中央歴1639年9月20日
占領地の治安回復は急務とは言え、クワ・トイネ日本大使館の田中は困惑していた。
首相のカナタから
・自衛隊の恒久基地をおいてほしい。
・ロウリア方面の治安回復に協力してほしい。
という申し入れがあった。
他国に攻めたら中立、攻められたら自動参戦ということでまとまって事務官らが文言の最終調整を行っているのに、新たな負担の増加は避けたい。
本国の人手不足は深刻でロウリア侵攻軍結成のため即応予備自衛官を一部招集しただけで経済界から大クレームになったのだ。
恒久基地は海自の補給港くらいなら良いかとも思っているが、問題は治安回復への協力である。それなりに部隊を展開すると言うことは頭数が要るのだ。それは正直できない。
首相府にでかけ要請の理由を聞き出す。
一つは敗残兵が武器を持ったまま野盗と化しているので取り締まりたいがクワ・トイネの部隊だと練度不足、武器の違いで逃げられるらしいのだ。
もう一つはミサイルが直撃せず竜騎士だけが倒されたワイバーンが野良ワイバーンとなって人を襲っているという。
クワ・トイネのワイバーン隊も壊滅しており再建には時間がかかりそうだ。
人の味を覚えたワイバーンは駆除しないと被害が出続けるから事態は深刻だ。
ここでカナタ首相と面談する。
社交辞令の後本論に入るのだが 部隊を常駐させてほしいという話がうまく折り合わない。
それではせめて武器の供与を求められたが戻れる可能性があるので武器の供与は設計元との契約が自国用途に限る契約なので供与はできない。
一旦会談を終了し大使館に戻りで八方塞がりだなーと 考えていると先日新聞で読んだ人手不足による経営不振が思い起こされる。
民間軍事会社が人手不足で倒産の危機だというのだ。
民間軍事会社の所属は日本。日本の会社が武器を使う分には問題が無いのではと思いつく。それをクワ・トイネが雇い警備に回すだ。
法務省にこのアイディアの照会をかける。
かなり黒いが言い逃れできない範囲ではないし、民間軍事会社への供与装備ということで威力に制限もかけられるとのこと。
クワ・トイネの現役軍人以外を雇って訓練をして警備任務に就けるのだ
これで日本からの持ち出しは武器だけになる。
渡す装備も考えた。
対人には機関短銃。
対ワイバーンには設計だけ買ってあったNTW-20南アフリカ共和国アエロテクCSIR社のボルトアクション対物ライフルを渡すことにした。
この案を持って首相と会談したところ歓迎してくれた。
日本が人が足りなくて渋っていたのは判っていたのだ。
弾の供給は日本が握るので乱用されるのは防げるだろう。
これで協定と契約が結ばれ。
クワ・トイネの退役した元軍人が訓練を受け半年後に戻ったあたりから治安は改善に向かうのであった。
ロウリアの民は屈強な軍を支えるため重税にあえいでいた。
農地も疲弊し生産高も減少傾向にある。クワ・トイネに占領されたことにエルフやドワーフから復讐を受けるのではと心配する向きもあったが、
派遣された人員はホモサピエンスが中心でロウリア側も安堵した。
また、税率を当面クワ・トイネ本国より軽減し、日本の技術支援で立ち直るのであった。
クワ・トイネとしても最低1000万トン 3年で3000万トンの枠にロウリアでの生産分を混ぜられて開発が楽になった。
2020/02/06 改行句読点誤字修正
2020/02/08 日付挿入
2020/02/11 居る->要る 日本の会社武器が使う分->日本の会社が武器を使う分
2020/02/25 誤字修正