ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる 作:トン川キン児
右腕部へとバインダーを集中しアタックモードと化した1.5ガンダムのGNバスターライフルによる射撃は、出力が増大するのみならず、一定方向へと曲射し誘導する。
ユリウスに宿るX領域の啓示によって、その曲がる粒子ビームをすんでのところでかわしていくネフィリムプラス。
似通った機体にこういった武装がついているとはユリウスは知らない。しかし、よりGN粒子制御技術が進歩した未来において類似した武装を搭載する大型MAがいるという事前知識がなければ、この一撃であっさりと致命打を負っていた可能性まである。
Xラウンダー同士の戦闘に"まさかと思うポジション"はほぼ存在しない。ましてや、技術のみならず体力・気力といった点においてもパイロットとして完全な能力を持つ戦闘用イノベイド、リボンズ・アルマークを相手にしては尚更のこと。
「ビームが曲がります! シールドといい、あのバインダーには働きがある」
「見ればわかるっての!」
(この後ろに目がついているような感覚、マグナス……いや、それ以上……!)
ソレスタルビーイングの保有するガンダムよりも一回り大きな23m級という大型MSの1.5ガンダムでありながら、その回避はまるで数cm単位を操るかのよう。的確な回避機動と、細やかな機体制動が、ネーナとティエリアの牽制射をものともせずにすりぬける。
1発、2発とGNDビームライフルの火線を作るたび、実戦経験の長い方であるティエリアには、敵の実力の程がネーナ以上に伝わっている。
3機がかりでこれならば、あれだけのパイロットにこちらの攻撃を通すのに、連携のミスなくいったいどれほどの時間をかけねばならない?
(抜かれた!? まずいッ)
「遅いよ」
その焦燥が真っ先に動きに出たのは、やはりネーナ・トリニティである。直線的になりがちなネフィリムの追随が振り切られたことに対する反応が、狙いに集中するあまりに遅れる。
バレルロールを行いながら、間を抜かれた方とこれから撃たれる方への冷淡な一言と共に砲撃形態・バインダーライフルモードにて弾幕を形成する。
単騎のMSから繰り出されているとは到底思えない、艦砲の弾幕がごとき粒子ビームの雨はしかし1発1発が正確に狙いをつけられ、元々追加装備により鈍重気味であったスローネドライGNHWを襲う。
「うぁ……! っクソ!」
「ハハハハハ! どうしたのかね? 避けてもいいのだよ?」
頭上からの被弾によりプロトGNランチャーが爆発と共に脱落。誘爆こそ免れたものの、右側部の粒子貯蔵タンクも懸架するGNブレイドと共に放棄。
すかさずアストレアⅡとネフィリムプラスが割って入り、ドッグファイトの仕切り直しとなる。
しかし、一合を交わす度に確実にこちらの手札は減っていく。
……そして、ソレスタルビーイングの太陽炉には最強の切り札がある。
「マグナス!」
「わかってるけどなぁ……!!」
留美の言わんとするところはよくわかる。この状況下を打開するために、温めていた鬼札を切れ、と。
しかし、ユリウスの脳裏からは疑念がついて離れない。
あのような機体を駆ってまで、わざわざ1人で御大将がやってきた理由とは、その鬼札さえも手の内に収めたからではないのか?
