ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる 作:トン川キン児
「さてな……うまくやれてるもんかな……」
自分の記憶の中では、本来こういう役割は1年後にティエリアと共に刹那がやっていることであって、まさか自分に役が回ってくるとは思いもしなかった。彼の潜入方法は確か運転手としてだったろうか?
いずれにせよ、あれはソレスタルビーイングが真の敵を見定めるために必要だったミッションである以上、イノベイターという存在が組織内で完全に共有された現状では完全に必要がなくなり、未来にも起こり得なくなったことである。
だから、こういう事も回ってくるのだろうか……。
駐車場の登録車両を確認するふりをしつつ、専用端末でエイフマン及びネーナの現在位置を観測しながら、ユリウスは独り思索していた。
「そこの君」
背後からの足音と共に呼び止められたユリウスは、顔を伏せつつスクリーンを消す。
……その時点では、どこかで聞いた声ではとしか思えなかった。
「二号楼まではどう行けばいいかな。何分私はここが初めてなものでな」
――――思い当たる特徴的なその声に素早く振り向いた時には、既に銃口が向けられていた。
「……グラハム・エーカー……!」
「なんと……君か! ユリウス・レイヴォネンとはな。久方ぶりに私の勘が冴え渡ったか」
爽やかでいてどこか粘着質な何かを感じられるその声の主は、思い当たる限りグラハム・エーカーただ一人にしかなく、気づいた時にはユリウスは既に先手を打たれていた。
……足音からして恐らく真っすぐここまで向かってきたというのに、X領域で常人のそれとは異なる己の直感をすり抜けて、ここまでされた。
どういう理屈で真っすぐ向かってきて一度で顔を伏せていた自分を引き当てられるというのか。毎度のことながらこの男は本当に気味が悪い。どうしようもなく気味が悪い。
もしこの男が仇敵の一味である自分を害そうというのであれば、既に詰んでいる。
しかし、殺意を形にして感じ取ることさえできる自分の能力に引っかからなかったということは……?
「道案内をしてくれたまえ。君の仕事だろう?」
「……俺の仕事ではないんだが……持ち場を離れることになるから」
「では、そういうことにしてもらおうか。私の我慢弱さは折り紙付きなのだからな」
相も変わらずこちらの事情など知ったことではないという巻き込み方をする男。そういう人間にどういう企みがあるのかは見当が付かないが、今は従ってみせるしかない。
未だミッションは破綻していない。目的の達成まで時間を稼ぐことは可能……。
「……わかったよ……"マギーだ。酔っ払いに絡まれた、誘導するので持ち場を頼む"」
「クッ。私は酔っ払いか、酷い言い草だな」
「先を行けばいいんだろ……」
一夜限りの同僚に無線連絡を送りながら、ユリウスとグラハムの二人は歩みを進めていく。
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(うんざりだってのよ。脂ぎったジジイばっかさ……)
"過度な期待は持たない方がよろしくてよ"という留美の忠告はあれど、未だ少女と変わらぬ心を持つネーナにとって、社交界という場が纏うその煌びやかさを実際に目の当たりにすれば期待を抱こうものだった。
そしてそれが、醜い下心を覆い隠し、美しい蝶を絡めとるための蜘蛛の巣であることが実感としてわかれば、幻滅もひとしおである。
媚を売り、おもねり、取り繕って利権へと群がる人の形をした欲の塊。みにくい虚構。
やらねばならないこととわかっていても、二度はごめんであった。
毎日のように仮面を被りこれに曝されていれば、
(こんなもん着て気合入れたってさ)
何の意味もない。見せたい者に見られずそうでない者がジロジロと身体ごと値踏みするための物なら、浮かれ気分を抑え込んで替えを着て来ればよかった話だった。
……見せたかった者。それはやはり、今も心の中にいる
(……あぁ、何考えてんだろもう……! あの女のせいだもんねぇ……!)
