ガンダム00世界で留美やネーナやコーラサワーとイチャイチャしながら生きる 作:トン川キン児
地球からラグランジュ3へと戻り、時は数日経つ。
今日も生産設備前のモニタールームには、これまで見なかった慣れない顔が張り付いている。
「安定稼働領域まで持ち上げられれば、後はそのままいけると思うがね。理論に沿えば」
「より強くスタートをかけるって発想はなかったけどなあ……だからって一対しかないドライヴでそれをやれってんですかい。リスクがデカすぎる」
暫定的にではあるものの、正式に実質的な組織の長であるスメラギから技術チームの一員として任を受けたエイフマンは、水を得た魚が如くその辣腕を遺憾なく振るっている。
やってきて早々に、彼は持ち込んだ理論によってツインドライヴ技術に関する諸問題を次々と検証・解決しつつある。
ドライヴ同士の同調率を決定づけるファクター群……根本的に、トポロジカルディフェクト構成時に生成される固有の量子波形はどのようにして決まるのか。
固有波形に関する干渉は、トポロジカルディフェクトが既に生成されてしまい、ドライヴそのものを停止することが不可能となっている現在でも可能か否か。
似通う固有量子波形を持つGN粒子同士を衝突させることでトポロジカルディフェクト2基間の共振を促すのであれば、
未だ不明な点が多い粒子生産量二乗化の機序において、何が起こっているのか。
前者二つに関しては検証を重ねていく必要性はあるものの、すでに一つの決着を見ている。
ソレスタルビーイングはこれにより、理論上新規にGNドライヴあるいはそれを代用する機関を生産する場合、開発段階でその固有量子波形をコントロールすることが可能となった。
理屈の上では、99%の同調率を持つツインドライヴ採用機をドライヴごと新規に生産することが可能である。
……問題は、現時点で組織に新規のドライヴ生産のために木星まで航行している暇はないということ。しかし技術的な財産であることに変わりはない。
そして、固有波形に関する干渉、いわゆる量子波形整波に関する基礎理論の構築成功。
トポロジカルディフェクトの固有波形そのものに干渉することは不可能ではあるが、生産されるGN粒子に対する僅かな量子波変調を試みることは可能であることを示唆するこの理論は、ドライヴ間の同調率が例え僅かに安定稼働に届かなくとも、外付けの装置による整波システムにより10~20%ほどの粒子同調率引き上げを可能とすることを示している。
現状、オリジナルのGNドライヴ中最も安定稼働の公算が高い0ガンダムとエクシアの太陽炉が揃い、本稼働においてそれでも安定領域まで届かなかったとしても、整波システムの構築・搭載に成功すれば問題の解決が成ることを意味する重要な根拠であった。
「儂は方法の一つを提示したにすぎん。しかし、同調率80%の壁を打ち破れるほどの強烈なスターターとなり得るものはトランザム以外にないように見える」
「そんなことをオリジナルの方でやる前に、アレでどれだけ稼働データが集まるかだな……」
本日の議論の的となっているのは、三つ目の理論の運用である。
根本的に、波形が同調していない、即ちツインドライヴの同調及び機体制御そのものさえ不安定な状態でトランザムを行うということ、それ自体が危険なのである。
粒子生産量がそれにより一時的に爆発的増加を見せるとすれば、緊急停止が働く前にドライヴがオーバーロードを起こしあえなく自爆、などという目も当てられない事態にも陥りかねない。
それこそがイアンの言うところの"デカすぎるリスク"である。オリジナルの太陽炉2基をまとめて失う大惨事の可能性など、看過できない。
エイフマンとてそのリスクは承知の上での提案だったが、しかしひとまずは実際の稼働データの集積が十分になってから、整波システムが間に合わなかった際の緊急措置の一つとして検討するというところに落ち着いた。
……四つ目については理論自体が研究段階であるため、話題には上がらない。
実際に二乗化の観測を行えなければ、ほとんど予測のつかない事柄である故だった。