己の知る歴史が大きく変わっている以上、どんな可能性もありうる。であれば万に一つも勝ち目などない。退く事を選ぶべきだ。
だがもし、そうでないのなら。
三人がかりで
自らの知るヴェーダの本来の位置は違っているが、移転を行う前などの事情があるのならば、イノベイターからあらゆる物を取り返せる。
元々の流れであれば敵はこの札を持ち得ない。何らかの策を講じこちらから盗み取る必要があるが、これまでそうした兆候はなんら見られなかった。
パスレル・メイラントがこちらから離れた時期からしても、恐らくそれは間違いない。
敵機に付いているGNドライヴとて1個。
『そうさ、やるがいい。そのためにここまで来てあげたのだからね』
――――リボンズの嘲りに背中を押されて、覚悟は決まった。
「……フォーメーション、T-11」
「やるの!?」
「了解……!」
その言葉の持つ意味を、敵を除いてここにいる全員は事が始まる以前より入念に確認してある。
出し惜しみ無しの一斉かつ最終攻撃。しくじらずとも後はないそれに、ネーナは驚きで返し、ティエリアははっきりと了解で返す。
……3機の中央パネルスクリーンが赤く染まり、ソレスタルビーイングのエンブレムが浮かび上がる。
アストレアⅡが、スローネドライが、ネフィリムが。
機体各部及び太陽炉本体へと稼働中に蓄えられた高濃度圧縮粒子を全面解放。その圧縮粒子は機体へ通常の三倍もの出力を一時的にもたらし、動力ケーブルを駆け巡り装甲表面に滞留する粒子量が急激に増加したことによる副次効果で、全装甲は赤く発光する。
元来GN粒子の使用によってすべての性能が決定される太陽炉搭載型MS・ガンダムにとって、その粒子出力の増大はすなわち攻撃性・防御性・機動性すべての増強を意味する。
イオリア・シュヘンベルグから、ガンダムマイスターに託された切り札。トランザムシステム。
眼前からガンダムたちの姿がかき消え、それを眼で追うとき、リボンズは小さく笑みを浮かべて通信越しに眼前の敵をさらに焚きつけてみせた。
『これが見たかった! そうでなければ、僕の出来損ないの乗るスローネは一撃で墜としてもよかったんだからね……!』
「こんな状況で! よくナメたこと言えんね!!」
ハイスピードモードへと変わった1.5ガンダムと、トランザムによる赤い軌跡を宇宙に描く3機のガンダムとの高速戦闘の中で投げかけられたリボンズの言葉は、負け惜しみのようでいて極めて実現の可能性が高かったことでもある。
先のドライへの攻撃の際、バインダーライフルモードではなく、1.5ガンダムの最大火力・アルヴァアロンキャノンモードにて狙撃をしていれば、弾速と被害半径を鑑みても一瞬にて撃墜、あるいは戦闘不能となっていただろう。
バックアップを担当するヴェーダの試算でも、98%以上の確率がその結果を支持している。それをしなかったのは、トランザムした
しかし、"君は僕の気まぐれで生かされているにすぎない"などと同義の言葉を言ってのけられれば、ネーナの激昂はいよいよ頂点に達する。
いかにイノベイド専用の高性能機・1ガンダムのポテンシャルを1.5倍に引き上げたと言われる1.5ガンダムでさえも、トランザムしたガンダムを振り切ることなど土台かなわず取り囲まれる。
スローネドライGNHWが直進しながらのGNハンドガンの牽制連射の後、左手に保持するGNブレイドで斬りかかる……。
(……なんてさ!)
(フェイント! 左後方! 右側面!)
……かと思いきや、直前で大きく上昇し、意識を誘導した先をアストレアⅡ及びネフィリムプラスの高速波状攻撃で刈り取る……ところさえも、恐るべき反応速度でリボンズは読み切ってみせ、恐るべき処理速度で脳が判断した対処を肉体に反映していく。
ドライにメインカメラを引き付けられている、ことを一瞬装った上で、すぐさま左後方へ一瞬で振り返り、ロクに補正もかけられていないままにGNバスターライフルを、一射。
「そこ!」
「なに!? うっ!!」
予想外の反応速度にも関わらずティエリアの巧みな機体制動がバイタルパートへの直撃を逸らしたものの、左腕部を丸ごと持っていかれつつ体勢を崩されたアストレアⅡが速度そのままにコースを逸れる。
間髪入れず接近するネフィリムプラスがGNビットを射出。トランザムによってさらに加速した本体と、4基のビットによる同時攻撃。
「く……か……かわせるかよ!!」
いかに
慣性制御能力も増加したとはいえ相変わらずの加速に苦しみながらも、
振り返り様に1.5ガンダムの左手が抜き払ったサーベルの左袈裟斬りがバインダー基部を狙った1基目を破壊したとき、攻撃はまだ続くとユリウスは動じない。
取り囲むビットの砲撃をかわしながらライフルを連射し、徐々に照準を合わせ切り2基目を破壊したとき、ユリウスの額から汗が流れ落ちる。
(く! 当ててくるか! 仕方ない……!)