ずっと心の中で、何かのつかえが身をよじり続けている。それを植え付けてきた犯人を捜すべくネーナは周囲に睨みを利かせる。
……来たいと言ったのは自分。仕事はきっちりと済ませなければならない。ようやく取る気にもならない誘いの手が緩まり、目標の様子を探ることができる。
周囲を見渡した時、それはすぐに見つかった。自分とは違い常にちょっとした人だかりを作っていた一角がある。
そこには見知った顔である、今の不快な気分を作った主犯である留美がいて、最優先目標であるホーマー・カタギリも存在し、周囲は国有・民営問わず旧人革連系上層の軍事部門関係者に取り囲まれている。
(あいつは取りついてっけど……あれじゃまだ時間かかんでしょうね)
出番まではまだかかる。そう思い眼を切った後、すぐ近くに少し前までは見なかった顔がいることに気づいて、ネーナの視線はそちらへと向く。
――――この時までの視界に入る連中に彼女の関心を引くような人間は存在しなかったが、何故だかその女は、自分の視線を吸い寄せるように引き付け続けた。
自分よりも少し黒々とした赤い髪の後ろ姿。癖毛気味なところまでもよく似ている。
隣にいる長いポニーテールの男がこちらの視線に気づき、目の前の男がそっぽを向いているのが気になったのかその女も振り返りネーナを見据える。
「……ん……? 何か、すごく似ていないかい?」
「え、ええ……親戚? いたかしら、あんな子……」
その顔は、鏡に映したようにあまりにも自らに似ていて。
血の巡りが早まり、心臓の拍動が聞こえるような感覚をネーナが襲った。
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「結婚ん!?!?!?」
「そうまで意外か? 大学での我が友の引く手あまたぶりはちょっとしたものだぞ」
ビリー・カタギリが結婚している。あれほど奥手そうな人間が。
ともすれば片思いの相手であるリーサ・クジョウ――
グラハム・エーカー
「相手は!?」
「ミーナ・カーマインとか言った。院が同じだったと本人から聞いたがね」
聞いたことのない人間であった。しかし、思い人を他に作る彼を射止めるのだから相当な肉食系と言える女に違いないとは思える。
言われてみればあの男、ユニオン軍の一司令を任されるほどの権力者を叔父に持つ高い家格を有し、自らの頭脳明晰さは一軍の技術顧問に収まることもできる次元のもの。要するに、スペックが高い。
加えて女性経験皆無ともなれば格好のエサ。狙いを定めている者がいてもおかしくない。
……妙な納得を得たところで、ユリウスは自ら逸らしてしまった話の軌道を戻す。
「……俺の結婚話はどうでもいいだろ。このチェーンは怪しいもんじゃない」
「私には個人的に気になったのだよ。君は私と同じ孤独な戦士だと思っていたものでな」
「俺には孤独はキツかっただけの話。博士の話がしたいんじゃなかったのか?」
以前には着けていなかったそれを怪しみ、何らかの仕込みを疑いグラハムが差し出させようとした黄金のチェーン。それをユリウスが拒んだところからこの手の話が始まった。
誰が結婚したとか、していないとかということだ。
……無論、ユリウスには知る由もない。
同類であったと思い込んでいたユリウス・レイヴォネンは、己とは違う存在。人間らしい家族への愛と、戦士としての誇りと、自由な空とを同時に手にしたまま生きることができる、かつての上官と同じ存在。
不器用な生き方しかできないグラハム・エーカーとは、違う存在であるということ。
それを妬ましく思う浅ましい己の心中と、戦っていることを。
「博士をどうしている? 生きているはずだ。答えてもらおう」
我執を振り切らんとして、グラハムは
その手掛かりとなる存在がノコノコ向こうから現れている。まさに千載一遇の好機であった。
「
「……なに……?」
「このミッションはエイフマン博士自身の意向だ。自分でホーマー・カタギリに真意を問いたいと言うから、俺たちは力を貸した。もうすぐ博士は奴と接触する」
「馬鹿な。捕虜の意向で組織が動くというのか」
「そういうこともあるんだよ。今はソレスタルビーイングもまともな組織じゃないんでな」
銃口を向けられているかもしれないとしても構わずに、ユリウスはグラハムへ振り返る。
「あの人にとって何が一番大切なのか、わかるだろ?」
「……ユニオンの理念」
「それが侵されてるかもしれないとなったら、あの人は居ても立ってもいられないんだよ。これがどういう意味か……」
「……わかるつもりだ。私とて最前線のパイロットだ、政府の意向は自らの行いから伝わる」
国連から地球連邦へ。フォーリン・エンジェルスを生き残った数少ない兵士として今も最前線に身を置き続けるグラハムには、今日までのその過程で政府がどれ程に先鋭化しつつあるのかも肌身を通して伝わってくる。
その尖兵の一角となり、その行いによって拠り所である軍人としての誇りを徐々にすり減らしつつあるのは、紛れもなく自分なのだから。
そして、そこでは恩師が、国家が謳ったユニオンの理念は限りなく薄まりつつあることとて感じられている。それは恩師にとって全く認められないことであろうことも。
点と点が、半信半疑ながらにグラハムの脳裏で繋がり始めている。
「ホーマー・カタギリの……いや。政府の裏に、何がいるのだ」
「俺たちをも裏から操っていた存在と言ってもいい。正体は掴んでいる」
「……教授を返すつもりがないのは……」
「返した途端に殺されかねん。うるさい爺さんだが自由にしたくてもできない」
