするアンフもいれば、飛び立とうとするヘリオンもいる。
否応なく留美は自覚する。
自分は今まさに、殺人をやってみせた。
自分は今この瞬間から、殺人者の名を享けるにふさわしい人間となった。
引き金を引いた自分。
得体のしれない脅威にもがく敵。
そこに、留美が感じたのは、見出したのは――――。
「…………ッ……! あ……!」
(――――私が欲しかったのは……これだ……ッ!!)
――――紛れもない、悦びであった。
ユリウスから先んじて留美は聞いている。飛び立たれたら面倒なヘリオンから潰せ、と。
指示を遂行する。即座に隣でスラスターを吹かそうとしている3機のヘリオンへと照準を移し、1、2、3射のビームを撃つ。
その全てが吸い込まれるように命中し、兵器を爆ぜた鉄クズへと変える。
爆炎が夜闇の密林を照らすたびに、留美の世界に暖かい光が刺して色付いていく。
夜はこれほど心を惹き付けるものだったろうか。星々はこれほど明るかっただろうか。
木々はこれほど力強かったろうか。枝葉はこれほど生き生きと茂っていただろうか。
眼下のファントンが射角のままならぬ上空に向けて、懸命に砲火を打ち上げるその火が通りすぎるたびに感じられる。
戦うことは、生きることは、己の力の限りもがきあがくこととはこれほど美しかっただろうか。
この真実に比べれば、見せかけの美しさを求めることなど、愚かな遠回りにすぎない。
霧のように留美を覆っていた灰色の世界は、霧のように散っていった。
私の求めていたものとは、自分自身で戦うこと。生き残ること。
戦うからこそ、生きることを実感できる。
戦うからこそ、人は美しい。
その戦いを看取るのが私であれば、なお喜ばしい。
戦い、生き残り、勝ち得るからこそ見られる美しい世界。
空も海も木々も、美しく映るこれを皆に見て欲しい。
今新しく、自らの変革を遂げた彼女を迎えるのは……。
「……ふ……ふふっ……ふふふッ……!!」
「……ど、どうした。キツいのか」
「ち……違います。最後まで……やります」
気づけなかった色彩に彩られた、何もかもが新しく輝いて映る世界だった。
ビームが貫いて爆ぜる4機のファントンが、花火となって留美の世界の新生を祝った。
「……済んだな」
「……はあ……。ええ、済みましたわね」
「……射撃、嫌に正確だが。教えられてたのか」
「帝王学の賜物のひとつでして」
「……そう、か」
何か嫌な感じがする。そうユリウスの直感が告げる。
だがまだ、ユリウスには気づけなかった。
蛹が破れて、美しくもとても不気味な羽模様を広げた蝶に。
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