「にしても、ここまでやってくれるたあな。もっと早く口説き落としてもらいたいもんだったぜ、
「無茶言うな」
「生憎だが君たちと違って儂は身持ちが固い」
どういう意味か、とは問いたださなかったユリウスとイアンであった。痛いところをつつかれているのがわかりきっていたから。
ともかくとして、イアンのそれは本音であった。エイフマンが合流してからの僅かな日数で、新型機開発の進捗は飛躍的に早まったのである。
研究畑らしく理論が先行するタイプかと思いきや、技術畑としてのシビアな視点も持ち合わせる。
自分はヘリオンの開発チームの一人、彼はフラッグを含め長年ユニオンの主力MSを生産し続けるアイリス社の設計主任。歳の功というだけではなく、この辺りが主力量産機のプロジェクトリーダーには就けなかった己との違いなのだろうかと、イアンは一人僅かな劣等感を抱く。
「あんまり夫をいじめないであげてくださいね〜。結構繊細ですから」
「む……そういうことでは……」
「そうですぅ!ミレイナがゆるゆるな感じに産まれてきたみたいに!」
「……すまぬな。気をつけるよ」
リンダとミレイナ。防波堤として立つ家内の女性陣は、二人のせめてもの救いであったし、そういうちっぽけな比較からたびたびイアンを解き放った。
娘を持っていたエイフマンとしては、こういう手合いにはなかなか口を挟めないのである。
「おじいちゃん、結局どうすんの? コンセプトの話なんでしょ」
「うむ」
呼びかけた声の主であるシェリリンの方はというと、特にそういった事には寄与しない中立の立場と言える。恐るべき勢いの肉体的成長期を迎え、後輩として憧れを抱くミレイナの目を輝かせることはするが。
ともかく、本題は先ほどの議論の他にあった。
「……ノリエガ君、だな。ここでの呼び名はややこしいが、ともあれ儂は、此間になってようやく生産計画の委細を聞いたわけだ」
エイフマンがスメラギから聞いた、組織全体の戦力拡充計画。
拡充した戦力の運用においては、チームを再びプトレマイオスとトリニティに分け、中心となる母艦の能力を鑑みて配分する。
大気圏内航行・突入・離脱能力を持つプトレマイオス2を母艦とするチームプトレマイオスが地球上を中心とした介入行動を担当。
同様の能力を持つ小型艇リィアンを擁するが、母艦が重力下航行に適さず動力源のリソースが有限であるチームトリニティは、チームプトレマイオスに不足する戦力を適宜補填しつつ補給を受けやすい宇宙での行動を中心とする。
その上でチームプトレマイオスは、以前の武力介入期と同じくオリジナルの太陽炉搭載型ガンダム4機での介入行動を前提とし、トリニティは擬似太陽炉搭載型2機でそれを支援する。
それを踏まえたリソースの配分順位は、このようになっていた。
運用母艦となり移動拠点となり得る、プトレマイオス2並びにチームトリニティの使用していた輸送艦の改装。これをまず第一とする。
次に、生産計画における第四世代ガンダム・オリジナル太陽炉搭載型のうち、唯一正規マイスターが組織に残留する機体、GN-008・セラヴィーガンダムのロールアウト。
地球連邦の新型MS開発の如何では、これがなければ不意の接敵に際した自衛すらままならない。
そして、イアンが言った"稼働データ"を得られるアテ。
ガンダムスローネアインとドライ、同時期に同環境で製作されたが故に粒子同調率が90%台で安定すると試算されている2基の擬似太陽炉を用いたツインドライヴ搭載型の技術実証機。後発機たるダブルオーガンダムの雛形となる、新型ガンダムの開発。
基本構造及びコンセプトを流用しある程度早期の完成が見込めるものの、適性のある正規マイスターが不在であり優先度が低下する、GN-006・ケルディムガンダム、GN-007・アリオスガンダムの開発。
最後の切り札となり得る機体、エクシアと0ガンダムのオリジナル太陽炉を用いたツインドライヴ搭載型次世代機、GN-0000・ダブルオーガンダムの開発は、先行する技術実証機からのフィードバックの進捗、エクシアの太陽炉及び正規マイスターを予定している刹那・F・セイエイが未だ帰還していないことなどにより、順不同。
