斂の軌跡~THE MIXES OF SAGA~ 作:迷えるウリボー
《翡翠の公都》バリアハート。帝国東部地域、四大名門の一角たるアルバレア公爵が治めるクロイツェン州の中核都市。人口は三十万人。周辺に広がる丘陵地帯では毛皮となるミンクが多く生息し、領内にある七耀石の鉱山からは良質な宝石が採れることでも有名だ。街の南にはそれらを加工する職人通りがある。
何より帝国の人々にとっては、『貴族の街』という認識が有名だ。人口三十万にも及ぶ、しかし帝国の一部に過ぎない都市。
澄み切っていて、それで荘厳な空気は《翡翠の公都》と謳われるにふさわしい。帝都ヘイムダル、皇族が住まうバルフレイム宮には《翡翠庭園》と呼ばれる場所があるらしいが、格式はともかく色の名称としてはこちらに軍配が上がるのだろうな、とエステルは考えた。
故郷リベール州のグランセルに負けない大理石や、ホテル、大聖堂、一つ一つの建物が型作る街の雰囲気。それらはたった今街並みに足を踏み入れたガイウスの心を奪う。
「……壮観な景色だ」
七耀暦千二百四年における帝国領邦会議はこのバリアハートのアルバレア城館にて行われる。トリスタの情報屋ミヒュトから得た、『リベール州領主デュナン公爵が領邦会議に出席する』という情報。その真偽やリベール州と帝国を繋ぐ真相を確かめるため、エステルたちは余裕を持って翡翠の都市へやってきた。
今回に至っては、旅路はエステルの主導だ。彼女はガイウス、フィー、サラ、それぞれの顔を見て、方針を告げる。
「さて、と。会議が始まるのは一週間後。まずはバリアハートで依頼を受けましょうか」
サラとフィーはともかく、やはりガイウスは初めて訪れる街だった。エステルは一時期訪れたことはあるが、帝国にきて初期のことなので改めて街並みや雰囲気を確認しておきたかった。例によって遊撃士の信条である『自分の足で歩いてみること』だ。
「ガイウスもフィーも、あくまで自分の動きたいように動いてもいいからね」
「ああ」
「わかった」
ガイウスも徐々に板についてきており、エステルはいつの間にかガイウスを呼び捨てで呼ぶようになった。
「サラさん、フォローをよろしくお願いします」
「ふふ、了解よ」
後輩の決意の瞳を知っている。だからサラは一も二もなくうなずいた。エステルに対しても、ガイウスとフィーに対しても、補佐する準備は万端だ。
「みんな、改めて一緒に来てくれてありがとう。それじゃあ、行くわよ!」
四人はまず遊撃士協会に赴き、受付に挨拶。事務的な手続きと宿泊先の確保をした後、依頼を確認してまずはバリアハートの遊撃士たちのカバーを行う。
少なくとも一日二日は、このバリアハートそのものを体感するために依頼に没頭するつもりだった。基本的には四人で、こまごまとした依頼などはエステルとフィー、サラとガイウスに別れ、それぞれ達成していった。
バリアハートは貴族の街。とはいえ貴族がいれば平民がいるのも当たり前のことで依頼は平民からのよくある依頼や、貴族諸侯から半ば命令されるような──例えば価値の判らない石や塩の塊を取ってこいだとか──依頼、またはその両者を繋ぐような種の依頼もあった。
サラやシェラザードなど、エステルにとっては先輩にあたる人物から話を聞いたことがあるが、遊撃士に対する市民の態度というのは都市や国によって違う。例えば北のレミフェリア公国は国柄か遊撃士の受けもよく、クロスベル自治州に至っては半ば英雄視されているのだとか。その中で帝国と言うのは必ずしも遊撃士の受けがいいわけではないのだが、バリアハートでは意外にも市民のあたりは強くなかった。
数日かけてバリアハートの空気を感じてくると、エステルは今度は領邦会議にかかわる情報を少しでも探ろうと、依頼者との会話の中でそれとなく会議の話題を振ってみる。
