ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる 作:トン川キン児
「相変わらず無茶苦茶やってんね」
アフリカ中西部、AEUの軌道エレベーター"ラ・トゥール"よりほど近い地点。
擬似太陽炉搭載型が本格配備されてから、ここアフリカでは既に十数回を数える対テロ作戦が展開、いずれもAEU軍改め国連軍は敵対勢力の全ての壊滅に成功している。
そして、此度もそうなることが既に戦況を見ればわかった。
観測するこの戦場は圧倒的である。たかだか4機、一個小隊ほどのGN-Xに、旧来のMS及び通常兵器群はまるで役に立たず、その脅威を前に各々目的は違いながらも合従した組織軍はもはや壊滅状態にまで追い込まれている。
それだけに収まるはずもなく、国連軍は敵の完全なる破壊、殲滅へと既に動いている。
ネーナがそう呟くのも無理はない、一方的にすぎる戦いであった。
「ガンダムにかかればここまでできてしまう……」
ぼやいている間にも、空域ではヘリオンが後ろにつかれてビームで貫かれ爆散している。
ソレスタルビーイングとしてその様を幾度となく見てきた人間でもあるし、ユリウスとて散々に世界を打ちのめした人間でもある。だが、やはり正規の軍事作戦に使われるガンダムはそれとは違う姿を見せる。
GN粒子でほとんどの通信を分断しつつ長距離からの誘導攻撃を封じ、その機動性から来る圧倒的な航空力の優越で瞬く間に制空権を確保し、機体表面に纏うGNフィールドによって攻撃さえもまともに通らない。
新興・後発国家群の有する武力など、擬似太陽炉搭載型モビルスーツ・GN-Xの前ではもはや限りないゼロにも等しい。
擬似太陽炉という絶大なる力で、国連軍は今後さらなるテロ対策を拡大しつつ、それを世界的に進めるために全国家の軍事力の解体を迫るだろう。
三大勢力であるユニオン・AEU・人革連が国連の声明へと応じ軍事力解体及び統合に踏み切っていくことを表明した先月から、それらに加盟する、または支持する国家群はそれに同調し、モラリアでのPMC連合軍決起のような少しの反発もありながらも緩やかに国連へ、そしてそこから産まれ出るであろう新体制へと吸収されていくとの予測が世論の大半を占める。
誰もが夢見た人類の平和への道が、目の前に開けている。
アフリカ諸国や、中東諸国に住む人々という生贄を差し出し続けて成り立つ仮初の平和にすぎないとしても、その夢の輝きの前に人は歩みを止めようとはしない……。
だが、今のユリウスたちの任務はそのようなセンチメンタルに浸りつつこの現状を見守ることではない。
国連軍との決戦から7ヶ月経つ。再び地球に降り、リィアンから離れ2機のガンダムを外壁部迷彩被膜で隠しつつ、屋外にて双眼鏡による観測を行っている理由は明確にある。
「……いた! 2時方向」
ネーナの指した方角に、空域を飛び去るひとつの機影を見つける。
橙色でなく、緑色の粒子を放って飛行するそれは、間違いなく純正の太陽炉を装着したガンダム。
エクシアに似たその紅い機体の名は、ガンダムアストレア。
「追うぞ」
再び地球へ降りたその大目的は、フェレシュテとの合流。
彼らも自分達チームプトレマイオスとチームトリニティ同様姿を消している以上、その発見は一筋縄にはいかない。狙いは絞る必要がある。
その狙いこそが、フェレシュテの持つガンダムの行動。
とあるフリージャーナリストによって、ガンダムアストレアがアフリカ中西部にて目撃された。彼が各所に売り込もうとしたその情報がエージェントのひとりから留美に、留美からこちらにもたらされたことで、チームトリニティの次の方針は決定した。
アフリカの戦場や軍事基地を中心にガンダムアストレアを捜索、接触することでフェレシュテとの合流を計る。
(乗ってるのが恐らくアイツというのが、激しく不安を煽るが……)
フェレシュテのガンダムマイスターは、記憶が正しければイカれ野郎二号のフォン・スパークただ一人。
