ハリー・ポッターと金銀の少女(改)   作:Riena

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Page 2.早すぎる対面

 「おはよう、ルー」

 

 私の目覚まし時計とも言えるミミズク(ルー)を撫でながら、ベッドを降りる。見慣れてきた部屋は、まだ春になり切れておらず、寒さが残っていた。

 

 “私”が転生してから、約一か月が経っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はあの日から、熱を出して寝込んでしまった。“転生”という異常な状況が、頭どころか身体まで着いていけなかったのだ。

 体調が治ったのは、二週間後。それからは、ゆっくりとこの生活に慣れていけば……なんて、軽い考えでいた私は痛い目に遭うことになった。

 原因は主に文化の違いと、シエルの環境の2つだった。

 

 家の中でも靴を履いて過ごす、お茶や水代わりに紅茶を飲む、主食がお米じゃなくてパンや芋、お風呂に毎日入らない、など。

 特に食生活は美味しくない訳では無いのだが、イギリス人とは馬が合わないらしく、何度お米や醤油を求めたことか…。リーサの目を盗んで、味付けを濃くしたこともあった。

 そういった文化の違いはなかなかきついもので、少しずつ慣れてはきているのだが、まだまだというところであった。

 

 次に環境について。

 魔法史の教科書曰く、スタージェント家は聖ニ十八家よりも偉い身分の家柄らしい。しかも、私の父は現当主で私は次期当主。そのせいで、毎日がお嬢様修行なのであった。

 今まで身振りや口調など気にもかけていなかったことを、一つずつ細かく丁寧に指摘され、教育されていた。

 また、月曜日~水曜日はお嬢様修行。木曜日~土曜日はマグルの小学校の授業。日曜日は魔法の制御の授業で、それぞれ1日6時間以上といった感じに、学校と同じように勉強をさせられた。

 しかも、先生はスパルタなリーサで、少しでも気を緩めたらおでこに()()がフリ()()ドされるという特典付きだった。

 

「はぁ…」

 

 ここ1か月の苦労を思い出して、私はため息をついた。

 それを見たルーが、額をコツンと嘴でつついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 食堂に行くと、朝食の準備がされていた。辺りを見渡すがリーサはいない。キッチンにも自室にもいないので、どうやら外出中のようだった。何時ものことだと、特に気にかけず、私は席について朝食に手をつけた。

 

 しばらくして、デザートのプリンを食べていると、パチンッという音が聞こえた。

 

「おはようございます、リーサ」

 

「おはようございます、お嬢様。少し用事がございまして、起床前でしたので、お起こしするのは、よろしくないと思いまして…」

 

「何か大事な用でしたか?」

 

 屋敷しもべの独特な敬語に、私はそう返した。「~でしたか?」だなんて、“私”の柄じゃないけれど。この一ヶ月で、お姫様言葉を完璧に身に付けていた。

 

「その事なのですが…今日の午後から、お嬢様はお出かけをされなければならなくなりました。会わなければならないお方がおられるのです」

 

「…会わなければいけない人…ですか?」

 

 私の問いかけに、リーサは頷いた。

 

「はい、でございます。…では、本日は日曜日ですので、魔法の練習をいたしましょう」

 

 どうやら、会うまではその人について教えてくれないらしい。リーサは指を鳴らして、空になった食器を下げると、食堂を後にした。私もそのあとに続く。

 …会わないといけない人って誰なんだろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 食堂を出ると、真っ直ぐに伸びた廊下を少し歩いて、中庭に向かった。ここが、いつもの魔法の練習をしている場所だ。先ほどいた食堂と同じくらいの大きさがある。

 

「では、始めましょう。まずは、おさらいから。このかばんを上へ持ち上げてみてください」

 

 目の前にあるかばんに手を向ける。魔力を指先に集め、ビューンヒョイっと手を動かすとかばんが浮き上がった。

 

「お上手です!」

 

「ありがとう、リーサ」

 

 この『ハリーポッター』の世界の魔法は、主に杖と呪文を用いて、自分の魔力を制御して、魔法を使う。

 上達すれば、杖無し呪文(ワンドレス・マジック)や無言呪文のように、杖や呪文を使わずに自分の力だけで魔力を制御することも可能である。

 しかしそれとは逆に、自分の魔力を制御しきれずに、暴走してしまうことがある。これが、幼い子供の魔法使いや魔女が引き起こす魔法だ。これは、強い感情、特に不快感を感じた時に起こりやすく、稀に大人でも同じように、魔力の暴走を引き起こしてしまうことがある。

 

 私は生まれつき、魔力が強いらしく、この魔力の暴走が酷かったそうだ。そこで、3歳の頃から徐々に制御する方法を身につけて、今では大体、ホグワーツ三年生で習う魔法を行うことができた。

 

 そんな私にとって、浮遊呪文なんてお手の物。

 こう言うのが転生特典って言うのかな?もしそうなら、神様ありがとう!いるか分からないけどね!

 

 その後も、リーサから出された課題を難なくこなしていくと、あっという間にお昼の時間となっていた。

 

「では、今日はここまででございます。昼食を準備致します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼食を食べ終えると、すぐに出かける準備を始めた。

 その間、リーサは一度もこの後のことについて話すことはなく、彼女が口を開いたのは、出かける寸前のことだった。

 

「準備は終わりましたでしょうか?」

 

「はい、終わりました」

 

「では少し、大切なお話をさせていただきます。

 …お嬢様が今からお会いになられるお方は、お嬢様にとって、とても大事なお方でございます。そして、今からお話しされる内容は、お嬢様の将来に関わることでございます。

 …敵でも、味方でもございません。しかし、敵にも味方にもなりえます。くれぐれもお気を付けくださいませ」

 

「……ん?」

 

 急に真面目な顔で真剣な話をされ、私はよく理解ができずに首を傾げた。しかし、リーサはそれ以上何も言うつもりはないらしい。

 

「えっと…リーサ…?」

 

「ご武運を」

 

 え、私今から戦争にでも行くの?

 

 その言葉がリーサに届く前に、私の視界は歪み、回っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を開くと、何やら見覚えのある部屋の入口に、私は立っていた。

 壁にはいくつもの肖像画がかかっており、そのほとんどが動いたり話したりしている。置かれている飾り棚の中には不思議な形や色をした小物、あるいは小道具が棚いっぱいに飾られており、本棚の上には古めかしい三角帽が置かれていたりもする。また、止まり木には綺麗な鳥が、静かに止まっていた。

 

「…ふぉっふぉっふぉ、部屋の内装が気になるのかね?わしは物がたくさんあった方が好きでのう…」

 

 ふと、正面に置かれた机の向こうにいる、一人の老人が私に話しかけた。そちらへ視線を向けた私は、驚きのあまり、思わずあっと声をあげてしまう。

 

「あ、貴方は…!」

 

「わしを知っているのかね?…それは実に嬉しいことじゃのう。おっと、わしとしたことが、まだ、名乗ってもおらんかったのう。改めて…わしの名は、()()()()()()()()()()()じゃ」

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