斂の軌跡~THE MIXES OF SAGA~   作:迷えるウリボー

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7話 霧と激震~境界線~②

 

 その激震は、立っていられなくなるほどの激震は、しかしものの十秒で収まった。

「……止んだのか?」

 そのリィンの呟きに応える者はいなかった。辺りを見回して見えるヨシュアを目線に捉えるが、彼もまた膝をついて、まだ立てないでいる。

 これだけの地震、周囲の導力灯もショートしてしまったのか、チカチカと明滅を繰り返すだけだ。沈黙と暗闇が辺りを支配していた。

 突然すぎた自然の暴虐。とてもではないが、何かをしようとも思えなかった。嵐のように始まり、嵐のように終わる。その出没の恐ろしさが、兵士たちの行動を縛り付けていた。

「総員、起立せよ!!」

 いよいよ統制がとれなくなる──そんな時に、毅然とした声が響く。

 声がしたのは扉の方向。未だ導力灯は落ち着いてはいないが、それでも慣れてきた視界の中、ハーケン門の隊長の声は強い衝撃を兵士たちに与えてきた。

「緊急時こそ我ら軍人の威信が問われる! まずは民間人の安全確保、それに状況把握に努めよ! 急げ!」

『はっ!』

 兵士たちはそれで冷静さと覇気を取り戻した。にわかに活気づき、静寂のハーケン門を兵士たちが忙しく駆け回る。

「アストレイ候補生、シュバルツァー候補生。ここにいたか」

 二人がいる場所は屋外だ。新月の夜、地上からは宿舎に止まる民間人の焦りの声が聞こえる中、隊長はこちらに近づいてくる。

「若者に無理を言っているのは承知だ。だが今、君たちは我々と同じ軍人だ。その力を使わせてもらう。いいな!」

「はいっ!」

「了解しました」

 未だ緊張の取れないリィンと、怖いくらいに冷静なヨシュアの斉唱が夜空に響いた。

 その日は大忙しだった。ここ数ヶ月で最も長い一日だった。リィンとヨシュアは他の兵士と共に敷地内の安全確認に、壊れてしまった導力灯の整備などをマニュアルを確認しつつ行った。

 同時に他の兵士が民間人の避難誘導を行った。震度は指定災害レベル、しかし建築十二年のハーケン門の耐久性が功を奏したのか、民間人や窓枠などへの被害はほとんどなかった。余震なども確認されず、人々は早期に落ち着きを取り戻して就寝する。

 眠れないのは兵士たちの方で、対して地震も起きないリベールでは耐震意識が低く、建築はともかく収納物はもれなくあらゆる物資が散乱し、その片付けに駆り出されることになった。

 地方間の関所よりは大規模な施設だ。作業は夜通し人員総出で行われ、リィンたちが休息できたのは深夜未明だった。

 そうして、地震発生から半日ほどが過ぎた。

「──以上が、昨夜未明の地震の報告になります」

 深夜、哨戒中に地震にあった兵士たちは仮眠を挟み、会議室にて当時の状況を報告する。

 報告そのものはただの地震であったし、人的被害も負傷という意味では皆無に等しかった。だが、今回大人数で大仰にも会議が開かれたのは、それだけが理由ではない。

「これで五回目か……妙だな、これほどに地震が続くのは」

 リィンとヨシュアが着任してまだ二十四時間がたとうかという頃合いだ。だが実は、その以前にもハーケン門やボース近辺での地震は生じていたのだという。震源地は主にボース地域の東側。しかもこの二週間ほどでだ。その連続性が、今回の会議の争点となっている。

 地震そのものはおかしいものではないが、ここまで短期間に集中して生じるのは異常。リベールの歴史を辿ってみてもこれだけ中規模から大規模な地震が短期間で生じたことも、記録の限りではない。

 正直、兵士たちは頭を悩ませていた。現状ヴァレリア湖近辺で地震が発生するなど、津波や土砂崩れのような二次災害が発生していないから被害そのものは軽微なのだ。会議での事前対応の相談や、近隣の住民への周知啓蒙程度しかやれることはない。だが、異常事態を調べようにも科学者や技術者の類は、まだツァイスからボースへ移動するための予定調整に時間を食っているのだという。話の限りではリベールにおける導力技術の権威であるアルバート・ラッセル博士が、カシウス将軍の要請により応援に駆け付けるらしいのだが、それで地震に関する科学的な状況が判ったところで、軍人としてはどうしようもない、と言うのが正直なところだった。

