4月21日
「おはようございます先輩」
「おう。おはようすみれ」
朝、電車の中ですみれと会った。
「....いよいよ今日なんですね」
「あぁ」
すみれは真剣な表情で俺にそう言ってきた。何故真剣なのかというと、今日の放課後、
俺達は鴨志田のパレスは破壊しに行くからだ。
「....不安か?」
「....少しだけ。でも、先輩が一緒だから安心してる方が大きいです」
「っ、そうか」
すみれの思わぬ返事に俺はドキッとした。
「そうだ先輩。欲望が狙われてるってどうやって分からせるんですか?」
すみれは二日前に言ったことについて聞いてきた。
「簡単な事だ。お前の欲望を頂くって本人に言うんだよ。そしたら本人は自分の欲望が
狙われてるって思うからな」
「そ、そんな簡単な事なんですか」
「あぁ」
「お、思ってたよりもシンプルですね....」
すみれはシンプル過ぎて逆に驚いていた。
「まぁな。とりあえず、学校に着いたら鴨志田の所に行くか」
そう話しながら、俺達は電車を降りて学校に向かった。
〜〜〜〜
学校
「....何だよ、コレは」
「先輩....コレって予告状というやつじゃ....」
俺とすみれは学校にある掲示板の前にいた。そして、俺は掲示板に大量に貼られている
赤い紙を取って見ていた。その紙には新聞記事を一文字一文字破ってこう書かれていた。
『色欲のクソ野郎、鴨志田卓殿。抵抗できない生徒に歪んだ欲望をぶつける、
お前のクソさ加減はわかっている。だから俺たちは、お前の歪んだ欲望を盗って、
お前に罪を告白させることにした。明日やってやるから覚悟してなさい。
心の怪盗団より。』
「....なんか、アレだよな。頭悪い奴が背伸びしたような....」
「....それは思っても言っちゃいけないやつです」
そう話していると、掲示板に鴨志田が近づいてきた。
「誰が....! おい貴様か! それとも貴様か!」
鴨志田は周りにいた生徒達に怒鳴り出した。
「....すみれ、一度離れるぞ」
「はい」
そう言って、俺とすみれは走ってその場から離れた。その時、蓮と竜司、高巻が
俺の視界に入った。
「(アイツら....まさか)」
〜昼休み〜
「先輩、コレ誰が書いたんでしょうか....」
昼休みになり、俺とすみれは中庭で昼飯を食べていた。そして、すみれは朝の予告状を
見ながら俺にそう聞いてきた。
「....正直、心当たりはある」
「そうなんですか? 一体誰が....」
「竜司だ」
「竜司って、確か先輩の友達の金髪の人ですよね?」
「あぁ」
そう言いながら、俺は予告状の最後の部分を指差した。
「ここに怪盗団って書かれてるだろ? つまり、これを書いたのは一人ではなく複数人だ。
そして今日の朝、竜司と蓮、高巻が遠くから掲示板の方を見ていたんだ。おそらく、
予告状の様子を見ていたんだと思う」
「そうなんですか....ですが、どうして先輩の友達が」
「そこまではわからん。だが、アイツらもパレスのコアを狙ってるんだろうな。それも今日」
俺は自分の携帯を開いた。
「だから、俺達はアイツらよりも先にコアを回収する。そして、鴨志田に黒いシャドウについて
話しを聞く。それが俺達のやるべき事だ」
「はい」
「よし。じゃあ授業が終わったらいつもの所に頼む」
そう言って俺は立ち上がった。
「ごちそうさま。今日も美味かった」
「いえいえ! 先輩が喜んでくれたら私も嬉しいです!」
「そうか。じゃあ放課後にな」
「はい!」
〜〜〜〜
放課後
「先輩! お待たせしました」
「よし、じゃあ早速行くぞ」
「はい」
俺はイセカイナビに単語を打ち込んでパレスに入った。
〜〜〜〜
「さて、さっさと回収して帰るか」
俺とすみれは玉座がある部屋の扉の前にいた。
「はい! じゃあ早くここを登って....」
すみれがそう言ってオブジェを登ろうとしたその時、急に地面が揺れた。
「きゃあ!」
「っ、すみれ!」
俺はすみれが落下する場所に移動して受け止めた。
「大丈夫か!」
