ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる   作:トン川キン児

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神の手との接触

『テキハッケン!テキハッケン!』

「イナクト4、フラッグ4。あと……新型?」

 

 支援機として造られた経緯上、大型化した頭部とHAROが支える情報処理能力によりEセンサーの有効半径が3機のうち最も広いスローネドライが真っ先に敵を捉える。

 敵は航空戦力のみ。しかし、その中には擬似太陽炉搭載型と思しき新型が認められる。

 これまで確認してきた国連軍の擬似太陽炉搭載型モビルスーツ・GN-Xとそのシルエットは大きく変わらない。しかし、細部が違うとネーナは認識した。

 

「GN-Xの新型!」

『もう新型が出てくるようなタイミングなのか……』

 

 こちとら新型をどうにかこうにかひねり出すために駆けずり回っているというのに、随分なハイペースで新型を仕上げてきてくれるものだと毒づくユリウス。

 今から3年後、西暦2312年における主力量産機は確かGN-XⅢ。ならば、その中間と言えるGN-XⅡがあったところでおかしくないのか、と思ったことはあった。

 しかしそれも、1年と経たないとは随分と早いロールアウトだと思わされる。

 

「射程ならドライのが上かも。どうする?」

『あげゃげゃ。好きにやってみな』

 

 プロトGNランチャーの長射程を有し、おそらくこの戦場で一番最初に敵を捉えているスローネドライ。であれば、ここからの狙撃も可能だろうとネーナは進言して、それは許可される。

 

『まずは数を減らすんだ』

「……フツーのMSから……っと……」

 

 チームトリニティのヘルメットバイザーには、照準と連動して狙撃時に降りるスコープが存在する。それに合わせて、ユリウスの言うように慎重にフラッグ・イナクト部隊へと狙いを定めるネーナ。

 ……いつもは、こんなのヨハ兄しか使ってなかったな、という感傷を押し込めつつ。

 

「いくよ!」

 

 トリガーが引かれ、プロトGNランチャーから放たれる最大まで充填された橙色の圧縮粒子ビームの光条がイナクトの1機を貫通、爆散せしめる。

 そのまま照射され続けるビームが部隊を薙ぎ払う。奔流に呑まれた者、かすめて堕ちていく者、様々あれど反応の良い2機だけが難を逃れ、残りの6機はまとめて片付けられたのだった。

 

『当ったり〜』

「いいぞ。本命が来るから、一度下がって――」

 

 粒子の再チャージがあるスローネドライを一度下がらせんと通信したユリウスを、向こうの部隊がそうであったように、こちらの射程外から襲う粒子ビームが狙ってそれを避ける。

 

『向こうにも長物持ってんのがいる!』

「反撃のつもりだろうが……!」

 

 カウンタースナイプを避けたネフィリムにも捉えられる距離になり始め、敵には確かに特殊な装備を備えたGN-Xが2機ほどいるのがわかる。

 右肩にキャノンを装備した機体、そして今し方左肩からソードを抜き払ってこちらへと接近する機体。どちらの武器も大型である。

 キャノンに、バスターソード。これは、まるで。

 

「スローネの装備か……?」

 

 呟いたユリウスの声は、通信チャンネルが開いたままのネーナにも聞こえてしまっていた。

 

『――――ッ!!』

 

 失態だ、とユリウスは瞬時に気づいた。

 GN-Xはスローネのデータを流用して作られたものではないか、という推測は既にイアンから聞いていた。であれば、こういう風に先祖返りを起こしたようなバリエーションがいても不思議ではないとは思っていた。

 だがよりによって、相手が3機で、キャノンと、ソードがいて、それをネーナが見ている。

 

……ああ、そういう……! アンタらさァァァ!!

 

 あれからまだ、1年も経たない。

 ネーナが冷静でいられるわけがない。

 追加装備であるGNブレイドを両手に抜き払い、ドライが突出していく。

 

「兄貴たちを思い出すってかァ!? あげゃげゃ!!」

 

 それを"面白い"と見たフォンのアストレアType-F2も、特等席でその激情を眺めるために前進していく。元々近接格闘型の機体ということもあり、前衛をやってもらうつもりではいたが。

 

「ああ……もう、なんでこう……!!」

 

 知ってか知らずかいずれにしても、くだらない真似で変なタイミングにダメージを入れに来やがって……。

 戦う前から予想以上の効果を挙げたであろう敵の追加装備に毒づきながらも、ネフィリムプラスの速度を上げる。

 せめて、二人がやりやすいように機動力で撹乱をせねばと考え。

 

うっお――――!?