「な、なんて敵……ッ!?」
降下しながら月面を背中で滑るように機動しつつ、ネフィリム本体の脚部GNミサイルによる攻撃をディフェンスモードによってシールド及び左バインダーを犠牲にし防御。その爆炎に紛れさせたビットをも回転投擲したGNビームサーベルで両断。隙を伺い頭部を狙っていた3基目を破壊。
その回転し続けるビームサーベルのビーム発振部に、バスターライフルを最小出力で当てるという神業により自機方向へとビームを反射拡散。多少巻き込まれ胴部より下半身の装甲が焼かれるものの、これでコクピットの目の前までとりつかれかけた4基目のビットをも破壊。
ユリウスの顔色が、留美の驚愕の言葉と共に青褪める。しかし、攻撃の手は止めなかった。
「うぉぉおおおおおおあ!!」
「な……なんと!!」
爆炎が完全に晴れる前に、GNロングライフルを構えたネフィリムプラスが上昇する1.5ガンダムへと肉薄。半ば捨て身の攻撃にたじろぎつつも、リボンズはGNバスターライフルを構えさせる。
――――しかし、この致命的な瞬間、1.5ガンダムの応答速度は初めてリボンズの反応に対する遅れを見せた。
(僕の手が細い!? ガンダムだというのに!?)
お互いにギリギリの攻撃と迎撃の中で、偶然にもその銃口は、銃口同士があと数十cmで触れ合う程の距離で発射され、粒子ビーム同士が衝突する。
至近距離で激しく飛散する高濃度圧縮GN粒子は互いの機体を焼く。しかし、後退しながらの迎撃であり、即ち爆心地から遠ざかる形の1.5ガンダムと、前進しながらの攻撃、爆心地へと突っ込むネフィリムとでは、被害の程が違った。
「いやぁぁぁああ!!」
繊細な部位であるGNロングライフル及び脚部大型GNバーニアユニットは飛散した粒子ビームが貫通し爆散。頭部クラビカルアンテナも丸ごと溶解し、対地警告により鳴り響く警報への留美の叫びもむなしく、ネフィリムプラスの赤い輝きは消え失せ、月へと墜ちていく。
対する1.5ガンダムとて無事ではない。当然ながら爆心地を形成したGNバスターライフルは飛散ビームによって即爆発、右手ごと喪失。遠隔武器は右バインダーのライフルを残すのみとなる。
こちらもクラビカルアンテナを若干ながら損傷し、左バインダーの喪失も含めて粒子制御に乱れが生じた結果、装甲表面のGNフィールドを貫通した全面に痛々しき黒い焦げ跡を残し、激しい閃光の発生により処理限界を超えた頭部ツインアイのメインカメラは焼かれ自身も一瞬視界を奪われた後、モニターがダウン。
サブへとモニターを切り替えようとする中で、リボンズは悪態をつく。
新たに獲得した優れた感覚によって、センサーより先に次なるスローネドライの攻撃を感知したというのに、一瞬ながら自らの視界の確保を優先しようとしたという事実が露呈する、自らの不慣れさに向けて。
『君はね、僕の出来損ないさ。君たち三人は僕の提供した細胞データから近しい存在を得ようとした愚かな男の失敗作。劣化コピーに過ぎぬ人形!』
「ッ……死ねええええェ!!」
直情的なネーナの性向も鑑み、初めて知る事実をも交えたトラッシュトークによって幾分でも直線的な行動を誘発しようとしたリボンズの試みは、しかしそれ以上の殺意を煽るだけに終わる。
だがそれでも構わなかった。より強い感情をこちらにぶつけてくるのであれば、X領域はよりそれを拾い上げやすくなるのだから。
……シンプルに最高速によってGNブレイドを突き出すスローネドライにあえて背を向けいなしつつ、両腕部で月面へと投げ込む一本背負い。
「わぁ!? ぁぁああああ!!」
トランザムによる突進速度がそのままプラスされた墜落。放置していてもその衝撃でパイロットは動けなくなるだろうが、トドメと言わんばかりに1.5ガンダムがバインダーライフルをスローネドライへと向ける射線を、アストレアⅡが横切って注意を引く。
『ティエリア・アーデ! 僕たちの同類だろうにね! こちらにつくのが正しい道というもの』
「僕は人間だ! 僕の行動の意義は僕自身が決める!」
『……なるほど。それでいい!』
