ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる 作:トン川キン児
統一への疑義
西暦2311年1月1日。この日、人類は一つとなった。
国連軍は既にその集結目的である対ソレスタルビーイング作戦"フォーリン・エンジェルス"を終えていたが、ユニオン、人革連、AEUの三大国家軍の統合は、GN粒子技術流出・拡散防止という三勢力全てによる同意を履行するために、その後も解散されることはなかった。
2309年時点でも既に、彼らは"国際連合平和維持軍"と名称を変えて存続。国家の核心たる暴力の統合は、国家そのものの統合をも必然的に誘発する。
そして今日、様々なる政治的合意に基づき三大国家を中心とした国連は発展的解散を宣言。
同時に旧国連加盟国全328ヶ国による全会一致の同意に基づき、全加盟国の政府機能の一部を統合し、地球圏に存在する全国家の統一を目指す新政体を発足する運びとなる。
"地球連邦政府"。人類史上初となる、統一国家の誕生であった。
史上最大の偉業、人類の理性の勝利とまで謳う者も存在したこの歴史の転換点は、しかし大きな光として大きな影も落とした。
その代表たるものが、アフリカおよび中東国家、及びモラリア共和国のように世界各地に点在するPMCトラストによる軍事立国を中心とした軍事力解体及び統合に応じない国家、即ち連邦非加盟国群に対しての武力による制圧。
国連への加盟、加えて該当地域における太陽光発電送電システムの確立と引き換えに石油産業の引き渡しを迫った地球連邦政府。拒んだアフリカ及び中東。以前と寸分違わぬ同じ構図が繰り返されたことから、これを第六次太陽光発電紛争と呼ぶ動きもある。
しかし、GNドライヴ搭載型モビルスーツという強大な軍事的アドバンテージを独占する地球連邦は、四半世紀以上にも及んだ太陽光発電紛争の二の舞を演じることはなかった。
GN粒子技術が齎す圧倒的な力により、現在に至るまでそれらの国家群は完膚なきまでの敗走を繰り返す。
圧倒的な戦力差と百年単位で隔絶した技術格差。
もはや地球連邦の武力に敵う者は、この地球圏に存在し得なかった。
統一のため現存する国家固有の軍事力すべての解体への邁進は旧国連時代から続けられており、今やそれは弾圧や虐殺を伴う征服事業とも言い換えられるものに近しくなりつつある。
旧称ラ・トゥール、現アフリカタワー近辺におけるそれは対エネルギーテロへの優先的な対処を名目として特に苛烈かつ迅速に進んでいた。
こうした急進的かつ独善的とも取れる地球連邦の活動に対して、その内部からも疑問の声は数多く上がることとなり、時には情報統制の網をすり抜け現場にてその実態を知る高級軍人層の離反すら決心させた。
それらはやがて自然に合流し、ゲリラ的活動へと方針を転換した多くの連邦非加盟国や武装勢力と強固に結びつく国際的なネットワークを形成し始める。
反地球連邦政府組織"カタロン"の誕生である。
寄り合い所帯とも言えるカタロンは必然的にその活動の全てをコントロールできているわけではなく、むしろ末端による無差別報復等の過激な行いが地球連邦へと正当性を与える。
加えて未だ記憶に新しい人類史上最大のエネルギーテロ。樹立したばかりの連邦政府は、これらを無視できぬ治安上における問題であると断定し、通常の軍よりも迅速な作戦遂行を可能とした、より攻撃的な部隊の設立を認可する。
対テロ組織掃討へより特化した装備が許可され、即時的な超法規的措置を可能とする強権を持つ異なる組織とも呼べるこの部隊の設立に際しては反対の意見も挙がったが、結局は総意により押し切られた。
後の2312年、独立治安維持部隊
変わらず続く怨恨と暴力の連鎖。
世界そのもののシステムを一変させるほどの技術革新を経ても、人類は未だ真の意味での変革を遂げられずにいた。
うねり続けるその世界の中で、人々は否応なくその流れに巻き込まれていく。
そしてソレスタルビーイングは、ガンダムは――――。
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「……このような政策が軌道に乗るとはな……」
連邦政府発足から1週間と経たない1月のこと。眼前に広がる光景に、エイフマンが呟く。
中東・ルブアルハリ砂漠。迷彩被膜を展開しながら低空を航行するリィアンが捉えているのは、大規模GN粒子散布装置とそのパイプラインの建設現場である。
王留美からの確定情報により得た散布装置の敷説ポイント。先日、潜伏するテロ組織の情報網を遮断するため中東部全域へとGN粒子の大規模散布措置を決定した連邦政府だが、政策の決定から間もないにも関わらず既にここまでの準備を進めていた。
8割方建設を終えているその施設群が証明していることは、政策はその正式決定以前より既定路線として進められていたということである。
テロ組織もろとも、中東国家の経済活動の大半を機能不全に追い込む実質的な経済制裁を行うことを。
「今までの見てりゃわかるようなもんでしょ。おじいちゃんさァ」
「軍部の暴走でカタがつけられるこれまでとは訳が違う……イノベイターめ……」
月面でのヴェーダ奪還作戦失敗からソレスタルビーイングはその活動を大きく縮小し、その焦点を王留美を中心としたエージェントによる情報収集と、次世代型ガンダムの開発に絞った。
