ハリー・ポッターと金銀の少女(改)   作:Riena

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Page 12.ホグワーツと赤毛の双子

 少女がいた。

 

 透き通るような白い肌にふわりと揺れる銀髪。

 そして、一瞬だけ揺らいだ、吸い込まれるようなエメラルドの瞳に、僕は魅せられてしまった。

 時が止まっていた。

 すっと視線が外されることで動き出す。

 それでも僕は、彼女から眼が離せなかった。

 

 まだ僕は、この胸の温かさの意味を知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シエルよ。ここが今日からおぬしの家じゃ」

 

 退院した私が連れてこられたのは、とあるお城の前だった。

 古くて、大きくて、どこか懐かしいこの城は。

 

「お、お爺様?もしかしてここは…?」

 

 隣にいるお爺様はにこりと私に微笑み、その名を口にした。

 

「ふむ、ここは()()()()()じゃよ」

 

 その言葉を聞いた時、私は……

 

 

 

 ……いや、きっと気のせいだわ。

 

 妙な違和感を感じながらも、私は門をくぐった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 広い玄関や長い廊下を通って、シエルは一つの部屋に案内された。ちなみに今は授業中らしく、道すがら誰にも会うことはなかった。

 

「ここが部屋じゃ。必要なものは全てそろっておる。好きに使いなさい。隣はセブルスの部屋だから何かあればそこに行くように。生徒にはくれぐれも気を付けるのじゃよ。まあ、おぬしは目くらましの呪文を使えるので問題ないじゃろう。詳しいことは後でセブルスに聞きに行きなさい。あまり、時間が取れずにすまんの」

 

「いえ、私はお爺様に会えただけで嬉しいですわ!」

 

「そうか、そうか」

 

 お爺様は嬉しそうに微笑むと「またのう」と言って姿眩ましで消えて行ってしまった。

 

 一人になった私は部屋をぐるりと見渡してみた。子供が住むにしては大きすぎるその部屋には、シャワーやトイレ、小さなキッチンも完備されており、古びた雰囲気を抜けば、ホテルのようにも思えた。

 

 今日からここで生活するのか…。

 

 退院したら家に帰ると思っていた私は、ホグワーツで暮らす事は予想外だった。入学まであと、一年もあるのだ。

 そう言えば、家ってどんなのだったっけ?セブの家…だった…よね? 

 私の部屋…たしか、あったよね?うーん。

 

 何故か曖昧で思い出せなくて、私は首をかしげた。

 まあ、考えても仕方がないですね。

 

 私は気持ちを切り替えて、セブに会いに行くことにした。扉を開いて外へ……

 

 ゴンッ。

 

 鈍い音が響いた。

 

「……え?」

 

「「痛っ!!!!」」

 

 扉を開くと、燃えるような赤毛の頭が2つ。そっくりの少年がこれまたそっくりの格好で頭を押さえてうずくまっていた。

 

「だ、大丈夫ですか?!」

 

 私が声をかけると、2人は更に身体を小さくしてうう、と唸る。

 

「……が……」

 

「え?」

 

「血が……」

 

 見ると、床に赤い液体の様なものが、流れていた。私は杖を取り出す。

 

「い、今すぐ治癒を!!…エピス……「「なんちゃって☆」」

 

「……え?」

 

 慌てて治癒呪文をかけようとした私を他所に、2人は何事も無かったようにぴょんと立ち上がった。

 

「いやぁ、こんなに驚いてくれるとはね、思ってなかったよ!」

 

「へへっ、イタズラ大成功だな!」

 

 兄弟よ!とか何とか言ってハイタッチをする2人。

 

 私は──何も言わずに扉を閉めた。

 

「え、あ、ちょっと??」

 

「閉めないでくれ!!」

 

 ドンドンと扉を叩く2人。私は渋々扉を開いた。

 

「…失礼しました。少し驚いたもので…。頭は…大丈夫そうですね?では、失礼致します」

 

 ぺこりと頭を下げて、私は部屋を出ようとした。しかしそれを、赤毛の片方の腕が私の行先の壁に置かれ、制される。

 

