Venerdi Santo   作:まみゅう

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22.金曜日の受難は乗り越える⑥

 

 よほどのマゾヒストでもない限り、怒られるのが好きな人間なんて滅多にいるものではないだろう。ましてやその内容が理不尽で暴力的なものならば、誰だってそんな厄災みたいなもの避けたいに決まっている。怒鳴られて育った子供の例にもれず、ペッシは他人の顔色を窺い、なかなか本音が言えず、自分なんてどうしようもない駄目な奴なんだと思い込んでいた。自分自身ですらそう思っているのだから、誰かに期待されるだなんてことは考えてもみなかった。

 

――人間ってのは成長し続けるんだ! 変わり続けるモンなんだ! 自分で十分だと思っちまったら、それ以上どこにも行けねェ。 勿体ねェって言ってんだよッ!

 

 今でも頭の中でぐわんぐわんと声が響いているような感覚がある。まだ、会ったばかりの人だ。家庭内のいざこざで、むしろ迷惑をかけてしまった人だ。ペッシが死んだら仕事の都合で困るのかもしれないけれど、ペッシがいじめられっ子のマンモーニでも何も関係ない。ペッシが奮起して成長したとしても、あの人には何の得もないのだ。

 

 それなのに、思わず仲間の人が驚くくらい、彼は本気になってペッシのことを()()()くれた。あのとき咄嗟に怒ってくれてありがとうと言ったけれども、よく考えればあれは怒りではなかったのだ。暴力の正当化に使われる“お前のためだ”という薄っぺらな言葉とは違い、生まれて初めて本気でペッシのために()()()くれたのはプロシュートだった。ぶん殴られて逆に勇気が湧いてくるなんて、初めての経験だった。

 そして同時にもしも、もしもこんな自分でも期待してくれる人がいるのだとしたら、ペッシはそれに応えたいと思ったのだ。

 

 

 

 爆弾にて命を落としかけた翌朝のこと、ペッシはいつもよりずっとすっきりした気分で目が覚めた。未だ追っ手がかかっているという状況自体は変わっていない。ただあの人たちが護ってくれるのだと思うと恐ろしくなかったし、あの人たちが戦っているのなら、ペッシも自分の戦いをしなければと思っていた。

 自分の部屋を出て洗面所で顔を洗った後、食堂(サローネ)に向かう。朝食の席には既に他の家族がついていたが、ペッシが入って行っても誰もこちらをちらりとも見なかった。いつもならペッシも、そのまま黙って目立たないように席に着くだけだった。

 

「おはよう」

 

 一瞬、場に沈黙が落ちる。まるで、机や椅子が突如として話しかけてきたかのように、食堂(サローネ)は異様な雰囲気に包まれた。

 

「……あぁ、おはよう」

 

 一拍置いて、父親が返事をした。

 

「おはよう」

 

 追従するように、義母も返した。ガヴィーノは何も言わなかったが、何事もなかったかのように食事を再開した。エドモンドだけが挨拶を返すわけでもなく、無視をするわけでもなく、怒りを浮かべてペッシを睨みつけていた。それを見て思わず震えそうになったペッシだが、ぐっと下腹に力を入れて耐え、そのまま自然に席に座る。流石にまだエドモンドと正面切ってにらみ合うだけの勇気はなかったけれども、無視するように父親に向かって話しかけた。

 

「あの人たちは?」

「既に警備にあたってもらっている」

「そっか……」

 

 確かに昨日の晩のことを考えれば、家族団らんに混じって友好的に、というわけにはいかないだろう。ペッシは義母が持ってきた朝食をもくもくと口に運ぶ。その間もエドモンドの視線は感じていたが、意識してそちらは見ないようにした。少なくとも父親の手前、兄がすぐには動かないのはわかっていたからだ。

 

「既に死人が出たようだね」

 

 再び訪れた沈黙を破ったのは、意外なことにガヴィーノだった。次兄はナプキンで口を拭うと、まるで近所の野良猫の様子でも話すみたいに、ごくごく自然な調子で話を続けた。

 