領邦会議は中身はともかく存在自体は秘匿でも何でもない。それに大筋については毎年帝国時報などのマスメディアでもお目にかかれる。市民から聞けるのは俗っぽい上流社会のもつれや陰謀論めいたものが多く、また何とか会話までこぎつけた貴族も適当に濁されて終わってしまう。深く聞こうとすれば自分の存在を印象付けかねないので、情報収集は正直に言って難航した。
当たり前のことだが、会議は秘匿性も高くアルバレア城館で行われる。一遊撃士に新鮮で生の情報など、正攻法では到底回ってくるはずがなかった。
バリアハートにきて四日目。エステルたち四人はその日の活動を報告し合い、四人そろって夕食を取り、宿泊先で休むこととする。
深夜ではないが、子供であればそろそろ床に入る頃。月が優しく輝く時間帯。エステルは一人散歩に赴く。
冬でもないので、しっかりと服を着こめば過ごしやすかった。昼間、──特に仲間内では──喜怒哀楽がはっきりとしているエステル。太陽のごとく熱を生み出すエステルは、自覚があるのかないのか、優しい夜のなかで心を落ち着けたがっていた。
ほうっと息を吐いても、白い靄は出てこない。自分の掌が生暖かくなるだけだ。
やがて呼吸はため息に変わる。
「……さすが貴族社会。難攻不落ね」
エステルは帝国の五大都市を回ってはいるが、基本的には帝都での市民、つまり平民の依頼を受けることが多かった。リベール州が王国時代は貴族制度がなかったことにも起因するだろう。意識していたのは革新派のことばかりだ。貴族と対決する、ということに対する心構えが不足していた感がある。
ミヒュトとの情報交換でも思ったが、今更ながら自分が帝国に根付く人間だということを思い知らされた。そして帝国領リベール州の市民だからこそ、《帝国の中のリベール州》の問題に向き合わなければならないことも。
「はあい、エステル」
後ろからかけられた声に、エステルは振り向かない。
別に驚きはしない。いや、こんな時間でも酔っぱらっていないことには少し驚くべきだろうか。
「どうよ、悩める乙女の心境は」
「サラさん」
《紫電》のサラ・バレスタインは、静かな夜に違和感のない声色だった。
「宿屋の前で突っ立ってるなんて、もったいないわよ。少し散歩でもしましょう」
夜の帝都ではフィーと二人でよくサラの相手をしたものだ。そもそも人口八十万の都市では静かな場所を探すほうが珍しい。昼夜を問わず、少なからず人は起きていて導力車が道路を走り続けているのだから。
「男子もお子様もいないところで、女二人水入らずと行こうじゃないの」
サラは言った。ガイウスがやってくる前、さらにフィーも交えないで二人で落ち着いて話すなど、数えるほどしかなかったと思う。
「ガイウスとフィーはいいの?」
「あの二人もだいぶ仲良くなったし、ほっといて大丈夫でしょう」
「たしかにガイウスはしっかりしてるし、心配はいらないけど」
「少しぐらい息抜きに遊んでもいいじゃない。それなのにあんたらときたら、やれ『故郷が大事』だの『父親を知るためにきた』だの。真面目なのはいいけど大事な青春時代が灰色に染まるわよー?」
特に灰色の青春を過ごしている覚えはないが。
「だいたいねぇ、私があんたぐらいの歳の頃は、プライベートじゃ素敵な殿方に恋してバラ色の青春だったのよ?」
「何言ってるのよサラさん。サラさんっておじさん趣味じゃないの」
「おだまり。あんたにもきっと判る日が来るわ……落ち着いた声に渋い髭、すべてを包むような懐の深い眼を」
「……判らないわ」
カシウス・ブライトの名前は有名なので『一度カシウスにあってみたいと』とサラは割と本気の目線で言っていた。なので少し本気でやるせない気分になったことがある。世間話好きの女としてはレナに話したい気がしないでもなかったが、行動に移せばブライト家で最強の人物の逆鱗に触れかねないので、実現には至っていないが。