 だが。

「カシウス総司令は、諸君らに一つの問を投げかけている。『鍵は結社にある……その可能性を考慮し、この地震が人為的なものである前提で行動せよ』と指令を受けた」

 隊長が発したその言葉に、会議に参加しているすべての人間が、肌がぴりつくのを感じた。

「……隊長。それは件の結社の構成員が、謀略のためにこの地震を起こしている、ということでしょうか」

 兵士の一人が問うた。隊長は肯定した。

「人工的に地震を起こすなど、にわかには信じられん話だがな。だが、現実として『今までの自然現象では起こりえないこと』が起こっている。我々は、判断基準を改めなければならない」

 いずれにせよ、この事態に明確な『首謀者』を設定したうえで、それに対応することを目的とするのだ。目的が明確化されれば、軍人たちは瞬く間に己の能力を発揮する。そして、自分たちの土地を守るため、その防衛の策を取ろうとする。

 隊長は続けた。

「それに……ここには頼もしい、かの構成員と相まみえた者がいる」

 兵士たちは、その者が誰なのかを理解していた。百日戦役以降、表向きは穏やかな自治と防衛を行えてきたリベール領邦軍において、十数年ぶりに一つの変化が訪れたといってもよかったからだ。

「どうだ、未来のリベールの翼たちよ。何でもいい、思い当たるものはないか?」

 隊長は笑みを浮かべた。いささか持ち上げられた感がないでもなかったが、それでもリィンとヨシュアには発言の遺志があった。

「……ヨシュア・アストレイ、具申させていただきます」

 二人には思い当たる節があった。

「僕とリィンは、ルーアンで『白い影』の調査を志願しました。その結果、《身喰らう蛇》の執行者である《怪盗紳士》と遭遇しました」

 白い影の事件も、通常起こるには少々異常な現象が、ルーアン地方の各地で起こったのだ。ブルブランはそれを《実験》と称した

 リィンが続けた。

「結社が生じた空間投影は正直、非常識な技術です。しかし《実験》と言うからにはそれは試行回数を重ねる必要があった。もし、この地震が実験のための《手段》であるとして、それを達成するために地震を複数回起こしている……のかもしれません」

 この場合、(はな)からもし仮定が違っていたらということは考えない。この場の全員が信頼しているといってもいい、カシウス・ブライトがそう言ったのだ。

 加えて、一つの検討事項があった。ヨシュアとリィン、そして協力者であるアガット・クロスナーは最終的に、ジェニス州立学園の旧校舎地下に辿り着いた。

「仮に誰かに見つかることも想定していたら、この先話す仮説は否定されます。ですが『見つからずに実験を終えること』を是としていたのなら、その実験場所はもっと見つからないような山々の奥地や……遠国でも構わないはず」

 技術力としては非常識、これに尽きる。だがそれが現代の機械であれ未来の機械であれ、そして古代の遺物であれ、導力器であることには変わりない。ならば、その導力波の距離というものを考慮できる。

「それは……どういうことかね? アストレイ候補生」

「はい。恐らく『地震の首謀者はボース地域内に潜伏している可能性が高い』ということです」

 にわかに会議室がざわついた。リィンの意見も有望だがそれ以上に、それほどまでにヨシュアの意見は確信が秘められていた。

 ボース地方には州境や地域境界線の山岳も多い。それでもリベール州や本土まで捜索範囲が広がらずにすむのはありがたい。

 それに、ヨシュアの意見は説得力も現実性もあった。

「是非を問う必要はないようだ。さすがはリベール士官学院が誇る次代の守護者」

「……恐縮です」

 具体的には、捜索隊を編制するための時間は多少かかる。それも各地の要衝へ要請すればいい。

 兵士たちの士気が高まった、その時。その高揚を無に帰す第三者が現れた。

「し、失礼します!」

 同じくハーケン門に駐在する兵士だった。だが、会議に参加せず通常任務に従事していたはずの彼は、少なからず慌てふためいていた。

「今しがた、ボース市駐屯所より緊急連絡がありました!」

「まさか、また地震か?」

「いえ、それが──」

 兵士は一息つき、敬礼と共に告げる。

「市内全体で、数アージュ先の目視困難な濃霧が発生! 住民が複数名、原因不明の昏睡状態に陥ったとのことです!」

「なっ」

「先方よりこちらからの応援要請も受けています! 如何されますか!?」

 その情報は新しすぎた。

 濃霧? この忙しい時に? 霧自体は珍しくもない、しかし少し先も見えない濃霧? それに原因不明の昏睡だと?