「……君の口は、なぜそこまでのことを私に漏らすのかな?」
「それはな……」
グラハムの左手が突きつける銃口を、ユリウスは右手を被せて下ろさせていく。
「お前は、俺のことは
……向かい合ったお互いの笑みは、まともな人間にはたどり着けない獰猛さを湛えていた。
ユリウスがそうまでしたのは、こうすることを求められているだろうと思えたからだった。
「荷が軽くなった……気遣い感謝しよう。これで少しは軽やかに飛べるというもの」
「爺さんは重荷扱いか」
「口さがないと笑うがいい。だが、やはりこれが私の生き方だ。パーティは好きにするがいい」
超えるべき高みも、愛する物も、全て空に見出してしまう。
それがグラハム・エーカー自身も自覚する性分。やはりそれに従い生きていく。
空を駆けるこの男に勝って生き残り、己の存在を空に証明する。己の欲求にどこまでも忠実に。
「そいつもお前の武士道か」
「……BUSHIDO? 何だそれは」
「えっ」
最後に言っていたことの意味は、グラハムにはよく理解できなかった。
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久方ぶりに知己と再開というのは決して喜ばしい事ばかりではない。齢57を数えた人生の中で、ホーマー・カタギリはそれもよく理解している。
レイフ・エイフマンとのこの場での再会も、その一つだった。
「生きておられたとはな。甥の推測は当たっていましたか」
「ビリー君がそう言ったか。やはり彼は優秀じゃよ、貴様よりかよほどな」
自慢の甥からの進言でその可能性は考慮していたものの、自らこのような形で出向いてくるなどというのはホーマーにとっても完全に想定外である。捕虜生活の老人がそこまでの活力をまだ保っているとも思えなかった。
上役との応対が続くことを予想してあらかじめ設けていた、休息を兼ねた座禅による精神統一の時間。場所はできるだけ和室を好むためそこへ通される。
SPさえも外を固めているのみに留まる唯一のこのタイミングで、老人はここに待ち伏せていた。
即ちこの老人は、何らかの手段でこちらのスケジュールを完全に読んでいた。恐らくはソレスタルビーイングに関連する何者かによる情報の提供、そして協力によって。
問題は
後者であった場合、自分は用済みの存在として即座にここで死ぬ。しかし、だとすればこの老人を使いに出している事が不自然であるから、恐らくは前者。
それを問い質そうとホーマーが口を開く前に、エイフマンが先に問いを投げかける。
「貴様は誰の意思で動いている?」
「……仰っていることの意味がよく」
「イノベイターか? それとも己自身の意思で今の世界を動かすのか」
……眼を見開いたホーマー。
そこまで掴まれているとは思いもしなかった。この老人が、という意味でもそうだが、上位者を名乗り世界を裏から支配する彼らがそうでは万能とは程遠く感じる、という意味でも。
己自身もわずかばかりの欺瞞を感じながらも、その言葉に対し返答する。
「……彼らこそ人類の上位種に相応しい能力を備えた存在。人類の統率を任せられるに値する、人類が生み出した存在ではないか」
「奴らの導く先は人間の自由意志の破滅であろうが。ユニオンの提唱する自由と正義によって導かれる人類はどこへ行った!」
「"太陽エネルギーと自由国家の連合"を名乗りながら、実体は我々アメリカ合衆国による独裁同然であったように、そんなものは欺瞞にすぎない」
齢76を数えても太い血管に青筋を立てて、エイフマンはホーマーの胸倉を掴む。
「我々は人類が真に希求して止まぬ本質に至るべきなのだ。恒久和平という名の本質にな」
「……欺瞞と言ったか……貴様が……誰あろう貴様が!!」
例え欺瞞や詭弁であろうとも、信ずるところもなく無軌道に行くだけであってはならないと人類に差し伸べる一つの道。それが理念という存在に他ならず、それを持たぬ者が時代を先導することなどあってはならない。
その程度さえ取り繕わぬ短慮な存在が、人類をより良き方向へ導いて行けるなどということは全く道理に合わないことである。
ユニオンの理念の守護者たらねばならないこの男が、これほどまでに堕落したという事実。
最早、イノベイターは除かれなければならない。どんな手段を用いたとしても。
「……それにしても迂闊なお方だ。丸腰で私の前に立つのですか?」
いつの間にか懐から出されていた拳銃を顎に突き付けられ、エイフマンは掴んだ胸倉を離し後ずさる。
「生憎じゃが、捕虜の身の上では武器を持たされぬものでな」
「なるほど、道理ですな。彼らも非情なことです」
それに加えて、元々この男を除くつもりで来たのではないし、そうする気も起きなければ必然もない。自らの手による引導を渡したところで、いったい何になるというのか?
何にもなりはしない。代わりなどいくらでも建てられるどころか、建てやすくさえなる。
自分はテロリストでもない。そう思えばこそ、銃を持って臨もうとは思わなかった。
……教授として日の浅いうちに面倒を見た男であるから、という私情が無かったと言えば嘘にもなる、が。
「撃つのかな、儂を」
「貴方の頭脳は未だに惜しいですが、統一世界に告発者は必要ないのですよ……」
ホーマーの指が、手に持つ拳銃の撃鉄を倒した。
Q.スメラギさんが転がり込んでこなかった世界のビリーどうなんの?
A.女の影がないのを察知した超肉食系女子にあっさり食われます
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