ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる 作:トン川キン児
「……イノベイター……実験……」
提出された報告文をデスクのモニターで眺める
プロポーズも束の間、
持ち帰った副産物としての情報が、中々に衝撃的だったということもあってのことである。ともすれば今後の方針をも定めかねないほどに。
「トリニティだのパシーだのをけしかけたのも、ラグランジュ3のガンダムも奴らだと思うか?」
「確定でいいわね。国連軍の他に太陽炉を保有する組織が他に考えられない」
「ソレスタルビーイング同士で内紛か……」
「これまでも似たようなものだけど」
イノベイター、と名乗る組織の存在。それが、非常に大きな収穫であった。
スメラギがいることでこれまでに起こった事象の凡そを彼らの思惑と早い段階から断定することができ、それが次への対応へと繋がっていく。
「最優先目標はこれで決まったわ」
「ヴェーダの奪還、か」
「流石ね。同組織の戦力をできる限り推定し、こちらもそれに対抗出来得る戦力を整えヴェーダを奪還、計画をこちらの主導に戻す」
「あっちが計画を正しく遂行しているとしてもか?」
「私たちと明確に敵対する行動を取った以上、こちらだって彼らから自衛しなければいけないわ。計画の第一目標、紛争の根絶に則ってね……」
「課題は山積みだな」
「敵とヴェーダの所在、推定戦力、ヴェーダを使い彼らが何をしているか、国連の動向、こちらの戦闘準備の加速、フェレシュテとの合流……ま、そりゃそうよね」
……最近の彼女の頭の冴えは、いつにも増してではないかとユリウスは思う。
迷いだとか恐れだとか、そういう類のものがほとんど感じられなくなった。
もしそれが自分の影響だとしたら、うまく言葉にはできないがそれは自分としても嬉しいことだ……と、心の中でユリウスはしみじみと思った。
……それはそれとして。マグナスとしては戦術予報士・スメラギに判断を仰ぐべきことが二点。
「今回の向こうの狙いがなんだったのかと、王留美。訊いていいか」
留美によれば、先の交戦の目的は"実験"。
彼らイノベイターは、あの交戦において何を"実験"したかったのか。
そしてその"イノベイター"と接触し、あろうことかこちらを売り渡すような約束まで交わし実際に行動へ移す暴挙へと出た、王留美への対応。
……スメラギはまず、前者の話から切り出した。
「まず前者。一度に複数の命題を実験できるとしたら、そうするのが合理的じゃないかしら」
「……具体的には?」
「私たちがヴェーダから切り離されるまでは一度も為されなかった、GNドライヴを接続した状態のネフィリムの性能実験。イノベイター勢力によるその運用がどれほど有効的かの実験。それと……」
スメラギは、
「一番は、貴方なんじゃないと思う」
「お、俺が……?」
予想外の方向から来たその回答に、ユリウスは困惑する。
「誰でも自分の持ち得ない物を欲するものよ。イノベイターは恐らく、ヴェーダが持ち得ない情報を欲しいと考える」
それを聞けば、ますますそこに自分が引っかかる要素がないのでは……と考えるユリウス。
自分のパーソナルデータは、今でこそ恐らくガンダムマイスター候補として引き出されなくなったとしても記録という形では残っているはず。
「モレノ医師がこの間の定期検査で見つけてくれてね。貴方には、私たちがヴェーダと切り離されてから明確に違う数値が出た脳波帯……というより、初めて数値が開示されたと言うべきかしら。それがあった」
……初耳である。
そして、そう言うのであれば自分には心当たりが確かにある。
「X領域って、聞いたことある?」
「……いや。脳とか詳しくないし」
「私もないけど。まあ、自覚あるんでしょ? 変な能力の」
「それは、まあ。あるんだよな」
いい加減に、自覚がないなどととぼけることも難しい。自分には、常人には持ち得ない能力が備わっており、それを有効的に活用することもできる。
危険の先読み、相手の思考をある程度読むこと。エスパーじみたその力は、しかしオカルトの類などでもなく確かに自らの内に存在している。