 状況が整理できていないなか、連絡役の兵士続けている。

「被害者には兵士も含まれます。実地演習中の候補生も含め、五名の兵士が──」

 地震も憂慮すべきものだが、伝えられる情報は、それのみではどれも緊急性の高いもののように思える。加えてボース市に地理的にもっとも近く、安定的な兵派遣を行えるのもハーケン門だった。

 是非もない。ボース市へ兵が派遣されるのは決定事項だった。

 そして、この状況に際して二人の若者が声を張り上げるのも、また。

「ボースへの派遣隊……俺たちも加えていただけませんか!?」

 リィンが己の存在を主張する。それは蛮勇でもある。

 この異常事態に際して、武勲をあげようとしているのか。違う、ハーケン門の管理者として彼の人となりを知る隊長は判っていた。

「聞くがシュバルツァー候補生、ボース市で演習中の候補生たちは?」

「俺の同窓です」

 リィンと同じ、この時期にボース市へ着任した学生。それは武術教練でも同じ班を組む友人たちだった。信頼関係を築いた者たちだ。きっと遭遇することはないだろう、それでも同じ地方内で頑張ろうと、再会を違った仲間たちだ。

 原因不明の昏睡。学生だから危険な任務は担当できない、そんな理屈で納得できるには、彼はまだまだ未熟だった。

「リィンにとっては一年。そして二年の候補生には、僕の友人もいます」

「……アストレイ候補生」

「隊長、どうか御許可をいただけませんか。僕たちなら、ルーアンでの経験を活かして捜査することも可能だと考えます」

 ヨシュアの発想は、彼らが学生であるという点を省けば当然の帰結だった。この緊急時にあっては、たった一つの経験は窮地において重要な要素となりえる。

 にわかに危険が増したボース地方。その中において、結果として学生に似合わない洞察力や危害を発揮している彼らは、確かに一つの戦力ではあった。

「あくまで情報収集に勤めます。危険だと判断した場合、すぐに応援を要請します」

 なおも自分の意見を通さんとするヨシュア。リィンにとってはそれが頼もしく、隊長にとっては思考を追い詰める一員となる。

 その中で、ハーケン門を預かる隊長が選んだのは。

「……君たちの力と、このリベールや仲間を護るという遺志。それを信じよう」

 現状、地震を起こしたかもしれない何者かの目的も判らない。無責任な物言いになるが、ハーケン門に従事し続けたとて危険がないとは言い切れない。現状、何もかもが判らないのだ。

 だから、その判断を下した。学生を調査に回す、一見して卑下されるようなその決断を。

 

 

────

 

 

 緊急の会議も終わりを迎え、隊長の指揮の下ボース市への応援部隊が編制される。リィンとヨシュアは、先鋒隊ではなく、休憩をはさんだ後に次鋒隊として選抜された。

 はやる気持ちもあるが、あくまで彼らは学生だ。その熱気が過度に燃え広がらない時間が必要だった。

 その間、リィンとヨシュアはボース市での濃霧と、ボース地方での地震の情報収集に務めた。

 昏睡被害の影響もあり、ハーケン門‐ボース市‐州都グランセル間の鉄道は見合わせとなった。必然、応援部隊は徒歩でボース市まで行くことになる。

「これは……昨日までとは随分様子が違うな」

 リィンはため息をついた。そして、その息は濃霧に混じる。

 活気づいていたボース市内はにわかに人の通りが減り、日光は遮られて曇天模様の暗さ。リベール州第二の規模である商業都市は、完全に死んでいる。

 ともすれば髪が濡れかねないほどだ。実際昏睡騒動もあり、市民は不要の外出を控えている。外にいるのは軍人と自警団程度のものだ。

 地震と濃霧のストレスもあり、不安がどうにもぬぐえなかった。

 当然ながら、応援部隊の指揮は現地の部隊長に任せられることとなる。だが応援部隊にはある程度の柔軟な指揮系統も与えられ、兵士たちはそれぞれボース市内の部隊の穴を埋めることになる。リィンとヨシュアは幸いにも同級生たちへの見舞いに行くことが叶った。