 

 全開の加速をかけ、そのGにユリウスは押しつぶされそうになる。

 

「はぁ!?」

「ンだぁ? 速ぇじゃねえか」

 

 大型GNバーニアユニットがもたらす、恐るべきネフィリムプラスの加速。

 先行していたはずがそれに追い越され、やり場のない感情はどこへやら呆気に取られるネーナと、高機動型ユニットとアタリは付けていたものの予想以上の速さが見れたと驚くフォン。

 

(じっ……ジジイ……ッ!!)

 

 敵より先に、俺を殺したくて作った代物か――――。

 そう訴えてやりたくなるほとに苦悶しながらもユリウスはその速度をどうにか使いこなし、GN-XⅡ部隊の上方からGNロングライフルで牽制しつつ接近していく。そのあまりの速さに、上を取られたGN-XⅡとキャノン付きの2機は高度を下げつつのけぞり、地上を背にしながらの応戦となる。

 ソード付きの機体は、実体剣同士で打ち合うドライとの戦闘に釘付けにされて動けない。となれば、アストレアF2はマークを外れてフリーとなるのが必然で……。

 

「あげゃげゃげゃげゃ!! 止まんなよなァ!!」

 

 GNビームサーベルが掬い上げるように振り抜かれ、股関節部からGN-XⅡを両断、粒子を飛び散らせ爆発させる。

 最初の一合で数的有利ができた。これならば上出来だと思いつつ、ユリウスは問題となる旋回をしつつ機体をMS形態へと変形……。

 ……することにも、覚悟がいる速度であった、が。

 

「っはあ――――ッ!!」

 

 旋回・減速に伴う先程よりも激烈なGに身体と機体を喘がせつつ。

 ユリウスは、ネーナに言わなければならないことを言った。

 

「はあ……ッ、おい! ネーナ・トリニティ!」

『なに!?』

「お前のチームには、海老反りで股裂きにされるようなマヌケはいたのか!?」

『いるわけないじゃん!』

「じゃあ、こいつらは違う何かだろ! 頭を冷やして、後衛らしいことをやってみせろ!」

『…………!』

 

 こいつらは、トリニティとは違うものだ。切り替えて自分のやるべきことをやれ。

 その檄が、言わんとする所が伝わり、ネーナは思考を切り替える。鍔迫り合いを弾き、交戦位置をアストレアに寄せて狙いを押し付けようとする。

 防御を担当するからして、小回りが利きにくく無防備なキャノン付きの方へと戻らなければならないソード付きとしてもそれは望むところであった。

 フォンが狙いを察したか、アストレアもビームの牽制に加わりソード付きを釘付けにする。GNバスターソードは表面にGNフィールドを纏わせることができ、いずれも防がれ有効な攻撃とはならないものの、キャノン付きと合流させないという役割は果たしている。

 その間に、キャノン付きを始末し切るのは……。

 

「こいつの実戦は初めてだから、付き合ってもらう!」

 

 GNビット4基を展開した、ネフィリムプラスの役目に他ならない。

 機体からはじき出され自由落下するそれらを、最初はキャノン付きも脱落物か何かだと思い無視しつつネフィリムプラスへの牽制射を続けていた。

 結果的にそれが、命を取った判断ミスだった。

 脱落物は近づいた瞬間、ユリウスの脳波コントロールにより瞬時に自立稼働してキャノン付きを取り囲み、全方位からビームの雨霰を浴びせる。

 敵の火線がいつの間にか倍以上にも見えるように増えたことに戸惑い、応戦の体勢を整えている間に頭部を削り取られ、一時的に機能がダウンしている間に機体とキャノンの接合部へと集中砲火が浴びせられて武装を剥ぎ取られ、後方に取りついたビットはコーンスラスターとマウントしていたビームライフルを潰し。