スメラギから見ても、それは
「先生はそれについて、"大した働きはないと解明されているにも関わらず、言葉の響きから疑似科学によく使われるような領域で、誰も真面目に扱おうとはしないタブーに近い場所"と言ってたけど」
「あの人がそんなボロクソ言うのも珍しいな」
「真偽はともかく重要なのはヴェーダがこれを改竄するだけでなく、
「……存在しないように扱われてた、ってことか……?」
「レベル5から7までのアクセスは拒否される前提でティエリアにもロックオンにも見てもらったけど、該当する詳細データがそもそも探しようがない、存在しないの。X領域に関しては全て」
高レベルへのアクセスは全て拒否されるとしても、ガンダムマイスターやその候補は今でもヴェーダにアクセス可能な端末を使用すること自体は可能である。なぜならば、内部処理的にガンダムマイスターらの情報は存在しないこととなっており、存在しなければ干渉もできない。ヴェーダにアクセスしても位置を特定されることはないからだ。
人類がこれまでネットワークに貯め込んだ全ての情報を収集しているヴェーダに知り得ぬ情報はなく、そこにない情報は例外処理として
ここまで来ればユリウスにも察しは付く。だとするならば、それは……。
「……ガンダムマイスターに、トランザムやツインドライヴと同列に並べるほど……」
「あなたの能力は、重要視されている」
……そしてそれは、ヴェーダを掌握した者にすら知り得ない情報である。
「……何がそこまで重要なんだ……」
「さあ。でもそこはおいおい調べるとして、彼らもこれを知り得ないとしたら」
「実験には値する、だろうな……」
こんな
だが、そうだとしても、ユリウスには疑問の余地が残る。
わざわざ自分を使い実験をしなくても良くなるような存在が、向こうにはいるはずなのだから。
「でもパスレルは……パシーは俺と同じ力を持ってるはずなのに」
「報告にもあったわね。確証はないけど、実験相手だったって」
パスレル・メイラント。恐らくはイノベイター側に与したであろう、
彼女にも同じようなX領域の能力が存在しているとすれば、面倒を起こさなくてもそれを実験してゆけばいいだけのこと、そうユリウスは示唆する。
「そこまではわからない。でも、私たちもあなたを調べていけばその理由もわかるかもしれない」
……スメラギはそれはわからないと言う。しかし、ユリウスにはその欠片ほどはわかるかもしれない、と思った。
敵味方と関係なく、パスレルと戦う時に感じる能力が拡大するような感覚。もしかすればあれを試したかったのかもしれない。だが、確証はない。故に口に出せなかった。
「……アレかな、じゃあ。俺、これからはモルモットみたいな感じで」
「やめてよ、指輪よこしといて! 絶対させないから」
冗談めかしてユリウスがそう言ってみれば、割と真剣にスメラギはそう否定する。
「データの収集は、あなたに負担ないようにって言ってあるから。貴重な戦力なのよ?」
「そ、そりゃそうだな」
「あのね。妊婦さんに身体労わられるって、普通逆でしょ」
「……ホントだよな」
これ以上情けないパパをやるわけにもいかないとは思うが、どうもこうなってからは自分の立場が弱く感じる。結婚が人生の墓場、と云われる所以なのだろうかとユリウスは思う。
「あなたのことは、先生は"Xラウンダー"って呼んだわ。
「X……エックスねえ……」
X。例外や未知数を表す、謎めいたものに使われるその文字。
ユリウスにはどうも、それが胡散臭く感じられた。"ミスターX"だとか、そんなあからさまに怪しい仮名など今時誰でも使わないだろうなどと思い……。
「とりあえず、この話はここまで。私たちのスポンサー様の話をしましょうか」
……本題であると言っていいかもしれない話が為される。
「……どうする?」
「どうするって。別にどうもしないけど」
「それだと示しがつかない」
「だってどうにもできないもの。お財布握られちゃってるわけだから」
……結局のところ、そこがボトルネックである。
現状のソレスタルビーイングから王留美という存在が抜けてしまえば、全てにおいて立ち行かなくなってくる。世界の血管に流れるのは、血ではなく金であるが故に。