「は、はい....」///
「今の地震、結構近かったよな....」
「多分、この中からだと思うんですけど」
すみれは巨大な扉を見ていた。
「この中か....」
俺はすみれをお姫様抱っこしながら空いている場所から部屋に入った。
すると、そこにいたのはシャドウに姿を変えた鴨志田と蓮達だった。
「な、何ですかアレ!」
「シャドウの力を増幅させた鴨志田だ。面倒なことに....」
俺は鴨志田の様子を見ながら頭の王冠に気づいた。
「見つけた、このパレスのコア」
「どれですか!」
「アイツが付けている王冠だ。間違いない」
俺はすみれを下ろして王冠を指差した。
「じゃあアレを回収できたら....」
「あぁ。パレスを破壊することができる。その為にまずは、鴨志田をぶっ飛ばす」
そう言いながら、俺は全書をめくって一枚のカードを地面に投げた。
「ビヤーキ、俺とすみれにヒートライザ」
現れたペルソナにそう言うと、俺とすみれにヒートライザをかけた。
「ご苦労さん。さてと、どっから攻めるか....」
俺は蓮達の戦いを見ていると、鴨志田は自分の足元に置いている優勝カップの中の物を
食べていた。すると、鴨志田は回復していた。
「なるほどな....すみれ、まずはあの優勝カップから潰すぞ」
「わかりました。サンドリヨン!」
「来い、フォルセティ、ホウオウ」
『久しぶりの出番か』
俺とすみれはペルソナを召喚して隙を待った。そして、鴨志田の動きが止まった瞬間....
「今だ! ホウオウはカップに向かってフレイラ! フォルセティはナイフに向かって
ダイヤモンドダストだ!」
「サンドリヨンも優勝カップに向かって剣の舞!」
そう言うと、ペルソナ達はそれぞれ動き、優勝カップは壊れ、ナイフを持っていた腕は
凍りついた。
『ヌァァァァ! ナンダコレハァァ!』
鴨志田は急な事に驚いて叫び出した。俺とすみれは鴨志田が暴れている間に下に飛び降りた。
「あ! お前はこの前の!」
俺達に気づいた竜司は指を差してそう言ってきた。
「よぉ竜司。それに蓮と高巻だったか」
俺は三人に向かってそう言った。
「な、何で私達の名前を!?」
「それは後で話す。今はコイツを倒すのに集中しろ!」
そう言いながら俺は高巻の前にカードを投げた。
「ランダ!」
高巻に向かって振り下ろされたフォークをランダは跳ね返した。
「っ、ビックリした....」
「高巻! 竜司! お前ら二人でフォークを持ってる手を潰せ! 蓮とそこの猫は
あのワインを潰せ!」
「な、何かわかんないけど....カルメン!」
「わ、わかった! キッド!」
「....了解。アルセーヌ!」
「ワガハイは猫じゃねぇっての! ゾロ!」
三人と一匹はとりあえず信用してくれたのか、俺の指示通りに行動してくれた。
そのおかげで、ヤツの腕は一本を残して機能不能となった。
『ヌワァァァァ!?』
鴨志田は残った腕で身体を支えていた。
『フザケルナ....! オレハコノシロノオウダ! キサマラゴトキニマケルナドト....』
「いや、お前の負けだ。チェルノボグ、血祭り」
「サンドリヨン、コウハ!」
二体の攻撃で鴨志田の姿は崩壊し、元の姿に戻った。
「(あっけなく終わったか....)」
そう思いながら俺はパレスのコアを回収しようとしたが、鴨志田はダッシュして
コアを回収して逃げようとした。だが、逃げた先はバルコニーで逃げ道はなかった。
『う、うぅ....』
「逃げ道はない。大人しくパレスのコアを渡せ」
俺は拳銃を向けて鴨志田にそう言った。
『昔からそうだ! ハイエナ共が期待という名の押し付けばかり! 俺はそいつらの分まで
やっているんだ! 見返りを求めて何が悪い!』
「そんなの、ただの言い訳じゃないですか! それで人を傷つけて良い理由には
なりませんよ!」
『ぬ、ぬぅ....』
「ちょっとごめん....」
すると、高巻がそう言って俺の前に立った。
「....アンタは今、志帆と同じ景色を見てるんだよ。きっと志帆も怖かった....