いずれも並行したプロジェクトだとしても、優先順位を明確にするならばこのようになる。
そしてここに、この場の本題であるもうひとつの順不同のプロジェクトが挟まる。
レイフ・エイフマンによりまず詳細設計段階までの一切を終えた状態で計画が提出されるという、工程を数段飛ばした状態から開始されているマグナス・アルハンゲル専用新型MSの計画である。
「主兵装の技術的な問題だが……」
「ああ。とんでもねえものを作ってくれたじゃねえか」
「本当にあのシステムを実用化するのか。儂は現状の技術でアレを十全に使うには厳しい物があると思っているが」
「いやいや! まだ期間はあるんだ、そこはあんたのお力添えが欲しいってもんで」
新機体の大まかなコンセプトは三つ。
MS戦闘において、有効射程を選ばない攻撃能力。
少数にて運用されるチームとしての性質から、少数での戦闘も想定した高い継戦能力。
そして、Xラウンダーとしてのユリウスの能力を十全に活かすことのできる装備の実装。
現時点でもエイフマンのプランによってほぼ全てがクリアされていると言っても過言ではない完成度であるが、イアンはその主兵装となる複合型GNウェポンについて、エイフマンが提唱したもう一つの画期的なシステムを盛り込みたいと考えている。
……問題は、実質的な設計主任にして提唱者であるエイフマン自身が乗り気でないことである。
「GN粒子がいくら原初粒子とはいえ、高濃度圧縮粒子を戦闘中という実用においてあれほど複雑に制御するにはまだあまりにも時間が要る。不可能とは言わぬが、余計なシステムはオミットすべきだ」
「擬似太陽炉採用から来る粒子供給の有限性なんざ百も承知だ。その辺はコンデンサー小型大容量化が進んでクリアの目途が立ったからこうして言ってるんじゃねえか、アレが使えさえすりゃあGNフィールドなんか目じゃない防御力と制圧力なんだぜ? 勿体ねえよ」
「今のままでは粒子消費量と費用対効果が釣り合っておらぬ。継戦能力というコンセプトは一貫するべきであろう、そういう余計なオプションを迷走というのだ」
「至近距離の制圧力に難があるのは事実じゃねえか! サーベルだけでどうにかできるほどいつも甘いマシンを敵が送り付けて来るわけじゃないんだぞ」
「それほどのインファイトを要求する局面になる前に制圧は可能だ」
「有効射程を選ばない攻撃能力だ! コンセプトには反してないだろ」
いつものように熱の入り始めたひとふたまわり年上同士の議論を見つめ、ユリウスは思う。イアンとエイフマン、正直な所お互いソリが合う人間とは言い辛い様相であると。
イアンがカッコ悪いマシンは勝てないという持論を持ち込めば、エイフマンはそれに眉を顰め。
主兵装こそが機体の特性を決定すべきだとエイフマンが語れば、機体特性に合わせた装備が選択されるのだと説くイアン。
ソレスタルビーイングというワンオフ機のパラダイスにて長年のキャリアを積んだイアン、正規軍にて制式採用と大量生産を主眼とする機体を扱ってきたエイフマン。
二人の視点は、極端に違っていて当たり前と言えばその通りであった。
「パイロットさんはどう考えてるのかな~?」
……シェリリンの一言によって、二人の視線がこちらに向く。
言い放った後はぷい、とモニターへ顔を逸らして知らんぷりなあたり、それは極めて計画的な犯行であった。
「……どっちでも」
「どっちでもいいは一番困るっつってたよなぁ!?」
そんなことを怒られてもよくわからねえんだよ、と心の中でイアンに毒づくユリウス。
"GN粒子変容システム"と言われた所で、パイロットとしてはそれが何をもたらすのか想像がつかない。理論を纏められたものを渡された所で科学者でもないユリウスには理解が追い付かなかった。
「……ネーナ見てくる」
「え!? 逃げた!! セコっ」
「相も変わらず責任感のない男よ」
その背にシェリリンとエイフマンからの辛辣な言葉を吐きかけられつつ、いそいそとすぐそこの格納庫へ向かったユリウス。