「今朝、ガレージに行ったんだ。そうしたら、銃殺された死体がそのまんまになっていたよ」

「ガヴィ、朝食の席よ」

 

 すかさず義母がたしなめるが、次兄は気にしない。食卓で異様なことを口にしているのは確かに兄のほうであるはずなのに、ペッシですら義母の指摘のほうが相応しくないものだと思った。

 

「そうだね、今は朝食だ。でも敵が晩餐まで待ってくれるかどうかはわからない。だから僕たちは知る必要があるんだよ。どんな敵が僕らを狙っていて、あの人たちがどれくらい役に立つかをね」

「ふん、少なくとも昨日はきっちり働いてくれたってワケか」

「そう。おかげでみんな、元気にぴんぴんしてる。()()()()()()()()()()ね。」

 

 エドモンドの言葉に頷いたガヴィーノが、ちらり、と意味ありげにこちらを見る。その瞬間、ペッシの肌はぞわりと粟立った。

 

 まさか。

 

 昨日ペッシを無理やりトランクに閉じ込めたのはエドモンドだった。殴られて、脅されて、訳のわからないまま押し込まれて。その場にガヴィーノはいなかった。ただ今の態度からしてペッシが何をされたかは知ってはいたのだろう。彼はいつだって傍観者だった。ペッシを殴ったりぶったりしたことはただの一度もないけれど、彼はペッシがどんな目にあっても決して助けてはくれないのだ。それがたとえ命に関わることだったとしても――というのは、今回始めて知ったことだったけれども。

 

 ペッシはとうとう気分が悪くなって、食事をする手を止めた。自分を直接痛めつけたエドモンドより、何もしなかったガヴィーノに嫌悪を抱くなんて筋違いなのかもしれない。が、直情的な長兄よりも次兄のほうが何を考えているのかわからなくて怖かった。怒鳴ったり殴られたりするのは嫌だけれど、怒りにはまだ“人間味”がある。ペッシはときどき、ガヴィーノは機械でできているんじゃあないかと思うことさえあった。だからこれまでエドモンドに何をされても、相談したり助けを乞う気にはなれなかったのだ。

 

 せめてもの形だけ、グラスに入ったミルクを飲み干して、ペッシは椅子を引いて立ち上がろうとした。「魚野郎(ペッシ)」鋭い声に身が竦む。これほど剣呑な声で呼び止めるのは、エドモンドしかいなかった。彼は目が合うと、顎だけで居間のソファを指す。

 

「向こうで待ってろ」

「……」

 

 嫌な汗が背筋を伝う。ソファを見て、兄を見て、ペッシは逡巡した。いつもなら逆らうなんて考えられない。エドモンドの命令は()()だった。だが、今のペッシの心にはあの人がいる。流石にあの人に言われた通り、エドモンドをボコボコにしてやり返すほどの気概はないけれど、意思表示はその第一歩だ。ペッシはごくりと唾を呑み込んだ。口の中にはまだミルクの味が、膜を張ったように残っていた。

 

「……嫌だ」

 

 ペッシは言うだけ言って、エドモンドの顔も見ずに、飛ぶように食堂(サローネ)を後にした。怖かったのもある。と、同時に高揚感もあった。

 やってやった! やった! 初めて、エドモンドの奴に逆らってやったぞ!

