5月5日 午前11時30分
俺は今、渋谷駅ですみれと待ち合わせをしていた。待ってる間、俺は一つ
携帯であるものを見ていた。それは、”怪盗お願いチャンネル“というものだ。
「(一体誰がこんなサイトを作ったんだか....バレたら大変な事になるだろうに)」
そんな事を考えながら、俺はサイトに書かれている投稿を見ていた。
投稿には、怪盗団を支持する投稿がいくつか書かれていた。
「(怪盗団、か....)」
「せんぱーい!」
すると、後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。振り向くと、黒いブラウスと赤いミニスカート姿の
すみれがこっちに向かって走ってきていた。
「はぁ、はぁ....すいません! 少し用意に手間取ってしまって....」
「気にすんな。俺も来たばっかりだ」
「そうですか....よかったぁ」
「....それよりも、その服良く似合ってるな。....その、すごく可愛いぞ」
俺は不器用ながらも、すみれの服装を褒めていた。
「ふえっ!? そ、そうですか....その、そう言ってもらえると嬉しいです」///
「そ、そうか....」///
俺とすみれはお互いに顔が赤くなり、俺は自分で言ったことが恥ずかしくなってきた。
「せ、先輩まで顔を赤くしないでください....何だか恥ずかしいじゃないですか」///
「わ、悪い」///
そして、お互いに少し気まずい空気になったが、俺は顔の火照りを抑えてすみれにこう言った。
「そ、そろそろ行こうか。予約した時間も近づいてるし....」
「そ、そうでしたね! は、早く行きましょうか」
「じゃ、じゃあその....」
俺はすみれに手を差し出した。
「....ま、迷うといけないからな」//
「そ、そうですね」//
そう言いながら、俺はすみれと手を繋いで予約した店に向かった。
〜〜〜〜
「でも、こんな所に個室の焼肉屋さんがあるなんて初めて知りました」
俺達が来たのはちょっと良さげな焼肉屋だった。
「俺も店を調べてて知ったんだよ。ここなら個室だから話しが他の人間に聞かれることも
ないから安心して話せるからな」
すると、店員が飲み物と注文をした物を持ってきてくれた。
「ま、とりあえず焼きながら話すか。最初はタン塩で良いか?」
「はい!」
すみれに了承をもらって俺は網にタン塩を焼き始めた。
「一つ言っておくが、今から話す事は全て本当のことだ。俺は一切嘘を言わないから
それがわかった上で聞いてくれ」
「分かりました」
「よし。じゃあ最初に俺の事についてだ。....まず俺は、この世界の人間じゃない」
「えっ....?」
俺がそう言った瞬間、すみれの目は点となった。
「....まぁそうなるわな」
「あ、あの、それはどういう意味で....」
「そのままの意味だ。俺は正真正銘、この世界の人間じゃない」
俺はそう言いながらすみれの前に注文できたハラミとカルビを並べた。
「一つすみれに質問だが、すみれはタン塩の後にどっちを食べたい?」
「ハ、ハラミかカルビですか? ....その、時と場合によるかと」
「そうか。なら、今ここには二つの未来の世界があるのがわかるか?」
「....ハラミを食べる未来か、カルビを食べる未来かという事ですか?」
「そうだ。....ハラミを選ぶ未来の世界もあれば、カルビを選ぶ未来の世界もある。このように、
世界は選択の数だけあるんだ。今、俺達が生きているこの世界も、ある選択から枝分かれした
一つなんだ」
「選択から枝分かれした世界....」
「あぁ。例えばだが、俺がすみれと出会わなかった世界もあれば、すみれのお姉さん、
かすみさんが生きている世界があるとかって言えば分かりやすいか?」
「先輩と出会わない!? それにかすみが....!」
そう言った瞬間、すみれは目を見開いた。
「まぁそれは、この世界にとっては全て“if”の世界、もしもあの時、選択が違えばという