「失礼します」

「ハーケン門実地演習生、アストレイ、シュバルツァーです」

 兵士向けの宿舎に、同級生たちはいた。ボース市の実地演習は四人で……そして内三人が昏睡状態にあるのだという。

「……よう、ヨシュア。後輩も」

 唯一その被害を免れたのはヨシュアの同窓生の一人で、彼は看病としてこの場にいた。リィンとの面識はないが、彼の名は聞き及んでいる。

「君だけでも、無事でよかった」

「無事なもんか。随分な騒動に巻き込まれちまった。ハーケン門もやばいらしいな?」

「ああ……怖いくらいだよ」

 演習生も含め、昏睡している者たちはそれを除けば至って健康状態だそうだ。衛生兵も状態を見たらしいが意識レベル以外の生命兆候は問題ない。問題なのは昏睡時に頭部をぶつけた者たちで、一般人も含め彼らは専門の医療施設へ運ばれることになった。ある意味地震騒動よりも深刻な状況だ。

 ヨシュアの同級生と、ヨシュアとリィンはお見舞いもそうだが情報を共有した。彼らボース市の実地演習はヨシュアとリィンよりも早い開始だったが、市内でも地震はあったのだそうだ。やはりハーケン門と同じく唐突に揺れ、そして唐突に治まったのだという。こちらに関しては二人の方が状況をよく知っている。

 濃霧もまた、唐突に生じたのだという。現在、発生して一日ほど。数アージュ先の視界も遮るという点では生活に支障をきたすが、命に支障はないから原因究明をボース市の兵士たちが考えだした矢先だった。まず市民より遊撃士協会に、『知り合いが昏睡した』という緊急連絡が飛び込んできたらしく、次いで協会が軍に連絡し、ほぼ同時に兵士や演習生にも同様の意識障害が発生した。

 それだけでは昏睡騒動の深淵は判らなかったが、彼が示した次の情報が、ヨシュアとリィンの声色を変えることになる。

「──鈴の音、だって?」

「どういうことですか?」

 ヨシュアの反復に続き、リィンが疑問符をあげた。

「ああ。俺も、こいつらが意識を失った所に鉢合わせたんだけど」

 力なく、眠り続ける仲間たちを指さして言った。

「確かに聞いたんだ。騒ぎ始めた市街の中で、魅力的に聞こえる強い鈴の音が」

 それは、確信めいたものだ。地震、濃霧、昏睡、鈴。どれも直接的には結びつくことのない事象だが……それでも、リィンとヨシュアは肝に銘じている。ルーアンでの事件と、そしてカシウスの命を。

 いずれにせよこの状況は異常事態だ。昏睡している時に地震が生じるのも危険極まりない。

「……先輩、俺も尽力します」

 リィンが言った。彼の視界には、今は言葉を交わすことのできない同窓生の姿があった。

「だから、どうか待っていてください。俺とヨシュア先輩で……解決の糸口を探って見せます」

 執行者との接触経験を買われ配属された応援部隊、それでもどこまで自由に、主体的に行動できるかは判らない。

 それでも、大事な仲間が被害を受けている誓わずにはいられないのだ。

 意志を託す彼は笑った。

「頼むぜ、二人とも」

 彼自身、悔しい思いはあるだろう。それでも、想いは託される。

「リベール士官学院の学生としての誇りを……示してやってくれ」

 想いを託されて、リィン・シュバルツァーとヨシュア・アストレイは動き出す。

 地震騒動の解明はひとまずハーケン門に任せ、ボース市内を探ることになる。

 リィンとヨシュアの任務は哨戒による安全確認、そして情報収集だった。隣のロレント市ならば霧が町を包むのもおかしくはないし、ボースの北には山脈も連ねている。この異常事態に、市民は不安の声をあげているだろう。