 

 

 

 

 

「調子乗ってんじゃあねぇぞッ!」

 

 痛みよりも先に感じたのは、まず強烈な圧迫感だった。みぞおちの辺りを中心に空気が全部押し出されたような感覚があって、腰が曲がり、膝が曲がり、ペッシはそのまま地面に崩れ落ちる。今の一撃で肺がつぶれてしまったのかと思うほど、息が吸えなかった。痛いより苦しい。腹を抱えて浅く喘ぐペッシを、エドモンドは道端の空き缶でも蹴るみたいにつま先で転がした。それから再び狙いを定めると、なんの躊躇いもなく足を振るう。

 兄はあの後、ペッシの部屋までやってきたのだ。すぐに追いかけてきたわけではない。きっちり食事を終えて、それからしっかりペッシに教え込みにやってきたのだ。

 

「なんでだ、なんで俺の言うことに逆らった!? こうなることが予想できなかったのか? ああッ?」

 

 何度も。何度も。

 蹴られるのは殴られるのとはまた違う痛みがある。殴られるのが全身に広がる突き上げるような痛みだとすると、蹴るのは局所的に刺すような痛みだ。穴が開いたのではないかと思うほど鋭く深い痛みに、内臓が揺れ骨が悲鳴を上げる。エドモンドはいつもの比ではないほどキレていた。普段はもう少し甚振るようなやり方をするのだが、今日の彼はそんな余裕もないらしく、ただひたすら嵐のような暴力を振るった。

 

「お前ごときが、よくもッ、よくもッ! 舐めやがって! ちょっと他人の目があるからって、調子乗ってんじゃあねぇぞッ!」

 

 次の一発は、良いところに入った。転がって逃げようとしているうちに、いつの間にか壁際に追いやられていたようで、壁を背にしてしまった分、衝撃を逃がせない。言葉にならないうめき声をあげても、エドモンドはやめてくれなかった。たぶん、ペッシ以外への鬱憤もまとめて、ペッシにぶつけているに違いなかった。

 

「ったく、なにが<パッショーネ>だよ、新興の、田舎のチンピラ崩れが偉そうに……! 親父も親父だ、裏切りだなんて……幹部が聞いて呆れるぜ!」

 

 ペッシは家の事には全くと言っていいほど関わってこなかった。だが、長男としてファミリーの仕事にも噛んでいた兄は、今回の件に関して思うところがあるのだろう。エドモンドは最後に一回、ペッシの顔面横すれすれの壁を蹴って、それでようやく少し落ち着いたらしかった。

 

「お前は良いよな、お気楽でさ。たった一言、俺に口答えするだけで、勝った気持ちになれるんだから」

 

 勝手にペッシのベッドに腰を下ろし、兄は乱れた髪をかき上げる。それから、脇に立てかけてあった釣竿を見て、また苦々し気な顔になった。

 

「……甘ぇよ、親父は」

 

 ペッシは全身が痛くて、呼吸をするのもやっとという状態だったので、立ち上がって兄を止めるどころか制止の声すら上げられなかった。エドモンドは釣竿に手を伸ばすと、ロッド部分に力を入れて曲げる。そう簡単には折れないとわかると、今度は小枝を折るみたいに片方を手で持って足で踏んづけた。

 

 やめて。やめてくれ。そんなことをしたら。

 

 ぱきり、と亀裂の入った音がして、ペッシの意識はそこで途切れた。

 

 

 

 次にペッシが目を覚ました時、ペッシは自分のベッドの中にいた。柔らかなベッドでも、全身どこが当たっても痛い。口の中も酸っぱかった。

 

「気が付いたのか」

「……」

「あんまりエドモンドを怒らせるなよ、魚野郎(ペッシ)

 

 そう言って、こちらをのぞき込んでいたのは次兄のガヴィーノだった。一瞬、反射的に身をこわばらせるが、こちらの兄は手出しはしてこないだろう。それでもペッシはこわごわガヴィーノの顔を見つめた。

 

「……何しに来たの」

「そう警戒するなよ。僕がお前に今まで何かしたことあるか?」

「……」

「僕はお前に話を聞きたかったのさ。あの護衛二人についてね。それから、可哀想な弟の手当てをしてやろうとも思っているよ」

 

 確かに状況から考えて、ペッシをベッドに運んでくれたのはガヴィーノなのだろう。エドモンドがそんなことをするとは思えない。でも手当てをすると言った割には、ペッシはただ寝かされていただけだし、ガヴィーノは手ぶらだ。こちらの言いたいことが伝わったのか、兄は肩を竦める。