でも飛び降りるしかなかった....」
高巻はそう言いながらペルソナを召喚した。
「アンタはどうする....? 飛び降りる? それともここで、死んでみる?」
高巻のペルソナの両手には炎が出ていた。
『や、やめろ! やめてくれぇぇ!』
「みんな、アンタにそう言ったんじゃないの? けど、アンタは平気で奪ってったんだ!」
高巻のペルソナの炎は鴨志田の顔の横を目掛けて飛ばされた。
『わ、わかった....俺の負けだ』
そう言って鴨志田は蓮に向かって王冠を投げた。
『トドメをさせよ....そうすれば、現実世界の俺にもトドメをさせる』
鴨志田はそう言うが、高巻は何も言わずに手を下ろした。
「そんな事、するわけないじゃない。アンタには現実世界で罪を償ってもらうから」
高巻はそう言って蓮の方に戻っていった。俺はそれを見て逆に鴨志田に近づいた。
「おい、一つ聞かせろ。お前は黒い触手を持ったシャドウを知っているか」
『黒い触手....? そんな物を持ったシャドウを俺は知らないぞ』
鴨志田の目は嘘を言っている目ではなかった。
「(ハズレか....)」
「すみれ、引き上げるぞ。これ以上ここにいても仕方がない」
「わかりました」
俺がすみれにそう言うと、すみれは俺の後ろをついてきた。
「ちょ、ちょっと待てよ! お前らは一体何者なんだ!」
俺達が部屋から出ようとすると竜司がそう叫んできた。
「....悪いがそれは言えない。それよりも、今は逃げる事を考えた方が良いぞ。
そろそろパレスが壊れ始めるからな」
俺がそう言った瞬間、屋根が音を立てて崩れ始めた。
「じゃあな。スザク」
俺は全書からスザクを召喚してスザクの上に乗った。すみれも俺に続いて
スザクに飛び乗った。
「じゃ、頼むぞスザク」
スザクは城の窓ガラスを突き破って出口に向かって飛んだ。
〜〜〜〜
「ふぅ、脱出完了」
俺とすみれはパレスが崩壊する前に脱出する事が出来た。
俺は携帯を取り出してイセカイナビを開いて鴨志田で検索をかけた。
だが、検索結果は出なかった。
「これで、全て上手くいったんですか....?」
すみれは心配そうに俺に聞いてきた。
「あぁ。パレスも消滅している。これで後は鴨志田がどう動くかだ」
「そうですか....そういえば、黒い触手のシャドウについては....」
「ハズレ。鴨志田が犯人じゃなかった」
「じゃあ、一体犯人は誰なんでしょうか....?」
「さぁな....でも、とりあえず今は怪我なく成功した事を喜ぼうぜ」
「....それもそうですね!」
そう言って話していると、近くで何かが落ちる音が聞こえた。音が聞こえた方を
見てみると、蓮達が倒れていた。
「先輩、あの人達って....」
「さっきのペルソナ使いだ。一先ず、バレないように行くぞ」
「わかりました」
俺とすみれはそう言って、静かにその場から退散した。