だからこそ強く出られない。強硬な姿勢を取ろうものなら、彼女はスポンサーとしての離脱をちらつかせるようなこともし得る人間であるし、そういう負の信頼もある。
かと言って今回のことは、スポンサーの
このジレンマに対して、スメラギは肩をすくめてお手上げといった様子でそう言い放つ。
やはりそういうことになるのだろうか、とユリウスは思ったが、次の言葉ですぐさまそれを改めざるを得なくなる。
「だから、切るタイミングを測ることにするわ。彼女たちを排除しても問題のないタイミングね?」
……スメラギの心中は、思っていたよりずっと穏やかではなかった。
「最後に回りそうなあなたの機体の完成の目途が立ったあたりがいいと思う。少なくともガンダムの建造完了は必須で、それ以外の要因を考えるなら2番目は……」
こちらに背を向けてデスクと向き合いまくしたてるように言い切る様は、どう見てもいつもとは異なる何かがそこに籠っているのがユリウスにも見てとれる。と言うより、感じる。
渦巻いている、その情念とは……。
「……お、怒ってる……?」
「当たり前でしょ?」
半身だけをこちらに向けて振り向いたスメラギの表情は、怒りで引きつっている。
初めて聞くような、低く響くドスの利いた声に、ユリウスは
「今すぐにだって思い知らせてあげたいのよ。この子からパパ取り上げるような真似するつもりだってんなら、こっちだって出るトコ出て、色々考えなきゃならないわよね?」
「……お、俺も、あいつには色々と思い知らせたつもりではある、けど……」
「はッ。さてどうだか」
そう吐き捨てるようなリーサに、ユリウスは気圧されっぱなしで絶句するままである。
リーサ・クジョウという人物を長年見てきたユリウスにはわかる。彼女は他人と積極的に対峙しようとするようなことはできないわけではないが、根本的に向いていないし、好いてもいない。
凡そ"大人しい"方と言ってしまってもいい。これまでの人生経験によって多少スレてガサツさは身に付いているが、それでもその根っこは変わらない。
そんな彼女を、ここまで駆り立てるものがある。
子を守る母親の本能というのは、聞きしに勝るいっとうの激しさを持つものだと、ユリウスは今はじめて実感した。
「まあ、なんというか、始末つけさせたくないんなら面倒見て。凡そ考えわかるんでしょ?」
「……ああ。わかってるさ」
「そのためにあの子につけてるんだから」
腕を組み足を組み、考えを変えるつもりはないと全身で主張するスメラギ。
強い感情を放つ思考の表層をなぞるくらいであれば、こういう平時にでも感じられるほど自分の能力は、X領域からもたらされる力は拡がっている。
言葉の真偽くらいは感じられる。反省の意を示した留美の言葉に、嘘はなかった……と思える。
これから良くなっていく余地は十分にある、と信じたいユリウスであった。
「最後は一番重要なこと。私としてもね」
「何だ?」
「……アレに、次遭ったら勝てる?」
少し間を置いてから出た、スメラギの重い声。
示さんとしていることはユリウスにはわかる。その心配の程もよくわかる。
紅いネフィリムとの交戦、その内容は芳しくなかった。だからこそ、誤魔化しはなしできっぱりと答えた。
「無理だ」
「……ハッキリ言ってくれるわね」
「同じ条件でアレとやり合ったら、間違いなく俺は死ぬ。何度やっても同じだと思う」
「……わかった。私もその辺りは把握してるから、相談も済ませてる」
これに関して、ユリウスは自分が情けないとは思わない。
どうしても助けが必要な相手になる。スメラギにも、多くの仲間にも。
「おやっさんの所に行ってきて。スペックアップの話をしてくれるから」
自分の妻となる彼女は、その辺りも織り込み済みで本当によく出来た様子だった。
・
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・
「あ、それとさ……」
「なぁに?」
「体型、変わっちゃってるから。余裕あるとは思うけど、暇できたらドレス合わせにいってもらえるか」
「……へえ……用意、いいじゃない?