やっぱり女子であれば、年代関係なく色恋に興味が向くものなのだろうか。故郷ロレントでは、二人同年代の女子の友人がいた。そういう話もしたことはあったけど、いかんせん同年代の男子がいなかったので自分たちが浮ついたことはなかったが。
「そういうあんたはどうなのよ、あんたこそ年頃の娘でしょう。ガイウスとかどうなのよ? いい男だけど」
「ガイウスは頼れる仲間よ!」
別にそういった感情はまったくないのだが、同年代女子と比べれば疎いほうなので焦った。
「ちぇ、つまんない。ガイウスもあと二十年早く生まれてれば……!」
「サラさん……」
頼れる先輩に対して本気で引いた瞬間だ。
仲間としてサラもエステルの調査に少なからず協力しているが、調査の雲行きが怪しいのはサラも同じだ。彼女も彼女で息抜きを求めているのだろうか。
そうして二人が賑やかに歩いていると、後ろから声をかけられた。
「よぉ。《紫電》のバレスタインに後輩遊撃士さん」
月明かりの下、背後から男性の声。だが、殺気や特別怪しい気配は感じなかった。
迷惑極まりない痴漢か……とはいえ、それならサラの存在を知りながら特攻する死にたがりはいまい。
二人して振り返る。いたのは無精髭を生やした中年のやせ男だった。
「あんたらも領邦会議の情報を探ってんだろう?」
類は友を呼ぶ、とでもいうべきなのだろうか。その言葉に、エステルたちは心持ちを改める。
だが身体的な危機はなさそうで、少女はひとまずの警戒を解くことにした。あくまで心の構えだけだ。
「そう警戒しなさんな。ここは一つ、ブン屋に協力しちゃくれねえか」
近づく彼は、人との距離が近く気軽に距離を詰めてきそうな印象──というかすでに距離を詰めてきている。そのせいでたばこ臭さが鼻について、エステルは少しだけ顔をしかめた。
「まず自己紹介をしてくれかしら? サラさんのことは知っているみたいだけど」
あくまでバリアハートでの主体はエステル。サラは何も言わずにいたので、エステルははっきりを男性に申し出る。
『ブン屋』の一言で彼の正体のおおよそはつかめた。だから自分たちが領邦会議を探っていることが感づかれたのか。遊撃士に負けず劣らずの嗅覚だ。
「俺はリベール通信社の敏腕記者、ナイアル・バーンズだ。よろしく頼むぜ、遊撃士さんよ」
そういって、記者ナイアルは誇らしげに自らの胸を叩く。ちょうど手の甲に当たった胸ポケットから、煙草のケースとメモ帳が押されて乾いた音が鳴る。
「私のことは、まあいいわね。サラ・バレスタインよ。よろしく」
「へへ、そりゃあんたを知らないジャーナリストはいないだろうよ。帝国でも五本の指に迫る遊撃士だからな」
そして、ナイアルはエステルに顔を向けた。
「お前さんも遊撃士だよな……よければ、名前を聞いてもいいか?」
「ええ……エステルよ」
報道関係者であれば、自分の姓を教えれば感づくこともあっただろう。だからまずは伏せて名乗る。
ナイアルは言った。新聞記者、しかもこんな夜に遊撃士二人に接触する行動力。一歩間違えれば怪しい男の烙印を押されるだろうが、その眼は決して情報で人を弄ぼうとはしない、真実を知りたがる眼だった。
「単刀直入だ。俺は領邦会議を探ってる。その情報交換をお願いできねえかって、そういうことだ」
ナイアルもエステルたちと同じ理由でバリアハートに入っている。しかもその前は四大名門とデュナン公爵の動向も調べていたのだという。
サラが言った。
「それで、畑は違えど情報収集もする遊撃士に協力を仰ぐ、か。ずいぶんと真摯な記者さんね?」
「そりゃな。法と倫理に触れないなら、どんなことをしてでも知りたいもんさ」