 

「ああ、手当てはここではしない。居間に来いよ、ここじゃまずいんだ」

「どうして?」

「またじきに戻ってくるぞ、エドモンドの怒りは完全に収まったわけじゃない」

 

 そんな、とペッシが言葉を失っていると、ガヴィーノは声を潜めて続ける。「あいつはイカレてる。知ってるだろ?」まさかそうはっきりとエドモンドの悪口を言うとは思わなくて、ペッシはびっくりしてしまった。そういえば、この二人の兄がお互いのことをどう思っているかは知らなかった。

 

「起き上がれるか?」

 

 背中をそっと支えられて、断り切れずに大人しく従う。身を起こすと眩暈がした。腹をしこたま殴られたせいか、吐き気も酷い。ふらつくペッシをなんとか起こしたガヴィーノはそのまま肩を貸してくれ、二人して階下へと向かった。

 

「昨日、お前を助けたのはあの護衛達か?」

「え、うん……」

「プロシュートとギアッチョと言ったな、お前の魚野郎(ペッシ)みたいな妙な名前だ。本名じゃないのかもしれないが」

 

 そう言われてみると、今まで馬鹿にされているだけと思っていた呼ばれ方も悪い気はしない。エドモンドを怒らせてしまい手酷く蹴られたが、ペッシは少しやり遂げた気持ちにもなっていた。唯一、大事な釣竿を折られてしまったことだけは、酷くショックで心にぽっかりと穴が開いた気分だったけれども。

 

 居間に着くと誰もおらず、ペッシは勧められるままソファに座らされる。ガヴィーノは本当に手当する気のようで、氷嚢やら救急箱を準備していた。「折れてはいなさそうだな」腕や脛など青紫に腫れ始めた部分に、意外にも器用な手つきで包帯が巻かれる。ペッシは黙ってされるがままになっていた。

 

「で、あいつらはどうやってお前を助けたんだ? まさか爆弾処理の知識でもあったのか?」

 

 一通りの手当てが終わると、本題はこちらだとばかりに兄は切り出した。ペッシは氷で痣の部分を冷やしながら、どう返事をしたものか迷う。ガヴィーノのことが本当によくわからなかった。

 

「……ガヴィ兄は、やっぱり知ってたの? 爆弾のこと」

魚野郎(ペッシ)、質問をしているのは僕だ」

「……」

「お前は昨日見たんだろ、答えられるはずだ」

 

 そう言われても、ペッシだって暗く狭いところに閉じ込められていただけだ。助けられたことには間違いないが、何が起こったのかはうまく説明できない。それとも、ペッシには魔法のように思えることでも、頭のいいガヴィーノのならばタネを知っているのだろうか。ペッシは冷たくなりすぎた腕を撫でて、氷嚢の位置を少しずらした。

 

「氷だ……凍ったんだ、急に。爆弾が」

「……」

「う、嘘じゃないよ」

「あぁ、わかってる。お前はそんなくだらない嘘をつくやつじゃないさ。凍らせたのはどっちだ?」

 

 言っていいものか。ペッシに原理はわからなかったが、あの不思議な力が隠し玉であることは間違いないと思っていた。助けてくれた人たちの不利になるようなことは避けたい。そんなこちらの気持ちを見透かしたように、ペッシの肩にガヴィーノの手が置かれた。

 

魚野郎(ペッシ)、違うよ。僕はエドモンドみたいにイカレちゃいない。自分の身を守ってくれる護衛を殺そうだなんてしない。ただ、寄こされた護衛を何の疑いもなく頼る気にはならないだけさ。奴らが裏切る可能性だって、十分にある」

「そんな、あの人たちは違うよ、俺のことだって助けてくれたし……」

「馬鹿だね、一度助けられただけで信じるのかい? それなら僕のことももっと信じないとだめだ。さぁ教えてくれ。どっちだ? どっちが凍らせた?」

「その前に、俺の質問にも答えてくれよ。……ガヴィ兄は爆弾のことを知っていたんだね?」

 