 最後にバイタルパートであるコクピットが、ネフィリムプラス本体からのGNロングライフルのビームも含めた一点集中の射撃で貫通され、墜落しながら機体はあっさりと爆散した。

 

「使えるじゃないか……」

 

 機体のじゃじゃ馬ぶりと比べて、GNビットはたいそう優秀な装備だと感じられて感嘆を漏らしたユリウス。

 ……もっとも、ビットそれぞれにあのような機敏な軌道と正確な狙撃をさせることができるのは、元々の性能ではなくユリウスの持つ能力が加わったからこそであるというのは、後からわかる話であった。

 

 一瞬にして解体されたキャノン付きの惨状を見て、ソード付きは撤退を決断する。残った2機のイナクトも、その判断に従い戦域から離れていく。

 

『逃げるよ!』

「追う事もない。用事はこいつを宇宙に上げるだけだから、長居はしない」

『……そういうことって言える、か……』

 

 この基地から敵を追い散らすだけでいいなら、ここで終わりでも構わない。そういうユリウスの算段に、ネーナは納得した。

 納得を返してくれるあたり、成長した物だとユリウスには思える。

 

『……ちょっとさ……』

「うん?」

『カッとなっちゃうよね。アレが来たら』

「……まあ、なるときもある。気をつけりゃいい」

『……そうする』

 

 ……こういう自省の言葉までも返ってくるあたり、本当にそう思える。

 

「ん?」

 

 会話を交わしている間に、暗号通信でアストレアF2からあるポイントの座標データが送られてくる。

 これが恐らく、罠でなければフェレシュテの潜伏先。

 

「報酬だってか」

 

 分け前が支払われ、ここで仕事は終わりでいいというなら、後は好きにさせるまで。

 旧世紀のロケットを一人で稼働させられるのかは定かではないが、元テロリストならばその程度もお茶の子さいさいとでも言うのだろう。こちらも、やる事はできた。

 

「リィアンに帰るぞ」

『ほっといていいのぉ?』

「一人でやるってんならやらせとけよ」

 

 もしこの情報が真ならば、フェレシュテを無事に宇宙へ送るという一仕事が待っているのだから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか……本隊の方から私たちを見つけてもらえるとは。感謝します」

「俺たちもフェレシュテの資材は必要です」

 

 そう言うと、安堵した表情のまま少し困ったように微笑んだシャル。

 アフリカ中西部での戦闘から数日経って以降、大したトラブルもなくリィアンはフォン・スパークの指した座標へと向かい、そこに潜伏していたフェレシュテに合流することに成功した。

 掴まされた情報に偽りはなかったことに、ユリウスの方も心中では安堵している。良くて空振り、悪ければ罠のようなものだと思ってもいたから。

 

「私としても、再会が叶い嬉しく思います。しかし……」

 

 変わった事と言えば、もう一度宇宙へ上がるという留美がまた合流していることである。

 彼女は一度、地球降下前のフェレシュテと会っている。その際に一つの約束を結んでいるはずだった。

 

「……もうひとつの太陽炉は、どこへ?」

 

 0ガンダム、及びキュリオスのGNドライヴの保管。

 しかし、当初通信があるまで所属不明機であったこちらに対して何ら自衛のための行動を起こさなかったという事は、この基地には戦力となり得る機体が、動かせるガンダムが存在しないということになる。

 つまり、もうひとつの太陽炉さえもここにはない。留美が判断するには、材料が揃いすぎていた。

 

「……私がコードA反逆者(トレイター)として認定したフォン・スパーク追討のために、新たに任命したガンダムマイスターが使用しています。ガンダムサダルスードに搭載して」

「新たに……?」

「ヒクサー・フェルミ。以前にマイスターの一人として私と働いていた者です」

 

 ……ガンダムマイスターというのは、バーゲンセールとはいかないまでも意外とそれなりにいるものなのかと思ったユリウス。

 この部屋に同席しているエコ・カローレ……という名前だったかどうか記憶が曖昧だが、とにかく確かマイスター候補はそのような者を呼ぶまでもなくいたはず。

 自身の想像の範疇にない事態が発生すると大きく動揺して能力を損なうという、フォンと戦うには致命的とも言える特性があることも承知している。

 