可能性の世界の話だけどな」
「....」
「そして俺も、その枝分かれした一つの世界からやって来た人間なんだ。あ、タン塩焼けたぞ」
「あ、ありがとうございます」
俺はタン塩をすみれの皿に置いてやった。
「美味いか?」
「は、はい! とっても美味しいです!」
「そうか。ま、好きなだけ食べてくれ」
俺はそう言いながら肉を焼き続け話しを続けた。
「で、続きなんだが....何で別の世界にいた俺がこの世界にいるかと言うとな、俺は前に
住んでいた世界で死んでこの世界に転生したからなんだ。....転生って分かるか?」
「は、はい....それよりも死んだ!? 先輩が!?」
「まぁ、昔はただの人間だったからな。この世界に来てからペルソナという能力も知ったし、
その力も覚醒したんだよ」
そう言いながら、俺はペルソナ全書を取り出した。
「それに、これもある人から貰ったんだ」
「それって....先輩が言っていた協力者の人からですか?」
「いや。これはまた違う人からだ。俺はこの世界に転生して初めて会った人からな」
そう話しながら俺が肉を食べていると、すみれは不思議そうに聞いてきた。
「でも、先輩が死ぬって....何か病気で亡くなられたんですか?」
「....いや。弟を庇って車に轢かれた」
「っ!」
そう言った瞬間、すみれは身体が硬直した。
「俺は五人家族でな、三兄弟の次男だったんだ。長男の兄貴も俺を交通事故で庇って
幼い時に命を失ったんだ....」
「っ、だからあの時....私が先輩と似ているって言ったんですね」
すみれは初めてペルソナを覚醒した時のことを思い出したようにそう言ってきた。
「そうだ。同じように姉を亡くしたすみれの事がどうにも放っておけなくてな....
すみれの気持ちは、同じように兄を亡くした俺にも痛いほどわかってるからな」
「....そうだったんですね」
「あぁ。....そして、俺は死んだと思ったら、何故か姿が五歳の時に戻って青い空間の中に
いたんだ。その時に、この全書をくれた人、イゴール先生と出会ったんだ」
そう言いながら、俺は全書を優しく撫でた。
「あの人にはこの世界の事やペルソナの事について全て教えてもらったからな。この世界に
無知だった俺には返しても返しきれない恩があるんだ」
「そうなんですね」
「あぁ。それに、俺がペルソナを何体も使えるのは俺が力を司る者見習いだからなんだ」
「力を司る者?」
「イゴール先生の補佐をする者の総称だ。俺以外に四人いるんだが、俺が本気で戦っても
勝率五割行かないぐらい強い人ばかりだ」
「先輩で五割って....」
すみれはそれを聞いて引いていた。
「まぁそんな感じで、数十年先生の手伝いをしている時に急に敵が現れてな。そいつを撃退
するために俺は戦ったんだが、殆どのペルソナが封印されてな。封印されたペルソナを
復活させる事と、働き過ぎのため休暇を取るように言われてな。現在、働くのを禁止
されてここに来て学園生活を送っていたんだ」
「....何だか、先輩の過去って壮絶なんですね」
すみれは何だか同情するような目で俺を見ていた。
「まぁ楽しかったと言えば楽しかったけどな。面白いお客人とも会えたしな」
「そうなんですね。私も、そのイゴール先生という人に会えますか?」
「どうだろうな....基本的に選ばれたお客人か、力を司る者しかそこの空間に出入りが
出来ないからな....」
「空間....?」
「言うのを忘れてたが、イゴール先生がいるのは夢と現実、精神と物質の狭間の場所だ」
「....あの先輩、私カルビが食べたいです」
さっきまでは何とか話についてきてくれていたが、流石に今のは分からなかったのか、
すみれは理解しようとするのを放棄してしまった。
「....ハハハッ! そうだな。ここまで話しを聞いてくれてありがとな。難しい話しは
終わりにして肉食うか」
そう言って、俺はどんどん肉を注文して焼いていった。