 はあ。

 それはそれは、大きなため息だった。聞き分けのない子供に苛立った親が、苛立ちを誤魔化すように呆れた振りをするみたいだった。それでもガヴィーノはペッシの意思が固いのを見てとると、話を進めるために答える気になったらしい。兄の首は至極あっさりと縦に振られた。

 

「エドモンドに、作り方が載っているサイトを教えたのは僕だからね」

「お、俺を殺す気だったのかい!?」

 

 思わず、全身が軋むのも忘れて、勢いよく立ち上がる。

 

「エドモンドが、ね。人聞きの悪いことを言うなよ、僕は何もしちゃいない」

 

 ガヴィーノはペッシが憤っても怯んだ様子はなく、ちょっぴり目を細めただけだった。

 

「実際、爆弾の作り方を公表したところで、犯罪ほう助となるかは微妙な線なんだ。なのに、兄弟の会話の、それも僕自身が公開したわけでもないもので、一体何の罪に問われるっていうんだい」

「……ガヴィ兄はいつも卑怯だ」

「だからそれだよ、魚野郎(ペッシ)。そういうのをやめろって言ってるんだ、エドモンドを怒らせるような態度をとるんじゃあない」

 

 ガヴィーノは今まで、ペッシに暴力を振るったことはなかった。それなのにペッシが逃げようと距離をとっても、どんどんと近づいてくる。居間と続きになっている食堂(サローネ)に逃げ込んでも、兄は後を追ってきた。

 

魚野郎(ペッシ)、そうだよ、お前はそれでいいんだ」

「それでって、じゃあ、黙って死んでればよかったって言うのかよッ!」

 

 後ずさりすれば背中に造り付けのカップボードが当たって、中の食器がガチャガチャと音を立てる。ペッシが言い返すと、ガヴィーノはちょっとだけ不思議そうな顔をした。

 

「いいや、僕だって何もお前に死んでほしいわけじゃない。今朝みたいな態度のことだよ。死にかけたせいで変に腹をくくってしまったのか? お前はただびくびくしてりゃあよかったのさ、それでエドモンドの溜飲もしばらくは下がったんだ。それなのに、あんな、くだらない反抗をするから……」

 

 言いながらガヴィーノは、食堂(サローネ)の入り口すぐそばにあるスイッチパネルのカバーを外した。このタイミングで室内の電灯を調節するのもおかしいが、そもそも切り替えるだけならカバーを外さずとも押すだけで良い。

 

「なにを―――」

 

 流石に疑問に思って、声を上げようとした瞬間だった。ガコン、と頭の後ろで妙な音が聞こえたかと思うと、背中を支えていたものがぱっと消え、ペッシは思い切り後ろにひっくり返る。尻餅をついたそこは部屋になっていた。柔らかなアイボリーの壁紙が貼られた食堂(サローネ)とは違い、無機質で倉庫みたいな簡素な部屋。ペッシは今更になって、自分の家がギャングだったことを実感した。高跳び用の別荘があるのなら、そこにセーフルームが備え付けられていたって、別におかしくはない。

 

「いいか、お前は何もするな。最初っから、あの同級生を庇ったりなんかせず、何もしなきゃよかったのさ。お前は変われない。エドモンドには勝てない。ギャングにだって向いてない。だから何もしないことが、一番お前のためになることなんだ」

 

 呆然と座り込んでいるペッシにガヴィーノは言う。投げ込まれた氷嚢が床に当たって固い音を立てた。距離としてはほんの数歩くらいなのに、二人の間には酷い隔たりがあるように感じる。

 

「いいかい、これは兄として忠告してやってるんだよ」

 

 重そうなカップボードは、見た目に反して軽やかに扉としての機能を果たした。

 

「ま、待ってくれよう……!」

 

 閉じ込められる。最後に少しだけ見えたガヴィーノの顔は、どことなく悲し気に見えた。

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