組織の壊滅は向こうにも明確に認識されているとなれば、奴はいったい今どのような動きをしているのかわかったものではない。本当に最悪のシナリオをなぞるとするなら、既にフェレシュテに見切りをつけ組織を壊滅、ガンダムを強奪し単独で動いている……だとかだろうとユリウスは思い描く。
後ろから追い回せば、それに噛みついてくるような人間でもあると見える。一足先にソレスタルビーイング同士の内紛……とでもなりかねない。交戦の気構えは常にしておいた方が良いだろう。
それでも今は辿るしかない。正義の女神が導く先を……。
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フォン・スパーク駆るガンダムアストレアType-Fとの合流には成功した。交戦になることはなく、光通信を用いて示し合わせることで拠点に使っているという近隣の基地にてユリウスとネーナは彼と落ち合うことができたのだった。
だが、最悪を想定した予想の一部は当たってしまっていた。
「フェレシュテとは切れてるってわけか」
「そういうこった。ご足労おかけしましたが無駄骨だってな」
フォン・スパークは、やはりフェレシュテとは離れ単独行動を取っている。
爆弾付きの首輪も無くなり……というより爆発しながらに生き残れたお陰か、組織の枷から外れた彼を御することはシャル・アクスティカらと言えどもやはりできなかったようだった。
……そもそもとして、彼女らも手枷はついたままだというのになぜ首輪をもう一度付けなかったのかは疑問に残るところではあるが。
「太陽炉を持ち逃げした反逆者。今のお前はそう見ていいか?」
エージェント・マグナスとして、反逆者フォン・スパークへと銃口を突きつけるユリウス。しかし、フォンにはまるで動じる様子が見受けられない。
銃口を前にして恐れを見せない奴というのは、得てしてろくな人間ではないしろくな企みも持っちゃいない。人生経験からそう学んだユリウスは、やはり此度もその経験則が当たった。
「オレ様の前準備を手伝ってくれるんなら、諸々終わった後に返してやってもいいぜ」
「何をする気だ?」
「宇宙へ上がりてえのさ。ちょいとロケットを拝借してな」
ラ・トゥール改め、現在で云うところのアフリカタワー建設時に使われた前世紀型のHLV。それを国連軍管轄の元AEU軍ミサイル基地から奪い、フォンは宇宙へ上がるという算段を立てている。
既にこのアフリカ中西部地域、アフリカタワー近隣ではテロ組織掃討の大半が終了したと見做され、擬似太陽炉搭載機含めた主力部隊の展開はアフリカタワー周辺に集中されている。この程度の基地を陥落させるのは、ガンダムにかかれば容易なものとなるだろう。
……この男を宇宙に上げるだけならばリィアンでも出来ることだが、そう提案する気は起きなかった。こいつをあの機体に乗せて移動などすれば、道中で何をしでかすかわからない。
「アンタが手伝ってくれるとなりゃ、今すぐにでも動けて最近の面倒な下準備も全部ナシで済むと来る。オレは是非来てほしいがなァ」
「……やっぱりお前」
「おっさんがオレを見つけたんじゃねえよ、オレ様が呼んだのさ。いるんなら飛んでくるだろうと踏んでたんでな、あげゃげゃ」
釣り出されたのはそっちだ、と言い放つフォン。
ジャーナリストに撮られるような行動はこの男にしては迂闊だと思っていたが、そういうことであればむしろ納得がいくと思えるユリウス。
「ンなことやってあたしらに何のメリットあんの」
「ドライヴだけじゃ足りねえってか。シャル達の居場所を教えてやるっつったらどうだ? ま、移動してっかもしれねえけどな」
ネーナが対価の要求を迫れば、フォンはそれにそう答える。
フォンの提示する約束が履行されるのであれば、それはフェレシュテとの合流がいよいよもって現実的になるという事に他ならない。しかし、所詮は口約束に過ぎず、それも反逆者の言う事。
