ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる   作:トン川キン児

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ROAD TO 2310

「私を出せぬ理由は凡そ察しがついた。敵の動きを考えればむしろ、掌を返して儂を求めそうな気がするが?」

「あり得なくはない話でしょうけど、いずれにしたって先生は奴らに手は貸さんでしょう」

「それはそうだ。ひとまず、御生誕おめでとうとは言っておこう」

 

 待望の長女、"タルヤ・レイヴォネン"が産まれてからすぐのこと。

 ユリウスが向かったのは、面会を望むエイフマン教授の下であった。

 相変わらず捕虜の身にありながらハロを通して情報を共有され続ける彼にとって、自らが現在置かれている状況を推察することは容易く、それ故にユリウスは呼び出されたのである。

 本来呼びつけていたのは、()()ではあったが。

 

「クジョウ君……レイヴォネン夫人かな。まあ仕方あるまい、産後を押して来いとも言えん」

「バツの悪そうな感じでしたけど、前に何言ったんですか?」

「引け目だろうよ。二、三小言を言われた程度で情けない……」

 

 顔の皺を一層寄せてむすっとした表情を隠さぬエイフマン教授。ここにいない者の言葉を借りるならば、妻には"ドンマイ"としか言いようのないユリウスであった。

 それはともかくとして、と続けてエイフマンは語る。

 

「内紛とはな……そうなるのはわかるがイオリアの計画にも脆弱性があったか」

「奴らの暗躍は間違いなく統一国家にも及びます」

「となれば、君たちがヴェーダを奪還しイノベイターとやらを排除せぬ限り、儂はどうあろうとユニオンに無事に帰ることが叶わぬわけだ。実に迷惑なことよ」

「……返す言葉もないですけども」

 

 目を伏せてそう小さく答えるほかないユリウス。この老人がここにいるのは完全に組織の事情に巻き込まれた形である以上、開き直るか平謝りしかないことは承知している。

 エイフマンの方もそれを分かった上ならば、詰めてくるのは勘弁願いたいとは思うもののユリウスにはそれを言う資格もない。

 ……置かれた状況の変化に対する相変わらずの回転の速さを見せつけられ、実際には婚約の席にも参列していたりと割と自由に出歩いているものの、長い間閉じ込められているにしてはこの老人は欠片も呆けてくる兆候がない。

 むしろキレを増して来ているようにも見えるのは気のせいではないだろう、というある種の畏れを抱くユリウスであった。

 

「奴らは、ユニオンの理念を侵すであろうな……」

「ヴェーダの力を十全に使えるとなると、国のような組織が内々にあいつらを潰すっていうことは難しいと思います」

「天上人を斃すは天上人……君は、儂にその手伝いをさせたいと思っているか?」

「無理には言わせないのが組織の方針です。俺もそうしたいですよ」

 

 ヴェーダを用いた情報統制が統一国家の中で()()()()()()の通りに行われるとすれば、それに組織の内から抗うことは殆ど不可能に近い。自浄作用というものを見込むことができない。量子型演算システムが己の想定する形で既に実現されていたともなれば、エイフマンにとってもそれは承知の上の事であった。

 内に巣食う物を排除するには、外からの刺激が必要となる時もある。

 統一世界に暗躍する者を倒し、ユニオンの理念の息づきを守るための呉越同舟。それならば、このレイフ・エイフマンとも組めるのかもしれない。

 但し、あくまでもその自主性に任せる形で。

 

「自主性を重んじるというのであれば、儂には頼みたいことがある」

「……何です?」

「奴らの活動の程をある程度見極めたと思えれば、儂の訴えに応じて儂を地上に降ろす算段を付けて欲しい。話してみたい者がいる」

「……え!?」

 

 ……御年75を超えるというのにアグレッシブなことを言い出す老人にも驚かされるが、次の言葉にはなお驚かされた。

 無茶を言うな、という点で。

 

「ホーマーの間抜けに訊いてやるとしよう。どこまで承知の上かをな」

 

 現ユニオン軍最高司令官であり、将来のアロウズ最高司令官に行方不明の身で会わせろというのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここはいったい何処なのでしょうか。見当もつきませんわね」

「君が知ることはおそらくないよ」

「あら、残念……」

 

 留美と紅龍、目隠し等をされて連れて行かれるわけでもないが、双方共に極めて道中の情報を制限されながらようやく辿り着いた本拠地。

 案内役のリジェネが二人を誘う先は、イノベイターの本拠地。

 壁面のモニター全面に自然溢れる光景が映し出された大広間。その中央に座す大きな赤いソファに、彼は腰掛けていた。

 

「やあ。しばらくぶりだね」

「ええ。そちらも息災で何より」

 

 己の肉体へと戻ったリボンズ・アルマーク。

 そう時の経たない間に脅し文句はおろか、銃口を向け合った間柄であるというのに、気さくな挨拶で迎える彼は実に奇妙に映る。

 ……はずであるが、留美はそのような素振りはおくびにも出さず返礼する。そうできる理屈は単純なもので、奇妙ではなく必然であると思えているからである。

 