 同時に、リィンたちには気にかかるものもあった。某かの陰謀が働いているのなら、不審な人物がいたとしてもおかしくはない。そもそも、ルーアンでも虚像とはいえ怪盗紳士が徘徊をしていたのだから。

 ボース市内はルーアン市よりも広かった。他にも哨戒している兵士はいるが、それでもリィンたちは一人一人に情報を聞いて回る。中には昏睡状態となった市民の家族もいて、痛々しさも感じることとなった。

 時間は刻々と過ぎていく。調査には気力が必要だとはいえ、この悪天候の中では気も滅入ってしまう。

 そんな時だった。濃霧の中、路地裏から若い少年の声がしたのは。

「ヨシュア・アストレイさん。それに、リィン・シュバルツァーさんで間違いないですか?」

 既に世界は夕暮れで、ボース市内は赤い霧という不可思議な世界にいる。そしてその声の他に、市民や兵士の気配はなかった。自分たちが彼の気配に気づかなかったことに驚きつつ、ヨシュアとリィンは少年を見据える。

「おっと、そんなに警戒しないでください二人と同じく、オレも新人なんですから」

 言い、少年は濃霧の中から出てくる。

「君は?」

 ヨシュアは問うた。ヨシュアよりも低い身長、中性的な顔立ちで大きな金の瞳を持ち、男性としては長めの茶髪を後ろ髪に纏めている。幼く見えるが、二人と同世代だろうか。肌色の少し太めのズボン、簡素な黒地の下着の上にフード付きの白いシャツを羽織っている。

「名乗るほどじゃありませんよ。オレは、ルーアン出身の準遊撃士です」

 見れば、シャツの胸元には《支える籠手》の紋章がある。それに、大腿部には二つの銃のホルスター。少なからず戦闘には慣れており、一般人でないことは明白だった。

 少年が告げる。

「オレの先輩……シェラザード・ハーヴェイとジン・ヴァセックからの申し入れです。『情報共有がしたい』と」

 直観的に、先の着任報告の時に邂逅した二人だと思った。その二人の存在を忘れるには、期間が短すぎた。特にリィンは遊撃士という職業の人物を今まで直に見たことはなかった。戦闘のみならず、修羅場も潜っているだろう二人の雰囲気は克明に脳裏に刻まれている。

「聞いてもいいかい? どうして、まだ学生の身である僕たちに接触を図るのか」

 再度、ヨシュアが問うた。茶髪の少年は不敵な笑みを浮かべて答える。

「地震と濃霧という異常事態。先月は、ルーアンでも不可思議な影が現れたという。関連性を確証はできないけれど、リベールに不穏な影が訪れている。だから、その異常事態に接触した人物の意見を聞きたい。それが遊撃士協会の出した結論です」

 何のことはない。自分たちに期待する部隊長たちと同じだということだ。

「遊撃士独自の情報網もあります。……会ってみませんか?」

 是非もない。被害を受けた市民や仲間のために。自分たちに、手段を選ぶ余裕はない。

 少年の先導を受けて、二人はボース市南の街道まで歩いた。そのまま、霧の中を市街を見渡せる程度まで遠ざかる。

 この街道は、南に行くとヴァレリア湖畔の保養地である《川蝉亭》に続く道だった。リベール出身の者ならば知らぬ者はいないほど有名な宿。また、道中には《琥珀の塔》と呼ばれる古代の遺構もある。

 人の気配が完全に断たれ、けれど魔獣避けの導力灯が設置されているその場所に、件の二人は立っていた。

「よう、青少年たち」

「はぁい、二人とも昨日ぶりね」

 銀髪の踊り子のような女性──《銀閃》シェラザード・ハーヴェイ。

 大柄で熊のような体格を持つ武闘家──《不動》ジン・ヴァセック。

「それじゃ、早速だけど危ない密会と行きましょうか?」

 シェラザードが微笑んだ。

 士官候補生と遊撃士。相容れぬ存在が接触する。

 

 











今回の変化
・地震と濃霧の発生場所

この作品、基本的に個別の判別ができるモブキャラクターに大きな役割はありません。
基本的に「もしリベールが帝国領になったら?」というコンセプトなので、全ての強い役割は原作キャラにゆだねられています。
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