「でも……どうして私たちが領邦会議を探っているってわかったの?」
エステルが問うた。ナイアルは口に手を触れた。煙草を吸えないための癖かは判らない。
「ブン屋としての『直感』だ。直感がお前らに近づけ、ってな」
随分と正直な物言いだ。女遊撃士は二人して笑った。
エステルはサラを見た。サラは、「いいんじゃない?」とでも言いたげな表情だ。
帝国を知りたくて本土に来た。先輩でありA級遊撃士であるサラはミヒュトという情報屋とのパイプがあった。
ミヒュトとの繋がりもそうだが、自分もきっと独自のつながりを作るっておいて損はないと思えた。
エステルはあくまでリベールの人間だ。因果関係も何もない突飛な考えだが、自分がリベールの人間として帝国を歩くなら、きっとリベールでの繋がりもかけがえのないものになる。
今自分は、帝国にいながらリベール州の公爵について思考を巡らせている。だから、これもきっと縁だ。エステルの直感が、「この人と仲良くなれ」と告げていた。
「なら、一つ。今回のこととは関係ないけど、一つ耳寄りなことを教える。それでどうかしら?」
「ほう? どんな情報だよ」
「記事にできるようなことじゃない俗っぽいことだから。それで満足はいかないだろうけど、私はナイアルさんの考え方が気に入ったわ。たかが数分の会話だけど、それでも貴方とは協力したいと思ったの」
ナイアルとしては、有名なサラの後ろをついてくる見習い遊撃士でしかないのだろう。当たりをつけた紫電でなく、その後輩が思った以上に食いついている。その様子に、ナイアルも少し面食らっているようだ。
だが彼自身が直感で動いていると告げた。だから一見理論的に正しいのかも判らないこの会話を、それでもナイアルは続けた。
「条件は二つ。この情報を記事に乗せないこと。今後も機会があれば協力したいわ。同じリベール州同士だし、仲良くできると思うの」
「へぇ……奇遇だねえ。お前さん、リベール出身かい」
ナイアルが笑みと共に、その瞳を光らせた。正真正銘記者の目だ。
「いいぜ、乗ったぜ。ガキんちょ」
「むか、失礼な。これでも花も恥じらう乙女よ」
「はは、だったらもう少し恥じらうような格好をするんだな。そのスカートで棒術具を振り回されちゃ、恥じも何もあったもんじゃねぇ」
「……あたし、貴方のことはナイアルって呼ぶわ。尊敬できるようになるまで『さん』はお預けへ」
「こっちもだ、エステルよぅ。……それで? 情報ってのは?」
二人は、まるで数年来の友人のように軽口を言い合う。
エステルは言った。その自己紹介に、ナイアルは翡翠の公都に似合わない大音声を響かせることになった。
「私、エステル・ブライトって言うの。リベール領邦軍将軍、カシウス・ブライトの一人娘よ」
────
日付が変わり、朝日が昇ってすぐ。
エステルが泊まる宿の入り口につくと、同時にナイアルもやってきた。
「よう、エステル」
「おはよう、ナイアル」
軽く手をあげるナイアルは、少し寝不足の様子だ。まだ出会ってから一日もたっていないが、雰囲気からあまり生活習慣がよくないのではないかと勘ぐってしまう。
近づいたエステルは、顔を顰めて過度に花をつまんで見せた。
「……ちょっとタバコ臭いわよ?」
「ここじゃ吸える場所も限られてるんだ。少しくらい大目に見ろっての」
ヘビースモーカーだ。自分は父カシウスを『不良中年』と呼ぶが、煙草を吸ったり、あるいは働かなかったりと、本当の不良中年でなくてよかったと思った。
「そんじゃまあ、行くか。まったく、俺は夜型なんだよ。どうしてくれるんだ? カシウス将軍のご令嬢さんよ」
「そういう風に言うから朝集合になったんじゃないの! まったくもう」