留美と同じように、どうしてこうもどこまで信じていいかわからない者ばかり扱わなければならなくなってくるのか。苦境とはこれほどまで選択を迫ってくる……。
「オレのやる事はアンタらにも必要だぜ」
「……俺たちの何になるってんだ?」
「アンタらの最終目標はもう定まってるはずだ。ヴェーダを取り戻したいってんだろうがよ」
「!」
「提げてる首輪見りゃ、それくらいの事を考えそうな奴がまだ折れずに動いてるってのがわかるもんだ。結婚ねェ……あげゃげゃ!」
……このチェーンと指輪を見れば、確かに多少観察力のある人間ならば自分に契りを交わした相手がいるということはわかるだろう。しかし、その
「宇宙に上がるまでで結構なんだぜぇ? そっから先は一人でやっからよ」
こいつという男は、いつも1を見て10を知る。
「どーすんの?」
「……すぐ戻る。検討するから、こいつを見ててくれ」
ネフィリムのコクピットからの緊急暗号通信を用いてしかるべき者へと知恵を借りる。この男の云う所の
ネーナを見張り役にして、ユリウスは一旦その場を去る。
「あたしともお久ね。
「糸が切れてよかったじゃねェか。
お互い直接顔を合わせるのは初めてのこと。
ネーナにとっては二度目、フォンにとっては三度目の遭遇。自分を始末しに来た時、全てを失って引きこもっていた時、そして今。
どう変わろうと相容れるところの欠片もない者同士。悪意たっぷりの皮肉をぶつけ合って、それからはだんまりであった。
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「……この話を呑めると思うか?」
「…………」
モニターには"SOUND ONLY"の文字が灯っている。
ネフィリムのコクピットからの緊急暗号通信にて、ユリウスはスメラギと通話している。緊急の判断を要する事案が発生した、と彼女を呼び出して。
ユリウスは知り得た現状を全て話した。フォン・スパークは宇宙へ上がることを画策していること、その助力で太陽炉の返還とフェレシュテが潜伏している可能性が高い場所の情報を提供すること。そして、それ自体がヴェーダの奪還の一助になるということ。
語った話の全てを、スメラギは黙ったまま聞いていた。不安に思いユリウスがそう言うと、暫しの沈黙の後に重く閉じていた口を開いた。
「後の手伝いは要らないと言ったんでしょう?」
「確かに言った」
「……宇宙へ上がり、ヴェーダを見つける方法……それも、単独で……」
音声のみの通信である以上、ユリウスはそう呟くスメラギの表情を窺い知ることはできない。
だが、聞き慣れたその声には何らかの不安が多分に含まれていた。
「……おやっさんから開示してもらった、フェレシュテの装備の中にね。工作艦があるの」
「それがあいつの狙いってことか」
「問題になるのは、それで何をするのか」
CBS-68・エウクレイデス。純正の太陽炉があるとはいえ単独で拠点もなく宇宙漂流をするわけにもいかないのだから、恐らくフォン・スパークの狙いはそれに違いないと両者は合点がいく。
エウクレイデスはプトレマイオスすら超えるほどの大型宇宙工作艦。その機能を持つ艦を強奪して、フォン・スパークが何を起こすのか……。
「私の推測がもし合ってれば……彼は……人類史上最大規模のテロを起こす」
……スメラギには、察しがついていた。
「……俺たちの武力介入も同じようなもんだと思うが」
「それすら超える。数十億人がその影響を直接的に受け、数十万の死者が出る可能性もある」
今まで数えきれないほどの殺しをやってきた自覚はある。しかし、それすら鼻で笑うような桁の違う数字が会話から出てきたことにユリウスもたじろいだ。
それほどの人間を巻き込み、死に至らしめることができるというのは、旧世紀からその脅威が語り継がれ、ついぞ二度と使われることはなく役目を終えた核兵器のようなものにしか考えが及ばない。
「ヴェーダを見つけようと思った時に私もこれを考えたけど、できなかったというか、"やらなかった"。人類社会へ与えるダメージがあまりに大きすぎる」