わずかばかりの逡巡を押し殺し、リボンズは片側だけとなったGNDバスターソードによる剣戟を躱し、その間合いの内に入り込む。
選んだのは、手を失った右腕による頭部への原始的殴打。
「システムが……うぐっ!」
前身の勢いを受け止める1.5ガンダムの右腕と同時にアストレアⅡの頭部もひしゃげ、クラビカルアンテナに重大な損傷を負う。
ただでさえ前史の技術ゆえに安定しないダブルドライヴ、それに加えてトランザムを行っている状態を制御できなくなり、一時的なシステムダウンを引き起こしたところをさらに頭部への二連打。
コクピット付近である側動部へと、とどめにくれる右脚の蹴りにより吹き飛ばされて墜ちていく。
右腕と右脚は見るからに歪みきり、フレームへの負荷により機体各部からスパークが走り、かろうじで戦闘継続可能な状態を保っているだけの1.5ガンダム。
しかし、この戦場に最後まで存在しているのは、絶対的強者リボンズ・アルマークの駆るただ一機のみであった。
「フ……ハハハハハハ……なんという力……!! 僕はまだ強くなる……!!」
イオリアのもたらした切り札とも言えるシステムを前に、それを持たないままに勝利を治めたという揺るがぬ事実を得たリボンズは、押し寄せる喜悦に高笑いを抑えられなかった。
損傷部からの粒子の流出が激しくバインダーライフルすら発射できない有り様だが、後は月面に斃れ伏すガンダムたち1機ずつにサーベルを突き入れ、わざわざ我が手の内に届けてくれた純粋な太陽炉をこの素晴らしき勝利にふさわしい戦利品として回収するのみ。
サブカメラをようやくコクピットに映し出し復旧したモニターで、下降しつつ勝利の証である月へ斃れるガンダムを確認していこうとした矢先に、気づく。
(……ネフィリムがいない……!?)
どこへ消えたのか。
ユリウス・レイヴォネンの殺気が感じられるならばとっくにわかっているはず。それなのに何も感させずに動けたのは、いったいどのようにして?
Eセンサーを確認しようとするが、未だレーダーの機能は復旧し切らず感知範囲が狭い。
思い当たるのは、あの機体にあった
自分はユリウス・レイヴォネンと共振し能力を高めることに集中するあまり、そいつを感じようとすることを怠ってはいなかったか……?
――――リボンズがレーダーなどを確認しようとする前にそれに思い当たるべきだった、と悟るのは、手遅れを引き起こしてからの話であった。
「――――ッッッ!!」
「小娘……ッ!!」
留美が振りかぶる、刃。
上方から突き入れられるGNビームサーベルが、1.5ガンダムの頭部ごと背部のGNドライヴ[T]を貫く。
満身創痍のネフィリムを操縦しているのは、ユリウスではなく、留美。
「うまく……いったか……」
ユリウスの最後の策は、制御自体をサブパイロットの留美へと譲り渡すこと。
一度使った策である留美の思考をチラつかせるブラフは、見せた手札である以上読まれる事態も想定していた。
お互いを能力を全開にした状態に置き、共振によってより強く存在感を放つ自分へと敵の注意が完全に向いたのを確認したのちに不意を突く形になる、正真正銘最後の手段であった。
衝撃の影響でバイザーにヒビが入り、額からの出血が眼に入りまともに操縦ができそうにないというのも、ユリウスにそれを決断させた。
Xラウンダー同士の戦闘に"まさかと思うポジション"はほぼ存在しない。だが、不慣れな者は見落とすこともあり得る――――。
擬似太陽炉機でありながらトランザムを使用したネフィリムプラスは、突き入れたサーベルをコクピット目掛け引き切るまで、サーベルのドライブを続けられる粒子残量が既になかった。
動力炉と制御系を一気に失った1.5ガンダムもまた、反撃を試みることもできず、両者は組み付いたまま月へと落下していく。
静寂の月面は一瞬にして、4機のガンダムがその身を横たえる死屍累々の地へと変わったのであった。
面白いと思っていただけたらお気に入り・高評価・感想・ここすき等よろしくお願いします
励みになります