二人はこれから情報交換を兼ね散歩に興じるのだが、昨日すぐにそれを行わなかったのには締まらない理由があった。
結局のところ、自身の姓と父親の存在を告げられたナイアルが盛大に驚き、情報交換どころではなくなってしまったからであった。外に出ている人が少なかったとはいえ、人口自体が多い都市なので家の中から人がどうしたことかと集まってきたのだ。必然、夜の密会はお開きとなった。
そんなわけでの今だ。夜型のナイアルと、昨日のうちに情報交換をできなかったエステルはどちらも少し不機嫌。昨日のサラとの散歩とは少し違う雰囲気での公都徘徊だ。
「それで、ナイアルはどうして領邦会議に目をつけたの?」
「ま、言っちまえばここ最近のアウスレーゼ公爵の動向だな」
ナイアル自身、一介の報道関係者であるために詳細な情報を政府筋から直接渡されたわけではないらしい。
アウスレーゼ公爵、つまりデュナン公爵は当然リベール州当主として領地運営や各施設の視察がある。だがこの領邦会議に合わせた前後数日間が、いかなる筋にも明かされない秘匿事項だったのだと。
リベール州は中立派を謳い、デュナン公爵の領地運営も決して非難されるものではない。だからこそ一定の立場にある人間にとっては、この空白が気になり、そしてナイアルは領邦会議に当たりをつけたのだと。
エステルも論理的な証拠があるわけではないが、信頼できる筋の情報だ。ナイアルの推理は結果的に当たっていたのだ。
だが、問題はある。
「とはいえなあ、お互いに目新しい情報は持っていないのかよ……」
エステルもナイアルも、手探りでバリアハートに来た。関係者に気軽に話を聞きに行ける立場ではないし、集められる情報はたかが知れていた。
お互い手を取り合うことに後悔はないが、領邦軍内の情報を少なからず手に入れるということにはまったく進展がなかった。
「私はまあ、デュナン公爵が会議に参加する裏付けが取れてるけど」
立場の違う二人だが、やっていることは同じだ。早々に限界はきつつある。
「そうだな。こうなりゃ関係者に突っ込んで……」
一通りのことを明かした矢先、ナイアルの嘆息を追い越すように、二人の後ろから駆け足。
振り向く間もなく、その人はあっという間に駆け抜けていった。
「あれ、あの子」
「ん? なんだよ」
遊撃士としては、微かに見えた焦りの表情は気になった。
焦りの表情と矛盾しない駆け足と汗、息を切らしたような様子。
後ろ姿だけで少女と判る。顔が見えたのは一瞬だが、儚そうな美しさがあった。おそらく自分と同年代の、薄紫の髪の少女。
そして纏う制服は覚えがある。帝都の聖アストライア女学院だ。
さらに彼女がエステルとナイアルを追い越してから数秒後。今度は男二人が走っていく。翡翠の公都には似合わない、粗野な青年たち。
事件だ。というか事件の匂いしかしない。
「ナイアル、追いかけるわよ!」
早朝の街中。運が悪いことに棒術具は持っていない。戦術オーブメントも過激な魔法は放てないが、それでも何とかするしかない。
と、そこでようやくナイアルも事態を把握する。そして記者である彼は、もう一つの驚くべき事実に気が付いた。
「おい、ちょっと待て! これは事件だぞ!」
「そんなの判ってるわよ!」
「そうじゃねえ、あの追いかけられてる嬢ちゃんのことだ!」
駆け足となる二人。ナイアルは少し苦しそうに走る。
「それって、どういう意味!?」
「お前と同じだ! いや、華やかさじゃ天地の差だが」
「あぁんですって!?」
「ああもう、お得意のギャグはいいんだよ! あの子はなあ……」
エステルを先に行かせ、ナイアルは何とかついてくる。前を走るエステルに発破をかけるように叫んだ。
「クローディア・フォン・アウスレーゼ! デュナン公爵の姪の、アウスレーゼ家ご令嬢だ!」
ナイアル・クローゼ、邂逅