「どこに行くんだい?」

 

 その時、私は初めて彼の顔を見た。

 すらっとした鼻とブラウンの瞳。彼はドラコとは違う、ふんわりとやわらかい雰囲気を醸し出していた。

 ──目が合った。

 彼の瞳がゆらりと揺れる。これ以上目を合わせたらいけない気がして、私はさっと視線を外した。

 

「……退いていただけますか?」

 

「いやいやぁ、そういう訳には行かないんだよ!なぁ、ジョージ」

 

「あ、ああ!フレッド!」

 

 どうしたんだよ、とフレッドと呼ばれた方がジョージの背中を叩く。

 

「それでなんだけど、まずは自己紹介だな!俺はフレッド・ウィーズリー!」

 

「で、僕がジョージ・ウィーズリー!」

 

「あれ、俺がジョージじゃないか?」

「いや、僕がフレッドじゃないか?」

 

「「どっちがどっちでしょうか?」」

 

 肩を組んだ2人が、お互いの顔を指差し合う。

 

「……フレッドさんと、ジョージさん?」

 

 右、左と指を差しながらそう答えた。

 

「「ええ?!なんで分かったんだ?!」」

 

 何故分かるのかは……よく分からない。見た目も仕草も口調や態度までそっくりなのに。

 その後も、何回か『双子どっちだゲーム』が繰り広げられ、全てを当てた。

 

「うわぁ、初対面で全問正解とか凄すぎだな!」

 

「リー以来だな!」

 

「リー?」

 

 私が聞くと、彼らは誇らしげに答える。

 

「ああ、そうだよ!僕らの親友、リー・ジョーダン!」

 

「あいつはな、『双子どっちだゲーム』だけならず、初対面で名前も当てたのさ!」

 

 わいわいと騒ぎ始める2人。

 と、隣の扉がガチャリと開いた。出てきたのは……セブだった。

 

 あ。

 

「お前達、そこで何を騒いでいるのだ。それに、我輩の授業を平気でサボるとはいい度胸だな。グリフィンドール10点減点だ。今すぐ教室に…入り…な…さ、い」

 

 早口で減点を言い渡した後、私と目が合ったセブは徐々に言葉を濁した。

 

「……何故此処に居るのだ?」

 

 セブが私を見ながらそう聞く。

 

「えっと……」

 

 双子がいる手前、私は何も言えずに視線を泳がした。セブはそれを察したのか、呆れたような顔をした。

 

「まあいい。貴様らはこれ以上減点されたく無ければ教室に戻るように」

 

 双子は物珍しい事を見たかのように顔を見合わせた。そして、私を見てにやりと笑う。

 

「「もしかして、君って……!!「グリフィンドール10点減点!」……ええ!」」

 

 早く行け!と怒るセブ。双子は慌てながらも教室へ向かって行った。

 

 ぎろり。

 

 効果音が付きそうなほどの表情が向けられた。

 思わず私は後退りをする。

 

「と、ともかく、中に入りませんか…?」

 

 私の提案に、セブは頷く。

 

「…ふむ、少し待っていなさい。くれぐれも部屋から出ないように」

 

 セブは釘を刺すと、双子と同じ方向へ歩いていった。

 

 あれは、絶対怒ってますよね…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 客人のもてなし、もとい、セブの機嫌取りのため、キッチンにあったセブの好きそうな紅茶を淹れていると、しばらくしてセブが戻ってきた。

 

「シエル」

 

「と、取り敢えず、紅茶をどうぞ」

 

 2度目の逃げ。しかし、セブはそれに乗ってくれた。

 

「ふむ、頂こう」

 

 セブは差し出したカップを受け取ると、ひとくち口に含んだ。

 

「して、シエルよ。校長から言伝てを幾つか頂いている。然と耳に入れるように。特に……部屋の外に出る時の注意事項はよく聞きなさい」

 

 え、怒られないの…?からの、嫌味とも取れるセブの言葉。私は背筋を伸ばした。

 

「よろしくお願い致します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 セブは説明を終えると、授業の準備があるらしく部屋を出ていった。