2311年時点でもその方針は継続されている。その一環が、この偵察活動である。
マグナス・アルハンゲル率いるチームトリニティはこの約2年間、地上における治安維持軍、保安局及び今回新たに設立された独立治安維持部隊を含め様々な連邦政府の決定とその活動の実態をつぶさに観察し報告してきた。
そして、その殆どにレイフ・エイフマンは同行している。
何故それを許されたのかと言えば、他にやることもなかったからとしか言いようがない。しかしエイフマンにとって、この約2年は判断材料として十分すぎるものであった。
過熱する連邦軍の攻撃性、民間人への無差別攻撃を伴う制圧、それらに対する不十分な抑止。己の眼で、つぶさに見てきた事実である。
目の前の光景はトドメと言っていい。もとより三大国家は自国民からの反発をもたらす体面の悪い直接的制裁を嫌い、より間接的でメディアからも国民が認識し難い経済的制裁による人民の抹殺を計ることがほとんどである。
だがそれも、仮初の姿であった。
大いなるゼロサム・ゲームに勝利するために三大国家は直接の衝突を避け、互いの火種を煽り立てる以上、一方から制裁を受けようとまた一方から支援を受け取ることもある。
三大国家の国力を支える太陽光発電そのものに噛みつく狂犬・中東国家群にさえ、民族紛争や内戦によりその構図は存在した。
貧困と暴力、絶えない流血に喘ぎながらも、踏みつけにしたその犠牲の上に立てる者は完全に干上がることはない……そのようなある種の秩序が保たれていた。
だが今、そのステージは確実に一つ上がった。
地球連邦政府は、将来的には中東に生きる全ての人民を地球上から完全に抹殺するつもりであり、それを軍という組織の暴走でなく民意で決定したことがここでわかるのである。
圧倒的武力と人為的飢饉、その両面によってのジェノサイド……。
呆れたように言うネーナと、コクピットのユリウスには既にこうなるという予測がついていた。ヴェーダがある以上、世界はイノベイターの思うがまま。彼らの意向がそのままこの現状である。
同様の可能性とてエイフマンも導いていた。しかし、得られる全ての情報は結局の所ソレスタルビーイングが得たものに過ぎない。
全てを鵜呑みにして手を貸せば、自分は口車に乗せられユニオンの理念の崩壊に手を貸すことになる可能性がある。それだけは絶対に避けなければならない。
そのために、老体に鞭打ち現状を己の眼で確かめる為約2年にも及ぶ同行を続けた。
果たしてその結果が、眼下の光景と――。
「……ヤツめ……!」
――元ユニオン軍司令ホーマー・カタギリの、独立治安維持部隊最高司令官就任の報である。
これこそが、最後の一押しであった。
ユニオン閥最高権力者とも言っていい彼自身の強い意向による、
それが真実であれば地球連邦にはもはや、"世界の警察"たる決然とした正義を持った国家、ユニオンの理念がどこにも引き継がれない事を完全に意味する。
他ならぬこの男が、多数派への迎合を選んだか、イノベイターへの恭順を選んだかによって。
「レイヴォネン君。夫人と連絡を取ってくれ」
「やる気なんですか」
「……もはや傍観してはおれん。儂は自分自身で奴を問い質すこととする」
エイフマンの意向を基に留美との連携で固め続けていた、ホーマー・カタギリとの接触を行うためのミッションプラン。エイフマンは、その発動の可否をスメラギへと問うことを決める。
今この世界において、老い先短き己が何をすべきかを定めるために。
「久々のデカいお仕事じゃん?」
「お前は置いてくかもしれないぞ。やるならスマートにやらなけりゃならないことだ」
「あ゛? あたしのやる事が雑だって言ってます?」
「そうだが……い゛っ!」
気持ちの逸るネーナに冷や水をかけるような言葉を浴びせ、その尻たぶに膝を喰らうユリウス。
……3年も行動を共にして彼女についてわかること。元々なかなかにたくましかった心持ちの程は、ソレスタルビーイングとの面々の交流によって再会の頃の弱り様とは見違えるほどである。
リンダやクリス、フェルトたちを中心に帰属意識が強く根を張り、ユリウスにとってもそれは人と人との関わりというものの力をまざまざと見せつけられるような過程だった。
元々ガンダムマイスターとして作られただけあり並の兵士では敵わないが、天井のパイロット達には……といった腕の程もそれなりに育ってきている。それでも火器管制の複雑化が予測される新型の制御には手こずりそうな未来が見えるが。
が、一方で相変わらず努力も忍耐もあまり身に付いたとは言い難く、口汚さも相変わらずで留美との仲も改善の兆し未だなし。これらは生来のものであるが故だろう。
同じチームに彼女ら二人がいることがユリウスの寿命を縮めている気がしてならないが、さりとてどちらからも目を離すわけにはいかず。かたや兄との約束、かたや爆弾。
「あたしだってパーティードレス着たいし。絶対ついてくかんね」
「……カミさんがいいって言やあな……!」
「娘を育てていたから言うが、ワガママ放題をやらせておくとこういう痛い目を見るぞ」
……それは本当に教育方針として考えている。ずっと。
ネーナとの付き合いは子育ての予行演習にしてはハードすぎはしないかと思いながらも、エイフマンの言葉には深く頷くユリウスであった。
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