世界に喧嘩を売っているというのに今更、と言うのは簡単だが、ユリウスもスメラギがずっとそのように社会へのダメージを最低限に抑えようと尽力していたことを知っている。
かつてのティエリアがそれを甘いと言っていたりした、脅威を知らしめるという名目で極力パイロットを殺さないようマイスターに指示していること。民間施設への攻撃を避けること。
その意思を示す事柄は、数えていけばきりがないほど。だからこそ、スメラギにそのような事はどうやっても決断し得なかっただろう。
フォン・スパークはいったい何をするとスメラギは推測しているのか、そのようなことを奴がどうやって起こすというのか。その手伝いを、していいものなのか。
それらを横に置いても、二人には共通して確信を持てることがあった。
「……あいつなら、やりかねん……」
「やるでしょうね。プロファイリングは周囲からある程度集めたけど、そういう傾向はある」
フォン・スパークであれば、ためらわない……。
「でも、同時に。彼は恐らく、約束を違えない」
だが続くスメラギの言葉は、ユリウスにとっては予想外だった。
「な、なんでそう思う?」
「スカウトの際も、支払いの約束は履行した。彼にとってどうでもいいモノだったからよね」
フォンがソレスタルビーイングにスカウトされた時。それは、自分との戦いにガンダムが乱入して来た時のことに間違いない。
彼はその際の約束となっていた自身の傭兵団全てを解体した分の送金と、少し遅れてかつて起きた忌まわしい同士討ち事件の情報を確かに自分に渡した。
ソレスタルビーイングへと行く自分にとって、もはや不要となった良い餌だったからだろう。
……そこで、スメラギの言わんとすることがユリウスにも解る。
「……太陽炉も、フェレシュテも、要らないってか」
「本命があるもの。ヴェーダっていう本命が」
己が持てるものほとんどを捨てても、なおお釣りが来る"本命"。それが、ヴェーダという存在に他ならない。
もし本当に、フォンの狙いがヴェーダだとすれば。
ヴェーダを取り返したいというのに、持ち主が入れ替わるだけになってしまうというなら、何も状況は変わらない。
「この際、四の五の言ってられないのは事実だし、彼の企みには確かに価値がある。でも」
彼女は確かに甘いかもしれない。
だが、ユリウスは彼女がそれだけの女ではないということもわかっている。
「フォン・スパークには必ず始末をつけるわ。ガンダムもエウクレイデスも、彼が持ったままじゃ困るから。諸々事が済んだ後に、ね」
自分との子供ができて、結ばれたからというだけではない。
スメラギ・李・ノリエガは元々母親役だと言える。血のつながりを超えて家族となりつつあるチームを守るために、母は強く非情にもなれる。
「頼もしいぜ」
「そういう時は"愛してるぜ"なのよ」
モニターでお互い顔が見えていればウインクのひとつでも飛んできていそうなリーサの返しと共に、通話は終わった。
この流れとて元々の世界にあったものかもしれないが、スメラギ・李・ノリエガという戦術予報士なしでこんな事態を迎えたらなどと想像もしたくない。まるで何が起こるか判断がつかなかっただろう。
その言葉は心から漏れたものであった。訂正されはしたが。
「俺だって早めにケリは付けたいさ」
初めての子供の顔と対面する瞬間がもうじき近づいているとなれば、宇宙へ上がるにはちょうどいい時期なのだから……と、ユリウスは一人呟いてコクピットを降りた。
「話はついた!」
「へェ。で、どうするって?」
「手ぇ貸してやるよ。不本意だが」
「え゛! マジで言ってんの」
「あげゃ。じゃ、よろしく頼んますわァってなあ」
険しい顔持ちを崩さないユリウスと、それをニヤつきながら覗き上げるように嗤うフォン。
これっきりにしたいと思える同盟が、密やかに結ばれた。
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