・
・
・
「あれ? 先生までいるとは聞いてないすけど」
「ついでなんでな。3ヶ月ぶんの研究も聞いてもらう」
格納庫を一望できるモニタールームに向かえば、そこにいたのはイアンとリンダだけでなく、モレノ医師もであった。最近は世話になりっぱなしの人間でもある。
"研究"と言うからには、先程スメラギから聞かされた情報を鑑みると、やはり……。
「俺の頭のことですか」
「かわいそうに……やっぱ頭おかしくなっちゃってたんだ」
「しばくぞお前……」
余計なちゃちゃ入れが聞こえることからわかるように、ネーナも同伴である。
ネフィリムと同様にスローネドライの方にもオプションの構想があるらしく、どうもそちらの方は何が出てくるのか想像が付く気がするユリウスである。
「まあそうだ。あの領域による脳波係数が高まるとどうなるかという予測だが」
「はあ……」
「他のパターンと見比べて思った、X領域による脳波は……具体的にはアレルヤにティエリアにそこのお嬢ちゃんのような、脳量子波レベルが高い人間の脳波域、あるいは量子波そのものに干渉する傾向があると言える。実測がまだなんで言い切れんが」
「こいつあたしの邪魔者ってコト?」
脳量子波への干渉を、可能にする脳波。
自分にそんなものが備わっていた。同時に、それはX領域を開いた者に共通する能力であるとしたら、パスレルも同じようにその力を持つ。
「逆かもしれん。地球上でお嬢ちゃんのヴェーダへのリンク能力を試したと言っていたが、それをやって位置を特定されなかったのはマグナスの力のおかげかも。というより、その可能性の方が高い」
「……具体的に、どの程度まで干渉ができると?」
「レベルは様々だろうが、ちょっとした撹乱から完全なる遮断までコントロールすることも可能だとは思うがな。ある程度の能力を持つ人間なら、好きな波長帯だけを遮断するなんて芸当も不可能ではないのかもしれん」
そこが、パスレルに対して感じていた違和感なのかもしれないとユリウスは思う。
あの女は、イノベイドであるにも関わらず勝手気ままに動けすぎる。まるで生みの親のヴェーダなど気にも留めていないような動きばかりを見せる。
もしヴェーダとのリンクを自分の都合で切ったり付けたりできる、例えるならヴェーダ中に存在しているようでしていない、今のガンダムマイスターのような挙動が可能なのだとしたらそこに説明が付く。
Xラウンダーに
(……そんな奴が増えてったら、世ン中どうなっちまうってんだ……!?)
先の交戦を"実験"と称するのであれば、イノベイターたちはX領域の活性化を目論んでいることには間違いない。
とても恐ろしい想像である。そのようなイノベイドを次々と増やすことを相手が目論んでいて、この世界に順繰りに解き放たれていけば、一体何が起こるか予想もつかない。
……既に個人の因縁がどうとかの問題ではない。手遅れかもしれないが、次に
「ソフトの話はこのくらいにしておく。どうもまだデータが足りんしな」
「次はハードの話ってわけだ。なぁ、
そう言ってモレノ医師は引っ込んでいき、いやらしくニヤニヤしていてあまり長い間話をしたくない雰囲気の義弟が肘で胸板をつつきながら歩み出てくる。
「これでアレだな。
「嫌すぎるんだけど……」
「カス同士お似合いじゃない?」
凄まじい切れ味のネーナの言葉で流石に怯んだのか、一瞬フリーズした後にイアンは仕事の話へと切り替えることにした。
この話題を続けると何回刺されるかわかったもんじゃない、と理解したのだろう。
「ま、とりあえず語るより見る方が早い。こいつが強化プランだ」
そう言って、前面の大型モニターにネフィリムの強化プラン図面を出してから説明に入ろうとするイアン。
「うわっ……」
「何コレ……」
……そのシルエットを見た瞬間、思わずそんな言葉が漏れたユリウスとネーナであった。
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