 少しすると、授業を終えた生徒達で外が騒がしくなる。私は授業外に部屋から外に出ない約束をしたので、静かに新しい紅茶を淹れる。

 そうして、ホグワーツ一日目は暮れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。早起きした私は、生徒達が目覚める前に校内探検をする事にした。

 そっと扉を開き、左右を見る。

 

 よし、誰もいない。

 

 身体を外に出して、また扉を閉じた。振り返ろうとして……

 

「「おはよう!」」

「わぁ!!」

 

 振り返ると、昨日の双子がニコニコと笑っていた。驚いて声を上げた私は、隣の部屋にセブがいることを思い出して、口に手を当てる。

 

「なぜ、ここに…?」

 

 私が小声でそう聞くと、双子はまたにやりと笑う。両手を取られた。

 

「「着いてきて!」」

「え、あの…!!」

 

 否定しながらも、男子の力には適わず連れ去られて行く。昨日のセブの仏頂面が頭に浮かんだ。

 

『生徒との接触は禁止だ』

 

 セブ、私はもう貴方との約束を一つ、破る事になるようです……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 双子は私の手を引きながら、ホグワーツを案内し始めた。

 

「ここは、魔法薬学の教室さ!」

 

「ここは、変身術!!」

 

「で、ここは……」

 

「それで、ここは……」

 

「ちょっと、待って下さい!」

 

 何個目かの教室を紹介された所で、私は足を止めた。

 

「ん?どうしたんだい?」

 

 双子の…片方が私の顔を覗く。

 

「どうしたも、こうしたもありませんよ。なぜ、案内をしているのですか?」

 

「なぜって…」

「そりゃあ…」

 

『どこの誰だと聞かれたら生徒だと答えておけ。それ以上を聞かれる前に逃げなさい』

 

 セブの言葉を思い出し、私は続けた。

 

「私はここの生徒です。貴方達に案内される筋合いはありません。失礼します」

 

 腕を引き抜くと、思ったよりも軽い力で抜けられた。そのまま後ろを向き、歩き出す。

 

「待ちなよ!」

 

 腕を掴まれた。

 

「何か…?」

 

 私は冷たく静かにそう言った。

 これ以上関わるな、と視線で訴える。が、それが意味を成すことは無かった。

 

「君、嘘を付くのがとっても下手だ。知ってたかい?人って嘘を付くときに、視線が右斜め上を向くんだ」

 

「…え?」

 

「他にもあるよ?瞬きの回数とか、手を隠してる所とかそれに…「わ、分かりましたよ!」

 

 耐えきれなくなった私は双子の言葉を遮った。

 

「百歩譲って私がここの生徒ではないと仮定しましょう。そうだとして、貴方達が私に関わる必要はないのではありませんか?」

 

 私の問いに双子は顔を見合わせた。

 

「兄弟よ。彼女はこう言ってるがどう思う?」

 

「もちろん、僕らの意見はいつも同じさ!」

 

 こくこくと頷き合い、私を見た彼らは声を合わせてこう言った。

 

「「君が気に入ったんだ!」」

 

「え?」

 

 今度こそ、本当に理解ができなかった。

 

「だーかーらー、気に入ったのさ!」

 

「出会った時に、びびっときちゃったんだよね!」

 

「「僕らはもう友達だよ!!」」

 

 私は押し黙ってしまった。友達なんて、私には…。

 

「…勝手にしてください」

 

 ぼそっと、そう呟いた。

 

 って、今私、何て…?!

 

「「え、それって!」」

 

「い、い、や、今のは!違くって!」

 

 完全にやらかしてしまった私は、慌てて訂正しようとするが、二人は全く聞き耳を持ってくれない。

 

「聞いたか兄弟!男にもないなら、女にも二言はないよな!」

 

「しっかりと、耳に入れたよ兄弟!今ならオブリビエイトされても、覚えてる自信があるぜ!」

 

「「お言葉に甘えて、勝手にさせてもらうよ!!」」 

 

 はぁ、と私は頭を抱えた。

 これは確実に、セブに叱られる…。

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