 コードA反逆者(トレイター)。ソレスタルビーイングにおいてそのコードは、"そのコードが付加された存在を必ず見つけ出して抹殺せよ"の意を持つ。

 ひとまずのところ、フォン・スパークがそういう危険な存在だという認識がフェレシュテとも共通しているということは、これからの円滑な行動に差し障りが無さそうでありがたいところである。

 しかし、そのように降って湧いたようなマイスターが太陽炉を使っているという事実があれば、ユリウスはヒクサー・フェルミという人間の素性を確かめるべきだと思った。

 

「最初からそいつをフェレシュテに置いておかなかったのは、どういうわけです?」

「……彼はある時から登録を抹消されていました。ヴェーダにおける登録の抹消は死を意味するものだと思っていたけど、彼はどうやら生き延びてエージェントとなっていたようで」

「怪しッ」

 

 顔をしかめるネーナの茶々も尤もだと思える。

 ヴェーダにおける個人情報の登録抹消。世界唯一の量子型演算システムであり全てのネットワークを監視下に置くヴェーダが、その個人の情報の更新が不要であり、さらに人間社会からその足取りを追うことを不可能とするよう情報の抹消が必要だと断じるケースはたった一つ。

 その個人がソレスタルビーイングのエージェントであり、その死亡時に他ならない。

 死人は生き返らない。一度抹消された登録が復活することなどありえない。

 では、そのヒクサー・フェルミのように登録の抹消を受けていながらこの世界に存在しているというのはどういうからくりか。

 少なくとも、ユリウスにはみっつ思いつく。

 そもそも登録を抹消されたということそのものが誤りであり、何らかの形でシャル達にも閲覧できないレベルの情報を持つ人間となっていたか、あるいは、()()()()()()か。

 それとも、その両方か。

 ……同時にもしその予感が当たっているのであれば、太陽炉は既に敵の手に堕ちたも同然であると思えた。

 

「……人選に疑問を覚えます」

「……私も、正直に言って悩んだ末での決断です。エージェント・マグナスがいれば、過去の実績も鑑みて迷わず頼んでいましたから……」

 

 決断の是非を問うても仕方のない話ではある。フェレシュテと自分達とではこの間に得た情報の数が違いすぎるし、加えてこの事態の本質の凡そを()()()()()()()()()自分とでは尚更である。

 ただ、事態はさらに面倒なことになった……と顔を覆うだけであった。

 

『私であればヒクサー・フェルミとの交信は可能です。彼が我々への背信行為等を行っていないことは保証できます』

「……それは後でいい」

 

 ヴェーダの端末である874しか交信できない存在。それはつまり、相手も量子通信で繋がるヴェーダの端末。

 874の言葉はしかし、ユリウスの懸念を深めるだけに終わった。

 

「そうですわね。ひとまずは、ここにある物を宇宙までどう運び出すか」

 

 留美の言う通り、それは置いておいても目先の問題はフェレシュテのかき集めた資材をどのようにして回収するのかであった。

 細々した電子部品から大型のフレーム、果てはモビルスーツまで。端末で一通りのリストを見てみれば、MSに関しては元々ここに置いてある物ではあるものの、よくもまあここまで詰め込んで地上に降りられたものだと思わされるほど持ち物は多い。

 

「リィアンでやる。単独でもトランザムなしで大気圏離脱ができるんだからな」

「資材や人員は私が軌道エレベーターでの輸送を手配できますが……」

「露見のリスクは少ない方がいい。フェレシュテは、それでいいか」

「貴方に任せます。エージェント・マグナス」

「任されて」

 

 フェレシュテとの合流。組織再編のための大目標のひとつは達成できた。

 残るは、ヴェーダの奪還。

 自分が知っているよりも遥かに早い行動の開始である。だがそれは叶うに越したことはない。

 今の自分はソレスタルビーイングの、ガンダムマイスターなのだから……と、首にかかる金のネックレスに右手を触れさせる。

 それは、ここに身に着けている限り感じられる紛れもない"実感"だった。




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