「君の見立ては合っているよ。僕らも先立つ物はそれほど多いわけじゃないから、申し出は嬉しく思うね」

「ソレスタルビーイングへの出資を続けていってもそう言えるのですか?」

「ああ。君は変わったからね」

 

 堂々と二心を口にする留美、それを容易く受け入れるリボンズ。

 その場に立ち合いそれを聞き届けるリジェネにとっては、甘言に丸め込まれた愚かな女が己の財産を売り渡す瞬間にしか映らなかったが、二人にとっては異なる間合いが流れていた。

 

「それで、引き換えに君は何を求めるのかな?」

「戦いの場を。私が統一国家における陰の地位を得ることも黙認して頂きたいですわ」

「ふむ……わざわざ用意してはあげられないけども」

「結構ですことよ。席は自分で取ります」

 

 聞く者が聞けば失笑を買うような、その大言を聞き届け終わり……。

 リボンズは立ち上がって、拍手を2、3度打ったのちに振り返って彼女を称賛した。

 

「流石だ。僕を墜としてみせただけのことはある。許してあげよう、やってみせたまえ」

「では、そのつもりでやらせてもらいます」

「上り調子の様子を見させてもらっているからね、かなり期待しているんだ」

「ええ……最近、嫌々にやっていた仕事も面白いと思えるようになりまして」

 

 留美の財力の源泉、世界各地に拡がった華僑ネットワークの集大成として作り上げられた最大のシンジケート・王商会。

 医療技術の進歩著しい24世紀の長者としては異例の先代急逝、そして世襲した女性当主による運営。加えてシンジケートの誰もがその存在を知るわけでもないソレスタルビーイングに対する出資への偏重、即ち宛先不明の資金流出という不安材料により4年間の間成長が停滞し続け、統一国家構築に伴う体制の解体・終焉すら囁かれ始めていた。

 

 ……しかしそれも既に過去の話で、若き当主の遅ればせながらの台頭によって今や商会は半年も経たぬ間に揺り戻しつつある。

 地球圏統一国家設立に向けた業態変化に向け経営資源の集中を目指し、当主の世代交代により陳腐化を辿りかけていたことを口実にコネクションを再編。これより先においても成長を予測されるコネクションは維持あるいは強化、足枷となることを予測される部署はその固有の販路、有能な人材を移管しつつ売却、あるいは"排除"。

 驚くべきはその意思決定の殆どが、留美によって行われている点であった。

 "毛先にまで少女の神経が通っているかのよう"とも称される緻密な経営戦略は、旧人革連領のみならずユニオン及びAEU経済圏をも現在進行形で牽引している。

 GN粒子と地球圏統一。人類史上最大規模のブルーオーシャンの唐突な発生と既存構造の再編に際し、いち早く動き出す彼女はその存在感を高めるばかりである。

 

 ……即ち、王商会にはソレスタルビーイングとイノベイターという異なる組織を秘密裏に支援し続けてもなお有り余る資産を形成する用意が、既にできつつある。

 現実へ目を向ける意味を取り戻した少女は、()()とは全く異なる未来を作り出そうとしていた。

 

「そうだ……今度来る時には仕上げておくから、君に面白いゲームの招待を用意しておくよ」

「惹かれますわね……一体何でしょうか?」

「それはお楽しみさ。僕に勝てればとてもいいものが得られるよ」

 

 彼女の求めて止まぬものとは、自分と同じ。

 己の意思を徹すための力。それを得るためならば必ずこの賭けに乗るだろう。

 そしてその資格も持つ。月面での対峙において、リボンズはそう確信していた。

 

「有意義な時間でした。それでは、今日の所はお暇させていただきます」

「随分と急ぐね? もてなしくらいはさせて欲しかったが」

「何分世界の動きも早いもので。自分のことでいっぱいいっぱいです」

 

 ……自分から暇を告げておいてのことではあったが、当然ここにいると確信していた筈の人物の姿が結局最後まで見当たらないことに留美は違和感を覚えて問い質す。

 彼女はいったい、今どこにいるのかと。

 

「そういえば、今日は彼女の姿が見当たりませんが……」

「ああ……いると面倒になるから前もって呑ませておいた」

「……手馴れてきていますわね」

 

 リボンズのそれは圧倒的に正しい判断であると、留美はその心中で称賛した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マジどうなってんだよこの船!! 遠すぎだろトイレよォ毎度毎度!!

 

 ……排泄という代謝のサイクルが極めて長い戦闘用イノベイドの運用する外宇宙航行母艦という設計思想上、それに要する施設も可能な限りオミットされているソレスタルビーイング号。

 即ち、通常の情報収集型イノベイドや人間などによる急を要するそれが生じた場合、現在位置によって()()()()かどうかは極めて大きな振れ幅がある。

 それは、パスレルも例外ではなかった。

 

おい!! 聞いてっかボケ!! ああもう無理だからねー☆バイバイバイバイバイバイ合流できそうにありませんベロベロベロベロベロケロンケロンケロンケロンケロン

 

 ここにはいない船の管理者リボンズに向け、あらん限りの呪詛を振りまきながら、パスレルは元々それほど備えてもいない恥と外聞を取っ払い"破綻"を未然に防いだ――――。

 ――――周囲に対する()()の度合いに関しては、一切の注意を払わず。




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