あの後、数日が過ぎて無事、風紀委員会入りした達也くんが年上の学年の女子生徒を質問責めにしたーだとか、色々一悶着あった。
達也くんも色々と大変だねぇ
それから流れるように月日が経ち、普通に授業を受け日々を過ごしていた時のことだった。
『全校生徒の皆さん!!』
突如、授業中にも関わらず校内放送が教室に響き渡る。
「な、なに?」
「一体なんの騒ぎだ?」
ガヤガヤとA組のクラスが騒ぎ出すが、放送室から送られてくる有線の音声は止まることはなく
『私達は校内差別の撤廃を求める有志同盟です!』
と、なにやら政治的な方向性を見せ始めた。
「ゆ、有志同盟ぇ?」
ぼく、クリューガーはイマイチその目的がわからずにいた。
校内差別の撤廃:これについてはおそらくウィードとブルームの事を指しているのだろう。
それはいいことだろうけど、なにも放送室を占拠しなくたっていいジャマイカ...
そううなだれたぼくはこの後、どうせ臨時休校かなんかで帰ることになりそうだし
この騒乱を利用してさっさと去るか
思い立っていざ机から立ち上がり、喧騒に包まれる教室から出ようとする
すると、当然のごとく皆から奇異の視線を向けられ、
「ちょっと、クリューガーさん?どこに行くんですか?」
抗議の声をあげたのは同じA組の 光井 ほのかだ。
ちょっと前にちょっとした司波姉妹の騒ぎに巻き込まれてたまたま知り合いになった...だけ
そこまで深く関わってはいないが、ぼくに対して不安な目を向けている。
おそらくぼくが放送室に行って何かをしでかす、とでも思っているのだろう。
その誤解を解こうと、口を開く。
「...かえる。」
「そ、そっか...気をつけてね。」
意外な返答に満足したのか、彼女は引き下がり、ぼくは教室を出て行く。
帰路に着いたぼくは珍しく徒歩で帰宅していた。
「今日の夕飯は何にしよっかな...。」
周囲にはSD隊員が自分の護衛のために障害物等に身を隠しながら死角から見守ってくれているのだろう。
明日の予定やディナーについて考えを巡らせていると
コツ コツ コツ...
硬いアスファルトの上を歩いていると不意に視線を感じる
...つけられてるのか
別に構わないが、ぼくをつけるということは明らかに国家規模の諜報機関 スパイかそれに準ずる組織...
まてよ、今日の放送室の一件が絡んでたりするのか?
周囲のぼくの護衛についていた国家保安部 SDの隊員は射殺を試みているが、ぼくはやめろ、と合図を出す。
色々と思案しながらまずは情報を得る為に右手でポッケからよくあるスマホよりも便利なデバイスを出して
「さっさとどっかいって欲しいなー。ストーカーさんならまた後日にお願いするよ。」
と、後ろに向けて声をかけると、気づかれたか、と言わんばかりにその黒い影は離れていくのであった。
「はぁ...見逃したのはSD 国家保安部につけさせる為だよ。」
さらっとひどい事を口走る。
そんなこんなで、ようやくデバイスを起動して、ある人物にかける。
かけられたその番号からは即座に返答がくる。
『Hallo?』
「ぼくだ。」
『ク、クリューガー大佐、ハイル・ヒトラー。』
「ハイル・ヒトラー。周辺の護衛のSD隊員に既に気づいているようだが、ぼくをつけていた男を監視させろ。」
フッ 逆ストーカーだな、これは。ざまーみやがれ。
「身長は180-186cm 大柄で黒い服を着ていて、赤い腕章をつけていた。腕章のマークまでは見えなかったがこれだけ情報があればいいだろう。
急げ。あいつは路地裏と人気のない通りをよく歩くようにしていた。ここから3km圏内にまだいるはずだ。」
『ヤヴォル すぐに隊員を向かわせます。となると大佐の護衛用のSD諜報員が抜けてしまいますが...』
「構わん 護衛など元から不要だ。それと隊員に伝えておけ。ヤベー所なら国防軍に連絡を、と。」
『ヤヴォル。ハイル・ヒトラー。』
「ハイル・ヒトラー。」
はぁー、とため息をつきながら、少し早いが夕焼けの靄がかかった空を見上げてうなだれるのであった。
それから後日、学校に登校してきてからというもの、校内は騒然としていた。
A組でいつものように話している北山 雫と光井 ほのかがぼくが教室に入ってくると
「あ、おはよークリューガーくん!」
「おはようクリューガー。」
「お、おはよう...。」
昨日は寝不足であまり眠れなかった。
司波家の事に関して色々と調査を行ったりして大変だったのだ。
情報戦とは楽じゃない仕事です...
心の中で呟きながらぼくは周囲の喧騒の原因を彼女たちに問いただす
「ところで、みんな騒がしいけどまだ何かあるの?昨日の放送室の件は片付いたと思うけど...。」
と、怪訝な顔で聞き出そうとする。
「そ、それがねクリューガーくん。どうやら昨日の有志同盟って人達と、生徒会との討論が行われるそうなの。
それで全員出席だって...。」
「ま、まじで!?くっそ暇そうじゃない!」
「クリューガー...その言い方は失礼だと思う。」
北山がぼくにツッコミを入れる。
「あはは、でも僕らにはあんまり関係のない事じゃ...。」
「ま、まぁそうだけれど、この前の深雪さんとの一件を思えば聞いていて損はないと思うの。」
ふむふむ、まあ校内の統一は課題の一つでもあるが...。
普通に授業を受けたかった...へこっ...。
「うーん、そう。ならぼくも行こうかな。」
「よかった!じゃぁ雫ももちろん一緒に行くよね?」
「うん、そのつもり。」
決まり!という顔でガッツポーズをとるこの元気な女の子にぼくは微妙な面構えになっていった...。
次回は国防軍国内予備軍参謀総長 もう一人の大佐によるワルキューレ作戦が...
ちなみに本編で出てくるワルキューレ作戦(Oparation Valkyrie : オペラチオーネ ヴァルキリー)は有名なトムクルーズ主演の洋画【Valkyrie】から取ってきてます
ナチ党と総統 ヒトラーの絶滅収容所等への命令や悲惨な戦況を鑑みたシュタウフェンベルク大佐が
暗殺計画と共に全ドイツ領の占領計画の為に『ワルキューレ作戦』を利用したとされています