よほど身体に障るようなものでもよこさない限りは好きにしてくれ、と前々から言っているのにこちらに話を振るな、とも言い返す気にならなかった。
かつん、と床を鳴らす音が背後から聞こえて振り返るネーナ。一瞥したのち、誇らしげにふん、と鼻を鳴らし、腰に両手を当てまた元の向きへとなおる。
視線の先にあるのは、ガンダム。
擬似太陽炉使用ツインドライヴ搭載型技術試験機。そのシルエットはある程度スローネの流れを組んではいるが、第四世代ガンダムの例に漏れず、対擬似太陽炉搭載型MSを主眼に置いた装甲板の適切な再配置等で大きく細部が変更されている。
……とはいえ、そもそも上半身より先はほとんど完成している部位がない。
塗装されないEカーボン装甲の発色そのままの、いわゆるロールアウトカラーのまま前腕からはGN粒子供給用等の各種コードが垂れ下がっていて、その周囲はハロが装着する作業用ロボットであるカレルが忙しなく動き回り開発作業に従事している。
普段であれば興味ないだとか一蹴しそうな光景であったが、この機体を見ている時だけは不思議と飽きるようなことは感じられないネーナだった。
「見てたってどうしようもないだろ?」
「いーの! あたしらの魂みたいなもんなんだから」
スローネアインとドライのGNドライヴ[T]を載せて、自分がマイスターとして戦う機体。
機体ごと失われたツヴァイのものを除けば、チームトリニティを遺した全てが詰め込まれるこの新型は、その魂であるとネーナに言い切らせるのも道理である。
とはいえ、技術者でもないネーナにはここで見物をさせておくよりもやらせることが他にある。
「じゃあ、こいつを乗りこなすのにシミュレーションをしなきゃならんだろ。役割のある距離がただでさえ多いんだぞ、こいつ」
「そりゃやるけどさ。
「俺だってそうしたいよ。そういう時間じゃないんだからさ」
決定したこの機体の戦術面におけるコンセプトは、スローネシリーズの統合。
アインの遠距離戦・砲撃能力、ツヴァイの近接格闘能力、ドライの索敵・撹乱等電子戦能力。
その全てに最大出力の粒子を配分してなお、莫大な粒子供給をもたらすツインドライヴに任せればコンセプトは容易に実現可能ではある。しかし機体は一つである以上、搭乗者であるネーナはこれを扱う負担を一挙に引き受けることになる。
機体バランスの変更もあり、スローネドライとは比べ物にならない習熟を要求する機体である。
なればこそ、
父母揃って娘の面倒を見てやりたいことなどやまやまではあるが、地上にもよく赴かなければならない立場では限度がありスメラギやリンダに任せっきりの期間は伸びるばかりであった。
先のミーティングとネーナの監督が済めば飛んでいくつもりでもいた。寝ていなければいいなと思うばかりだが。
「しょーがないなぁ。やりますよ」
……やれやれといった具合ながら余裕を感じられるその一言を聞いて、訝しむユリウス。
「嫌に素直だよな、最近」
「別にぃ? そんなことないし〜」
先のミッションを終えてからというもの、どうもネーナは聞き分けがいいように感じられる。3年見てやっても変わらなかった様子が、昨日今日で変わるというのは妙なのだ。
とはいえ好ましい変化であることには変わりなく、ようやく何かが自分の中で変わったという可能性も無きにしも非ず。
ユリウスが長く彼女の扱いについて学んで得た経験は、調子に乗るなら乗せておいた方が都合のいい時もあるということ。例に漏れず今度も強く触れずにおくことを決めていた。
「ま、いいや。その方が俺にはかわいいもんだ」
「そーいう可愛いは欲しくないんだよねぇ。女の子のキモチわかってないんじゃない?」
「勘弁してくれよ……お前までさ……」
最近にわかに我が身を狙う女性が増えたようでも、所帯持ち子持ちになってからモテるようになっても仕方がない。ネーナはそういうことはない相手かもしれないが、釘は打っておく。
……意思の硬さはとっくに、それが刺さることがないほどになっていたと知るのはもう少し後の話であった。
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